ついに我の勇姿を魅せる時が来たか!
刮目せよ雑種共!英雄王たる我の力を!!!」
…ないよ。
「すまぬ、我の聞き間違いか?我の活躍が無いと言わなかったか?」
…活躍どころか登場すらしないよ。あ、クーちゃんは登場するけど。
「おのれおのれおのれおのれおのれぇ!!!我が初登場を邪魔立てするか!戌ゥ!!」
…本編開始!慢心王の登場はもう少し待って!
あと、異能力の名前が決まったよ!
今日はマキちゃんと楽しい憑从影狩り。
場所は廃工場。小規模な群れ。おまけに上級複数いるらしい。本来、たった2人でやるような任務ではないが、部隊員が他任務に当たっていたことや、私の能力、マキちゃんの実力もあり、私達に任されたそう。
「…ここだね。マキちゃん。準備はいい?」
「ええ!何時でも!」
マキちゃんの髪の右半分が黒く染まり、手のひらから小さい蒼炎が上がる。多少の緊張はあれど、気合い十分、といった感じだ。
「よし、今回は複数体に加えて上級も何体かいるらしいから、気を引き締めていこう!」
「了解です!」
「じゃあ、始めようかマキちゃん!…『異能力:天秤の守り手』!!」
『英霊憑依:クー・フーリン』!!
ケルト神話における、最強クラスの英雄。幸運Eであることを覗けば、☆4でも通じる実力者であり、頼れる兄貴分だ。
…幸運Eであることを覗けば。
「…お、俺の番か!よろしくな、嬢ちゃん!」
髪が段々と青に染まる。目の虹彩は紅くなり、瞳孔は獣のように鋭く変わる。
その手には、身の丈ほどある紅い槍が握られていた。
「俺はクー・フーリン。呼びにくかったら"ランサー"でも構わねぇ!」
「解りました!ランサーさん。私は黒神マキです。宜しくなのです!」
「おう!よろしくな!」
セクハラしないか心配だったが、杞憂だったらしい。
流石に中学生に手を出すほど落ちてもいないか。
「ヘグシュッ!!!」
「大丈夫ですか?」
「…あぁ、大丈夫だ。誰かが俺の噂でもしてるんだろう。
さぁ、行こうか嬢ちゃん!前衛は俺に任せな!」
「はい!上級の憑从影も複数いるそうなので慎重に──」
◇◇◇
ー工場の中ー
布が被せてある檻のそばで、憑从影が話し合っている。
手には謎のリスト。
「次の標的は…近くのボロアパートに住んでるガキか。」
「あぁ、かなり霊力が高いらしい。良い憑从影可能性が高いんだと。」
「…
「だな。もしかしたら、新たな災害級が誕生するかもな。」
「そうなったら脳を手に入れやすくな「おらあぁァッッ!」
工場の扉を蹴破る。
「えぇぇぇぇぇ!!!」
下級の憑从影×10「はぁぁぁぁぁぁ!?」
敵にカチコミする私に、マキから驚愕と動揺が見れたが、直ぐに戦闘体勢をとる。
上級の憑从影が、右奥に2体と、その横に中級が1体。
下級の憑从影は、中央の檻の回りに10体、全てが集まっている。檻の中身は布が被せてあり、よく見えない。
「何やってるんですかランサーさん!?」
「悪い嬢ちゃん!体が勝手に!多分マスターだ!」
動揺している憑从影。真っ先に潰すべきなのは上級の奴等。
上級さえ処理出来ればあとは容易い。
「嬢ちゃん!アイツらの退路を絶ってくれ!」
「了解!『異能力:朧火』!!
朧火よ!悪しき魂を封じよ!」
蒼炎が憑从影達を囲う。ちょっと詠唱(別にしなくても良い)が中二っぽいのはご愛敬だ。
「なっ!逃げ道を!」
「…さぁ、誰から来る?」
片手で槍を構え、指を曲げて挑発する。
「コケにしやがって…ッ!女二人で何ができる!」
下級の憑从影の半分が、それぞれ、私とマキちゃんに襲い掛かる。上級の憑从影達は、余裕に満ちた表情で此方を見ている。
その表情、いつまで持つかな?
「確かに、今のナリは女だが…女を甘く見ない方がいいぜ?」
「朧火よ、地獄の業火で焼き尽くせ!」
黒炎が、憑从影を包み、その体を焼く。
「グアァァァァッ!!!なんだ!?何なんだこれはぁ!?」
マキちゃんの朧火には、幻影を見せるものもある。体を焼かれる苦しみに耐えながら、悪夢を見せられる苦痛は、想像を絶する。
…今まで殺してきた人々に、地獄で懺悔してくるんだな。
「なッ!あんな餓鬼に一瞬で…!」
先ほどの奇襲による精神的負担に加え、下級とはいえ、ランク付きの憑从影が一瞬で殲滅された事による、不安が襲う。
「おいおい、よそ見してていいのかァ!?」
その隙を見逃さず、ランサーの槍が憑从影の心臓を、一人一人素早く、だが丁寧に穿っていく。何とか抵抗する憑从影をなぎ払う。
「なっ、何なんだこいつは!聞いていないぞこんな化も…ギャァァッ!!!」
最後の下級憑从影の、頭をかち割る。ランサーの足元には、憑从影の死体が転がっていた。
あまりにも圧倒的な蹂躙に、上級憑从影達の頬に、冷や汗が伝う。
(下級とはいえ、あの一瞬で全員が…!
…いや、落ち着け。此方は3体。うち2体が上級。
残りの1体も中級だ!相手は餓鬼2人。勝てぬ道理はない。)
「『錬成』!『
何も無い空間から、武器が出現。それを左右にいる仲間に渡す。
(何もない場所から武器が…?
「嬢ちゃん!あのデケェ斧をもった奴を頼む!槍の奴と真ん中のは俺が片付ける!」
「解りました!(…初の中級憑从影…。油断せずに…落ち着いて!)」
身体から炎の翼が現れる。
「行きます!」
◇◇◇
「…おい、槍の!かかってこい、胸を貸してやる。」
「ッ!…なめるなよ。このアマ!」
槍を持った憑从影が、勢いよく前へ飛び出す。
喉元、心臓…と急所に向かって連続で突きを繰り出す。
「成る程、全くのド素人って訳でもないらしい。…だが、甘い!」
突きを避け、足に槍を引っ掻けてバランスを崩させる。
よろけたところに、渾身の回し蹴りを脇腹にお見舞いする。
「ガァッ…!」
憑从影は吹っ飛び、放棄された段ボールの山へ突っ込んだ。
「ほらどうした?まだ終わりじゃねぇだろ…って、あ?」
段ボールに突っ込んだ憑从影は、内臓が破裂し、肋も折れ、とうに起き上がれるような状態ではなかった。
「完全にのびてやがる…ってことは…。え!?何!?今の全力!?上級ってのは名だけかよ…。」
余りにも手応えの無い敵に、ランサーは少し残念そうだ。
「まぁ…良い。ほら、観念しな!もうお仲間は全滅してるしな。」
「ははっ!何を言ってる?…まだあの小娘と───」
「ぐあぁあぁあぁあっ!!!」
憑从影が振り向くと、そこには蒼炎に身体を焼かれ、悶絶する仲間の姿があった。
焼ける仲間の側には、汗をぬぐい、荒くなった息を整えるマキがいた。
「馬…鹿な…っ!中級が、あんなガキにッ…!」
「な?観念しておとなしく───」
「─しろ。」
ボソリと何か呟く。
「あぁ!?聞こえねぇよ!何だぁ!?」
「─しろ!…後悔しろ!そして死ね!」
「クッ…!!(リモコン!?不味い、間に合わねぇっ!)」
阻止しようと、槍を振り下ろすも間に合わず、憑从影は手に握られていた何かの起動装置のボタンを押す。
ガアァァァァァァァッッッ!!!!
「チッ…檻か!」
「…し…死ね。ば、けも…の。」
後ろの檻から、沢山の動物の一部を雑に繋ぎ合わさった…否、中級以上の霊獣達が繋ぎ合わさった、キメラが、鉄格子を破壊して飛び出してきた。
檻のすぐそばに立っていたマキに狙いを定め、異形の腕を振り下ろす。
「嬢ちゃん!後ろだ!避けろ!」
「──え?」
余りに突然なことで、マキは対応が遅れる。
すでに爪はマキの目と鼻の先。回避は間に合わない。
「マキ!今──ガッ…!」
意識が朦朧と…。時間切れか…!
クソ!こんな時に…!まずい!間に合わねぇ!
「…『英雄顕現:クー・フーリン』!!!マキを守れ!!!」
髪色がもとの橙色へ戻る。
立香の体から光の粒子が抜ける。
抜けた粒子は、即座にマキの前で集まり、具現化する。
ガギイィン!!
「──ッ!………?」
マキに当たるはずだったキメラの爪は、当たる直前で、赤い槍によって防がれていた。
「チッ…流石にもろに受けると痺れるな…!大丈夫か?嬢ちゃん。」
マキへ優しく微笑みかける。
「…あ!この雰囲気…!ランサーさん!?」
一瞬誰だか解らなかった様だが、特徴的な髪と槍ですぐに気が付けた様だ。
「おう!その調子なら大丈夫そうだな!
…少し下がっといてくれ。コイツは俺が…片付ける。」
ランサーの目つきがより鋭く、獰猛なものへと変わる。
「マスター!宝具、使っても良いよな!?」
「良いよ!ランサー!そんな奴ぶっとばしちゃえ!」
立香の答えにランサーはニヤリの笑う。
紅い魔槍を握る手がより強くなり、矛先には霊力が集中し始める。
「ランサーさんの槍に、とんでもない霊気が…!」
「…その心臓、貰い受ける!」
地面を蹴り、目にも止まらぬ速さで懐へ潜り込む。
「グヴゥ!」
ランサーに無数の爪や蛇の尾が襲うも、それを簡単に潜り抜ける。
「速っ!いつの間に…!」
マキの口から感嘆の声が漏れる。
「『
彼の魔槍は、"因果逆転の槍"。
槍の間合いにて、真名解放伴った放たれた一撃は、それと同時に、
つまり、放ったれた槍はどんな防御もすり抜ける、回避不能の必中の槍となる。
紅い魔槍がキメラの身体へすり抜けるように入っていく。
槍をつたって、赤い鮮血が流れ出る。
グオォォォォッ!!
耳を塞ぎたくなるような、悲鳴をあげ、キメラの肉体は灰となって消滅し、風に飛ばされていった。
キメラが消え、露になった槍の先には、肉体が消えて尚、脈打つ赤黒い心臓があった。
◇◇◇
「…これで、今回の任務は完了だね!後は本部に報告するだけだ!あのキメラのせいで、報告することが増えちゃったけど。
マキちゃんが無事でよかったよ。」
ほっと息をつく。
あのキメラ、少なくとも10体以上の霊獣を組み合わせて作られていた…。それも中級の。何て悪趣味で、危険極まり無い物を…。
霊獣を生きたまま…いや、それだと多少の語弊があるか…。
キメラに使われた、個体の一体一体が活動できる状態のまま、バラバラにされ、繋ぎ合わせるとは…。
永くは生きられなかっただろうが、外にでれば大きな被害を出していただろう。
一撃で仕留められてよかった。
「…あの、ランサーさんは何故今も現界してるんですか?」
「あ、ほんとだ。」
ふと目をやると、私の背中に帰っているはずのクー・フーリンが未だに現界し続けていた。
「なんだ?いちゃ悪いかよ?」
「いや、悪くは無いけど…なんで?」
ランサーの口角が上がり、"よくぞ聞いてくれた"と言わんばかりに話し始める。
「おう、マスターの背中にいる時に聞いたんだが、嬢ちゃんの兄貴…ユウマだったか?…が料理上手なんだろ?俺も是非食ってみたいと思ってな!酒も久しぶりに飲みてぇしよ!」
…絶対酒の方が目的だろ。まあ、ユウマならOKしてくれるかな?何気にサーヴァントと食べるの始めてな様な…。
「マキちゃん、大丈夫そう?」
「…はい!確認とれました!メニューは麻婆豆腐だそうです。」
「「早っ!」」
流石マキちゃん、仕事が早い。
…麻婆?まーぼー?
「…激辛で良いよね?」
ニヤニヤしながらランサーをからかう。
「あ?なに言って…。 ! やめてくれマスター!マジで!あれは、あれは人間が食って良い代物じゃねぇ!」
顔から冷や汗がでて、青くなっている。どうやらかなりのトラウマらしい。…心なしかキメラがでたときよりも動揺している様な…?
「あはは!冗談だよ。そもそも一般人に作れるような代物じゃないでしょ。あれは。そもそも作る理由もないし。
黒神家でご馳走になる人にそんなレベルの辛党───あ。」
1人…いや、2人心当たりがある。白髪赤目の憑依系"迷"探偵と、同じく白髪赤目のマッドサイエンティストが…。
「おい、その反応はなんだマスター!まさか…アレが作られる可能性があるとか言わねぇよな!?」
「…(^-^)ニコッ」
「なんだその顔はァッ!…おい待て、なんで電話を取り出してやがる!?」
私は無言で電話のスピーカーモードをオンにする。
『もしもし、藤ねぇか?』
「今日ってさ、博士とハカちゃん、来る?」
『あー。今日はおばさんが野暮用で遅くなるからうちで食べてくってさ。それがどうかしたのか?』
「…1人分の激辛麻婆豆腐追加で。」
「マスター!てめぇ!やりやがったな!」
ランサーの顔が赤くなったり青くなったり…ちょっと面白いな。
「もういい!予定変更だ!俺は帰る───!!」
ランサーが霊体化しようとするが…そんなこと、私が許さない。
「"令呪を持って命ずる────"」
「…!止めろマスター!そんなことに令呪を使うな!落ち着け!解った、食う!食うから!」
「…言質は取った。」
ランサーが肩を項垂らせる。顔は既に真っ青で、何かブツブツ呟いている。
「いや…まだだ…人間にあれが作り出せるとは思えねぇ、その可能性に───!」
「『英霊顕現/エミヤ』!黒神家に向かって激辛麻婆作ってこい!ランサーが食べたくて仕方ないみたいだから!」
「貴様ァーーーーッ!!」
「…フッ。了解したマスター。全速力で向かおう。」
「アーチャー!お前今俺のこと鼻で笑ったよな!?」
「はて、何のことやら?」
「2人は仲良しなんですね!」
「「何処がだ!?」」
「…まぁいい。ランサー。楽しみにしているが良い。」
そう言うと、アーチャーは一足先に黒神家へと向かったのだった。
◇◇◇
「マスター!今からでも間に合う!止めろ!」
ランサーが叫ぶ。目の前には、赤い。兎に角赤い麻婆豆腐。
マグマのようにゴポゴポと音を立て、鼻にツンとした、刺激が走る。
ランサーは完全に顔がひきつっている。
「往生際が悪いぞ、ランサー。何、問題はあるまい。君は頑丈さが売りなんだろう?麻婆豆腐の1皿や2皿、さっさと平らげてしまえ。」
「ドンマイ、ランサーさん。」
「貴方の勇姿は忘れません!」
麻婆豆腐(中辛)を食べながらアーチャーが言う。横でユウマとマキ、ミレイが哀れみの目でランサーを見ている。
「美味いぞ~?ランサー。とっとと食え~。(もぐもぐ」
「ハフッ!ハム、もぐもぐ。」
ハカちゃんと博士は美味しそうに麻婆豆腐(獄辛)を食べている。
「コイツら味覚がイカれてやがる!?」
「はぁ…。マスター、令呪を!」
「了解!"令呪を持って命ずる──"」
「解った!食う、食えばいいんだろ!?さっきやったろこのくだり!」
ランサーはレンゲで麻婆をすくい、口へと運ぶ。
「ハム…モグ…モグ…。」
ゴクンッ…とランサーの嚥下する音が部屋に響いた。
───ガシャン!
嚥下とほぼ同時にランサーは気絶し、ぶっ倒れる。
麻婆豆腐の入った皿に顔を埋めてしまっている。
「…ランサーが死んだ!?」
「「このひとでなしっ!!」」
気絶したまま、ランサーは私の背中へ還っていくのだった。
ー藤丸の異能力ー
『天秤の守り手』
名前のモデルは英霊召喚の詠唱からきている。
「英霊憑依」と「英霊顕現」の二つがある。
「英霊憑依」・・・英霊を身体に宿して戦う。憑依すると、服や髪色など、憑依した英霊に見た目が引っ張られる。
憑依中は、身体への負担が大きいことに加え、英霊に肉体を乗っ取られる。
だが最近、FGOで言う☆3以下の英霊を憑依した時のみ、自分の意思で動かすことが出来るようになった。
霊力の消費が少ない。一度憑依された英霊は、その後、数時間ほど憑依できなくなる。スペックは顕現と比べて低い(70レベ、スキルオール5レベ)。
「英霊顕現」・・・取り憑いている英霊を霊力を消費して顕現させることが出来る。
レベルは80、スキルは7レベルくらいで活動できる。憑依とは異なり、インターバルが無いため、死なない限り何度でも同じ英霊を呼び出せる。
顕現中は霊力が失われ続ける点と、憑依の数倍、霊力の消費がでかいのがデメリット。
英霊が死んだ場合、英霊の格が高ければ(☆4以上もしくは神)だった場合、1ヶ月から半年ほどで復活するが、☆3以下、または新しい英霊は短くて半年、遅いと2年かかる。
今回もかなり駄文だったでしょうが、読んでくださり、ありがとうござます。
誤字報告、矛盾点、遠慮無くコメントしていって下さい!