「うはははは!!ついに、儂の登場か!くーるに!かっこよく、殲滅してやろうぞ!」
「ノッブ、あなた、出番まだ先ですよ。」
「なっなにィィィィーーーッ!!」
「ていうか、前にもやりましたよね。この下り。AUOが。」
「クソッ!クソクソクソッ!何なんだあの女は!」
人気の無い路地裏で
肩や腕、横腹などに、銃創と思わしき傷口があり、ドクドクと血が流れていた。
「早く…!何処でもいい、身を隠さなければ…!」
「…悪いが、それは叶わんぞ。憑从影。」
「!?」
満身創痍の憑从影の目の前に立ちはだかるのは、赤い外套を着た、白髪の青年だった。しかも、その青年は悪霊だったのである。
「何なんだお前!?悪霊のくせして、何故俺の邪魔をする!?」
「…此処に来る前、橙髪の少女にあっただろう?」
「お前、あの女のッ…!」
「逃げるなら今の内だぞ?もっとも、逃がしはしないがね。」
白髪の青年の手には、いつの間にか夫婦剣が握られており、ゆっくりと憑从影へ歩みを進めていく。
「ひぃっ!たっ助けッ…!」
情けない悲鳴をあげ、憑从影は尻餅をつく。
「君は、今まで命乞いに耳を傾けたことがあったのか?」
「それはっ!」
「……。」
白髪の青年…エミヤは、憑从影へ向かって刃を振り下ろす。
「まっ待て!お前、憑从影になれよ!」
「……は?」
振り下ろした刃が、憑从影に触れる寸前で止まる。
「お前、悪霊なんだろ!?それもかなり強力な!俺が"上"に掛け合ってやるからさ!欲しいだろ!?肉体!あんな女に仕え続けるには勿体ねぇ!
お前ほどの悪霊なら上級者…いや、災害級だって夢じゃない!良い話だろう!?」
「…論外だな。私とて、仮にも英霊だ。そんな他の英霊達に、泥を塗るような真似はしないさ。さらばだ。憑从影。」
「ひいぃっ!!」
ザンッ
一撃で首を切り裂く。その瞬間、飛び散った血がエミヤの頬にかかる。
傷口から大量の血が流れ出て、水溜まりのようになっていた。
「…ふぅ。」
「お疲れ様、エミヤ!助かったよ。」
奥から、橙髪の少女が走ってくる。手には、サプレッサーのついた拳銃が握られていた。
「…マスター。いくら人気のない場所とはいえ、拳銃を持ちながら走り回るのは止めておけ。あらぬ誤解を生んでしまうぞ。」
エミヤは呆れたように眉間を押さえる。
「いやー。まぁでも、マシンガン持ち歩くよかマシでしょ!前みたいに!」
「言い訳にもなってないぞマスター。…! マスター、その傷はどうしたのだね?」
私の、頬や、肩の傷に気がついたエミヤが、何処から出したのか救急箱を取り出して駆け寄ってくる。
「あぁ、この傷はね、この憑从影が逃げたあとに新手が出てさ…奇襲されちゃった。 」
エミヤは無言で上着を脱がし、消毒綿とピンセットで傷口を消毒する。
アルコールが傷口に沁みる。
「イテッ…そいつはもう倒したから大丈夫だよ!アダッ!」
エミヤは手際よく私の肩に包帯を巻いていく。その顔は少し心配なような、怒っているような感情が読み取れた。
「…あれほど油断はするなと…まあ良い。終わったぞマスター。」
頬にガーゼを張り付け、エミヤは溜め息をつきながら立ち上がる。
「有り難うね。エミヤ。」
「今回は大丈夫だったが、奴等が狙ってくるのは決まって脳だ。油断はしないように。」
「解ってるって。帰ろっか!マキちゃんが待ってる。」
◇◇◇
-黒神家-
「たっだいまー!」
バァンッ!と勢い良くドアを開け、リビングへと入る。
「わーい!立香ちゃんだー!!」
私を見た瞬間、ミレイが勢い良く抱きついてくる。
「おかえり藤ねぇ。…頼むからドアはゆっくり開けてくれ。あと銃も片付けてから来てくれ…。」
キッチンで料理を作りながら、ユウマが呆れたように言ってくる。
「藤ねぇ。その頬の傷は…?今日も遅かったですし、何かあったんじゃ…!」
「えっ!?怪我!?立香ちゃんが!?」
ハカとミレイが心配そうに私を見てきた。
私の任務が遅くなるのは良くあることなのだが、今回はそれに加えて、頬に切り傷があるため心配させてしまったらしい。
「えっ!藤ねぇ怪我して帰ってきたんですか!?」
マキちゃんがキッチンから走ってきた。
…今言うことではないが、何度聞いても、"藤ねぇ"というあだ名には慣れない。
いつも聞くたびに、どこぞのタイガーを思い浮かべてしまう…。まあ、皆が呼びやすいって言うから受け入れてはいるんだけどね。
「いやー。単独だと思ってたのに、憑从影が実は2人いてさー。片方に奇襲されちゃって。ごめんね、心配かけて。かすり傷程度だから安心して!」
「かすり傷って!もう!大ケガしたらどうするの!」
「その通りです!藤ねぇ、最近は単独で任務をこなしてるんですから、無理しちゃダメですよ!」
ミレイとマキが前後から、口をむくらせながら抱きついてくる。…ちょっと苦しい。
「ははっ、ごめんね!でも大丈夫だよ。いざとなれば英霊達もいるし。」
口をむくらせたままのマキとミレイの頭を優しく撫でる。
「なぁ、藤ねぇに取り憑いてる悪りy…英霊って何体いるんだ?」
台所から、エプロンを外しながらユウマが歩いてくる。
「えー?どうしたの急にー?」
ミレイ達の頭を撫でながら答える。
「いや、純粋な興味っつーか。なんつーか…。俺よりも多いってのは、アルトリアさんから聞いてるけど、具体的な数字は聞いてないだろ?」
「あ!それ!マキも知りたいです!知ってる人殆どいませんし!」
マキがキラキラした目でこちらを見てくる。
「私も、エミヤさん含めて、数人くらいしか知りませんし!色んな神話や物語の英雄が憑いてるんでしたよね!」
「そんな面白いものでもない気がするけどねぇー。まあ、隠すようなものでもないし、いっか!」
「やった!」
「えーっと確か…」
4人の視線が私に集中する。ゴクリ、と生唾を飲み込む音が聞こえた。
「──400体と、50?」
「え(は)?」
「…まぁ、間違いなく400体以上はいると思うよ!」
「「「えぇぇぇぇぇぇ!!!???」」」&「はあぁぁぁぁぁ!!??」
「いやいやいや!何で生きてるんですか藤ねぇ!?」
「おぉ…その言い方は語弊が生まれるよハカちゃん…。」
「400体以上って、俺の8倍いるじゃねぇか!?つーことは呪いも相当…ッ!!」
ユウマの顔から、心配、同様、驚愕の感情が見てとれた。
「いやそりゃキツいっちゃキツいけど…。二年前にも話されたでしょ?呪いを押さえてくれてる人もいるから。…まあ、がんがん呪い飛ばしてくる奴等もいるけど。」
「…あの、藤ねぇの"呪い"って何なんですか?いくら抑えてくれてるって言っても、400体以上もいれば、相当な負担になると思うんですが…。」
ハカが心配そうに聞いてくる。
憑き影には、異能力の他に副作用のような、"呪い"が必ず存在する。
例えば、マキの『冷たいものに触れなくなる呪い』や、ハカの『定期的に霊を憑依させないと身体が崩壊する呪い』などだ。
私の呪いは、異能力の負荷とは別に、英霊を背負う負荷を負っている。その呪いは"俺クロ"本編のユウマ…つまり、100体以上を取り憑かせているユウマと同等の負荷がかかっている。
アルトリアや、エミヤなど、殆どの英霊達は、かかる負荷を最小限、抑えてくれているが、一部のサーヴァントには、この状況を面白がって負荷を強めたりしているやつもいる。
毎晩、全身の骨が軋むような、筋繊維が1本1本千切れていくような、そんな痛みが襲ってくる。
憑依を使った日なんて───まぁ、それはいっか。
「私の呪い?えっとね…毎晩ランダムで英霊の記憶が夢として流れてきたり、もしくは英霊が現れたり。その他は…一部のわるーい奴等が嫌がらせしてくるくらい。」
「それ大丈夫なの!?"嫌がらせ"って言うと凄い可愛らしく聞こえちゃうけど!?」
「あっはっは!大丈夫!大丈夫!悪路王とかその他の悪霊のと比べたら"嫌がらせ"レベルでしょ!」
「いや藤ねぇのは全員が英霊、英雄の悪霊なんだから、普通の悪霊が多い俺なんかよりも相当ひでぇだろ…。」
「だから大丈夫だって!私はユウマみたいに
AUO、
「─スゥーーーーーーーーーーーまあ、大丈夫!」
「「今の間は!?」」
◇◇◇
2月23日
三・二四の埼京事件より、1ヶ月前。
「ん?こんな時期に入隊なんて珍しいな。」
比嘉先輩が頭の後ろに手を組ながら呟く。
「まさか…!」
…あぁ、ついに、来てしまった。アイツが。
「本日から第四殲滅部隊に配属されました。
タカナシは深々とお辞儀をする。
お辞儀で隠れた顔が醜く、不気味な笑顔を浮かべていたことを、私は見逃さなかった。
「タカナシッ…!」
おまけ
~マキちゃんと邪ンヌ
殲滅任務にて~
「来なさい、我が龍よ!」
スキル、"うたかたの夢"により自身にバフをかける。
「喰らえ!」
炎の龍と共に、憑从影へ槍の様に丸めた旗を叩きつける。
「ぐあぁあぁぁ!!」
「あら、随分と呆気ないものですね。」
「……。」
「あらマキ、どうしました?貴女の手柄を横取りしてしまったこと、怒ってます?」
ニヤニヤしながらマキに向かってゆっくりと歩いていく。
「かっ…。」
「か?」
「かっこいぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」
「!?!?!?!?」
「炎の龍がぐわぁーって!紫の炎とか、炎を纏った武器とか!すっごく中二心が擽られます!」
「なっなにを!ふ、復讐に堕ちた聖女など…!あまつさえ邪龍を操る魔女なんて…醜いとは思わないの!?」
「思いません!復讐とか、邪龍とか、むしろそそります!とってもかっこいいです!!今度炎の扱い方教えてください!」
「~~っ!!!」
駄文でしたね。
今回も。ありがとうございました。