正義の味方と悪い魔法使い   作:ヒフミくろねこ

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ネギの独り言を呟いたり、床をごろごろと転がったりする痴態を眺めながら、3-Aのクラスメイトたちは不思議そうに彼へ話しかける。  

 

しかし、当のネギは「誰も僕に告ッたりなんか……」という特大の墓穴を掘ってしまい、追及の手が伸びる前に脱兎のごとく逃げ出してしまった。

 

「う~ん、大丈夫かしらねぇ、あのガキんちょは」

 

「もう何もかも一杯一杯といった感じですね、ネギ先生」

 

「まだ、子供だからな」

 

 三者三様、思い思いの言葉を述べてため息をついた。

 

「衛宮先生はこれからどうされるんですか? 私と神楽坂さんは食事の後にでもパトロールに出かけてきますが」

 

「そうだな。ホテルから周囲はそれとなく探るつもりだが、基本的にここにいる予定だ。一応、教師としての仕事もあるしな」

 

「それもそうですね。それに何かあったときに衛宮先生がいらっしゃった方が安心できますから」

 

「じゃ、士郎先生また後で」

 

「ああ」

 

 刹那は軽く会釈をして、明日菜は手を振って班部屋へと向かった。  二人と別れた士郎はこの空いた時間で、今朝エヴァと交わした約束を思い出し、早速電話をすることにした。

 

「もしもし、茶々丸か?」

 

『士郎さん。はい、そうです』

 

「今、大丈夫か?」

 

『はい、ちょうど猫に餌をあげているところでしたから』

 

「猫たちは元気か?」

 

『はい、皆元気そうです。こちらに帰ってきましたら、また一緒に行きましょう』

 

「そうだな」

 

 電話越しに聞こえる、どこか楽しそうな茶々丸の声に士郎も柔らかい笑みを浮かべた。

 

「猫の餌やりということは、エヴァは側にいないか……」

 

『はい。マスターは「もっと夜遅くだろう」と言っていましたから』

 

「そうか。そういえば昨日の件は学園長にもう伝えたか?」

 

『はい。マスターが学園長に昨日の件を伝えておきましたが、今日は大丈夫でしたか?』

 

「ああ、今日は奈良だったということもあってか、特に何かをしてくるようなことはなかった。だが、まだ夜の可能性もある。今日何もしてこないからといって、何もしていないという保証もない。確実に明日以降のために準備をしているだろうな」

 

『そうですか。士郎さん、くれぐれもお怪我のないようにしてください』

 

「分かった。茶々丸もな」

 

『はい。ありがとうございます。それでは、また夜に』

 

「ああ。また後でな」

 

 そう言って士郎は電話を切った。  少し空いた時間を部屋に戻るわけでもなく、ホテルの売店を物色していると、さっき別れた明日菜が一人でやってくるのが見えた。

 

「あれ、士郎先生まだここにいたの?」

 

「明日菜か。ちょっと茶々丸に電話をしててな」

 

 士郎の言葉に明日菜は「へー」と感心した様子を見せる。

 

「そういえばエヴァちゃんと茶々丸さんと一緒に住んでいるんだっけ。でも、茶々丸さんはいいとして、エヴァちゃんとの生活って想像できないかも」

 

「そうか? 特に問題もなく楽しく過ごしているが……」

 

「ちょっと信じられないかも」

 

 うへー、と肩を落とす明日菜に、士郎はくっくっくと笑ったまま口を開く。

 

「そんなに信じられないなら、一度来てみるといいさ。俺の家ではないが、もてなすぞ」

 

「じゃ、今度行ってみますよ」

 

 自然と会話が途切れても二人して和んでいる瞬間――。

 

「うわあああーん!」

 

 突然の悲鳴に、談笑をしていた二人ははっとしてその方向へと視線を向けた。

 

「あ、あのバカガキ。また何かしたわね!」

 

「魔力の奔流も感じるな。行くぞ」

 

 二人はネギの悲鳴が聞こえた先の露天風呂へと駆け出す。  ネギの悲鳴を聞きつけてか、一足先にあやかやまき絵たちが露天風呂へと来ていた。  そして揃って風呂場へと乱入したとき、そこにはタオルを巻いているとはいえ、裸のネギと朝倉がいた。

 

「朝倉さん、調査を頼んだのに何ですのコレはーっ!」

 

「裸同士でネギ君と何やってたのぉー」

 

「ひぃーっ、お助けー!」

 

「ちょっとネギ、何やってんのよ!」

 

「あ、アスナさーん!」

 

 阿鼻叫喚の中、士郎はこの惨状とさっき感じた魔力のことを考え、一つの推論へとたどり着いて頭を抱えた。

 

「……とりあえず、二人とも服を着ろ。それと後で話があるから俺のところに来い」

 

「し、士郎さーん……」

 

「あちゃー……」

 

 怒られるんだー、と周囲に茶化されている二人を横目に、士郎はため息をつきながら風呂場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええーっ!? ま、魔法がバレたー!? しかも、あ、あの朝倉にーっ!?」

 

「は、はい、ぐし……」

 

「やっぱりか……」

 

 士郎、ネギ、明日菜、刹那の四人は休憩所でネギの魔法バレについて話し合っていた。士郎はため息をつき、刹那は静観、そして明日菜はネギを問い詰める。

 

「も~ダメだ。アンタ、世界中に正体バレてオコジョにされて強制送還だわ」

 

「そんな~っ! 一緒に弁護してくださいよアスナさん、刹那さん、士郎さん~っ!」

 

 すがりつくネギに、明日菜はやれやれとばかりに首を振った。  そしてそのとき、肩にカモミールを乗せた朝倉がやってきた。

 

「おーい、ネギ先生」

 

「うわっ、あ、朝倉さん!?」

 

「ここにいたか兄貴。お、それに旦那♪」

 

「げっ、衛宮先生」

 

 朝倉は視線を巡らせて士郎を見ると、顔を引きつらせて一歩引いた。

 

「あれ? もしかして衛宮先生も関係者?」

 

「……一応な」

 

 士郎を押しのけて、明日菜が朝倉に向かって口を開く。

 

「ちょっと朝倉、あんまり子供をイジメんじゃないわよ」

 

「イジメ? 何言ってんのよ。てゆーか、あんたの方がガキ嫌いじゃなかったっけ?」

 

「そうそう、このブンヤの姉さんは俺らの味方なんだぜ」

 

「え……? 味方?」

 

「報道部突撃班・朝倉和美。カモっっちの熱意にほだされて、ネギ先生の秘密を守るエージェントとして協力していくことにしたよ。よろしくね」

 

「え……え~~!? 本当ですか!?」

 

 朝倉の言葉にネギは小躍りするように近づき、今まで集めた証拠写真も返してもらった。

 

「よ、よかった……問題が一つ減ったです」

 

「よしよしネギ、よかったね」

 

「少しいいか? ネギ君、それに朝倉」

 

 今まで一歩引いて静観していた士郎が、ふと口を開いた。

 

「ネギ君、俺が言えたことではないかもしれないが、今回は仕方なかったとしても出来るだけ自重するように。大々的にバレてしまうとどうなるか、分かっているはずだ。魔法がバレるということは、自分だけではなく相手すらも巻き込むことになるんだからな」

 

「……はい」

 

 士郎はしゅんと項垂れるネギの次に、朝倉を静かに見る。

 

「な、何っ? 衛宮先生?」

 

「朝倉、魔法をバラそうとしても、ちょっとやそっとでは無駄だぞ」

 

「えっ?」

 

 驚く朝倉にかまわず、士郎はなおも言葉を続ける。

 

「そういう行動を規制する機構は必ずある。その結果、警告ならまだしも記憶を改竄されたり、対象となった者……たとえばネギ君が罰せられ、オコジョにされてもう二度と会うこともなくなるだろう」

 

「そりゃ……マズイね」

 

「だから自重しろよ」

 

「……わかった」

 

「これで二人への話は終わりだ。俺は部屋に戻っている」 

 

 それから士郎はネギたちに一言二言言葉を交わして、自分の部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜も深まり、就寝時間になった頃。  新田先生に怒られて外出禁止の忠告を受けた3-Aのクラスメイトたちの元に、笑いながら朝倉が現れた。

 

「くっくっく、怒られてやんの」

 

 詰め寄るあやかを「まあまあ」と落ち着かせ、朝倉は「提案があるのよ」と話し始めた。

 

「名付けて『くちびる争奪! 修学旅行でネギ先生とラブラブキッス大作戦』!!」

 

「ええーっ!」

 

「ネギ君とキスーッ!?」

 

 リスクと賞品、そしてゲーム性にクラスメイトたちは「おおっ」と沸いた。  そんな喧騒の中、千鶴が提案者の朝倉に近づいていった。

 

「和美、ちょっといいかしら?」

 

「ん、どうかしたの、那波?」

 

「士郎先生は駄目なのかしら?」

 

 にこにことした笑顔で放たれた千鶴の一言で、朝倉を含めてクラスの一部がぴたりと動きを止めた。

 

「あー……衛宮先生ね。ちょっとタイム」

 

 朝倉はクラスメイトに背を向けて、壁側に駆け寄った。

 

「カモっち、どうするよ。士郎先生だって」

 

 胸元からにゅっとカモミールが顔を出し、うーんと腕を組んで唸った。

 

「旦那は『従者なんて要らない』とか言っていたけど、俺っちが旦那の力になれる事はパクティオーぐらいだからな」

 

「じゃ、オッケーってことでいいね」

 

「おう」

 

 話はまとまったとばかりに振り返り、朝倉は千鶴に「OK」を出した。

 

「何? 那波は参加すんの?」

 

「うふふふふ」

 

「あ、あっそう……」

 

 笑ってはぐらかす千鶴に朝倉は引きつったような笑いを浮かべるが、そこにふらりとあやかがやってきて、彼女の肩をガシッと掴んだ。

 

「やりましょう。クラス委員長として公認しますわ!」

 

「そらどうも」

 

「よーし、各班10時までに私に選手2名を報告! 11時からゲーム開始だー!」

 

「おーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 11時を過ぎ、士郎はホテルの屋根の上でまったりとお茶を飲みながら、部屋からネギが出て行くのを見送っていた。周囲数キロにわたって視線を巡らせ、警戒を怠らない。

 

「はぁ、やっぱりエヴァは怒っていたな……」

 

 夕食の後、再び茶々丸に電話をかけてエヴァに取り次いでもらった時の第一声が「私がいない時に電話なんぞをして、私に何か恨みでもあるのか?」というものだった。  不機嫌そうにしながらも、夕映から聞いた薀蓄を交えた奈良の話には耳を傾けていたが。

 

「ケケケ、落チコムナヤ家政夫。満月ジャネーガ月見トシャレコモーゼ」

 

「まぁ、俺はお茶だけどな」

 

 チャチャゼロが売店で買ったワインを一人でラッパ飲みしている横で、士郎は苦笑いを浮かべ、団子を一人口に運ぶ。

 

「しかし、ホテル内というか、生徒たちが妙に殺気立っているのがな……」

 

「ケケケ。ガキドモガナンカシテンジャネーノカ」

 

 チャチャゼロの一言に、士郎は肩を落として深くため息をついた。  3-Aの生徒たちは何をしでかすか分かったものではなく、教師としての士郎には頭の痛い問題だった。

 

 ふと、近づいてくる人の気配を感じて士郎は顔を上げる。  視線の先には、二人の浴衣姿の少女が枕を持って立っていた。

 

「古菲と長瀬? 二人ともこんな時間にこんな場所で何しているんだ?」

 

「士郎先生に勝負を挑みに来たアルヨ!」

 

 勝負、という古菲の言葉に士郎は怪訝な顔をするが、彼女は構わずに喋り続ける。

 

「私が勝ったら先生の唇をいただくネ。負けたら私の初キスあげるアルヨ」

 

「……」

 

「そっちがこないなら、こっちから行くアル!」

 

 古菲は数メートルの間合いを一瞬で詰め、踏み込み鋭く拳を打ち込む。  士郎はそれを受けてわざと後方に跳んで威力を殺し、綺麗に着地した。

 

「おー、さすが士郎先生アルね。私の拳を受け止めたアルか」

 

「いや、結構痛かったぞ」

 

 士郎は手の平を振りながら、いきなり攻撃を仕掛けてきた古菲にため息をついた。

 

「しかし、どうしてまたこんな事を?」

 

「優勝者に豪華景品つきのゲームアルよ。ついでに士郎先生と勝負するヨ」

 

「……話はよく分からんが、もう就寝時間も過ぎている。チャンスは一度だけだぞ」

 

「おー、先生話がわかるネ。では行くアルよ!」

 

 古菲は再度、士郎との間合いを素早く詰め、襲い掛かった。  士郎はすぐさまその攻撃に対応する。小柄な身に秘める力に舌を巻きつつ、打点をすべて掬うように受け流し、最後に彼女の額へとデコピンを一閃した。

 

「……いやー、痛かったアルよ」

 

 古菲は何とか受身を取ったものの、仰向けになって屋根に倒れこんだ。

 

「これで勝負ありだな。修学旅行の夜に騒ぎたい気持ちは分かるが、俺も教師だ。罰も兼ねて、な」

 

 士郎の説教じみた言葉を聞きながら、古菲は「よっと」と立ち上がった。

 

「勝負は勝負、私の負けは仕方ないアル」

 

「そうか。それで、長瀬もかかってくるのか?」

 

 士郎は、じっと静観していた楓に問いかけた。

 

「うーむ、衛宮殿には敵わないでござるよ」

 

「……そうか」

 

 士郎が安堵のため息をついた瞬間――楓の姿が消え、士郎の眼前に出現した。  だが士郎は驚くこともなく、冷徹なまでに体が動く。気がつけば楓の腕を取り、屋根の上に組み敷いていた。

 

「……長瀬」

 

「拙者の言った通りでござったな」

 

 士郎は脱力したように力を抜き、楓を解放した。

 

「本当に、うちのクラスの生徒たちは……」

 

「さて、次はネギ坊主のトコヘ行くアルよ」

 

「にんにん」

 

 反省の色をまったく見せないまま、二人は屋根から飛び降りて行った。  士郎はお茶を飲み干し、再び誰かが屋根の上を歩いてやってくることに気がつく。

 

「今度は、夕映と宮崎か……」

 

「し、士郎さん」

 

「し、士郎せんせー」

 

 背後から現れた士郎に、夕映とのどかは驚いてその場を飛びのいた。

 

「あ、あの、士郎さん? 『今度は』とはどういうことです?」

 

「ん? いや、何のゲームをしているんだか、古菲と長瀬が今までいたんだが。ネギ君の所へ行くと言って下に飛び降りていったぞ」

 

 士郎の言葉に夕映はどこかほっとしたため息をつくが、そんな夕映をのどかが軽く小突いた。

 

「のどか、どうしたですか?」

 

「ゆ、ゆえ……チャンスだよー」

 

「なっ! のどか何言い出すかっ! 恥ずかしくて出来るわけないです!」

 

 士郎は話し合いを始めてしまった二人に首を傾げたが、ふと思い出したように口を開いた。

 

「内容はよく分からないが、ネギ君のところへ向かっているんじゃないのか?」

 

「そうですっ! のどか、行くですよっ!」

 

 夕映は勢いよく頷いてのどかの浴衣を引っ張り、非常口の方へと歩いていく。士郎は苦笑いを浮かべ、「危険なことはするなよ」と忠告をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 士郎は再びチャチャゼロの横へ戻ったが、しばらくして直ぐ下から暴れるような物音が聞こえ、その後に「ひやああああぁぁ~っ!」とのどかの悲鳴が響いた。

 

「……ネギ君の部屋からか?」

 

 士郎がベランダへと降り立つと、そこには気を失っているのどかを夕映が介抱しているところだった。

 

「夕映、何があった?」

 

「あ、士郎さん。いえ、私もよく分からないのですが、窓からネギ先生が逃げたらしくて」

 

 士郎は眉を顰めてのどかを診察する。そんな士郎を見て、夕映は心を決めた。

 

「のどかを頼みます、士郎さん」

 

「……まだ、続ける気か?」

 

「ええ、ここまで来て引けません。せっかくのどかが告白した時に、他の人に奪われるわけにはいきませんから」

 

 夕映の固い決心に、士郎は止めることを諦めた。

 

「立場的にもどうこう言えないが、程ほどにな」

 

 夕映はふと、士郎と二人きりであることに気づき、顔を真っ赤にする。

 

「あ、あ、あの士郎さん?」

 

「どうかしたか、夕映?」

 

「ああ、い、いえ、なんでもないですよ。ネギ先生を連れてくるです!」

 

 夕映が誤魔化すように扉を開け放つと、そこにはネギが立っていた。

 

「ネギ先生!?」

 

「あ、どうも夕映さん。……僕、やっぱり……夕映さんのことが……。キス、してもいいですか? 夕映さん」

 

「あ、う……」

 

 迫られるようにやってくるネギに、夕映はじりじりと後退した。すると背後から誰かに抱えられ、浮遊感を感じる。  士郎の片腕に抱きかかえられていた。視線を上げると、そこには鋭い視線をネギに向けた士郎の横顔があった。

 

「し、士郎さん?」

 

「……形代が暴走しているのか」

 

「どうも、ネギです」

 

 士郎に夕映を掠め取られた形となったネギは、両手を伸ばして夕映を掴もうとする。士郎は後ろに飛び、間合いを取った。

 

「なっ!?」

 

「チューー!」

 

 飛び掛かってきたネギ(偽)の後頭部を、士郎は投影した莫耶の腹で叩き落した。

 

「ニ、ニセモノですか?」

 

「そうだな」

 

 倒れたままのネギ(偽)は「ネギでした」と呟いて、煙を撒き散らしながら爆発した。  その爆風は安心しきっていた夕映を襲い、ヘッドバッドをかますような勢いで士郎の顔へとぶつけてしまった。

 

「ああっ、士郎さん、ごめんなさいです!」

 

「……いや、なんでもない」

 

「うーん……何~~?」

 

 のどかが目を覚まし、士郎は夕映をゆっくりと降ろした。

 

「ネギ先生はニセモノだったですよ」「ホテル内にいるほかの四人のネギ君も皆偽者だ」

 

「全部ニセモノですか?」

 

「ああ。ネギ君本人は11時過ぎにホテルから出て行っている」

 

「なっ……」

 

「とりあえず、この事態を収めないといけないな。まずはロビーだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロビーに向かうと、そこにはネギ(偽)四人と、あやかやまき絵を含む全参加者が揃っていた。  士郎はこの場での刃物の投影はまずいと思い、昨晩見た明日菜のハリセンを投影した。

 

 その間にも楓がネギ(偽)を捕まえ、古菲が頬にキスをする。

 

「では任務完了ということでミギでした」

 

 爆発が起きる。さらに新田先生がやってきたが、ネギ(偽)三人に襲われて気を失ってしまう。

 

「こうなってしまっては、もはや後戻りは出来ませんね」

 

 あやかたちがネギ(偽)を追いかけ、阿鼻叫喚の惨状が広がる。士郎が頭を抱えているうちに、ホテルの外に杖を背負った本物のネギの姿が見えた。

 

「ただいまー。あれ? なんか騒がしいような……」

 

「いたーっ!」

 

 夕映は本物のネギに向かって、のどかの背中を力強く押した。

 

「あの、お昼のことなんですけど……。僕、宮崎さんにちゃんとしたお返事はできないんですけど……」

 

 ネギはまっすぐとのどかを見る。

 

「あの、お友達から始めませんか?」

 

「はいッ!」

 

 二人は歩き出し、夕映がこっそりとのどかの足をかけた。倒れこもうとするのどかをネギが支えようとするが、その身長差で唇と唇が重なってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が明けて、次の日の早朝。朝倉からのどかに優勝商品のカードが渡されていた。

 

「へー、これが豪華商品かー」

 

「本屋の絵が描いてある!」

 

 優勝者ののどかの周りにクラスメイトが集まる中、夕映の肩を誰かが叩いた。

 

「いやー、ゆえっちにも渡しておこうと思ってさ」

 

「はい?」

 

 朝倉が夕映の手に握らせたのは、夕映の絵が描いてあるカードだった。

 

「えっ! 夕映ちゃんも優勝したんだ!?」

 

「という事で、ラブラブキッス大作戦の優勝者は五班の二人! ネギ君と衛宮先生で完全優勝でしたっ!」

 

 朝倉の総評に周囲が沸き立つ中、のどかが夕映へと近づいてきた。

 

「夕映、よかったね」

 

「のどか……、私は士郎さんとキスなんか――」

 

「夕映?」

 

 夕映は昨晩のことを思い出し、一つの可能性に気づいてしまった。

 

「まさか、まさか、あの時のヘッドバットですか……」

 

ロマンも感触もなく、ただ「唇が触れ合った」という物理的事実。  

愕然とした夕映は体から力が抜け、その場に膝をついて項垂れてしまった。

 

そして同時刻。  

別の場所では士郎が様々な事実を知り、心境的に夕映と同じように膝をついて項垂れていた。

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