正義の味方と悪い魔法使い   作:ヒフミくろねこ

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「士郎、いい機会だから貴様に仮契約カードについて教えてやる」

 

土曜日の日中、士郎と茶々丸が家事を片付けている時、昼寝を終えたエヴァが唐突にそんな事を言い出した。

 

「……マスター、いきなりどうされたのですか?」

 

怪訝な表情の茶々丸にエヴァは「ん?」と眉を上げて、何を言っているんだとばかりに口を開いた。

 

「士郎が従者になって一週間だ。

坊やのヤツが弟子になるにせよならないにせよ、教えておこうと思ってな。

貴様も一応とはいえ従者を持つ身なのだからな」

 

従者という言葉に士郎は口をへの字にして難しそうな顔をするが、エヴァは一転して面白そうに笑った。

 

「まあいい、カードを出せ」

 

士郎は促されてエヴァの従者の証である複製カードと、夕映の主人であるカードを取り出して眺める。

 

「基本技能としては契約者と念話、5~10km以内なら強制的に召喚できる、

そしてこれは知っているだろうがアーティファクトを呼び出すことができる、この三つだ。まぁある程度の術者なら、こんなの使わずに自分で念話使ったりしたほうが楽なのだがな。いちいち頭にカードをつけないとはめんどくさ過ぎる。ま、貴様には役に立つだろうがな」

 

エヴァの説明に士郎はただ感嘆の息を漏らした。

 

「さほど重要ではないが、カードに書かれている内容も話しておこう」

 

「内容?」

 

「ああ、話の種程度にな」

 

士郎は小首を傾げながらも、ふふんと鼻を鳴らして、いつの間にか眼鏡をかけているエヴァへと視線を向ける。

 

「仮契約カードには徳性、方位、色調、星辰性の四つの属性と称号、数位、それにアーティファクトが書かれている。それはどれも契約者自身の事を示すものだ」

 

オリジナルの士郎との仮契約カードを取り出して具体的に指差した。

 

「貴様の場合、信仰、北、白銀、黒い穴に数位は0か、称号は……孤独な鍛冶屋といったところか?」

 

エヴァは徳性が正義ではないのだなと口にしかけたが、頭を振って思い直した。

断片的に聞いてきた士郎の苦行ともいえる理想は、決して正義なんかでなく、信仰こそ合っているなと。

 

改めて見た自分を示したカードの内容に、士郎は小首を傾げる。

エヴァは不思議そうにする士郎を小さくふっと笑った。

 

「しかし、貴様は剣士でも、射手でも、魔術師でもなく鍛冶屋か。およそ戦う者に付けられる称号ではないな」

 

エヴァは皮肉げに口でこそ否定的な言葉を言うが本心としては、だからこそ今の士郎があるのだと静かに思う。 ただ、士郎はエヴァの微妙なニュアンスに気がつかず、苦笑いしながら鍛冶屋ということについて口を開く。

 

「剣製の魔術師、なんて呼ばれたこともあるしな。俺は所詮つくる者でしかないよ」

 

「そうか。ま、そうかもな」

 

気の無い風に答えるエヴァに士郎は苦笑いを浮かべつつ、もう一度自分のカードへと視線を落とした。

 

「やっぱり分かるような分からないような感じだな」

 

「ふん、私から見れば十分貴様を示していると思うぞ」

 

夕映のカードの称号、解説するエセ哲学者を見てもやはり士郎は首を傾げるしかなかった。 ただ、夕映の事をまだよく知らないだけなのかもしれないとも思ったが。

 

「特にどうこうって訳ではないのだ、気にする事も無い。それよりも、だ」

 

「ん?」

 

「貴様のアーティファクトの能力を見るぞ」

 

早く出して見せろと口で弧を描くエヴァに、士郎はいきなりだなあと思うが、促されるままに“来れ”と銃のアーティファクトを呼び出した。

 

「しかし、貴様に銃というのは合うような、合わないような感じがするな。まぁ貴様の魔術特性と比較するならいいのかもしれないがな」

 

ふむふむと頷いて、腕を組む。

 

「貴様の銃を試射する。場所を移すぞ、ついて来い」

 

エヴァは肩で風を切って歩き出し、それに士郎と茶々丸が続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

エヴァを先頭にやってきた場所は、人気の無い開けた森の中。

 

「とりあえず適当に撃ってみろ」

 

エヴァの言葉に士郎は頷いて、改めてヘイテイノシシャを呼び出して手近な木へと向けて引き金を引いた。

着弾した木は激しく木の葉を降らせて揺れるものの、木を抉ることも無く、樹肌に傷らしい傷も無かった。

 

「非殺傷というのは貴様らしいな」

 

二、三度同じように銃を撃つ士郎。その士郎を見つつエヴァは考え込むように頷いた。

 

「士郎、今度は私を撃ってみろ」

 

「は? ちょ、ちょっと待てエヴァ、いきなり何を言い出すんだ!」

 

慌てだす士郎とは逆に、エヴァは醒めた視線を向けた。

 

「真祖の結界をなめるな士郎。貴様の銃は非殺傷だということは分かったのだ。それにいざとなったら、貴様の弾丸ぐらい弾いてみせる。不死の吸血鬼と呼ばれたこの私を舐めるな」

 

「……わかった。危険だったら直ぐにやめるからな」

 

士郎は渋々と言った様子でエヴァの言葉を認めると、ヘイテイノシシャを握りなおした。

 

「エヴァ、撃つぞ」

 

「ああ、さっさとやれ」

 

エヴァに促されて、士郎はヘイテイノシシャを構えると共に、一度だけ引き金を絞る。 吐き出された銃弾が結界を掠めるように飛び、弾丸は結界を穿つ事無く着弾の光を散らして消えた。

 

「結界無効化することも無いのか……。おい士郎、大丈夫と分かったのなら私を狙うように撃ってみろ」

 

「本当に大丈夫なんだな?」

 

「ああ。だからさっさと撃て」

 

エヴァの突飛な要求に肩を竦めつつ、危険が無い事を認め銃口を再び上げる。

引き金を絞る時には武器を手にしているという自覚の下、鋭い視線へと変わっていた。

 

「撃つぞ」

 

「しばらく様子が見たいからな、私がやめろというまで撃ち続けろよ?」

 

「……わかった。エヴァも何か異常があったら直ぐに教えてくれ」

 

エヴァは士郎の言葉に気のなさそうに頷いた。

士郎は多少心配しつつも立て続けにトリガーを引いた。

 

吐き出される弾丸はすべて着弾と共に消え去り、結界の破壊にまで至ることは無かった。 それでも結界越しに着弾する様子を見ながら、エヴァはふむと頷く。

 

「確かに結界に負荷はかかっているが、衝撃が蓄積されて破壊されるまでもないな。弾丸が特殊かと思ったのだが……ふむ」

 

士郎のアーティファクト、ヘイテイノシシャから吐き出される弾丸の合間、エヴァは唐突に結界を解いた。

 

「エヴァ!」

 

士郎はいきなり結界を解いたエヴァを非難するように名を呼ぶが、弾丸は吐かれた後だった。 エヴァを狙う弾丸は、直撃する事無く、いつの間にか持っていた鉄扇で弾かれていた。

 

「ふむ、受けるのは骨だが、不可能ではないな」

 

「エヴァ!」

 

「何だ、士郎?」

 

士郎の非難の怒声にもエヴァはきょとんと不思議そうにするだけだった。

 

「……今のはマスターが悪いかと」

 

「貴様もか、茶々丸……」

 

二人の言葉も意に返さず、憮然としていたが、何かを思いついたのかニヤリと笑う。

 

「まぁいい、ちょっと遊ぶぞ士郎」

 

「遊ぶ?」

 

今までの行動からエヴァの言葉に不穏な色を感じた士郎は、警戒しながらも続きを促した。

 

「そうだ。貴様はその銃のみ、私は結界無しの、魔法の射手とこの鉄扇。ちょっとした遊びだ」

 

模擬戦ですらない遊びというエヴァの言葉に、士郎はうーんと唸る。

 

「何、お互い手加減の出来ないガキじゃないんだ、大丈夫だろう」

 

確かに、エヴァの言う通りお互い未熟な身では無いと、それにルールからして傷を負うようなものではないと思いなおした。

 

「……勝利条件は?」

 

「私か貴様の攻撃が当たった方が負け。時間は……まぁ十分程度でいいか」

 

お互いが避けきって、引き分けというのが一番可能性が高かったがそう躍起になることでもないなと。

 

「茶々丸、開始の掛け声をしろ」

 

「はい、マスター」

 

エヴァは不敵に笑いながらふわりと宙に浮かび上がり、士郎はヘイテイノシシャを握りなおした。

 

「では、始め!」

 

茶々丸の掛け声と共に、士郎とエヴァは円を描くように左右に走りだした。

 

「なぁ士郎、賞品を付け様じゃないか」

 

「賞品?」

 

「敗者が勝者の言う事を一つ聞くってのはどうだ?」

 

「は?」

 

「決定だな」

 

呆然とする士郎を他所に、エヴァは決めたとばかりにカラカラと笑った。 視界の端に茶々丸が眉をしかめたような気がしたが、直ぐに思考から追い出した。

 

「ではこちらから行くぞ! リク・ラク ラ・ラック ライラック! 氷の精霊7頭 集い来りて 敵を切り裂け 魔法の射手 氷の7矢!」

 

エヴァから伸びた氷の7矢が士郎へと迫ったが、エヴァは着弾を確認せずに、森の中へと進路を変えて高速で移動を開始した。

 

士郎はすぐさまエヴァを追いかけ、走り、ヘイテイノシシャを撃つ。

エヴァは乱立する木々を盾に、士郎の顔を見るために反転して進行方向に背を向けながら飛ぶ。

 

「あははははははっ! 士郎、早く私を捕まえて見せろ」

 

士郎は強化してさらに加速を高める。

高笑いしながら、エヴァは氷の矢で弾幕を張り、士郎は針の穴を通すようにヘイテイノシシャの弾丸を吐く。

 

このままただ時間が過ぎていくと思われた時、エヴァが行動を起こす。

誘うように飛んでいたエヴァだったが、一転してある程度距離を詰めつつ、エヴァは魔法を展開した。

 

「氷の精霊29柱 集い来りて 敵を切り裂け 魔法の射手 連弾 氷の29矢!!」

 

今まで一度も撃つ事の無かった、追尾性のある氷の矢が両サイドから士郎を狙い、そのうち数本を地面へと着弾させ視界を封じさせた。

エヴァはそのまま上空からの急降下、重力と共に鉄扇で士郎を打つ。

 

「ぬっ!」

 

「くっ!」

 

だが士郎は銃身でそれを止めた。

 

「貴様、力を抜いてわざと打たれようと思わないのかっ」

 

「エヴァ、だって!」

 

二人とも全力から十分に手加減をしているのを分かっていたが、それでも軽口を叩き合う。

 

「貴様は私の従者だろ。ご主人様の言うことは、素直に聞け!」

 

「そんな、理不尽なっ!」

 

拮抗は一瞬。士郎はそのままエヴァを押し返し、銃口を向けるがそこにはエヴァの髪の端だけ。 エヴァは髪を靡かせながら、空中で倒立反転をしていた。

銃口が再び自分を捉える前に無詠唱の闇の矢、11本を放った。

 

士郎は躱す訳でも撃ち落す訳でもなく、掻い潜ってエヴァの正面へと出、ほぼ一瞬で六発の弾丸を吐き出した。

 

「やるッ!」

 

三発を半身を捻って躱し、二発を鉄扇で弾き飛ばしたが、胸を狙う最後の一発を左腕で庇って受けるしかなかった。

 

「くっ」

 

着弾の衝撃と共に、悔しそうな表情のまま吹き飛ばされながらも、エヴァは空中で体勢を整えようとしたが、受身も取れずびたんと尻餅をつくように背中から落ちた。

 

士郎はすぐさまエヴァの元へと駆け寄ったが、寝たままジト目で睨むエヴァに思わず足を止めてしまった。

 

「……士郎、こっちに来い」

 

「エ、エヴァ?」

 

負けたという事に輪をかけて不機嫌そうなエヴァに、士郎は腰が引けつつもエヴァの直ぐ側まで来た。

 

「座れ」

 

「あ、ああ」

 

エヴァに促されるままに胡坐をかいて腰掛けると、エヴァはのそっと上半身だけ起こした。

 

「まったく貴様は、とんでもないな」

 

「は?」

 

エヴァは脱力したまま片手に持った鉄扇でぽんぽんと自分の肩を叩いた。

 

「ただの魔力の弾丸を飛ばすだけの銃だなんて思ってなかったが……。貴様のアーティファクト、ヘイテイノシシャの固有能力が分かったぞ」

 

「分かったって?」

 

「魔力の拡散か、阻害か……とにかく貴様の銃弾を受けたものは魔法も使えず、魔力の恩恵も受けることが出来ない。ま、永続的なものでなく、一時的なものだと思うがな。ちょっと私にも貸して見せろ」

 

ほれと、エヴァはその細い腕を士郎に向けて出したが、士郎はなんて言っていいものかと言いよどんだ。

 

「……何をしている、早く貸せ。それとも私には貸したくないのか?」

 

「あ、いや。エヴァに銃弾が当たった瞬間、カードに戻った。それから呼び出そうとしても反応しなくて……」

 

一瞬、エヴァは士郎が何を言っているか分からなかったが、その内容を理解した時、くっくっくと低く笑い出し、果てには大口を開けて笑い出した。

 

「何か? 貴様の銃の魔力阻害は従者にまでその影響を及ぼすか? あの神楽坂明日菜のハマノツルギも投影して、使えるのだろ? まったく貴様という奴は文字通り魔法使いの天敵だな、まさしく魔術師殺しと言ったところか」

 

エヴァはまだ尾を引いていたのかくっくっくと低く笑い、やってられんとばかりに身を投げ出して再び横になった。

 

「貴様のアーティファクトの能力も分かったことだし、少し休憩するぞ。茶々丸、何か飲み物を持って来い」

 

「それなら、俺が取ってこようか?」

 

顔だけ上げてのエヴァの催促に士郎が腰を浮かしかけたが、茶々丸がそれを制した。

 

「士郎さんは休んでいてください。私が取ってきますから」

 

「そうか、……ありがとな茶々丸」

 

茶々丸はなんでもないという風にペコリと頭を下げて、エヴァの家へと向けて歩き出す。 歩いていく茶々丸の背を見ながら息を吐いた。

一方のエヴァはゆっくりとした動作で身を起こし、胡坐をかいて座った士郎の足の上に乗ろうとしていた。

 

「エ、エヴァ?」

 

「気にするな、私は気にせん」

 

いや、そうじゃなくてと、士郎が突っ込もうとしたが、言っても無駄なような気がして肩をすくめながらため息と共に諦めた。

 

「……ああ、好きにしてくれ」

 

「当たり前だ」

 

「…………」

 

「…………」

 

さっきまでの撃ち合いが嘘だったかのように、鳥の囀りが聞こえ、木の葉が風で擦れる音が二人を囲う。 どちらからとも無く、会話が途切れ無言の間が続く。

でもそれは苦痛ではなく自然な空気。

エヴァは士郎の胸板に頭を乗せて、その小さな体を士郎に任せた。

 

「……エヴァ、さっきみたいな事はしないでくれ」

 

「さっきのとはなんだ?」

 

ふと口を開いた士郎に、エヴァはその内容に見当がつかず、小首を傾げた。

 

「急に結界を解いていきなり無防備になる事だ」

 

「ああ、あの時のか。心配でもしてくれたのか?」

 

「当たり前だ」

 

間髪入れずに即答した士郎の表情を見るべく、エヴァは顔を上げた。

直ぐ目の前にある士郎の顔は真剣でどこまでも真摯だった。

ただこの会話の時、士郎が体を固くした事については何も言わなかった。

 

「そうか、心配だったのか」

 

エヴァはふっと笑って、とんとんと二度、士郎の胸を頭で叩き、完全に身を任せた。

それからはまた、何も口にする事無くただ時だけが流れた。

 

エヴァの腕の中にすっぽりと納まる体躯、士郎は遠い日を思い出してエヴァの髪を梳くように撫でる。 エヴァは一瞬だけ震えたが、それ以降は士郎の好きなようにさせた。

 

「平和、だな」

 

「そうだな」

 

「ああ、笑ってしまうほど平和だ」

 

エヴァがふと漏らした言葉に士郎も自然に頷く。

エヴァの顔には安堵とは違い、遠い遠い何処かを。

士郎もエヴァが視線を向ける何かが見えた気がした。

 

初夏に手が届きそうな風が、二人の頬を撫でる。

エヴァと士郎はまるでこの世界に二人だけのように、何も話さず、音も立てず、ただこの時を共有していた。

 

どれだそのままでいたのか、ガラスが触れる甲高い音が二人の空気を崩した。

振り向いた先には、ポットとグラスを持った茶々丸が佇んでいた。

 

「そうだ」

 

「ん?」

 

エヴァはふと思い立ったように立ち上がった。

 

「今日は何か旨いものが食いたい」

 

明るい日差しに目を細めながら空を見上げ、

 

「とびきりの酒の封も切ろう」

 

手櫛でその長い髪を梳き、

 

「だから士郎。今日は腕によりをかけて食事を作れ」

 

そして振り向いたエヴァの顔は、いつもの挑発的で不敵な笑み。

士郎はエヴァのそんな顔を見て、何処か安心したような微笑を浮かべた。

だから返答の言葉なんて決まっていた。

 

「ああ、今日は飛びっきりの食事を作ろう」

 

「頼んだぞ」

 

エヴァは立っている茶々丸から冷えたお茶の入ったグラスを取る。

 

「もう魔力も戻ったようだしな、私は行く。貴様は茶々丸を連れて買出しにでも行け」

 

「ああ、分かった」

 

「それじゃ、また後でなエヴァ」

 

「夕食、楽しみにしてるぞ」

 

そのまま森の中に消えていこうとしたエヴァだったが、ふと足を止めて士郎へと振り返った。

 

「そうだ。賭けは貴様が勝ったのだ。貴様は私に何を望む?」

 

何でもいいぞと促すエヴァに、士郎は苦笑いを浮かべた。

 

「じゃあ、今日の夕食を美味しく食べてくれ、それだけで十分さ」

 

エヴァはふっと笑い、了解したとばかりに片手を挙げて、森の中に消えていった。

士郎はそんなエヴァをしばらく見ていたが、直ぐ隣まで来ていた茶々丸に視線を移す。

 

「茶々丸、今日は買い物手伝ってくれるか?」

 

「はい、もちろんです」

 

茶々丸は何処か微妙な表情だったが、士郎に話しかけられてそんな空気は吹き飛んだ。 士郎はそんな茶々丸の雰囲気に気づかず、凝った体を解すように体を伸ばした。

 

エヴァが向かった方向とは逆に士郎は歩き出し、茶々丸がその直ぐ後ろについて歩く。 こうしてエヴァと士郎の穏やかな、午睡のような時間は過ぎ去った。

 

「さて、今日の夕食は何にしようかな……」

 

これからはまた少々騒がしい、いつもの生活が待っていると。

 

 

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