正義の味方と悪い魔法使い   作:ヒフミくろねこ

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「俺は、まだ生きているのか……」

 

 

生き汚い、本当に俺は生き汚い奴だ。

目を覚まして第一に思ったのはそんな悔恨、次に思った事はこの場所は何処なのだろうかという疑問。

 

俺は畳まれて置いてあった赤い外套を羽織り、痛む体を引きずって部屋を出る。窓から見えた先は黒い森。

 

「城か、ここは……」

 

暗い暗い、夜とは違う闇を想起させる内装、いや存在そのもの。まるで魔物の腹の中に居るような錯覚。あの深い森の中に建っている白い城とは真逆だ。

 

何かの視線を感じるまま、導かれるように歩みを進め、そこに辿りついた。

そこは謁見の間、玉座、主の存在する場所。

 

「目が覚めたかな? お客人」

 

どこか軽薄な声色が混ざった言葉が投げかけられた先、俺は壇上へと厳しい視線を向ける。

上段から見下ろす者達。愉快そうに笑う白い男と、無感情に俺へと視線を送る黒い男、白い大きな獣、そして玉座に悠然と座る、黒い少女。

 

喉がひりつき、額に汗が滲み、無意識の内で両手に干将莫耶を投影し、強く握りこんでいた。

化け物か、俺の脳裏に浮かんだのはその言葉。

 

干将莫耶を投影したと同時に、控えていた白い男と黒い男が軽く半身を動かした。目の前に剣を持った俺という存在がいるのだ、警戒するのは当たり前。それでも俺とは違って、その様子には余裕というものが多分に含まれている。

だが、二人の男はそれ以上動く事は無かった。それよりも早く白い獣が四肢を踏み上げ、その赤い瞳が俺を射った。

 

「――――ッ!」

 

血が凍る。それは最上級の化生。浮かび上がったのは、人であるなら決して抗う事の出来ない明確な死。

だが俺は折れる訳にはいかない、例えその先に確実な死があろうと――。

 

「お止めなさい、プライミッツ」

 

耳へと届いた声色は、落ち着いて透き通った、まるで凍てつく氷を思い浮かべる怜悧な声。

少女の制止に、白い獣は気だるそうに蹲り、警告するように一度だけ俺を見て、それからはまるで興味を失ったかのように視線を外していた。

 

「戦争をしたいのでしたら、白翼公を紹介しましょう。嘗て魔術師であった者同士、きっと話が合うはずですから」

 

平坦な口調の中にどこか挑発じみた色。玉座に座る少女は本当に面白そうと薄く笑みを残す。だが、俺はその言葉を黙殺し、気になっていた事を問う。

 

「……俺を助けたのは、あんた達か?」

「そんなものを持ったまま話をしようというのかしら、人間」

「…………これでいいか?」

 

本能という警鐘が絶えず俺の中で鳴らされているが、意志の力を持ってそれを捩じ伏せる。この場の絶対者である少女の口が弧を描く。

 

「目の前に居る私が分からない愚か者? それとも分かっていながら、尚そうする大馬鹿者?」

 

楽しそうにくすくすと笑う黒い少女。

そんな訳あるか。出来る事なら俺はこの場から直ぐにでも逃走をしたいんだ。戦う理由も、通すべき意志もここには無いのだから。

 

「……先の質問に答えてもらおう」

 

俺は何故こんな場所に居る。

 

「君を助けてここに連れてきたのは、時の翁さ」

 

玉座に座る少女ではなく、脇に控えた白い男が答えていた。

だけど時の翁? それは誰だ?

 

「そして、私が会いたかったからよ、今世の英雄に」

 

次いで俺の耳に入った台詞に、俺は露骨に顔を顰める。

英雄だって? 俺はそんなに格の高い存在じゃない。あのアーチャーがそうだったように、世界の掃除屋たる守護者になれる可能性しかない。

 

「俺は、英雄なんて存在じゃない」

「そうかしら、世界の犬」

 

世界の犬、その言葉に俺の顔は無意識に強張っていた。

 

「音に聞こえしお前の呼び名。魔術師殺し、剣製の魔術使い、どれもお前の事を指し、それなのにお前の中心から外れている」

「…………」

「ねぇそうでしょう、正義の味方」

 

その呼び名で、俺を、呼ぶな……。

 

「届きもしない理想を追い、届く事すらないと分かっていながら尚歩み、人が手にするには過ぎた力を持つ者。それを英雄と呼ばずなんて呼ぶのかしら?」

「……お前は、何者だ?」

 

今更になって深く疑問が浮かび上がった。目の前にいるそれらは、人を遥かに超え、凡百の人外すら及ばない、それは一目見た時に肌で分かった。だがその中心に居るコレは一体なんだ……。

 

……白翼公、少女の姿をした目の前に居る何かはそう言った。それと対を成す勢力なんて一つしかない。埋葬機関に属しているあの人は教えてくれた。白翼公トラフィム・オーテンロッゼ、形式上の死徒二十七祖の代表、そんなのと対立している一派なんて一つだけだ。

 

「まさか、死徒の吸血姫、なのか……」

 

それしか考えられない。実質的な死徒二十七祖の頂点、真祖と死徒の混血の吸血姫、知っているのはそのぐらいだが、それでもその存在の規格外さがよく分かる。

 

「そう、私の名はアルトルージュ、アルトルージュ・ブリュンスタッド。血と契約の支配者と呼ばれる者」

「……どうして、どうしてそんな存在が俺に?」

 

分からない。決して少なくない死徒を屠ってきた自負はあるが、それが関係するような事柄でもない。どうしてなんだ……。

 

玉座から音も無く立ち上がる、アルトルージュ・ブリュンスタッド。

アルトルージュはそのまま優雅に血の様に赤い絨毯の上を歩き、俺は気圧される様に無意識に膝を突いていた。

 

「どうして? 私は言ったはず、今の世の英雄に会いたかったからと」

 

だが、その言葉は俺には到底信じられない。何故俺のような人間に。

血に濡れたような瞳で俺の奥底を覗きこみ、その白磁の手がそっと俺の頬を撫でる。

 

「だから、連れて来て貰ったの。ねぇ、万華鏡」

 

アルトルージュの視線が俺から外れると共に、俺ははっとして勢い良く振り向く。そこには大柄な老紳士が悠然と立っていた。何時その場に来たのか、俺にはまったく存在が掴めずに。

 

――いや、待てこの老人は見覚えがある。そう、それは気を失う直前の記憶。

 

「あ……」

 

俺は頭を押さえた。今の俺には処理しきれない何かが溢れ――。俺は思考を無理やり閉じた。

 

「ふむ、やはりそう簡単にはいかないものか」

 

頭を押さえる俺に、この老人はさもありなんと頷いてみせた。

 

「何をさせたの万華鏡」

「ワシの宝石剣を投影させた。不完全とはいえなかなかのものよ」

「よく持ったものね。貴方の弟子に贈られるものは成功か破滅、この人間は最初の門を潜る事ができたという事、まだ先があるのね」

 

どこか呆れたように息を吐くアルトルージュ。

でも、宝石剣? それは聞いた事がある。宝石を刀身とした第二魔法の能力を持つ限定魔術礼装。その持ち主は――。

 

「キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ! 遠坂の師父がなんで俺になんかに」

 

魔道元帥と呼ばれる第二魔法の使い手。そんな人が俺に何の用があるっていうんだ。

 

「遠坂? また懐かしい名が聞けたのう。だがアレより貴様の方がまだ見込みが在る」

 

遠坂より見込みがある? ……それは何の話だ?

俺の怪訝な様子に気がついたのか、軽く頷いてゼルレッチはふむと頷き俺へと視線を向ける。

 

「何、お主をワシの弟子にする事に決めたのだ。剣製の魔術師」

「何だって……」

 

魔法使いが、俺を弟子に? それは何て笑えない冗談。

 

「冗談はやめてくれ。俺にそんな才能は無い。遠坂のとこにでも行ってやればいいだろう」

 

遠坂なら直接ゼルレッチから教えを請えば、きっと第二魔法に手を届かす事ができるはずだ。遠坂凛という女性はそういう人な筈だから。

 

興味無さそうに、いやそもそも俺の話をまともに取り合っていない雰囲気がする。

 

「剣製の魔術師、話半分で聞いていたが、なかなかどうして噂というもんも侮れん。お主は数瞬とは言えこの宝石剣を投影して見せたのだ。ならばお主を弟子にしようというものよ」

 

俺が宝石剣を? いや、そんな事はどうでもいい。

 

「だから、どうして俺なんだ!」

「ふむ、ワシが気に入った。言ってみればそんな理由じゃよ」

「なっ!」

 

それは何て傲慢。俺は二の句が継げなかった。

 

「そろそろ場所を移してくれないかしら、万華鏡」

 

完全に傍観者となりつつあった城主のアルトルージュが、怜悧な言葉を吐く。だが、ゼルレッチはどこか不機嫌そうなアルトルージュに臆した事も無く、鷹揚に頷いた。

 

「ふむ、このような場所で話す事でもなかろう」

 

ついて来いという意味なのだろうか、背を向けてゆっくりと歩き始めた。俺も後に続くようにその歩調に合わせ歩き出そうとした時、アルトルージュから声を掛けられた。

 

「話の腰を折られた形となりましたが、又後ほど話をしましょう」

 

話を、か……。アルトルージュもゼルレッチもいったい何を考えているのか俺にはまったく理解できない。俺なんかに何を望もうというんだ。

 

「…………」

 

数秒だけアルトルージュと視線を合わすと、俺は返答をせずに踵を返してゼルレッチを追った。

 

城の庭園、暗い空を見上げていたゼルレッチは俺が来た事に気がついたのか、ゆっくりと振り向く。

 

「ようやく来たか」

 

警戒を込め、俺は間合いを開けて足を止めた。

 

「俺を弟子にするって本気なのか?」

「ああ、無論だとも」

 

もう決めたとばかりに大きく頷くゼルレッチ。意思を曲げようとしないその様子に、俺は顔を顰めるしかなかった。

 

「……俺が宝石剣を投影できたってのは本当なのか?」

「お主は覚えとらんのか?」

 

ふむと考えるように頷いて、ローブからまるで鈍器のような剣を出す。それが宝石剣。

無意識の内に解析しようとして、俺は割れそうになる頭を押さえた。

 

「――ッ」

 

俺は無理やり思考を閉じて解析を拒絶する。……これは人が手を伸ばすには過ぎた代物。本当に俺が投影できたのか?

 

「問答はこれぐらいにして返答を聞こうか」

「……俺には、やらなければならない事がある」

 

そう、そうだ俺はしなければならないんだ。安穏と魔術を学ぶ為に俺は存在しているのではない。そうだろう衛宮士郎。

自分に言い聞かせるように、内に向けるように俺は言葉を持つ。

 

「ふ、む……」

 

ゼルレッチは俺の言葉に何を感じたのか、鬣のような髭を撫でて物思いに耽る。

 

「聞こうではないか剣製の魔術師。やらなければならぬ事とはなんだ?」

「……それは」

「言えぬ事なのか?」

「…………」

 

……言えない事、ではない。

 

「俺は、人を救いたい、俺は人を助けたい。救おうとして、絶えず零れ落ちてしまう人無く。誰かが何かを救う為に零れ落ちる人を」

 

俺はそういうモノだ。正義の味方、なんて名乗る事はもう既に出来なくなっている。俺に残されている物なんて、そんな物でしかない。人を救おうと足掻く現象。

 

――シロウは■せになっていいんだよ?

 

一瞬眩暈を覚えて足元が、意識がふらつく。思考にノイズが走って、俺は何を……。

 

「エミヤシロウ」

 

頭を軽く抱えて、半眼で呼ばれた先へと視線を向ける。何だと答える前に砲弾のような拳が飛んできていた。

即座に腕を交差させて直撃を防げたのは偶然としか言いようが無い。偶然としか言いようが無かったが、俺は無様に体ごと飛ばされていた。

 

「――ッ」

 

壁に叩き付けられて一瞬息が止まり、俺は激しく咳き込む。そのまま壁伝いに崩れ落ち、無様に膝を突く自分。

 

「頑固だなお主、だが面白い。まあ、最初から腕力でどうにかしようとは思っとらん」

 

なら、どうして殴った! そう叫びたかったが咽たまま声が出せず、ただ睨む。

かっかっかっと愉快そうに笑って、一歩一歩と立てない俺の元に近づいてくる。

 

「――連れてってやろう」

 

俺を見下ろしながらゼルレッチは言った。

 

「な、に?」

 

鬣のような髭をなぞり、いい考えが浮かんだとばかりに二度三度と頷く。でも俺にはこの爺さんが何を考えているのか理解できない。

 

「連れて行ってやろうというのだ。お主の敵の前に、お主の救える者の前に」

「ッ!」

 

それは……。

 

「お主がそれを成すと言うのなら構わん、好きにすればよかろう。だがそれ以外の時間を使わせてもらうぞ」

「…………」

 

そう、何を拒絶する必要がある。俺は人を救う、そういう物の筈だ。救うべき人の下へと導いてくれると言うのなら俺は肯定するべきだ。俺の手は小さい、どうしようもなく小さい。だからこそ俺は効率的でなければいけない。そこに俺の意思なんていらない。

なら、答えは――。

 

「…………」

「どうするのだ?」

「…………ああ、分かったよ。俺はあんたについて行く」

 

俺の返答に豪奢に笑うゼルレッチ、だが俺の表情は晴れる事はなかった。

これで、良かったんだよな……。

 

「ふむ、お主は何処までいけるのだろうな」

 

ゼルレッチ、俺の師父となった魔法使いは感慨深そうに呟き、その言葉は俺の耳に残った。

俺の行く末なんて分からない。アーチャーの様に世界と契約するのか、誰もいない場所でのたれ死ぬのか、それとも別な何かがあるというのだろうか……。ただ分かる事は一つ、俺に魔法を教えようとする事なんて無謀なだけだと。

 

赤い月を眼下に常夜の城の庭園にて、俺は言葉を交わす。

目の前に置かれた琥珀色の紅茶、対面に座る大人の姿をした死徒の姫、アルトルージュ・ブリュンスタッド。そこには黒騎士も白騎士も、あの白い獣すらも居ない、二人っきりの逢瀬。

 

俺の師父となった爺さんは言っていた、アルトルージュに俺を会わせる約束をしただけだと。俺にはこの吸血姫が俺に会おうとする理由が分からない。それでも俺は今こうして顔をあわせている。

 

慣用的な挨拶を交わした後、俺の何が楽しいのか一挙手一投足を眺めて楽しそうに微笑むアルトルージュ。そして間を置いて開かれた口から出た言葉に、俺は自分自身でもはっきりと分かるほど顔を顰めていた。

 

「俺が、死徒にだって?」

「ええ、そうよ」

 

優雅に、そして飲み込むように、紅い目が俺を穿つ。

 

「人間は100年すらも十分に生きる事が出来ない。自分の思うがままに体を行使できる時間など更に少ない。それ故に幾多の魔術師が自身の望むものの為、人の身を捨ててきた事でしょうか」

 

謳う様に、笑う様に言葉を紡ぐ吸血姫。

 

「世界の犬よ、お前は人の身などに拘らぬ筈。意思を持たぬ、真の意味で犬となるか、自己の意思を持つヒトとして残るか、その二択」

 

目の前の吸血姫はそれしかないと鷹揚に言い切った。

道、俺の進もうとするこの先の道……。

 

「でも、俺は、俺は自らが人を脅かす存在になんて――」

「ならば、耐えなさい。人を守ろうというのなら、なおさら耐え続けよ、さすれば問題は無いはず」

「…………」

 

そう、それはきっと正しい。もし本当に自己の意思でやり通そうというのなら、人の身ではきっと足りない。それでも、それでも……。

 

「我侭ね」

 

答えが出ない俺に、アルトルージュは小さく笑う。

 

「人はお前が思っておるほど弱くは無い」

「……え?」

 

俺の何が可笑しいのか微笑を持ったまま喋り続ける。

 

「ヒトは必ず生き残る。たとえ星が死滅しようと姿を変えようとも、因子は必ず残るでしょう。霊長の抑止力は残る、きっと先に消えてしまうのは星の抑止力。それはきっと何時か起こりうる未来」

「……何が言いたい?」

「別に何も?」

 

くすくすくすと、童女のように笑う吸血姫。

俺は胸にしこりを感じたまま、気持ちを落ち着かせるために一度大きく息を吸って、静かに吐く。

 

「俺はさ、俺は零れ落ちる個を救いたいんだ」

 

あの焼け爛れた街で俺が救われたように、俺もまた誰かを……。

 

「人は生きて、そして死ぬ。その絶対の理を否定しようというの?」

「そうじゃない、そうじゃないんだ」

 

人は生きて死ぬ、それは分かっている。許せないのは不条理な死。

 

「私たちという人に対する厄災が無くなっても、自らその過ちに手を出すのが人間というものよ」

 

分かるでしょうと、口に出さずアルトルージュは俺に問うが、俺は頷く事も否定することも出来なかった。

 

「許容は出来ないというの? いえ、許容することが出来るなら今のお前は存在していない。人の身である事を弁えなさい人間。何をしてもこの世界は変わらない」

 

辛辣なアルトルージュの言葉。

 

「……俺だって分かっている。例え俺がどれだけの人を救っても、どれだけの悪意を討ったとしても、世界は変わる事無く回り続ける。それでも目の前で理不尽な目に遭わされている人がいれば助けなければならないじゃないか」

 

違う、そんなんじゃない。なんて自分すら騙せない空っぽな言い訳。

 

「……いや、全て言い訳にしか過ぎないか。俺はそういうものでしかないんだよ。無謀だろうと傲慢だろうと、世界が変わらなくても、それを為さなければならないただのモノ」

 

アルトルージュは静かに紅茶を口に運び、不思議そうに俺の瞳を覗きこむ。

 

「そう、お前はそういう存在。でも、今何かを迷っている」

 

迷っている、そうだ俺は答えを得られないままこうしている。親父、衛宮切嗣も切り捨てる事を選んだエミヤシロウも引けない物があった、少し前の俺もそうだったはず。……今の俺には、どうしてかそれが無い。

 

「いいえ、違うわ。人の子よ、貴方の迷いはそんな事ではないはず」

「?」

 

まるで俺の知らない心の内を眺めたとでも言いたげな、アルトルージュの言葉。俺は顔を上げて怪訝な視線で問う、何の事だと。

 

「もっと別のことで迷っている。世界の犬、お前はもっと苛烈で熾烈な存在だったはず。今のお前は何だ? 何を考えないようにしている?」

「何を――」

 

言っているんだって言葉を続けようとしたがそれは敵わなかった。

 

――■■■が■った■、もし■■■の■に■■■■が■■たなら、それは■■■の■の■■■がいた■■。もしそれがね、■■■の■で■■かったら■■■はいつかきっと■ず■■になれるよ。■■■は知らないだけ、気づかないだけ、でもそれは全部■■■の中にあるんだよ? だからね、そこに■■■じゃない■■を入れて、■■■に■せになって欲しいんだ。これが■■■の■■、■■■が生きて■■■ちゃんのことを■えててくるなら絶対に忘れることの出来ない■■、■■■が■せになれる■い、■■■の■がけの■いなんだからね。■■■は■■■が■せになって欲しいから、このたった一つの■を賭けるんだ。だから、だからね、■■■だけの■■な人を見つけて。■■■は絶対に■せになんないと■■なんだからね。■■■ちゃんはもう■■■■■■けど、■■■が■せになってくれるならいい。少なくとも■■■と一緒にいてくれなかった分の■■■の■せと、もし■■■と一緒に■■■■分の■せぐらいには■せにならないと■■なんだからね――

 

「――ッ!」

 

それは記憶の洪水、それは俺の意識を焼く。

 

――でもね、でもね、ホントはおねえちゃんだけの味方になって欲しかったんだよ?

 

「あ、ああ……イ、リヤ」

 

無意識的に俺の思考から除外してきた事柄。それが俺を――。

 

「お前は人だったか」

 

アルトルージュ・ブリュンスタッドの言葉が、俺の揺らいでいた意識を辛うじて纏める。その声色は諦めのようで、慰めのようで。

 

「……何を、した?」

 

まるで雪のように白い細い指が俺の頬へと伸びる。

 

「…………」

 

そこで気づいた、俺の頬を伝う一条の涙。

 

「前言を撤回しよう。お前は人として死ぬか、死徒と成り人の心を持ったまま生きるのが相応しい」

 

すっと立ち上がりその小さな手の平が俺の目の前に差し出された。それが何を意味するのか一瞬分からなかったが、俺は彼女の手を取って立ち上がる。

 

「もう話は終わり、この逢瀬の時間はまもなく閉じる」

 

アルトルージュは目を伏せて俺の手を引いて歩き出す。

 

「ちょっと待て……」

 

俺の言葉がまるで聞こえなかったように俺の意志に構わず、ただ淡々と扉へと向かうアルトルージュ。そして俺の手を引き、背を向けたまま口を開いた。

 

「もし人の身に限界を感じ、その先を自己の意思を持って生きたいというのなら、私の元を訪ねなさい」

「俺は……」

 

未だに明確な答えを出せない俺に、アルトルージュはくすりと笑って振り向き手を放した。顔を上げればもうそこは庭園の出口。

 

「血と契約の支配者の名においてここに契約を。貴方が意思を持って人の身を止めるというのなら私は力を貸しましょう。死徒という力に心を侵されるか、それとも尚人の心を保つのか、それは貴方しだい」

「…………」

「私はその時を楽しみにしていますわ、エミヤシロウ」

 

身を、黒いドレスを翻し、いつの間に来ていた白い獣を従えて城内へと消えていく。

 

「その時を、か……」

 

初めて俺の名を呼んだという事に気づいたのは、その背が完全に消えてからだった。

 

黒い城で一晩を過ごした別れの朝。アルトルージュと軽く言葉を交わし、俺はキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ――師父と共に世界の何処にあるとも分からない吸血姫の常夜の城から姿を消した。

 

魔道元帥、宝石翁の弟子になってから、夜から夜へと渡り歩くようになった。

師父は俺の特性、というより魔術の力量を正確に知っても豪快に笑っていた。放り出すなら今だという俺の言葉にも動じずに。ある破壊に特化した魔法使いの事を俺に話して、弄りがいがあると面白そうに笑っていた。

 

知識を得る事は出来たが、魔術の行使はほぼ絶望的。俺が奮闘ではなく師父が試行錯誤をするというスタンスで、何時の間にか魔術の教授というより、俺という魔術回路を使って様々な事を試行するといった方へと流れて行った。

 

師父は魔術の教授だけではなく、俺との約束を守り俺の戦うべき場所へと導いてくれた。右も左もわからず、ただ状況に放り出される事が大半であったけど。

 

俺は剣となって宝具を振るった。目の前の状況を打破する為に、目の前の人たちを救う為に。1%しかその先に勝利が無くとも、その1%を何が何でも手繰り寄せる、そこに余分な思考はなかった。それはまったく変わらない、今までの俺と。

 

もしかしたら、それは俺の元々居た世界ではなく、並行世界と言うものだったのかも知れない。俺に分かる事は一つ、目の前にある状況は決して見逃せなかったという事だけ。

そんな日常を過ごし、ふとした瞬間に色々と考えるようになった。

 

アルトルージュは言っていた。キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグは悪に義憤し、善を笑うものだと。

 

「正義とはなんだ?」

 

ゼルレッチの爺さんは世間話でもするようにぽつりと漏らしたその言葉。

俺は返答に詰まるが、何とか形にして口に乗せる。

 

「……結果、誰かが幸せになる事だ」

「違う。正義というもんは所詮他者が観測する事でしか成り立たん」

「…………」

「画一的な正義なんてものは何処を探してもあるものではないぞ。たとえ願望機に願ったとしてもな」

 

勧善懲悪な世界、画一的な正義なんてものがこの世にあるならもっと単純だったのかもしれない、でもそれは単なる思考停止と同じ。

 

……俺は迷って悩んで、答えを探そうとしているのだろうか? 思考停止をしていないのか? そんな事すら俺には明確に答える事が出来ない。

 

「昔、ワシは朱い月と戦った事がある」

 

顔を伏せ、眉を顰める俺をどう思ったのか、遠い昔を思い出すようにゼルレッチの爺さんは口を開いていた。

 

「朱い月?」

 

それはなんだったか。何かの話の合間に聞いた逸話。そう確か霊長、星のその両方の抑止力が敵とみなす、文字通り世界の敵。それは正しく伝説。

 

「……確か爺さんが死徒になった元凶の?」

「気に食わなかった、ただそれだけだ」

 

ふんと鼻を鳴らし、爺さんは端的に答える。

それで話は終わったが、俺には思わせるものが確かにあった。

 

ゼルレッチの爺さんの怒り、それは正しい怒り。

誰かを救おうとは思わない、自分の意に沿うことしかしない独善的な行動ともいえるけど、それでも正しい事を成している。

それは俺には決して無いものだった。

 

師父に拾われて一年が過ぎた頃、それは俺を無理やり弟子にした時のように唐突だった。

 

「……今、何て?」

「ふむ、聞いておらんかったのか? もう一度言うから聞き逃さぬようにな」

 

鬣の様な髭を撫で、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグは俺に告げる。

 

「シロウ、もうお主は自由だ。何処へなりとも行くがよい」

「…………」

 

一人立ち……いや、どちらかと言うと破門? いや、それ以前にろくに魔法の片鱗どころか魔術すら俺はまともに行使する事はなかった。意味的に見限られたと言った方が正しいのだろうか?

 

「……そっか、分かった」

 

俺は何も聞かず、ただ頷いた。愉快な爺さん、俺は決して嫌いじゃなかった。

 

「見込みがあると思ったのだがな。お主は他の者が容易に近づけない領域まで一足抜きに近づき、それ以降がどうしても続かなかったな」

「俺は何処まで行っても剣を作るしか能がないからさ」

 

ゼルレッチの爺さんは俺の言葉にくっと笑う。

 

「お主は今まで弟子にした中で一番見込みがなかったが、一番楽しめた弟子だったぞ。お主の行く末を見守っている。それではな、バカ弟子」

「ああ、元気でな爺さん」

 

豪快な笑みを浮かべて、一瞬にして消えていった。

最後まで豪奢で格好いい爺さんだったな。

 

月明かりの下、誰も何も無い草原に一人取り残された俺は、全身の力を抜いて無防備に体を草原に投げ出した。

俺は煌々と夜を照らす月を見上げて今までの事、これからの事を思う。

 

俺ができる事といえば剣を作る事、それは今も昔もこれからも変わらない事実。人を救い続けていた、それは程度の差こそあれこれからもきっと変わらない事。

 

この一年ゼルレッチの爺さんと一緒にいて、……いや違うな。イリヤが死んで、俺に呪いをかけた。俺は変わったのだろうか? それは分からない、それでもただ少しだけ落ち着けた気はする。

 

俺は逃れる事も、捨てる事も出来ない、いやしようとしない二つの罪がある。

あの燃えた赤い世界で俺だけが生き残った罪。

人を救い続ける事が俺の命題。

 

イリヤを、俺は一番守らなければならない人を、一番大切だと気づかされた人を何も出来ずに死なせてしまった罪。

俺は幸せにならなければならない、それはイリヤが命を賭して俺に与えた命題。

 

その二つの罪は相反する命題を俺に課す。未だに俺は明確に答えられる答えを持たない。いや、それ以前に俺に幸せというものを手にしていいのかずっと迷っている。俺は思っている、幸せになる事なんて許されないって……。

 

纏まらない思考、その時淡い色の花びらが俺の視界を横切った。

流れてきたその花びらを手に取る。

 

「桜の、花? 桜があるって事は……」

 

俺はまさかと思って立ち上がり、風が吹く方へと歩みを進める。

開けた視界の先には、月明かりの下、趣のある桜並木。

 

そこで確信した、何処の地域か分からないが、ここは確かに日本なのだと。

ならこれから向かう場所はただ一つだ。

 

俺は思い立って直ぐに行動していた。そして今こうして冬木の土地を踏んでいる。

一年前、俺は冬木から一人で消えた。まるで少しの散歩に出るかのように、この身一つで。

 

それが間違っていたのか、正しかったのか今ですら答えは出ない。

だがあの時の俺は、確かに親しい人とは居られなかった、居る意思なんてなかった。きっと意味もなく傷つけてしまう、そういう確信だけは無意識に持っていた。

 

俺は新都からゆっくりと歩を進め、一年前じっくりと見ることが出来なかった町並みを改めて見る。

冬木大橋、新都と深山町を結ぶ橋。

そのまま上へ上へと登るように俺は進む。

それは何時か一緒に歩いた道。

 

柳洞寺の長い石段を時間をかけてゆっくりと上がる。

俺が目指すのは本堂の裏の裏参道へと。

 

「衛宮、か?」

 

柳洞寺の本堂を横切って行く時、ふと声をかけられて振り向くとそこには懐かしい顔があった。

 

「一成か……」

 

一成は俺を見て一瞬だけ驚いた顔をするが、直ぐに笑みを浮かべて近づいてくる。

 

「久しいな、切嗣殿とイリヤ殿の墓参りか?」

「みたいなもの、かな」

 

あの時俺が消えてどうなったかなんて予想に難くない、いやきっと俺が思う以上に荒れていたのかもしれない。それでも一成は何も聞かず、ただ俺を迎えてくれた、それはとてもありがたい事だ。

 

春の風を受けながら俺は一成と共に裏参道を歩く、そして俺は目的の場所へと辿り着いた。でもそこには一人の先客。

 

「セラ殿、今日も精が出ますな」

 

イリヤと切嗣の墓前、白いアインツベルンのメイド服に身を包んだセラが一成の言葉で顔を上げる。一瞬の視線の交差。セラは俺の姿を認めると一瞬だけ眉を顰めた、でもそれだけだった。

 

「いえ、これが私の務めですから」

「そうですか。衛宮も居る事ですし経を一つ――」

 

一成は数珠を鳴らし、経を唱え始める。

俺とセラは互いに無言で、ただただ一成の背中と墓を見ていた。

 

「それでは衛宮、僕は本堂にいる。何かあったら遠慮なく声をかけてくれ」

「ああ、分かった。ありがとな一成」

 

俺の言葉に、一成はなんでもないと超然とした笑みを浮かべながら去っていった。どこか兄の零観さんに似てきたのかもしれない。

 

俺は背後にセラの視線を感じながら、イリヤと切嗣の墓前にしゃがみ手を合わせる。

 

「親父、俺は正義の味方に成れなかったよ、親父の言う通り正義の味方は期間限定なのかも知れないな。……俺は一度は守るべき人を見つけた、イリヤ、イリヤスフィール、親父の実の娘だよ。もし親父が生きてそれを知ったらなんて言っただろうな。喜ぶか、それとも俺の娘はやらないと怒るだろうか。……でもさ、俺はイリヤを守る事は出来なかった。俺の手からすり抜けて……いや、これは言い訳に過ぎない。もう俺は弁解する事を許されない、俺はただ守らなければならない、救わなければならない。それは全ての人なのか、たった一人の大切な人なのか今の俺には答えられない」

 

俯いていた顔を上げて、視線を真っ直ぐと向ける。

 

「イリヤ、ゴメンな。俺は無意識的にイリヤの事を考えないようにしていた時もあった。でもイリヤの事を完全に忘れる事なんて出来ない。今でも鮮明に覚えている、あの綺麗な雪の日、イリヤが言った言葉たちを。

イリヤの呪いは俺に確実に効果を現せているよ。何処までも一直線に行こうとする俺の歯止めで、転機の一つ。そして俺は色々な事を考えるようになったよ。

今でも答えは出ない、俺は幸せになっていいのかって、なれるのかって。今現在の俺は幸せを甘受する事は出来ない。それがこれから変わっていくのか、先の事は分からない。俺みたいな人間にもう一度一番大切だと思える人が出来るなんて分からない。俺はこれからも誰かを救い続ける、俺はそうやって進む事しか知らないから、でもさ何時しかイリヤが望む答えを持てたらいいなって思うよ」

 

俺は一度目を閉じて立ち上がった。

 

「……また来るよ、イリヤ、親父」

 

俺はもう一度だけ墓前に手を合わせ、黙祷を捧げる。黙祷を終え、ゆっくりと振り向くとセラと目が合った。

 

「セラはいいのか?」

「……はい、私の用事は全て終えてますので」

 

俺は恥ずかしいものを見せてしまったと苦笑いを浮かべるが、セラは何時ものようにただ淡々と頷いただけだった。一瞬セラの無表情の中で瞳が感情に揺れていたような気がしたけど、それはきっと俺の勘違いだろう。

 

「それではエミヤ、家へと帰りましょう」

「ああ、分かった」

 

一年ぶりの衛宮の家。いや、あの時は碌にいなかったから実質六年ぶりだ。

セラが作ったのだろう、庭には花壇が増えていたのが目に付いて足を止めた。季節は春、きっともう直ぐ色とりどりな花を咲かせるのだろう。その風景を見ながらイリヤと交わした一つの会話を思い出した。

 

「そういえば、イリヤが話してくれたな」

「…………」

 

セラは無言で俺に話の続きを促す、それはどこかそわそわとした空気があって。そんなセラに俺は苦笑いを浮かべ、懐かしいあの時を思い浮かべる。

アインツベルン城の中庭でイリヤとの会話。願いを刻んだ記念碑の事に話が飛んだ時、セラに睨まれたりもした。

 

「イリヤは言ってたよ。セラは“生あるものは原色のままが一番幸せだ”とか言うってさ」

 

それはとっても懐かしい会話、いままで忘れていたイリヤとのなんでもない会話。

 

「……笑えるのですね」

「え?」

 

俺が笑う?

 

「とても自然な笑みでしたよ」

「……そうか」

 

自然な笑み、か。イリヤと切嗣に今一度向き合って、俺は少し変われたのだろうか?

 

「?」

「……どうかしましたか?」

 

俺の視線の先には怪訝な表情を浮かべるセラの顔。

一瞬セラが柔らかい笑みを浮かべていたように見えたが、それは気のせいだったのだろうか。

 

「今まで何を?」

「ある人とずっと一緒にいた。無理やりその人の弟子にされたけど基本的にやる事は同じだった、何時もどこかの戦場で誰を救おうとしていたよ。俺にはそれしか出来る事がないから」

 

別れてしまったのはつい数日前。それなのに今の俺にはとても長い時間が経ったような感じがする。

 

「……エミヤはカティ・リリエを、あなたの従者を迎えに行かないのですか?」

 

カティか……。

 

「俺は、カティを迎えに行っていいのか分からない」

「…………」

「世界を渡り歩いていた時、一度カティに言ったんだ。俺の行く先にカティの未来は無いって、だから俺とは、……いやこれは言い訳だな。俺は、俺はさ、まだ他人と居るのが怖いのかもしれない。

俺は人を救う事だけが全てだった。そんな俺にイリヤは一つの道を開いてくれた。でもその代償がイリヤの命、イリヤの幸せ。

だからイリヤのように俺を強く想ってくれているカティと共に居る事は、同じように命を、幸せを投げ出させてしまいそうで、特にさ怖いんだ」

 

「エミヤ様、主に心から仕えた立場から言わせてもらえば、それは傲慢と言うものです」

 

魔術の師弟となってから俺を常に呼び捨てにしてきたセラが俺を様付けで呼ぶ。それは従者としての言葉。

 

「……傲慢、か」

「はい。私たち従者は主の為だけに生きる。それは誇張でもなんでもなく、それが存在理由、生きる目的なのです。……お嬢様は逝ってしまわれた。でも私はここを頼まれました。だからこそ、今こうして私はここに在るのです」

 

セラはそっと瞳を閉じ、胸に手を置き、再びゆっくりと瞳を開く。

 

「主として決めなさい。あなたの従者であるカティ・リリエを捨て置くか、共に連れて行くか。決定を下すのは主であるエミヤ様だけ、主であるからこその義務なのですから」

「……主だからこそ、か」

「はい」

 

俺はセラの言葉を受けて言葉を返す事が出来ないまま、二人で衛宮の屋敷の玄関を潜った。

 

夜の土蔵、夕食をとってから俺は一人ですっと工房の中で座っていた。

 

夕食はセラの作った和食だった。まだイリヤが居て、遠坂がいて、俺がまだこの冬木に残っていた頃はセラ、和食が苦手だったのに随分と上達していたな。俺の「美味しい」って言った言葉にも、「悔しいですが、まだエミヤ程には作れません」なんて言いながら、その表情は小さな笑みを浮かべたものだった。

 

片づけを手伝うと言った俺だったが、結局セラに追い出されるようにして居間を出てしまった。だが、今までセラと会話を交わしてきた中で今日ほどわだかまりもなく話せたのは初めてだったような気がする。

 

「これからどうするか……」

 

ずっとあの爺さんに引きずられてきた。

別れたのはほんの数日前だというのに、あの何処か豪快な師匠の事を懐かしく思う。

 

ゼルレッチの爺さんと会わなければ、俺はどうなっていたのだろうか……。きっと今ほど前向きな思考は出来なくて、イリヤとの約束もきっと破っていた。

今の俺はイリヤとの約束を守れているなんて言えない、全てはこれからなのだろうか。

 

ゼルレッチの爺さんなら、自身の思うがままに道を開くだろう。

 

――今のシロウなら投影できるだろう。

 

別れの数日前、あの爺さんはそう言っていた。

ならばこれは一つの節目だ、成功だろうが失敗だろうが構わない。

 

 

「――投影開始」

 

 

さあ、ここに幻想を生み出そう。

未来なんて分からない、数瞬先ですら俺はきっと分からないだろう。

それでも、俺はイリヤの想い、切嗣の想い、その二つを持って進まなければならない……いや、進もうと思う。

 

 

俺は一つの決意と共に宝石剣を――。

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