幼馴染みと目指す冒険の旅【新しい天賦が目覚めたので、無双します】   作:なりちかてる

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第11話 明日への扉

 ぼくは、”屠るもの”の柄を握りこみ、突きを放った。

 グリューンさまは、それを余裕で回避していく。

 

 ——余裕?

 そうだろうか。

 

 最初から比べると、体の動きにキレはあるものの、表情に真剣さが増しているように感じられる。

 そうでないと、ぼくの攻撃をかわせないぐらいまで、ぼくの技量もあがっているのかもしれない。

 

 だんだんと、ぼくもグリューンさまの癖みたいなものも、わかってきていた。

 例えば——単調な攻撃は二回まで、とか。

 ジャンプしての攻撃の前は、ぼくの足元を狙ってくる、とか。

 または、斧刃での強撃の前には、草色の髪の前髪の部分が左右に動く、とかね。

 

 そうした癖の内容をどんどん、積み上げていって、ぼく——というか、ぼくと”屠るもの”で、グリューンさまの攻撃への糸口を少しずつ、開いていった。

 

 二度、三度とぼくは連続して、突きを食らわせる。

 ——ここで、足払いが来る……。

 

 と思っていると、本当にグリューンさまは足払いをしてきた。

 これは癖、ということではなく、”屠るもの”が伝えてきたのだ。

 

 魔力結合、というものがどういうものなのか、ぼくにはわからないけど、言葉ではなく、イメージが直接、胸に浮かぶことがある。

 それに従い、ぼくは短く、ジャンプをした。

 グリューンさまが、緋色の瞳を見開く。

 

 ぼくは、唇の端をほんのちょっと持ち上げ、そして、”屠るもの”を床に突き立て、宙返りをする。

 縦に体が回転する。

 視界で天地がひっくり返るが、”屠るもの”の合図で、槍の柄を振り下ろす。

 

 がっき、と手応えがあり、金属音が響いた。

 ふたつの槍が激突するのは、久しぶりのことだろう。

 

 というか、最初にぼくがグリューンさまの”鉄扇の意思”の攻撃を受けたきりだから、こちらの攻撃が受けられたのは、はじめてだろう。

 それまで、グリューンさまはぼくの攻撃をすべてかわしてきたのだから。

 

 例外は、先程のぼくが”鉄扇の意思”の穂先に”屠るもの”を絡ませた時ぐらいだろう。

 グリューンさまが、退く。

 距離を取ろうとする。

 

『坊! 一気に決めるぞ。おれを、グリューンめがけて、投げつけろ!』

 体が自然と動いていた。

 疑問に思うこともなく、ぼくは”屠るもの”を頭上に構え、一気に投げつけていた。

 

 ——もしかしたら、”屠るもの”によって体を動かされていたのかもしれない。

 そんなことを思ってしまうぐらい、完璧な投擲だった。

 ”屠るもの”は、炎を穂先から柄の末端まで、身にまといながら、一気にグリューンさま目指して、空中を走り抜けていった。

 

『おりゃあああああ!』

 ”屠るもの”が、空中で震えている。

 場の空気すら、燃え立たせながら、引き裂くように、進んでいく。

 ぎゅるる……という、風を切る音が聞こえてきた。

 

 ——すごい……。

 ぼくは、正直に思った。

 こんな戦い、見たことがない。

 

 どきどきが止まらず、唾を飲み込んだ。

 グリューンさまが、腕を伸ばした。

 炎に包まれた”屠るもの”の柄を掴もうとする。

 

 投げつけられた槍の柄を掴んでしまうだなんて——はじめて見た。

 すごい反射神経だ。

 

 が、”屠るもの”の勢いは止まらない。

 槍は回転しながら、突き進んでいく。

 ふたりの力が激突するが、どう見ても、攻撃に徹している”屠るもの”のほうが、有利だろう。

 

 そして——”屠るもの”が、グリューンさまの肩口に突き刺さった。

 ”屠るもの”は、胸を狙っていたが、逸らされた形だ。

 

「あぁっ!」

 グリューンさまが、妙に艶めいた声を放つ。

 “鉄扇の意思”が床に転がり、グリューンさまの冠も落ちた。

 そして、グリューンさまも、その場に倒れ伏した。

 

 ”屠るもの”は、グリューンさまの肩口の部分の緑色の着衣の部分を紅に染めていた。

 一撃——以上の打撃を与えた、ということになるのだろう。

 

 ”屠るもの”は、炎を吹き消し、そしてまた、ぼくのところに戻ってきた。

『やった! やったぞ、ジンライ。これで、試練は終わりだ。やっと、外の世界へと出られる!』

 本当に嬉しそうな声で、”屠るもの”が叫んだ。

 

「あーあ、やられてしまったぞね。もう少し、戦いを楽しめると思ったのじゃがのぉ……しかし、ここまでの戦いぶりから、坊がいずれ、試練を克服するのは、見えてはいたぞね」

 床に座り込みながら、グリューンさまは言った。

 まっすぐに、ぼくを見上げてくる。

 

 悔しい——という表情のなかに、喜びの感情も含まれているのを、ぼくは感じた。

 ぼくは、グリューンさまに歩み寄ると、手を差しだした。

 

「もう、さまは必要ないぞね。ジンライ、じゃな。これから、よろしく頼むぞえ」

「は……はいっ」

 

 ぼくは、グリューンの手をしっかりと握り、答えた。

 使徒とは言うが、体温はあるようで、彼女の手は暖かかった。

 

 声が聞こえたので、そちらを見ると、アカネとチカが呪性金属の拘束から解かれ、床に四つん這いとなっていた。

 自分がなにをしていたのか、わからない様子で、周囲を見渡している。

 

 グリューンと戦っていたのは、どのくらいの時間なのだろうか。

 もしかしたら、時間は止まっていたのかもしれない、と思いながら、ぼくはふたりに歩み寄っていった。

 

「ジンくん? えっと、なんだか、夢でも見ていた気分なんだけどー」

「ちょっと、どういうことなのかしら。私も、ジンライが女戦士の方と激しい戦いをしている、とってもリアルな夢は見たような気がしますけど。あとで、きっちりと説明して頂かないと」

 

 ——ということは、グリューンが眠っている彼女たちに、ぼくたちの戦いを見せていたのだろうか。

 振り返ると、グリューンはいなくなっていた。

 でも、掌のなかには、”屠るもの”は、残っている。

 

『エーテル・リンケージを確認してみろ』

 ”屠るもの”が、そう言ってきた。

「う、うん」

 

 エーテル・リンケージを開いた。

 電源を入れ、メニューから戦技盤を確認する。

 中央のアセンダントのところのスロットが開いている。

 

 ——天賦だ!

 ようやく、ぼくも天賦に目覚めたのだ。

「やった……やったぁああああ!」

 ぼくは、叫び声を放った。

 

「ねえさん、チカ! やった……ぼく、天賦に目覚めたよ。これで、アリアンフロッドとして認められるよね」

 ぼくはふたりに、グリューンや”屠るもの”について、説明をした。

 アカネとチカは、まだ信じ切っていない顔をしていたが、夢の内容や、ぼくが天賦を得ていることなどで、納得してくれたみたいだ。

 

 もう一度、ぼくはエーテル・リンケージの画面のなかの、戦技盤を見てみる。

 まだ、天賦しかないけど、確かにスロットは開いている。

 それと同時に、新しいスキルもいくつか、獲得していた。

 

 アカネに教えてもらいながら、ぼくはスキルのひとつ、ストレージを開いてみる。

 ストレージは、アリアンフロッド以外の人間も獲得することが可能なスキルだが、それを使うことによって、本当に自分はアリアンフロッドとなったのだ、と実感することが出来た。

 

「わぁ、すごい……本当にストレージが出来ちゃった」

 ぼくは、”屠るもの”も、ストレージにしまおうとしたのだけど、どうすればいいのだろう?

『おれは、天賦の一部だからな。ストレージには収められんよ。槍の穂先に、なんでもいいのだが、被せるものをイメージしてみろや』

 

 ぼくは言われた通りに、“屠るもの”の炎の形をした穂先に、布状のものが被せられるイメージをしてみた。

 すると——手にしていた”屠るもの”が消え、かわりに戦技盤のスロットの色が変わった。

 炎に彩られていたスロットが、ただの丸い円になってしまう。

 

 それでも、スロットには“屠るもの”を手にしているグリューンのアイコンが描かれているので、ぼくが天賦を得ていることは、ひと目でわかる。

「ねぇ、ジンくん。不思議だよねー。クロノスに使徒って、一体、何者なのー。グリューンさんも、ちょっと不思議な人だよね。あ、人じゃないんだっけ」

 

「それは——ぼくにも、わからないよ。一度、学園に戻って聞いてみないとね」

「そうですわね。まだ、塔からの脱出は続くのですし」

 

『それなら、玉座の側を調べてみろや』

 ”屠るもの”が、会話に割り込んできた。

 といっても、アカネとチカには、聞こえないみたいだ。

 

 ぼくは言われた通り、玉座の周りを調べてみた。

 床のところに、魔法陣のようなものがあった。

 

 記号は複雑な模様として描かれていて、床の他の記号に紛れているように描かれているが、白く発光しているので、それが転送用の陣であることがわかった。

「転送陣って、どうも、いい記憶がないのですが……これって、どこに繋がっているのでしょうか」

 チカが当然の疑問を口にした。

 

『この転送陣は、塔の外へと脱出するためのものだ。使徒には機能しないが、お前たちならば、無事、運んでいってくれるはずだ』

 ぼくは、”屠るもの”の説明をふたりにしてあげた。

「そうだねー、ちょっと心配だけど、試してみてもいいかもー。もし、失敗しても、ジンくんと、槍さんがあたしたちを守ってくれるんだよねー」

 

 槍さん、という言葉に、ぼくはくすりと笑いそうになったが、まぁ、天賦も得られたので、少しぐらいは無理をしても、通る自信はあった。

「よし。それじゃまた、手を繋いでみようか」

 ぼくが提案する。

 

『お前たち、仲がいいな』

 ”屠るもの”の皮肉に、ぼくは肩をすくめると、両手を広げて、手を繋いだ。

「じゃ、いくよー」

 アカネが声をかける。

 

 そして、ぼくたちはまた、転送陣へと踏み込んでいった。

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