全ては覚えてない転生者がとりあえず頑張ってみる話   作:Akabane

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第一話

 

私が人生と言うものをもう一度歩んでいると認識しはじめたのは、自身が住まう屋敷にて、兄達の稽古に混ざりながら、父に暗器の握り方から扱い方、白打と呼ばれる体術を習い始めた時であり、明確に悟ったのは幾ばくかして稽古の一環に兄達と組み合い、兄の溝内への蹴りを防ぎ損なった結果、自身の身体が一転二転と床を跳ね最後に稽古場の壁にぶつかった後、これまで父から習ったように、直ぐに飛び起き兄に向かって構えをとった時だった。

 

打撲によるジワリとした痛みが全身に広がり、数えるのが億劫になる数の内出血による熱と、いくつもの擦り傷によるジクジクとする痛みに、蹴りでまともな呼吸が出来ず、頭が茹だり、視界が遠く広く感じ、まるで自分を俯瞰するかのように痛みが乖離する思考。そして走馬灯の様に脳を流れる前世の記憶。

 

 

すぐ近くで怒号を上げる今世の父の声を遠くに聞きながら、兄に組つく。だが、年季の差とも言うべきか、仕掛けた技は尽く捌かれ、打たれ、投げられ、組み敷かれる。

 

そして父の「辞め!」という声と共に技で固められた身体が解放され、兄妹一同、荒い息のまま横並びにて整列する。

 

「本日はこれまで」

 

その声を聞き、礼の掛け声で頭を下げる。

漸く頭の乖離から現実感が戻ってくるのを感じながら、呼吸を整えてゆく。

 

父が道場を去るのを見送った後、汗に濡れた身を手拭いにて拭いていれば「昨日よりも更に技のキレが良かったぞ、梢綾」と兄の一人に後頭部からワシワシとした手つきで撫でられる。

 

ほかの兄達も「あの場面はヒヤヒヤした」だの「あの立て直しは見事だった」などと褒めてくれる。

 

稽古の場では、能面の様に無感情に又は鬼の如き怒気や、怨恨を含むかの様な真剣な表情で恐ろしく向かって来る兄達が、終いになれば温かく優しい笑顔で撫でてくれる。

 

嬉しくもあり、恥ずかしくもあり、誇らしくもあり、子ども扱いするなと僅かな怒りもある。だが、この光景を見れば、私は人の縁と言うものに恵まれているのだと知る。

 

脳裏に流れた前世では、サラリーマンの父、専業主婦の母、上に1人、姉がいた。

父は朝早くから夜遅くまで働く人だったから休日くらいにしかまともに接することはなかった。だが、学び舎でこんな事があった等を語ればニコニコしながら聞いてくれた。

母は日々温かい食事と美味い弁当を用意してくれ、家族皆の衣類を洗い、日が良い時の夜にはお日様の香りがする布団を用意してくれ、口数少ない人ではあったが、抱きしめれば温い人だった

姉とはよく下だらない喧嘩をしたものだ。だが、気が向けば抱きしめてくるし、抱きしめ返し、よく笑い話もした。

そして今生きるこの世界がBLEACHと呼ばれる漫画作品の世界だともわかった。だが、まだまだ朧げに過ぎた。エピソードは全て継ぎ接ぎだらけで、私の生涯すらあやふやだ。

 

今世の父は厳しい人だった。

まだ、言葉の意味すら朧げであった頃から尸魂界にて処刑・暗殺を生業とする蜂家の家訓を言祝ぎ、我ら6人兄妹に技を叩き込む。だが、情のない人ではなく、分からぬことを聞けば、時の合間にはそれを親身に教えてくれ、食事の時には食えぬ訳では無いが好まぬと言う感じに好き嫌いが顔に出る人であった。

 

母もまた厳しく、家を内から支える人であった。

父が扱う装備の大半の管理や家計を預り、礼儀作法に煩く、子らの道着の補修を使用人に任せず、母が自らで縫っていた。食事の献立にも手を加え、それらを美味そうに食す兄妹を見て僅かに笑う人であった。

 

兄らもそれぞれに厳しくも優しい人達であり、時に菓子を分け合い、時に競い、時に叱られ、よく笑った。

 

記憶にある前世の生活と、今ある生活は全くの別物だ。

過酷過ぎるとも感じる。訓練で痛めつけられ、厳しい言葉で叱責もされる。家訓とて意訳すれば強さこそ総てといえるもの。だが、親兄弟の私に注いでくれる愛情を疑う必要はなかったのは、前世の家族が愛情を注ぐ際の顔を知っていたからだろうとも思う。目は口ほどにものを言うと意味をここに来て理解した。

 

 

だが、幾ばくかの年月が去った後に前世では味わうことのなかったであろう己の世界が砕け損失する感覚を知った。

 

長兄と三男が殉職したのだ。

 

蜂家は代々隠密機動に連なる一族だ。その中でも最高位の刑軍に属し、兄達も先達からやっていけるだろうと太鼓判を押され、任務に就いていた。だが、何度目かの任に就いた後に突然訃報が届いた。

私に兄達が受けた任務の内容は知らされてはいない。

知る必要もなければ、意味もない。

 

私を識る者がいるのならば、たかが漫画作品の設定として存在する者が消えただけとも言うのだろう。だが、確かに家族だったのだ。その喜怒哀楽の表情と声を…温もりを知っている。共に食事をとり、共に鍛え、共に寝た。

父から泣くなと言われた。

 

えぇ…わかっています。

そう言った我が声は震えたものだったと思う。

 

歯を食いしばる。だが目頭が熱く、涙が溢れそうになる。だが流しはしない。

 

兄達は隠密機動第一分隊・刑軍に所属する者。

生きていれば、いずれ二番隊も兼任したことだろう。二番隊の隊花は翁草、花言葉は『何も求めない』

 

兄達は決して私の涙など求めはしないのだから。

 

 

葬儀は簡単なものだった。

いや、その言葉ですら、まだ豪華と感じるほど質素粗末なものだった。

 

これまでの月日の流れは、私の身体を確かに成長させてくれている。だが、胸の内に渦巻くこれ以上家族を喪いたくないと言う気持ちを叶えるには、未だに己は若すぎた。

 

大人たちに比べれば、まだまだ荒くムラのある歩法。相手を制圧は出来るだろうが、仕留めるには至らぬ白打。それらを鍛える日々が流れた。

 

そんな折、父からお前がこれから仕え、全てを捧げ奉仕する方を知れと屋敷から連れ出された。

 

頭上にて神輿が横切ってゆく

 

「あれが見えるな。梢綾」

 

父は膝を折り頭を垂れながら私に語りかけた。

 

「あの神輿に乗っておられる方が、天賜兵装番、四楓院家の姫君だ。いずれ刑軍の長となられる御方だ。」

 

四楓院夜一。私は彼女を前世の書物に登場した存在として知っていた。

 

「我々蜂家は、あの御方に総てを捧げるのだ」

 

そして漸く、我が身が誰なのかを思い出した。

 

「今日からお前は…」

 

我が名は

 

ーーー砕蜂ーーー

 

「名を改め、あの御方の為だけに生きるのだ」

 

私は原作の彼女とは余りに違う。

四楓院の姫様に心酔出来るほどの一目惚れは出来なかった。

だが、彼女が神との対峙と評した意味も僅かながらに推し量れ感服出来た。

 

今世で私に定めがあるのなら

 

時が来れば、彼女と違う矮小なる我が身に、大き過ぎるとも思える事変があるのだと思い出せたのなら

 

私に与えられた役目が蜂であるのなら

 

私は家族を尸魂界を夜一様を

護る力を手に入れたい

 

 




見切り発車に加え、誤字脱字のオンパレードです。
文法も目茶苦茶です。
それでも良ければ感想や誤字報告等で
ご指導ください。
中身ペンウッド卿みたいな砕蜂を目指してみたい。
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