主従で鰯と柊 作:ミトコンドリア
【個別導入:柊】
俺は土を掘っている。今日も死体を埋めるために。俺は「教祖様」…カリムを手助けしてやるため、自分にも人へ天罰を下す加護が宿ったとうそぶいては、対象をこの手で殺めてきた。
今日だってそうだ。
こいつらは、ありふれたいじめの、ありふれた加害者だ。
いじめの実行犯である生徒が2人に、それを放置した無責任な担任教師が1人。
たったひとりで3人もの死体を運ぶのは、実に大変だった。ここに埋めた死体も既に10数体を越えている。この先増え続けることを考えると処理方法についても検討し始めなければならないだろう。
そんなことを考えながら、俺は今日も6フィートの墓穴を掘る。
教師の遺体を担ぎ上げたところで、男の持っていたカバンからがさりと包みが零れた。それは包装紙で不恰好に包まれたプレゼントで、端はいくらか血で汚れている。
少し興味が湧き、手袋をした手で触れ、開けてみる。どうせ死んだやつのものだ。日の目を見ることはないのだから少し見てもいいだろう。
中に入っていたのはマフラーだった。デザインからしておそらく女性もののマフラーだ。マフラーのタグには「L.M」のイニシャルが刺繍されている。
渡されるはずだったマフラー。寒さから誰かを守るはずだったそれは、役目を果たすことなく冷たい土の中に眠る。
…心底どうでもいいな。こいつがどんな人物だったかなんて興味はない。あまり帰るのが遅くなるとまずい。早く仕事を終えるとしよう。
[目星失敗]
遺体を埋め終わって一息ついたその時、背後でがさりと木の葉が揺れる音がした。
慌てて振り向くがそこには何もいない。
ただ風というには不自然なまでに揺れる木陰があるだけだ。気のせいだろうか、どこからともなくせせら笑うような声がする。
誰かに、もしくは何かに見られたかもしれない。俺は背筋に汗が伝うのを感じた。
[SAN値チェック失敗、2減少]
影を追いかけることは難しい。間も無く陽が昇る。朝の早い信者たちが目を覚ましてくる。俺は部屋に戻って短い眠りについた。
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【個別導入:鰯】
夢を見ている。これが夢だと、オレは自覚している。オレは1人、夜の教団を歩いていた。
どこまでも澄み切った空気が流れている山頂に訪れる夜は、どこもかしこも静かだ。静寂の中で、大聖堂から誰かの話し声が聞こえる。
どこかで聞いたことのある男の声、一度も聞いたことがない男の声。オレの身体は声に導かれるように、大聖堂へと足を向けた。
両開きの扉を押し開け、中へ立ち入れば、そこには無数の信者が倒れていた。皆一様に笑顔で、皆一様に、首から血を流しながら、絶命している。
立っているのはただ1人、祭壇前でオレを見つめている、もう1人のオレだけ。
血溜まりを踏みしめて、「自分」は立ちすくむオレへと歩み寄ってくる。
その後ろで、血溜まりに沈んだ死体が、ゴム人形のように出鱈目な動きで起き上がった。
「この地に、楽園をもたらそう」
「自分」は、響くような声でそう歌った。
オレの身体をすり抜けた「自分」は、死体の群れを引き連れて外へと歩み出す。ぐんにゃりと骨の柔んだ肉を揺らしながら、裂けた喉笛から下卑た笑い声を零しながら、「自分」を筆頭に、奇妙なパレードは行進を始めた。[SAN値チェック成功、1減少]
オレはそれを追いかけようとした。しかし一歩踏み出した足はまるでぬかるみに取り込まれたように柔んだ床へずぶずぶと沈んだ。
一寸先も視えぬ闇の中へ落ちたオレは、ゴン、という鈍い音と共に後頭部へ鈍い痛みを覚えた。目を開けばそこは自室で、オレはベットから滑り落ちていた。
[HP 1減少]