主従で鰯と柊 作:ミトコンドリア
【本編導入】
「人間の最高の幸福とはなにか?」
「それは、幸せに死ぬことだ」
斃れてゆく男の最後は、笑顔だった。
「私は幸せです。幸せ、でした。」
◆クトゥルフ神話TRPG「鰯と柊」◆
・・・・・・・・・・・・・
朗らかな朝である。寒気に澄んだ青空と、小鳥の鳴き声が山頂に響いた。関東近郊の山頂に建つ宗教団体「拝掌教」。ここが俺達の暮らす世界だ。
2日後には各地で暮らす信者たちが一堂に会す「大拝祭」が迫っており、教団内部は朝からいつもより少しだけ騒がしい。
とはいえ、俺とカリムには相談者たちの話を聞くという大切なお役目があるため、他の業務は左程割り振られておらず、今日もだいたいいつも通りの一日を過ごすことになるだろう。
・6:00信者起床
・7:00教祖起床
・8:00大聖堂でお祈り
・8:30会議室で朝食と報告等
・10:00教団内の見回り( 自由行動 )
・12:00昼食兼相談会について
・13:00相談会
・17:00教団内見回り ( 自由行動)
・19:00夕食
・20:00入浴等就寝準備
・21:00消灯
俺はカリムの側近として、毎朝お祈りの場までカリムを連れて行く役目があるため他の信者よりやや早起きだ。身支度を整えてカリムの部屋へ向かう。
窓の外は清々しい青空が広がっていて、2日後の大拝祭までずっと晴れ続きのようだ。
【HO鰯の部屋】
俺がカリムの部屋の扉前へ着くと、中から「ゴン」という、何かが落下したような鈍い音を聞く。
「カリム!どうした!」
勢いよく扉を開ければ、カリムがベッドからすべり落ちていた。
「あはは…おはようジャミル!寝ぼけて落ちちまったみたいだ!」
「…はぁ、おはようカリム。朝から忙しないな。すごい音がしていたぞ。見せてみろ。」
後頭部を確認すると、そこそこ立派なたんこぶができている。
「おい、たんこぶができているぞ。2日後は大拝祭なんだ。しっかりしてくださいよ、教祖様?」
「ジャミル〜!やめてくれよ〜信者のみんながいない時は名前で呼ぶ約束だろ?!」
「なら気をつけてくれ。大拝祭は、常にそばにいてやれるわけじゃないんだ。ほら、手当するから動くな。」
[応急手当クリティカル、HP全回復]
[応急手当1成長]
「ありがとうジャミル!さすがはジャミルだな!もう治ったんじゃないか?全然痛くない!」
「そんなわけないだろう。まあ、俺はいつも誰かさんの手当てをしているからな。できて当然だ。」
「うっ…いつもありがとうな!」
「全くお前は…反省しているのか?」
「朝から仲がいいな、お二人さん。」
そんなことを話していると、開け放たれた扉から顔を覗かせた真菰幽々がニヤニヤ笑いながら声をかけてきた。
「おっ、おはよう幽々!いや〜寝ぼけてベッドから落ちちまってさ、でもジャミルが手当してくれたんだ!」
「おはようカリム。大丈夫か?ジャミルが手当したなら安心だが、2日後は大拝祭だぜ?しっかりしてくれよ〜?」
「それジャミルにも言われたぞ…わかった!気をつける!」
「お前は本当にわかっているのか?この間も子どもたちと一緒に泥だらけになって帰ってきて、やめろと言った次の日にまた泥まみれになっていただろう。後片付けをするのが誰だと思っているんだ。」
「だって誘われたんだぜ?断れないだろ〜!できるだけみんなと遊んでやりたいしさ!そんなこと言ってるジャミルも部屋にゴキ「やめろその名を出すな」…アレがいるからって火をつけようとしてただろ?」
「あんなものの存在を許すわけにはいかない。思いとどまった俺に感謝してほしいくらいだ。」
「まぁーた始まった。カリム、ジャミル、いちゃついてねえでさっさと支度しろ!俺は先に行ってるからな〜。」
真菰はそう茶化し、去っていった。
俺とカリムはその後も軽く言い合いをしながら支度を済ませ、大聖堂へと向かった。