機動戦士ガンダム Gジェネレーションクライシス   作:らむだぜろ

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序章 ワールドシグナル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日で何日目か。世界が混乱に陥ってから。

 この世界――多元宇宙歴100年。

 様々な世界が交差する、多次元宇宙の世界で起きた、異変。

 彼女、ミカ・ラヴァーズが知る限り有り得ないと言わざるを得ない厄災。

 ワールドシグナル。

 生命の星、地球が発する謎のシグナル。

 これがこの世界における、重要なファクター。

 多元宇宙歴というのは、100年続いている。

 だが残念ながら正確な暦とは言い切れない。

 そもそもがこの世界は、ありとあらゆる平行世界に繋がる中間地点。

 幾星霜の世界から、異邦人がやってきて好き放題戦争を続けているような歴史だ。

 この100年というのも元年から戦争が続いているという意味であり、最早世界情勢はカオスと言っても良い。

 元からそうと言えばそうなのだが……。

 その特性上、常にミカ・ラヴァーズのような戦災孤児が発生する。

 今年で14歳。本当なら学校に通っている年齢だというのに、幼少時から戦争が隣人だったせいでろくな人生では無かった。

 頭が悪い、とよくミカは言われる。

 今居る組織『アンブレラ』のエースパイロットであり、火星から発掘されるMS――ガンダム・フレームのテストパイロットをもう四年近く続けている。

 地球圏の情勢は最悪だ。

 あらゆる組織が啀み合って戦争を続けている。

 主に荒れているのは地球、木星、月、コロニーやプラントと呼ばれる宇宙で生活する人々の範囲、及び火星。

 これでも火星には平和な方だ。

 多元宇宙歴になる前に、300年ほど前らしいが、人類抹殺を遂行する人工知能と人類の壮絶な大戦があったという。

 この世界で前大戦というと、この戦いを指す。

 月の民と言われる人種達は、全てを引っくるめ黒歴史と呼ぶと聞く。

 彼等はこの多元宇宙歴から最も遠く優れた世界から移住してきたようで、戦争を止めろと散々言っている。

 まあ、それで終わるほど人類は利口では無いのだが。

 噂によると、月には天使と呼ばれる超常的なMSが多数配備されている。

 その中の一人と、ミカは知り合いだった。

 お互い、身寄りの無い孤児……と言うか向こうはちょっと違うと言っていた。

(元気にしてるかなぁ……トリエル)

 今日も火星でMSの発掘作業を行う。

 空を見上げても晴天で、文句のつけようがないほど良い天気。

 戦時の地球圏とは違い、火星は移住者が多かった。

 理由として、逆転の発想。

 ここには前大戦の厄災……人類抹殺をインプットされた遺物が埋もれている。

 万が一でも再起動すれば、地球圏に降臨し皆殺しを遂行するだろう。

 それを皆、恐れている。

 事実過去に数回、火星で再起動した際にはMAの巨体でありながら火星の重力を振り切り、地球圏に降下。

 大災害を引き起こしている。

 無数に居る平行世界の技術の大半の攻撃がビームを主力とするために、此奴らに勝てず、結局異界のテロリストと呼ばれる私設武装組織『ソレスタル・ビーイング』が武力介入を行い何とか撃破。

 漸く収まったとか。

 そんなのが度々発掘されて見つかるが、その場合基本的に直ぐに解体される。

 再起動する前に発掘されたら即時撤退。

 立ち入り禁止にしてから手作業で一ヶ月近くかけて解体する。

 ちなみに火星圏ではこの発掘されたMSを復元したコピー『グレイズ』が主戦力であり、ロスト・テクノロジーとなった前大戦の技術が元に戻りつつある。

 これも人類を絶滅に追いやった人工知能から得た情報が元手で急速に普及して量産も可能になっている。

 とは言え、前大戦で人類を勝利に導いたと言われる力……『ガンダム・フレーム』は、量産の目処が漸く立ったぐらいの貴重品。

 だから絶対に撃墜されるな、死んでも機体は残せとよく言われてきた。

 そもそも、前大戦のガンダム・フレームは合計72あったらしいが、現存する数は半数以下。

 データも火星でしか取り扱えない条約がある。

 新たにガンダム・フレームは新造されても、オリジナルには及ばない。

 火星の独立部隊『アンブレラ』は、そのガンダム・フレームを幾つも所有し、火星圏を治安維持する地球で言う連邦軍。

 まあ、大体この世界で一番平和に近い星と言われるだけあるのは、過去の遺物を寄ってきたらぶつけるぞ、とアンブレラが世界中に脅したからである。

 ちなみにはったりだ。

 そんなもん、手中に収めるつもりはない。

 下手すれば歪んだ時空を越えて異界に化け物が向かうことになる。

 その世界が如何に強力であっても、前大戦の人工知能のMAに通用するかと言われると無理だろう。

 月の民達はこれらを禁忌と呼ぶが、真っ向勝負で勝てるのは彼等ぐらいで、対抗手段が月の天使でもない限りは絶滅不可避。

 何せ此奴ら、自分一機でも居れば周囲の物資を奪って自己修復から拡張、自分の量産まで行う完全自立の自給自足が出来るのだ。

 一匹居れば時間があるとドンドン増える。

 しかも一匹の質が桁違い。

 災いが進化するってそれどんなデビルガンダム?

 まあ脅威で言えばデビルガンダムのほうが上だが、幸いこの世界のデビルガンダムはシャッフル同盟のおかげでアルティメットガンダムに戻っているし、ヤバいのはこのMAのほうだ。

 どんだけ量産されたのか知らないが火星圏で大体週一で発掘される。

 そこら中で解体作業が行われている。

 アンブレラの役目は火星圏の治安維持、そして此奴らの処分。

 よくジオンや木星帝国がMS目的に仕掛けてくるが、大体返り討ちにされる。

 そりゃそうで、木星帝国は実体兵器のショットランサーで対応しようとするが、彼等は小型MS。

 運動性を引き上げた反動で脆く、逆に発掘されるグレイズは普通に硬いし通じない。

 代わりにビームが使えないけれど、それを加味しても小型MSで標準MSのグレイズに勝つのは無理。

 食いつかれたら叩き落とされてお終い。

 というのが火星の小競り合いの大半だ。

 ジオンなど言うまでも無い。

 ザクの系譜でグレイズに勝てるわけが無い。

 質も量も火星圏は世界的に見ても高い。

 欠点として飛べないことくらいか。

 空戦には対応できないが、それは良くあること。

 基本的に平和。火星圏は。地球圏は大戦争の最中。

 そんな時に発生したワールドシグナル。

 発信源は地球そのもの。

 惑星がなんのシグナルを出したかと思えば。

 驚愕の話だった。

 多元宇宙歴の地球には超巨大演算天球と呼ばれるシステムが異空間にあるらしい。

 通称ジェネレーションシステム。

 あらゆる世界を観測し、記録する観測地点。

 そこが何らかの理由で暴走した。

 ワールドシグナルはジェネレーションシステムが発信した緊急事態。

 世界を壊す存在の危機というのだから最初は絶句した。

 そんな、惑星のガワを被った演算システム?

 それなんて人理の話?

 ゲームだけだろと思っていたらマジらしい。

 事実、地球圏には突如、謎の電子存在が虚空から現れて襲ってくるとか聞いた。

 ニューロと呼ばれる、言っちゃえばモンスターだ。

 MSでありながら何処の世界の何であろうが再現して、見境無く襲って戦況を悪化させる厄災。

 戦火が拡大する。範囲は地球圏全土。

 時にはコロニー、プラントも襲っているようだ。

 此奴らは識別が出来ずレーダーには既知で合ってもアンノウン扱いされる特徴がある。

 つまりパイロットが知ってる存在なのにMSは知らないと認識するのだ。

 それでいて、一機が一騎当千の強さだから手に負えない。

 現れるだけで戦争をしている連中を無差別に襲う災害。

 それだけなら地球圏の問題であって、別に火星圏には関係ない。

 ……問題はこの超巨大演算天球を、暴走したニューロが狙っている事らしい。

 戦場に突然現れるのは観測を乱すため。

 乱れると異空間の入り口が出現する。

 そこに侵入してジェネレーションシステムを内部から壊していく。

 本来は自衛のための自滅システムが暴走しているとか言うのである。

 因みにジェネレーションシステムが破壊された場合。

 このシステムが観測していた幾星霜の異界全てに破壊の余波が伝播する。

 文明を滅ぼすのが余裕ぐらいの余波が。

 少なくとも地球は全ての異界で確定で滅ぶ。

 近くにある宇宙の民の住処も滅ぶ。

 つまり止めないと木星帝国とかならまだしも、地球圏においては全世界共通の地雷だ。

 だから、ワールドシグナルを出された頃に戦場に舞い降りるガンダムが言っているそうだ。

 ジェネレーションシステムの暴走を止めろ。

 幾星霜のガンダムよ、ワールドシグナルの元に集え。

 種族、世界、垣根を越えて手を取り合い立ち向かえ。

 さもなくば世界は終焉するであろう。

 滅亡を受け入れるのか。否、抗うことが人類である。

 我が名はアプロディア。

 ジェネレーションシステムの中枢のメインシステム。

 星の数ある世界に告ぐ。

 ジェネレーションシステムの破滅を回避せよ。

 集え、Gジェネレーション。

 アプロディアと共に来る英雄よ、立ち上がれ。

 そう呼びかけていると。

(世界の危機って分かりやすいおとぎ話だよ。まあ、アンブレラの上層部がどう判断するかだよね。私は言うこと聞くだけだし)

 火星圏も滅亡した場合、確実に巻き添えになる。

 地球の近くの星は大体計算上滅ぶらしい。

 簡単に言えば地球が某ライダー宜しくの決めセリフのようにビッグバン! するわけだ。

 そりゃ滅ぶ。他人事では居られない。

 そうこうしているうちに発掘されていく。

 今は火星のある区画で、重機を使ってMSの発掘を行っている。

 MWなども普及している火星では、免許が必要な重機以外は発掘に使えない。

 良く出る地雷の埋まっているMAがMSの発する信号に反応して万が一でも再起動するので昔ながらの重機なのです。

 彼女、ミカの役目は基本的にアンブレラから送られたデータを元に照合して何を掘り当てたか確認する軽作業。

 手元の端末さえ持っていれば、誰でも出来る。

 そもそも14歳という子供が働いているのがおかしい。

 火星では珍しくもないが。

 白いワンピース姿で現場に向かう。

 現場で最近、この近辺で起きた時空変動で落ちてきた男子に声をかける。

 時空変動とは分かりやすい言い方が他の世界と偶発的に繋がるワームホールの発生のことだ。

 多元宇宙歴のここでは日常茶飯事なので、異界の人間が仮住まいに居るというのもよくある。

「お疲れさま、ボブ。親方がお弁当配ってだって」

 浅黒い肌の若者。変な形の眉が特徴的。

 癖っ毛の長いピンクの前髪をメッシュにして、作業着を着た彼に言う。

「ん……? ああ、ミカか。お疲れ。もうそんな時間か」

 名を短くボブと名乗っている。

 此方に落ちてきた時は酷く狼狽しており、どうなったのか分からず混乱していた。

 偶然アンブレラの敷地に落ちてきて、保護された。

 事情を聞くとアド・ステラと呼ばれる暦の世界から来たらしい。

 自分の世界で何やら苦労をしたらしく、来た当初は向こうの世界で突然ブラックホールみたいなモノに吸い込まれたと言っていた。

 んでもって早く帰ろうと必死になっていた。

 だが時空変動は自発的に起こるのは先ず無理。

 こっちでは自然現象と説明すると、暫くごねていたが軈て諦めて、こっちで何時か帰れるときまで世話になると言うことでアンブレラでアルバイトをしている。

 身元確認もなにもアンブレラの敷地に落ちてきている以上異界の出身。特に問題は無い。

 こうやって日々MS発掘の作業を行っているボブなのであった。

 尚、ミカ及びアンブレラの面々は本当の名など知らないし、聞かれたくないと本人から言われているのと、アンブレラでは異界の人間への詮索は禁じている。

 因みにボブの世界ではガンダムは禁忌の存在らしい。

 乗った人間が色々あって結局死ぬとか。

 とんでもない世界から来たようだった。

「……」

 ボブは発掘中のMSとミカを往復して見ている。

「なに?」

 ミカが問うと、どこか察するように言う。

「お前も大変だな……。この年で、テストパイロットを四年近くやってるんだろ?」

「まあ孤児だし……。火星じゃ珍しくないよ?」

「人体実験は俺の世界じゃ普通じゃねえよ」

 現に長い白髪で隠れているが、ミカの背中には五つの突起がある。

 ピアスという特殊な有機デバイスが打ち込まれており、阿頼耶識システムというガンダム・フレームにほぼ必須なシステムを人体実験でぶち込まれた。

 一回が死ぬ確率が高いのを、五回も。

 堪えたのは奇跡とよく言われる。

「家族も居ない。人体実験の被験者。お前も、よく笑って生きていけるな」

「同情? そういうの嫌いだよ私」

 睨むと、ボブは両手を挙げて降参した。

「いや……自分が、恵まれていたんだと思っただけだ。失ったモノは多いが、尊厳は最低でもあったからな」

「尊厳って。私の友達もそうだけど……そんなん無いよ。いつも道具だったから」

「学校すら行けずに道具扱い……。酷え世界だな此処は」

 ボブはぼやく。過酷な過去だろう。

 ミカ以外にもこの手の子達は居るらしい。

「こっちに来て、自分の悩みがちっぽけに感じる事が増えただけだ。ワールドシグナルといい、ここどうなってんだよ……」

「まあ、私もそっちの世界知らないから何も言えないけど。でも戦争とか大ごと無かったんでしょ?」

「あっても学生同士の決闘だったな」

「学生で決闘にMS使うって発想がヤバいよ……」

 アド・ステラ。謎の多い世界である。

 兎に角、ボブは弁当を配りに一緒に行く。

「アド・ステラのガンダムって作るの禁止されてるんだっけ?」

「あぁ」

 ガンダムが禁忌の世界。

 余程後世に残したことが危険だったのだろうか。

「こっちじゃガンダムって一般的にはエースの乗機、ぐらいだけど。まあガンダム・フレームは例外として」

「そういえば阿頼耶識……? ってのが無くてもそのガンダムってのは動くのか?」

「ボブの操縦技術ならいけると思うよ。でも阿頼耶識のある私には絶対に勝てないけどね」

「俺に戦争を終わらせた悪魔に乗る度胸はねえよ」

 ボブはどうやらパイロットの適性があると思われる。

 剥き出しのガンダム・フレームを見ただけで規格外と見抜ける経験はあるようだし。

 本人は嫌がっているが。

「俺達も、参加するのかね。Gジェネレーションとやらに」

「それはアンブレラが決めることだよ。行けって言うなら行くだけ」

 アプロディアなる存在が提唱するGジェネレーション。

 あらゆる世界から掻き集めた戦力で、演算天球を守る独立部隊。

 親方のところに向かいながら二人は喋る。

 後日、アンブレラから正式にその編成された部隊に出向するとは、二人はまだ知らない。

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