それからというもの、おれはとことんアマネのことを観察した。
優しくて、明るくて、ポケモンも大好きで料理が得意で……わ、わやいい子だべ……
「スグリくん、このお菓子食べる?」
「え、いいの?」
「うん、スグリくんこのお菓子よく食べてたし好きかなって」
「ありがとう…」
もらったチョコブラウニーを食べながらおれはアマネのことを考える。そもそもアオイはいつアマネのこと好きになったんだ?まずはそこから知らねえとな……
「そうだアマネ、あとでアマネの部屋行っていい?」
「え、どうしたの?」
「いや、おれまだ片付けとかできてなくて…参考にしたいんだ」
「うん、いいよ!」
アマネの部屋は、すごくかわいかった。ところどころにマホイップのぬいぐるみとかキーホルダーとかが飾られてて、しかもキッチンには香辛料がいっぱい。なんだか1人暮らしの女の子の部屋って感じだ。いやアマネは男なんだけど。
「わやスパイスあるな…全部味違うの?」
「違うよ〜、カレーとか麻婆豆腐とか、料理によって使うやつ違うからね!」
「そうなんだ…アマネは本当に辛いの好きなんだなあ」
「もちろん!生きる理由みたいなもんだよ!!」
堂々と胸を張るアマネを、おれはなんだかかっこよく感じた。好きなものを好きって言えるって…やっぱりかっこいいなあ。って忘れちゃいけねえ、おれはアマネのことを観察しに来たんだ!
「あれ、アマネこれなに?」
「え、ああそれは…」
バチッ
「えっ……」
おれが紅い花柄の櫛に触ろうとした瞬間、何かに拒まれた感覚がした。静電気とかじゃなく、本当に拒まれた感じ。
「あぁそれ…僕の大切な櫛なんだ、飾ってるだけだけど」
「そう、なんだ」
詳しく聞かない方がいい気がして、おれはそれ以上その櫛について聞くのをやめた。
「アマネはさ…アオイとどうやって仲良くなったんだ?」
「ガラルからパルデアに旅行に来た時にね、アオイちゃんのコライドンに轢かれたんだ」
「へ?」
「色違いのカルボウを探してるアオイちゃんに轢かれてさ、そこから仲良くなったんだよね」
「よく仲良くなれたな……」
「そうだね、冷静に考えるとすごいことだよね。一緒にサンドイッチを食べて、それからバトルして、ナッペ山を登って……色々やって、仲良くなった感じかな」
「へ〜、そうなんだなあ。にへへ、なんか漫画みたいで面白いな」
「だねえ、アオイちゃんがぶっ飛んでるっていうのはあるけど」
「それはある!だってアオイ、おれが初めて会った時も……」
それからおれは、アマネと一緒にアオイの話をいっぱいした。アオイが色違いのポケモンを探して必死になってたとか、サンドイッチを作る時なんでかパンを落とすとか色々。
「にへへ、いっぱいアオイの話さできて楽しかった!ありがとな、アマネ!」
「うん、こちらこそ!そうだスグリくん、せっかくだからこれ持っていって!」
「なんだこれ、分厚いノート…」
「それはね、僕お手製の料理本!辛いのは調味料抜けば普通になるから、試してみて!」
「えぇ……ありがとう!おれけっぱる!」
アマネに手を振って、おれは自分の部屋に戻った。
…………
「違う!!」
おれは一応アマネの視察に行ったのに、なんか普通に仲良くなってしまったべ。いや仲良くなるのはいいけど、一応ライバルなんだから。でも……アマネ、いい子だなあ。おれもああいう気遣いができるようになりたいな。
そもそもアマネとライバルといっても、特に何かあったわけじゃないしなあ……
うん、これからも観察しよう。アマネはいい子だけど油断はならねえ。
紅い櫛
アマネの部屋に飾られている紅い花柄の櫛。かなり古いものだが大切に保管されていたのかほとんど劣化していない。アマネ以外が触ろうとすると拒絶する。