キョウヤさんにがっちり肩を掴まれながら路地裏に連れて行かれ、さらに奥にあるホテルに連れ込まれました。字面だけ見たら犯罪だな。
「ホテルZ、着いたよ♡」
「なんで知ってるんですか…?」
「そりゃあ、俺がここに住んでるからだけど。ついでに言うとホテルZを使うようモミジさんに言ったの俺」
「すべて仕組まれてた、ってコト……!?」
「そういうこと。大人しくホテル入ろうね」
中に入ると、アンティークな室内と木の香りが僕を迎えた。なんだ、古いって聞いてたけどいいホテルじゃん!……キョウヤさんがいなければ。
「キョウヤおかえり、また誰か誑かしてきたの?」
「ただいま。今回は違うよ、ほら、ガラルからメガシンカの視察に来た」
「こんばんは…」
「ああ!そうだったんだ、いらっしゃいませ!ホテルZにようこそ、お客様!今いろいろ準備しますね!」
「彼女はタウニー。ホテルZのオーナーで俺の友達」
タウニーさんが準備している間に、僕とキョウヤさんはエントランスで話すことに。いろいろ聞きたいしね。
「それで…キョウヤさん、どこまで知ってるんですか?」
「キミがガラルのリーグ委員長から頼まれてミアレにメガシンカの視察に来ていてその時にミアレ最強のメガシンカ使いと会う約束をしてるってことくらいかな」
「全部じゃないですか!!」
「そりゃあ、モミジさんから全部聞いてるし。それにミアレ最強のメガシンカ使いって…俺だし?」
「……ええぇぇーー!!」
「あっはは、人の驚いた顔は相変わらずいいねえ!」
キョウヤさん、ほんとに全部知ってたんだ。おまけにキョウヤさんがミアレ最強のメガシンカ使い?うう、なんだって強い人はこうも癖まで強いんだ……
「だからどのみちアマネくんと俺は出会う運命だったんだよ……」
「その言い方やめてください」
「冗談冗談、とはいえキミと会うの楽しみにしてたんだよ?俺って案内される側だったから案内するの楽しみだし」
「そう、ならいいんですけど……」
「お客様、もう客室に行かれますか?」
「あ、タウニーさん。いや、晩ごはんがまだだからどこかで食べてこようかなって…」
「そういうことならうちにお任せを!ホテルZの看板メニューをお勧めします!」
「看板メニュー?」
「クロワッサンカレーです!」
「……???」
キョウヤさんの方を見ると、こっちに話を振らないでくれと言わんばかりに苦い顔で首を横に振られた。クロワッサンカレーis何……?クロワッサンとカレーって合わないよりじゃないか?いやでもこんな自信満々に言うってことは美味しいのか?ええい、カレーの地方ガラル出身としては試すべきか!
「じゃあ、クロワッサンカレーお願いします」
「了解!腕によりをかけて作りますね!」
「あーあ、頼んじゃったんだ」
「キョウヤさん……でもあんな自信満々に言うってことは美味しいってことじゃ?」
「分かってないな、根拠のない自信ほど恐ろしいものはないんだよ」
それからしばらくして、僕の前にお出しされたものは。
「………」
「気持ちはわかるよ、アマネくん」
「ホテルZ自慢のクロワッサンカレー!ご賞味あれだし!」
カレーライスをクロワッサンが囲んだ、よくわからないなにか。もしかしてあれかな?カレーにディップする的なやつかな?まあまずはカレーライスを……
「美味しい!カレーにスパイスが効いててコクもあって深みがあります!」
「でしょー?それのあとにクロワッサン!これが合わさることで最強になるんだよ!」
「さ、最強に……いただきます!」
クロワッサンをちぎって、ひと口。
「……………」
「うわ、すっごい苦虫を噛み潰した顔」
「え……口に合わなかった?」
「いや、あの……ごめんなさい。これは、僕の味覚というよりもカレーとクロワッサンの相性の問題です」
「えぇ?あたしは完璧に合うと思うんだけどなあ」
「カレーの良さとクロワッサンの良さ……この2つが合体すると、お互いの良さを相殺するんですよ!それによってよくわからない味が口の中を支配するんです!」
「………(わかると言わんばかりに頷いているキョウヤ)」
「うーむ、合わなかったかあ……でもあたしは諦めない!いつかクロワッサンカレーをホテルZ、ミアレ、ゆくゆくはカロスの名物にするし!」
これはもうタウニーさん1人が頑張ってどうこうなる問題じゃないと思うけどなあ。とはいえ口をつけたものを残すわけにはいかないので全部食べます。
「うう、お腹いっぱい……」
「今日は休みな、いろいろあって疲れたでしょ」
「はい、主にキョウヤさんのせいで……おやすみなさい」
301号室に入って、ベッドに沈み込む。ほんとはシャワーも浴びたいけど、なんか精神的に疲れてるから朝にね。
……この時の僕は知りませんでした。ミアレがどれだけ“濃い”街なのかを……
アマネ
ダンデのお願いでミアレに来た。怪しいお姉さん♂にホテルに連れ込まれて変なカレーまで食わされた。ミアレにいるうちは疲労がたまる。
キョウヤ
女装大好きで性癖クラッシャーが生業。でも案外ミアレで生きていくにはこれくらい必要なのかも。