アオイちゃんとネモちゃんにパルデアを案内してもらうことが決まって、早速テーブルシティに戻ってきたわけですが。
「ごめん2人とも!急に生徒会の仕事入っちゃって…」
「いいよネモ、案内なら体力のあるわたしに任せて!」
「ありがとうアオイ〜〜、アマネくんもごめんね!バトルできなくって!」
「いやそれは気にしなくていいけど…」
ネモちゃんは慌ただしく地獄の階段を登っていった。相変わらずエネルギーがある子だなぁ。
「さて…アマネくん、どこか行きたい場所とかある?」
「行きたい場所かぁ…自然の綺麗な景色を見てみたいな!」
そう、パルデアに行くにあたって楽しみにしていたのが豊かな自然だ。いかんせんガラルはワイルドエリアが危険すぎるからね、パルデアの自然を拝むのが楽しみだったのだ。
「自然かぁ…だったらナッペ山の頂上かな!」
「ナッペ山…この雪山?」
「そうそう!途中で休むこともできるし、フリッジタウンとかでご飯も食べられるよ!行ってみる?」
「うん、行きたい!」
「じゃあ準備して行こっか!結構寒いからね…」
こうしてナッペ山の頂上を目指すことになったのでした。お互い防寒具を準備して、ナッペ山登山道で待ち合わせをすることに。
「お待たせ、アマネくん!ごめんね〜、サンドイッチ準備してたら遅くなっちゃった!」
「いいよ、フランと遊んでたから。」
「ほみ〜!」
「ふふっ、ほんとに仲良しなんだね!じゃあ行こっ!」
ナッペ山登山道から、足を強く踏み締めて登っていく。かなり急だから気をつけなきゃ。
「そういえば…誰かとナッペ山に登るの初めてだなぁ」
「そうなの?」
「うん、基本ジムチャレンジとかポケモン捕獲とかぐらいでしか行かないし」
「まぁそっか、よほどのことがないと雪山になんて登らないよねえ」
「それもあるけど…みんな忙しそうだし」
そう話すアオイちゃんは、どこか淋しそうだった。
「ネモは生徒会、ペパーは料理の勉強、ボタンはリーグのお手伝い……ゼイユとスグリはそもそも学校違うし…だからわたし結構暇なんだよね。ポケモンがいるけど、それとこれとは違うじゃん」
「……そうだね」
「わたしさー、結構すごいんだよ。チャンピオンランクになって、色々解決して……でも1人の時間が多いんだよね」
「………」
「なんていうかな……やりたいことっていうの?あんまり思いつかないんだぁ。だから頼まれごととかなんでも引き受けちゃうし、1人の時間を潰すために図鑑を埋めるのに奔走したりとかするし。」
「暇つぶしでやることじゃないような…」
「あはは、確かに。ね、アマネくんはさ。やりたいこと、ある?」
アオイちゃんは、僕をまっすぐ見つめてくる。つくつもりはないけれど、嘘はつけないな。
「…僕もないかな。考えたこともないや」
「そっか、お揃いだ」
「僕もずっと…ああしろこうしろって言われてきたし。それにパルデアに来たのだって逃げてきたようなものだし。」
「そうなの?何から?」
「うーん、言葉にすると難しいけど……嫌なこと全部、かな」
「思ってたより重いのがきた。てっきり勉強だと思ってたのに」
「僕のことなんだと思ってるのさ」
「でもそっか、逃げてきたんだ。なのにオモダカさんから色々言われて、大変だったでしょ」
「そんなことないよ、選択の余地を与えてくれるだけ優しいと思う」
「ガラルだっけ、そんなに怖いところ?」
「ガラルは多分そんなに怖くない。僕のまわりにおかしくて怖い人がいただけ」
「あっはは、あるよねー。自分のまわりだけ何かが集まる、みたいな。災難だったね」
「本当にね……」
いろいろ話して、ナッペ山の中腹くらい。アオイちゃんの持ってきたサンドイッチを半分こにして食べる。
「ん、辛くて美味しい」
「辛いものは体も温まるからね。それにアマネくん辛いの好きでしょ?」
「覚えててくれたんだ」
「もちろん!友達のことはちゃんと覚えてるよ」
「……友達?」
「え、違った…?」
「ごめん!!違うとかじゃなくて、その…友達、いないから。人間の友達。」
「…ふふ、何それ。確かにポケモンの友達はフランちゃんがいるもんね」
「もちろん。フランは親友であり女神であり相棒です」
「大好きなんだぁ、いいなあ」
「?」
「そういうかけがえのない相手がいるっていいよね、特別な相手」
「ペパーさんとかネモちゃん…ボタンちゃんは違うの?」
「違わないよ!みんな大切で特別。でもほら、今は忙しくてバラバラだからさ。わたしもそういう特別な相手、欲しいなって」
「特別な、相手……」
「あっ、そろそろ頂上だよ!ほら」
ナッペ山の頂上、パルデア最高峰。天気もいいからか、光がまぶしい。
「どう?写真とか撮る?」
「…アオイちゃんはさ、誰かとナッペ山登るの初めてって言ったよね。頂上に一緒に行くのも初めて?」
「もちろん、初めてだよ」
「そっか、じゃあ僕が特別な相手だ」
「え」
「初めて、一緒にナッペ山の頂上まで行った相手。それにほら、僕割と暇だし。何かやりたいこととかあったら気軽に呼んでいいよ」
「………」
…まずい、友達にこの距離感は間違えたか……??アオイちゃん、黙っちゃったぞ。
「…うん、ありがと!ね、写真撮ろうよ!ツーショット!」
「いいね、賛成!」
「ほみーっ!!」
「あっ、ごめんね!スリーショットだったね!それじゃあ…」
「はい、ピッピ!」
パシャ
アオイは、景色を眺めている。一緒に頂上まで来たアマネは、事前に持ってきたお茶をフランと一緒に飲んでいる。
(……特別な相手、かぁ)
先ほど撮った写真を見つめる。寒い場所で撮ったからか、2人とも鼻や頬が赤い。それに若干雪が写ってしまっている。それでも。
「……ふふ」
アオイにとってはかけがえのない、特別な写真なのだ。
アマネ
アオイは大切な友達。
アオイ
アマネは特別。