僕はげきからマホイップと世界を巡る   作:三笠みくら

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ルセ視点。彼女がアマネに執着する理由が判明します。もうちょい後でもいいかなと思いましたが書きたくなったので。仕方ないね。


醜い恋のように

 

生まれつき、何も感じたことがなかった。

 

理解することはできる。そこに花が咲いているとして、「花が在る」ということは理解できる。けれどその花を美しいと思うことはない。そういう生き物なのだ、わたしは。

 

けれどそれが俗に言う普通でないこともわかっていた。だから、思うことができる人間であるように振る舞った。皆が望んだ言葉を言って、笑って。人の心理というのは簡単だった。

 

そんなわたしにもわかることはある。この世界は弱肉強食である、ということ。強いものが弱いものを淘汰する、支配する。それが世界の理。

 

 

特にアローラではそれがわかりやすかった。島巡りという文化は、強いポケモントレーナーだけが達成できるもの。島巡りをできない者、もしくは諦めた者は後ろ指を刺される。なんともわかりやすい弱肉強食だった。

 

だから挑戦した。特にこれと言って苦労することもなく、島巡りは完遂できた。ポケモンリーグへの挑戦は必須ではないので断った。

 

皆がわたしを褒めた。兄は劣等感と憧憬がない混ぜになった目でわたしを見ていた。けれどそれはどうでも良かった。

 

最後の大試練。ポニ島の島クイーン・ハプウに言われたことが胸に引っかかっていた。

 

 

「おぬしにはポケモンへの愛情が感じられん。それではいずれおぬし自身が苦しむことになるぞ」

 

 

などと一丁前に言われた。けれど理解できなかった。

 

愛情というものがなくても、現にわたしは勝利した。島巡りを完遂した。どうでもいいはずなのに、胸の中がいらいらしてしかたがなかった。母が縫ったクッションを切り裂いて捨てた。

 

 

 

さて、何をしようか。もう島巡りは終わった。アローラに興味はない。それにハプウのいる場所にいつまでもいるのはどうも気に食わない。

 

その時、テレビのニュースでガラルのジムチャレンジの試合が中継されているのを見た。ちょうどいいと思った。家族を言いくるめてガラルに行った。祖父がマクロコスモスの重役なので家にも金にも困ることはない。

 

そうしてわたしはガラルに行った。祖父からはガラルのことを知るためにトレーナーズスクールに行ってはどうかと言われた。どうでも良かったが承諾した。

 

 

転入したクラスで、隣の席の生徒に挨拶をした。休憩時間になって、その生徒からスナックをひとつ渡された。けれど辛いものだったので陰で捨てた。

 

 

昼休み。なんとなく校庭を歩いていると、隣の生徒がうずくまっていた。ふと気になって、声をかけてみた。するとそこには、傷ついたサッチムシがいた。

 

 

「何をしてるの?」

 

「さっき、アオガラスに襲われてたから。キズぐすりを使ったんだ」

 

「……どうして?また襲われたら、どの道助からないかもしれないのに」

 

 

生徒は少し目を開いたあと、続けた。

 

 

「そうだね、その通りだと思う。ゲットもしないのに勝手だよね。でも」

 

 

 

 

「放っておけなかったからさ。」

 

「………」

 

 

たぶん、それは「優しさ」というものだと思う。でも、それは身勝手なもの。わたしが言ったように、その場しのぎ。きっとあのサッチムシは、また襲われても助けられずに死ぬだろう。

 

身勝手で、平凡で、くだらない優しさ。それがどうしようもなく、どうしようもなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

………愛おしくて、たまらない!!

 

 

 

世界が色付いていくのを感じた。目の前の彼が、輝いていくのを感じた。こんなにも自分が感情豊かだったなんて。

 

 

それから、わたしは彼に執着するようになった。彼の名前はアマネ。ふわふわで可愛らしい、それでいて弱い。だからわたしが彼を守らなきゃ。わたしが彼を強くする。そのためならなんだってする。

 

 

アマネにきずをつけて、わたしを刻み込むように。

 

邪魔者を追い払う。心も体もぼろぼろにして。

 

 

アマネを強くしよう。世界は弱肉強食だから。わたしと同じになってほしい。だからポケモンバトルを教えた。

 

 

ポケモンは駒。合理的に考えて。

 

傷ついたら? 倒れなければいいでしょう。

 

道具も使って、勝利するために。

 

 

ああ、食事も管理しなきゃ。あんな辛いものを食べていたら体に悪いから、栄養のあるものを作ろう。隠し味にわたしの体の一部を入れる。わたしの考えたお呪い。

 

 

左手の薬指を切って、血を流す。アマネの血を飲んで、アマネにもわたしの血を飲ませる。ずうっといっしょのお呪い。

 

 

アマネを知ってから、わたしの世界は色鮮やかになっていった。舞台にはわたしとアマネのふたりきり。その他はいらない。エキストラや裏方、観客にだってさせない。だっていらないから。

 

 

あなたがわたしの全て。あなたがいるからわたしは存在している。ふたりぼっちでいい。

 

 

 

 

 

 

 

あなたもそうでしょう?愛しいアマネ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうじゃないなんて、認めない。

 

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