跡形もなく溶けたアカマツくんはさておいて。僕はタロさんからあまりに熱く語りかけられていました。
「アマネくんはかわいいんです!!そのふわふわなピンクヘア、くりくりぱっちりのお目々!!そしてぷるぷるの唇!!そしてゆるふわ系のファッション!!その全てがかわいいんです!!」
「……そうですかね」
「そーーですよ!!それにその見た目で男の子なのも正直プラスポイントでしかありません!!興奮するだけです!!」
「怖いです」
タロさん、本当にかわいいものを愛しているんだということは分かる。だからこれらの変態発言も本心からだというのも分かる。分かりたくなかったような。
「だから…アマネくん、もっと自分に自信を持ってください!」
「え」
「アマネくんってなんというか自分を卑下する発言が多かったので。かわいい自分をフル活用しちゃってください!値切りとかに使えますよっ!」
「…ありがとうございます」
「そういえば。アマネくんってどこに住んでるんですか?やっぱりタチワキ?」
あ、そうか。タロさんは僕が旅してきたの知らないんだっけ。せっかくだし話しておこうかな。
「…というわけで、まあ夜はどこかにキャンプでもして、お金はバイトして稼いで…」
「「……ダメ!!」」
「えっ」
タロさんはともかく、アカマツくんからもダメって言われたぞ。いつの間に復活を果たしたんだ。
「アマネくん自分のかわいさ分かってます!?こんなコンクリートジャングルでキャンプなんてしたらすぐ攫われちゃいます!!」
「そうだよ!!それにお金ならうちでバイトすればいいじゃん!空き部屋あるからそこに泊まりなよ!」
「え、いいの?」
「もちろん!それにごはんも一緒に食べればお金も浮くし!ねっ!」
「ありがとう、アカマツくん!」
「…アカマツくん、大丈夫なの?」
「うん、大丈夫……たぶん」
こうして僕はアカマツくんのお家にお世話になることになりました。アカマツくんのご両親も、温かく迎えてくれた。ごはんもお風呂もお世話になって、ふかふかのお布団も使わせてもらうことになった。ありがたいねえ。
「ふう…」
「ほみ〜?」
お風呂をあがって、ベランダに出る。フランもようやくボールから出て来れた。アカマツくんはともかく、タロさんに見せてはいけないと思ったからね。かわいいもの大好きなタロさんに見せたら、本当に食べられちゃうかもしれないし。
「ふふ、改めて…アカマツくんに会えて良かったなぁ」
「ほみ、ほみ!」
「ね、それにタロさんも!僕ってかわいいんだってさ」
「ほみ〜!」
「ふふ、もちろんフランが世界で1番かわいいからね!ん……?」
なにやらポケモンの鳴き声が聞こえてくる。どうやら路地裏から聞こえて来ているらしい。ベランダから覗き込むと、そこには…なんと倒れている人が!!急いで助けに行かないと!!
急いで倒れている人の場所に行くと、ピカチュウが必死に起こそうとしていた。うつ伏せなのですぐに起こして、呼吸を確認する。どうやら生きているよう…
ぐぅ〜〜
「………」
…もしかしなくても、空腹で倒れている?いや、タチワキはアカマツくんちをはじめとしてごはんを食べるところがいっぱいある。そんなわけが…
ぐぅ〜〜
…あるな。とはいえ今僕が持っているのは…辛口からあげを入れているボリューミーおにぎり。いくら空腹とはいえ、倒れている人にそれを渡すのはいかがしたものか。
「………(ムクッ」
起きた!!能面のような無表情で、よだれを垂らしておにぎりを見つめている。食べたいのかな?
「…食べます?」
「………(コクリ」
おにぎりを手渡すと、赤い人はもぐもぐと食べ始めた。結構辛い味付けなんだけど、美味しそうに食べてるなあ。
「………」
「あ、食べ終わりました?良かった、ピカチュウが心配してたんですよ」
「………(ペコ」
「ピカ、ピィーカ!」
「それにしてもどうしたんですか、この街でお腹空かせて倒れるなんて…」
「………」
「え、緊張して入れなかった?」
「………(コクリ」
なんともまあ、とんでもない理由だ。いくら人見知りとはいえお店に入れないレベルってどうなのさ。
「とにかくよかったですよ、気をつけてくださいね」
「………(ペコリ」
赤い人とピカチュウはお礼をして、夜の街に歩いていった。なんだったんだろう。
アマネ
ようやっと自分のルックスを自覚し始めた。
アカマツ
ショックよりも良心が勝った。いい子。
タロ
かわいいは正義。
赤い人
お腹を空かせて倒れていた。極度のコミュ障らしい。