僕はげきからマホイップと世界を巡る   作:三笠みくら

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みいつけた

 

トウコさんは顔色の悪くなった僕を引っ掴んで、近くの建物の屋上に連れてきてくれていたらしい。どおりで見える景色が高いわけだ。

 

 

「大丈夫か、ほれ飲み物」

 

「ありがとうございます……」

 

 

ありがたく受け取って飲もうとした瞬間に、ペットボトルのラベルを見てやめた。だってモツ煮込み味ってあったんだもの。何それ。

 

 

「何ですかこれ」

 

「何ってここの遊園地で売ってたドリンクだけど」

 

「飲みたくないです」

 

「ちぇっ」

 

 

インタビューされる前にコーラを買っておいたので、それを飲むことにした。スマホからは通知がかなり鳴っている。まぁ突然姿消したんだから当然だよね。

 

 

『もしもしアマネくん!?大丈夫!?今どこ!?』

 

「ごめんねアカマツくん、今は…えーっとどっかの建物の上。すぐ戻るから…」

 

『どこかの…上?まあ無事ならいいや!無理しないで、観覧車の前で待ち合わせしよ!』

 

「うん、わかった。ありがとう」

 

 

アカマツくんが心配して電話をかけてくれた。背後でタロさんの心配そうな声が聞こえてきたし、戻ることにしようかな。

 

 

「なるほど、そういうことなら戻るか。念の為ついてってやるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

人気のない行き止まりのところに降りて、そこから観覧車を目指す。大きいからすぐに見えるな。

 

 

「……なんですかこれ」

 

「え?ムーランドのヒゲメガネだよ。ほら、お前さっきので顔割れてるだろ?また囲まれたりしたら困るだろうしつけとけ」

 

「そうですか…ありがとうございます」

 

 

トウコさん、変な人だけど気をつかってくれているのは分かるからいい人なんだろうな。やがて観覧車の前にたどり着いた。時間がかかったのはトウコさんがあちこちにあるフードの屋台に寄りまくったからだ。

 

 

「2人とも!」

 

「アマネくん!良かった、無事なんですね!いきなりいなくなったから…」

 

「心配かけてごめんね、この通り無事だよ」

 

「良かった良かった、それで…後ろの人は?」

 

「アタシはトウコ、まあこいつを助けたいい人だ」

 

「うん、変だけどいい人だよ」

 

 

アカマツくんたちのトウコさんを見る目は完全に不審者を見る目だった。とはいえそんな視線も一緒にアトラクションを巡るうちに消えていった。

 

 

「イヤッホーー!!」

 

「ぎゃーーー!!」

 

 

ライトニングジェットコースター、あれはやばい。僕の三半規管が弱いだけかもしれないけど、少なくとも僕には刺激が強すぎた。それでも女性陣は平気な顔をしていた。たくましすぎる。

 

 

「見てください、いちごポップコーン!しかもニンフィアのラベル付き!買いましょ〜!」

 

「えー、アタシはあっちのネコブのみ風味のターキーの方が…」

 

「なんでそんなに変な味ばっかり食べたがるんですか」

 

「人生には刺激が必要なんだZE?」

 

「そうですか」

 

 

その後もワッフルにクッキー、それからコーヒーカップにポケモンライドのアトラクションなどを楽しんだ。気づいた頃にはもう夕方になっていた。

 

 

「いやー、楽しかったですね!アマネくんはその…どうでしたか?」

 

「すごく楽しかったです!いっぱい美味しいものも食べたし…」

 

「それなら良かった、アマネくんを怖い目に遭わせちゃってどうしようかと…」

 

「気にしないでくださいよ、あれは誰も悪くないです」

 

「そーだよ!それにあの後もみんなで遊園地満喫したじゃん!タロ先輩もそうでしょ?」

 

「…うん!すごく楽しかった!」

 

「いやあ良かった、めでたしめでたしだな」

 

 

うんうんと頷くトウコさんのスマホが鳴る。スマホカバーはポカブで可愛らしかった。

 

 

「あーもしもし?うんうん、大丈夫大丈夫。気にしてねえって。うん、はいはーい」

 

「電話ですか?」

 

「うん、メイから」

 

「? メイって…」

 

「あのメイだけど。さっきインタビューしてた」

 

「え?なんでトウコさんがメイさんと知り合いなんですか?」

 

「あー、まぁ後輩?それでアタシがアマネのことを助けたの見たからって電話してきた。怖い思いさせちゃっただろうから謝りたいってさ」

 

 

メイさんもかなり律儀な人なんだな。そして気にしてないというのを適当に言ったのもなんともトウコさんらしい。その日は遊園地で解散することになった。

 

 

 


 

「トウコ、楽しそうだね」

 

「んー?まあな、久々のイッシュはやっぱいいな」

 

「ふふ、それなら良かった」

 

「そういうオマエは?」

 

「……プラズマ団の皆、前に進もうとしていたよ。顔を見せるのは気が引けたけど」

 

「そか、まあいいや。それにしても…」

 

「どうかしたのかい?」

 

「あのアマネってやつ……どーにも苦労しそうなんだよな」

 

 

それは、野生の勘というべきか。

 

 

 

 

 


 

薄暗い部屋で、ただキーボードを叩く音だけが無機質に響く。画面には、涙目になっているアマネの姿。

 

《突如現れた美少女について語るスレ》

 

と銘打たれた掲示板に貼られていた画像。スレッドが建てられた日付も、アマネの写真が貼られたのも今日。そしてその番組の中継があったのは今日。

 

つまり今日この日、アマネはイッシュ地方にいて、遊園地にいた。

 

 

今度こそ逃がさない。隙だって与えない。

 

 

 

みいつけた。




アマネ
遊園地自体は楽しんだ。苦労しそう。

トウコ
未知の刺激が好きで、変な味のものにもチャレンジする。イメージはゴルシ。

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