「よーっす」
「…トウコさん?」
遊園地から次の日。トウコさんと緑色の髪の綺麗なお兄さんが食堂にやってきた。
「どうしたんですか?」
「どうもこうも。食堂にはメシを食いにきたに決まってんだろ」
「まあ、それはそうですね」
「ここがタチワキでも話題の食堂なんだね、楽しみだよ」
緑色のお兄さんは、言っちゃ悪いけどトウコさんとは正反対…物静かで穏やかなイケメンさんだった。どういう繋がりなんだろうか。
「んー、それじゃあオッカのみハンバーグ2つな」
「はい、わかりました」
注文を受けて立ち去ろうとする僕の肩を、トウコさんががっちり掴んだ。
「今日来たのはメシ以外にもな、オマエに話があって来たんだ」
「僕にですか?」
「おう、聞きたいことがあってな」
「…なんですか」
「オマエ、なんか背負ってるだろ」
「え」
「なんつーかな、無理やり背負わされたと言うべきか…嫌なものがオマエに乗っかってるのを感じるんだよな。気のせいだったら悪いが」
トウコさんは真剣な瞳で、僕のことをまっすぐ見てくる。ああ、なるほど。この人はおせっかい焼きなんだ。でも相手が嫌がるようならそれ以上は入り込まない。いい人なんだな。
「まあ、そうですね…背負ってると言うより、逃げてきたっていう方が正しいと思いますけど」
「そっか、言ってくれてありがとな。いや何、それ以上聞こうとは思わねえ。ただその嫌なものが、オマエを追いかけて来そうなんだよな」
「…どうしてそう思うんですか?」
「勘」
「………」
勘でそんな不安にさせられても困るけど、確かに僕もそう思ってはいた。あのルセちゃんがガラルで静かなままなんて…正直信じがたい。
「その嫌なものは、どんなのだ?」
「…人の形をした何か、ですかね。平気で人やポケモンを傷つけるし、思い通りにならないと怒るし」
「なるほど、危険すぎるな」
「僕もルセちゃんのことはそれぐらいしか分からないんです、僕のことを好きとか言ってくるくせに僕の気持ちは考えてくれないし」
「…典型的なやべー奴だな」
「そう思います」
「よし、そういう事ならトウコお姉さんに任せろ。オマエのボディーガードしてやるよ」
「え、ボディーガード?」
「おう、悪い話じゃないだろ?」
トウコさんはニカっと笑う。この人は、多分損得とか考えずにこういうことを言ってくれている。なんでわかるかって?だってこの人、そういうこと考えていなさそうな顔してるもの。
「…ありがとうございます」
「おう、任せろ」
「そういうことなら僕も。僕はN、よろしくね」
「あ、よろしくお願いします…」
トウコさんにNさん。なんだか心強いボディーガードができてしまった。
「さて。ボディーガードをするとは言ったものの…そもそも相手がどう動くか、来るのかさえ分からんのだよな」
「そのルセ、という人の話を聞かせてくれるかな、少しなら行動パターンが分かるかもしれない」
「え、わかりました…」
Nさんに、ルセちゃんにされてきたことを話す。どのエピソードをかいつまんでもやばいものしかないけど、その中でもクッキーから髪の毛が出てきた時の話とかはNさんも引いていたな。僕もそう思う。
「…なるほど、よくわかったよ」
「聞けば聞くほどやばい奴だな、オマエよく耐えてたよ」
「本当に…僕もそう思います」
「さて、そのルセだが。彼女はキミにだけその執着を見せているし、キミのことを支配しようとしている。つまりキミを連れ戻すために追いかけてくることは容易に想像できるね」
うん、それはそうだ。実際僕はパルデアに行く時にルセちゃんのトークも電話番号もブロックしたけど、もしあのままだとどうなっていたか分からない。ただ、イッシュまで来るかと言われれば……どうなんだろう、考えたくもないな。
「…少し外の空気を吸ってきていいですか」
「おう、行ってこい」
ベランダに出て、風を浴びる。街並みは鮮やかなのに、僕の気分は沈んでいる。
「ほみ、ほみ!」
「フラン…そうだね、フランがいるもんね」
「ほみ!」
フランを撫でようと、手を伸ばす。その瞬間。
ぐるん
体が浮く。次の瞬間、僕は地面に叩きつけられた。いったい何が…
「ふふ。ようやく見つけた」
「……ぁ」
「パルデアに行ってもいなかったんだもん、今回はすっごく急いだの。」
「……なんで」
「なんで?そんなの決まってるでしょ、アマネに会うため!ね、アマネ……」
首に手が触れる。軽く首が締まる。
「つかまえた」
アマネ
捕まった
トウコ
いい人。ただし破天荒。
ルセ
つかまえた