ルセちゃんが消えたあと、僕の手当ても兼ねてアカマツくんちの食堂に戻ることになった。トウコさんにNさん、それからレッドさんも。
「なにそれ!!すっごいヤバいやつじゃん!!」
「そんな怖い人がいるなんて……」
アカマツくんとタロさんは顔をそれぞれ真っ赤、真っ青にして驚いていた。ちなみに僕のお腹には痣ができていたけど、まあルセちゃんからの危害ならこの程度で済んでよかったかもしれない。
「全くだ、悪意がある分どんな凶暴なポケモンよりタチが悪いぜ」
「…あのルセとやらのポケモンたち、皆彼女の力に恐怖していた…それに諦めていた」
「ルセちゃんはほんとに話通じませんから……僕と同じですね」
ルセちゃんのポケモンは皆彼女の強さによって支配されて従っているポケモンたちだ。もちろんポケモンによって性格は違うけど、皆同じように諦めている。
「………」
「…ところで、どうしてアンタみたいなすごい人がここに?」
トウコさんの質問に、レッドさんは眉をひそめる。レッドさんはリビングレジェンドとか言われてたけど、そんなすごい人なのかな。
「助けてくれてありがとうございました、おかげでフランも無事で…」
「………(コクリ」
傷の手当ても終わって、ルセちゃんについての話になった。僕を追いかけるのをやめるとは言っていたけど何をするかは分からないし、何より信用ならない。
「あいつはアローラに戻るって言ったが……まあ信用ならんわな」
「かといってアローラで何か悪さができるかって言われても…」
「だが彼女はかなり周到かつ狡猾だ……今回のようにまた奇襲をかけてくるかもしれない」
皆がうーんと頭を悩ませる。その時、レッドさんが手招きしてきた。皆に対応を任せて、ひとまずベランダに行くことにした。
「………」
「どうしました?」
「…僕の、こと。どう思ってる?」
「え?レッドさん?うーん……」
「………」
「…変な人、ですかねえ」
「!?」
「だってそうじゃないですか、お腹空かせて街中で倒れて。でも優しい人だと思ってます。助けに来てくれたし」
「……そっか」
レッドさんが帽子を深く被る。何かまずいこと言ったかな。
「………」
「え、これって」
レッドさんがリュックから出してきたのは……ポケモンのタマゴ。え、なにこれ。
「………!」
「このタマゴのポケモンを育てるんですか?僕が!?」
「………(コクリ」
「う〜ん、それはわかりましたけど……」
「………!!(ビシッ」
「……僕が、強くなる?」
え、どうしてそういう話になるんだ?そもそも僕が強くなっても意味がないんじゃ…
「………」
「…確かに、ルセちゃんのことはよく知ってますけど」
「………!!」
「……でも、僕はポケモンを傷つけるのが怖くて」
「……それも、あの子に教えられた、こと?」
「…はい」
元々バトルは苦手だった。でも苦手が加速して、恐怖になったのは間違いなくルセちゃんのせいだ。あのポケモンを大切にしないスタイルを見せつけられたことで、恐怖心が植え付けられたんだ。
「………」
「…そう、ですね。このままじゃいけないのは分かってるんですけど…」
「…だったら、僕が教える」
「え?」
「…バトルは好きだし、ポケモンも、好き。だからその…傷つけるわけじゃないのを、教えたいんだ」
「………」
「……どう?」
レッドさんはいい人だと思うし、ポケモンバトルも怖い面だけじゃないのは分かってる。けど……
「ほみ!」
「フラン?」
「ほみ、ほみ!」
フランがなにやら俊敏に動いている。どうしたんだろう、何かにやる気なのか……?
「ほみ!」
「…フラン、バトルしたいの?」
「ほみー!!」
そういえば、フランがマジカルフレイムでアマージョを倒して、ルセちゃん驚いてたな。僕なんかに一泡吹かせられたのにびっくりしたのかな。まあそれはいい。フランがやる気なら仕方ない。
「……やります!」
「……うん」
レッドさんがちょっとへたっぴに笑う。レッドさんに特訓をつけてもらうことに決まりだ。
「…というわけで、シロガネやまっていうところに行くことになりました」
「いきなりすぎない!?」
「まあレッドさんに特訓つけてもらうならいいけどな。」
「そういうことなら僕たちは応援するほかないね」
アカマツくん、トウコさん、Nさんは応援してくれている。ただ1人を除いて。
「嫌!!嫌ァーー!!生のアマネくんを見れなくなるなんて嫌ですぅーー!!それならわたしもシロガネやまに行くーー!!」
「タロ先輩やめなよ!!アマネくんが頑張るなら、オレたちは応援しなきゃ!」
「あ゛ぁーーーー!!アマネくん……特訓に出る前にわたしのお願いを聞いてくれませんか」
「内容によりますけど…」
「ほっぺを舐めさせてください」
「嫌です」
「ぺろぺろ……」
「アァーーーーッッ!!!話聞かないこの人ッッ!!」
ほっぺをしばらく舐められて、それからほっぺをモミモミされて。ようやくタロさんは落ち着きました。
「じゃあはい!アマネくんこれ!」
「これって…辛いサンドイッチ!?」
「うん、ほんとはフツーのお昼用で作ったやつだけど…アマネくんのこと応援するためにもっと辛くしたよ!」
「アカマツくん…ありがとう!」
「もちろん!だってオレたち友達でしょ!」
「…うん!」
レッドさんはリザードン、僕はジョロキア。それぞれポケモンに乗って、タチワキシティの港から飛び立つ。みんなに見送られながらね!
「アマネくん頑張ってね!応援してる!」
「何かあったらすぐ戻ってきていいんですからね!かわいいアマネくんのためならなんだってします!」
「おう、すぐ助けに行ってやるからな」
「僕たちはキミの味方だからね」
「それじゃあ……行ってきます!」
こうして、シロガネやまに旅立つのでした。
アマネ
レッドさんはいい人。
レッド
話すのが苦手。アマネに特訓をつけることに。