「もっと、相手に炎を集中させる!」
「はい!フラン、カビゴンの中心を狙って!」
「ほみー!!」
シロガネやまで特訓を始めて少し。レッドさんの特訓ははっきり言ってスパルタだ。でもなんというかな、ポケモンに対する愛情を感じるから嫌じゃないな。それにちゃんと休憩もさせてくれるしね。
「……休憩、しようか」
「お腹空きました?それなら僕がごはん作りますよ!」
「………!!(コクリ」
こういう寒いところだと、カレーみたいな温かい食べ物がより美味しく感じられるから好きなんだよねえ。暖房の効いた部屋でアイスを食べる的な。それの反対ね。
「きのみはどれがいいですか?それから具材も」
「えっと……これと、これと……あと、これ」
「分かりました!じゃあ待っててください!」
レッドさんは生活力が皆無なので、基本的に家事は僕の担当なのだ。こないだ火加減を任せたら炭になったものね。マトマのみ、オッカのみ、クラボのみなどなどを入れて、具材はボブのかんづめ。おいしんボブのお肉はジューシーで美味しいんだよ。よ〜く混ぜて、まごころ込めて。
「できました〜!」
「………!!」
カレーを口いっぱいに頬張って、レッドさんはおいしそうに食べてくれる。レッドさんの手持ちたちも僕の手持ちたちも、皆美味しくカレーを食べる。やっぱりカレーは最強だね。
「……どうしてカレー?」
「え?」
「……よく、作るけど」
「ああ、ガラルはカレー作りが有名なんですよ。僕が辛いもの好きっていうのもありますけど……それによく言いません?カレーは家庭の味って!」
「………」
……まずい、レッドさんが黙ってしまったぞ。しかもこれは無口なだけじゃない、本当に黙ってしまったパターンだ。僕、何かやらかした??
「……そう、なんだ。知らなかった」
「ま、まあ家庭の味は人によりますからね!」
「……僕は、家庭の味とか、知らない」
「……そう、なんですね」
うん、なるほど。想定外の角度から来たな。とはいえさすがに「どうしてですか?」なんて聞くほど僕は馬鹿じゃないので、そうなんですねに留める。
「あ、じゃあこうしましょうよ!このカレーは僕との思い出の味!特訓の間の思い出ってことで!」
「………!!」
「だめ、でしたかね……」
「……ううん、嬉しい。そっか、思い出の味。……いいね」
よかったあ……レッドさんにはお世話になってるからね、嫌な思いはさせたくないぞ。
「…ごちそうさま」
「はい、いい食べっぷりでしたよ!」
「それじゃあ」
「はい」
「……少し休憩したら、また特訓」
「は〜い……」
レッドさんとの特訓はものすごいハードだ。でもレッドさんは優しい人だからいいのだ。
シロガネやま 夜
テントでアマネが眠る夜。レッドは地面に座って星空を眺めていた。そんなレッドを、ピカチュウは心配そうに見つめる。
「……ピカ?」
「……ううん、だいじょうぶ。ただ、嬉しかった、だけ」
アマネに言われたことを思い出す。カレーは一般的には家庭の味らしい。けれどレッドは、家庭の味を知らない。そもそも、家庭の幸せというものを知らない。
まだアマネと出会って、特訓するようになって少しだが。アマネと一緒にいると、“普通のこと”をしてもらえるので嬉しい。普通に話しかけてくれて、普通に料理を作ってくれて。
「……普通って、いいなあ」
レッドはぽつり、そう呟いた。
アマネ
カレーは激辛派。空気はある程度読める。
レッド
カレーは激辛派。“普通”をあまり知らない。