ユウキの春
ホウエン地方・ミシロタウン。一軒家の2階で、ベッドでぼーっとする少年がひとり。
「……暇だなぁ」
少年の名はユウキ。トウカジムリーダー・センリを父に持ち、彼自身もやり手のポケモントレーナーだ。そんな彼には、悩みがあった。
それは、どうしようもなく暇であるということ。父に憧れてホウエンを巡る旅に出たのは良かった。ジムを巡って、マグマ団とアクア団のいざこざに巻き込まれて。そしてグラードンとカイオーガの争いを制して、チャンピオンになって。それまではとても忙しく、充実していた。けれど。
それを終えてしまってからというもの、とことん暇になってしまったのだ。自分はポケモンコンテストには向いていないし、かといってポケモンリーグの仕事はダイゴや四天王たち、ジムリーダーたちが担ってくれるから本当にやることがないのである。
「ひゅあ…」
「ラティオス…俺、どうすればいいかなぁ?」
「ひゅあ?」
ラティオスに聞いても、困ったように返事をされるだけ。強いていうなら、やりたいことがないわけではないが……
「…ちょっと歩くかなー」
家に籠るのもどうかと思うので、まったり散歩でもすることにした。道端で大きい木の枝を拾ったので、それを剣のように持ちながら歩くことにした。
「あのさー、俺だって何もやりたいことがないってわけじゃないんだよ?ただ機会がないんだよ、ほんとに機会だけ」
「ひゅあ?」
「うん、俺はさ、恋がしてみたいんだよ!こう…一目惚れとまではいかないけどさ、人生を変えるような恋!やっぱ憧れるじゃん?」
「ひゅ……」
「そういう冷たい視線やめろよなー。ハルカはなんかそういう目で見れないし、ルチアさんとかはまず住む世界が違うしなー」
ユウキは、漫画のような恋に憧れていた。いつかは自分も運命の相手と出会って、両親のようにラブラブになるのだと思っていた。もちろんまだまだ自分は若いのだが、にしたって色恋沙汰に縁がないにも程がある。
「俺もダイゴさんみたいなイケメンで御曹司だったらチャンスがあったのかねー」
「ひゅあ!」
「ははは、確かに。ラティオスもイケメンだよなぁ。はーぁ、ほんと俺ってそういうのに縁がないわ」
歩き続けていると、トウカの森に辿り着いた。人気もない場所なので、考え事をするにはちょうどいいか。
「相変わらずトウカの森は静かだな〜……ん?」
「うわぁぁ〜〜!!」
誰かの悲鳴が聞こえ、ユウキはすぐにその元に向かう。ダイゴを比較対象にしているため自己評価が低いが、ユウキだって正義感の強い男なのだ。
「どうした!?大丈夫か!!」
ユウキが駆けつけた先で見たのは、なんと特大サイズのドクケイルだった。なるほど、こいつに襲われていたのか。そうなれば先ほどの悲鳴も合点がいく。あれほど大きいドクケイルに襲われれば、悲鳴が出るのも仕方がない。
「バシャーモ、ブレイズキック!」
炎を纏った強烈な蹴りで、ドクケイルを追い払った。ラティオスに言われてみると、人がうずくまっているのが分かった。
「あの!大丈夫ですか!?」
「ぁ……」
目が合う、その瞬間だった。
ズドォォーーン
ユウキはその瞳に貫かれた……ように感じた。潤んだ瞳はつぶらで、一度見ると目が離せない。ピンク色の髪もふんわりしていて綿菓子のよう。全身をピンクに包んでいるが、あざとさは一切感じられない。むしろ可愛らしさを加速させている。
なんて可愛らしい子なのだろう。ユウキの頭の中は、瞬く間に目の前の美少女に支配されてしまった。
「あの…助けてくれて、ありがとうございました」
「………」
「……あの?」
「ハッ!!お、俺はユウキ!キミは!?」
「あ、僕はアマネって言います!ユウキさん、助けてくれてありがとうございました!」
ピンクの少女……もといアマネは、礼儀正しく頭を下げる。それを見て、ユウキの頭はひとつの結論を導き出す。
(俺についに……恋が来た!!)
ユウキ
ご存知ルビサファ主人公。時間軸?深く考えるな。ピンクの子に恋をしたらしいが……
アマネ
もうお分かりだろう。