「タマゴを孵化させるなら、やっぱり温泉かな!」
「温泉?ホウエンにも温泉があるの?」
「うん、フエンタウンの温泉なんだけど…とにかく効能が凄いんだ。腰痛、リウマチ、冷え症、筋肉痛……あらゆる体の不調に効くとされている」
「万能じゃん…すごいね」
「そういうわけで、フエンタウンに行こう!」
ユウキはアマネを連れてフエンタウンに向かう。その道中もユウキはアマネにデレデレで、アマネの話を全肯定するマシーンと化していた。
「着いたよ、フエンタウン!」
「おお…すでにもう湯気が出てる」
フエンタウンは温泉が名所なだけあって、町も全体的に和風な雰囲気を纏っている。
「それじゃあ早速温泉にタマゴを預けよう!」
「え、預けられるの?」
「うん、やっぱポケモン用の温泉と人間用の温泉は違うからさ。ポケモン用の温泉に人間が入ったら一瞬でのぼせちゃうよ」
「それもそっか、じゃあお願いします!」
ポケモン用の温泉にタマゴを預け、アマネとユウキは足湯に入ることにした。
「ふぅ……あったか〜い、気持ちいいねぇ」
「そういえばユウキくんはホウエンを旅したって言ってたけど…どうして?」
「どうして…かあ。まあオダマキ博士に協力したりとかマグマ団とアクア団を止めたりとか色々あるけど…1番はやっぱりそうだな、父さんみたいなトレーナーになりたかったんだよね」
「ユウキくんのお父さんって、どんな人?ジムリーダーさんとは聞いてるけど」
「う〜ん、とにかく頑固で大人気なくて、一度決めたら止まってくれない人かな」
「すごくボロボロに言うね、本当に尊敬してるの?」
「いや、今のも本当なんだけどさ。ホウエンに来たばかりの頃…父さんのバトルを見たんだよ。父さんがジムリーダーになって初めてのバトル。それを見て俺……圧倒されてさ。」
今でも思い出す、父の姿。ケッキングと共に、相手のポケモンを圧倒した。その力強い背中が、ユウキの頭に刻み込まれている。
「だからジムを巡って俺もあんなふうに……って思ってたんだけどなぁ…」
「えっ、どうしたの?」
「いやなんて言うかさ、ジム巡ってやることやったら…とことん暇になっちゃったんだよね。やっぱりそう簡単にはいかないかぁ」
「……ふふ」
「え、なんで笑うの」
「いや、当たり前だよ。だってユウキくんはお父さんと同じ人間じゃないもん」
「……え?」
「もちろんお父さんみたいに強くなりたい、だったら叶えられるだろうけど……でもユウキくんとお父さんは別人でしょ。歩んできた道も違うし、考え方も違う。だから同じようにはならないよ。その分もっとすごくなれるかもしれないよ!」
「アマネさん……」
「まあ、ユウキくんが何をしたいかによるけどね…」
「アマネさんっ!!」
ユウキが、アマネの手をガシッと握る。そしてアマネの目をまっすぐに見つめる。
「俺……いつか必ず誰よりも強くてかっこいいトレーナーになるから、だからその……応援してくれたら嬉しい、っていうか……」
「………」
「ダメ、かな?」
「いいよ!」
「よっしゃーーー!!」
それから少しして、タマゴがアマネの手元に帰ってきた。アマネが抱えるとほんのり温かく、鼓動も今までよりも大きく聞こえる。
「もうすぐ生まれるかも……」
「ほんと!?うわー、楽しみ!」
「うん、他に何かできることないかな……」
「うーん……タマゴに話しかける、とか?」
「やってみよう!」
アマネがタマゴを抱きかかえる。そしてささやく。
「タマゴちゃん……もう出てきていいんだよ、僕が守るからね…」
(カワイイ!!)
その瞬間。タマゴがぴょんぴょんと跳ね出した。
「こ、これは……生まれる!」
「どんなポケモンが生まれるんだろう……」
次第にヒビが入り、光が漏れていく。そしてやがて眩い光が放たれ……
「ふぃーーーっ!!」
水色のポケモンが、姿を現した。
アマネ
クソボケ野郎。応援してほしい、をそのままの意味で受け取った。
ユウキ
哀れなり。