僕はげきからマホイップと世界を巡る   作:三笠みくら

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時系列的にはシンオウ編中盤くらい。


星月夜

 

エーテル財団。そこはポケモンの保護を目的とする団体であり、財団で働く職員は皆ポケモンを愛し、慈しむ者たちである。

 

 

「リーリエ、忘れ物はない?スマホロトムは?何かあった時はすぐにわたくしを呼ぶのよ?」

 

「母様ったら……心配しすぎです!わたしだって子供じゃありません!それじゃあ…行ってきます!」

 

 

エーテル財団の職員であり代表・ルザミーネの娘……リーリエが、今日初めて1人で仕事に向かうことになった。元々過保護かつ心配性なルザミーネからしてみればまだまだリーリエは子供なのだが、今回の仕事はリーリエが適任と考えて彼女に任せたのだ。

 

 

アーカラ島 マハナリゾート

 

 

「着きました……ここですね!」

 

 

マハナリゾート。ポケモンを保護し、自然の中でのびのびと過ごすことのできる環境を整えている、ポケモンたちの楽園ともいうべき施設。エーテル財団にとっては先輩というべき施設であり、今までも交流があったが、リーリエが向かうのは初めてである。

 

 

「すごい……野原でポケモンさんたちが休んでます!写真を撮ってもいいのかしら……」

 

「気になりますか?」

 

「ひゃあ!!」

 

 

背後から声をかけられる。そこには端正な顔立ちの青年が立っていた。

 

 

「失礼しました、俺はこういう者です」

 

「あ、マハナリゾートの方でしたか!わたしこそ申し訳ありません、エーテル財団から参りました、リーリエです!」

 

「あなたが……ようこそ、マハナリゾートへ。さあ、こちらへどうぞ」

 

 

青年に案内され、マハナリゾートの建物へ通される。建物は外観も内観もとても優しい雰囲気を纏っていて、ポケモンたちが落ち着くのも納得といった感じであった。

 

 

「それで……資料は持ってきてくださいましたか?」

 

「はい、ですが……本当に大丈夫なのですか?こんな危険なことに巻き込んでしまって…」

 

「お気になさらず、我々もエーテル財団の皆さんとは協力したいと思っていますから。皆さんの負荷を減らせるならそれに越したことはありません」

 

「ありがとうございます!」

 

 

談話室に通され、緊張しつつも席につく。するとお茶が出された。お礼を言おうとして、リーリエは止まった。

 

 

「あなたがリーリエさん、こんにちは」

 

「あ、こんにちは……」

 

 

目の前の少女は、とても美しかった。まるでお伽話に出てくるお姫様のような、人形のような。

 

 

「こちらはルセ、俺の妹です。彼女もリゾートを手伝っていまして、今回の件についてもぜひ協力したいと」

 

「まあ、そうなんですか?」

 

「ええ。よろしくお願いします」

 

 

ルセも席についたところで、早速話を始める。リーリエが資料を2人に見せる。

 

 

「こちらが……UB、ウルトラビーストの資料になります。ウルトラビーストは危険な存在ですが、心を通わせることはできると思っています。ですので保護のためにもマハナリゾートさんに協力していただけると聞いて、とても安心しました!」

 

 

リーリエが話している間に、ルセは資料を読み込む。そして読み終えたのか、にこりと微笑んだ。

 

 

「なるほど、これがウルトラビーストの資料……ありがとう、リーリエさん」

 

「いえ、そんな!少しでも力になれればと……」

 

 

「もう、用は済んだわ」

 

 

「え?」

 

 

何か激しい光に包まれて、リーリエの意識は遠のいた。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーカラ島 浜辺

 

 

月が白く、ぼんやりと輝いている。静かな浜辺に人はおらず、ただ波の音だけが聞こえる。ちゃぷちゃぷと、少女は浜辺で歩く。

 

 

話は聞いていた。アローラの空にひびが入って、そこから正体不明の生物が姿を見せたと。そしてその生物……ウルトラビーストの中には、なんでも人を操るものがいるとか。

 

まあ、それはどうでもいい。大事なのは、ウルトラビーストたちが強大な力を持っているということ。この世界のすべては駒。道具。たとえなんであろうが、使えればそれでいい。

 

 

ある日起きた異変によって、アローラの空は非常に繊細になった。もしもビーストがこちらに来ようと思えば、すぐに空はひび割れるだろう。だがもちろんただでは来ない。

 

 

それは、なんでもひどく精神が不安定なものに惹かれるらしい。つまりは良質な餌を用意してやらなければいけない。だから。

 

 

兄に、親を殺させた。もともと単純で漬け込みやすい人間だったが、ここまで馬鹿だと哀れみを感じてくる。

 

 

「パパとママがね、わたしが帰ってきたからおにいちゃんはもう必要ないって」

 

 

そう吹き込めばすぐだった。兄は顔を赤黒くして、涙を流しながら両親のいる部屋に怒鳴り込んでいった。両親の弁明も聞かず、半狂乱になって刺して殺した。

 

本当に馬鹿で哀れだ。何もかも嘘だというのに。

 

 

母を殺して正気に戻ったのか、兄は己を責め始めた。泣いて、両親に謝って。そして縋ってきた。だから連れ出してやった。

 

この静かな浜辺に。1番最近に、あのウルトラビーストの目撃証言のあったこの場所に。

 

 

目論見通り、“それ”はすぐにやってきた。けれど兄には見向きもせずに、こちらにやってきた。どうやら、類は友を呼ぶというのは本当だったらしい。

 

 

硝子細工のように美しい触手が、腕に絡む。透き通る体はとても美しい。まるで社交ダンスのように踊る。

 

 

「わたしたち、きっととっても仲良くなれると思うの。よろしくね、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウツロイド」

 

 

ただひとつの目的。愛のために、少女はすべてを壊していく。




・ルセの両親について
マハナリゾートというポケモンの保護施設兼楽園を経営している。両親共にとても善い人であり、島巡りができなかったルセ兄のことを差別することなどなく、我が子のことは深く愛していた。しかし悲しいことに娘は人の皮を被った怪物だった。ルセによって好き勝手言われ、挙句彼女の嘘を信じ込んだルセ兄によって殺害される。遺体はルセのウインディによって適当に焼却された。エーテル財団がUBの資料を持っていく判断をしたのも、両親のことを信用していたから。

・ルセ兄
コンプレックスが膨れ上がった結果、両親を殺害するまでに至った。マハナリゾートの経営やポケモンたちの世話も手伝っていたが、内心ではやはりルセ以外のことを信用できておらず、非常に精神的に不安定だった。結果彼女にいいように扱われ、捨てられた。ルセがウツロイドと踊っているのを見て、ようやく自分はいいように使われただけなのだと悟る。そして昏い海の底に自ら沈んでいった。

・リーリエ
まんまと優しさに漬け込まれた。気絶する前に見たのはジバコイルのフラッシュ。ポリゴンショックと同じ原理ですね。その後適当に道に放り出されました。
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