僕の目の前にいるルセちゃんはとても人とは言えない姿へと変わり果てていた。まさに怪物と呼ぶに相応しい……
「……その、姿は」
「いいでしょ、ウツロイドとお友達になったのよ」
「………」
「もう、久しぶりに会ったのに綺麗とか言ってくれないの?悲しい」
わざとらしく彼女はさめざめと悲しむけど、まあ彼女の気持ちなんて分かりたくもないので無視することにした。
「…それで?どうして僕をここに呼んだの」
「決まってるでしょ、アマネと2人きりになりたかったの。ここなら邪魔者はいない。まあウツロイドたちは許容範囲ね、協力してくれているわけだし……でも」
ぎろっと、フランを睨みつける。
「そいつは要らない……それに他のポケモンも。ちょうどいいしここで全部終わりにしましょう、全部壊して、アマネを今度こそわたしのものにするの!」
「……悪いけど、僕は君の言いなりにはならない!!」
お互いにポケモンを出して、バトルが始まる。ルセちゃんはアマージョ、僕はジョロキアを繰り出す。でもアマージョの様子がおかしい……まるで熱を出して逆にエネルギーが有り余ってる時みたいな、そんな感じ。
「アマージョ、パワーウィップで埋め尽くしなさい!」
「ジョロキア、空から燃やし尽くして!」
地面を割って現れる無数の蔓を素早く避けて、それらを燃やす。あの蔓は太くて素早い上に硬いから厄介なんだ、とらわれないようにしないと。
「ちょこちょこ動き回って……!ふみつけ!」
「アクロバット!」
アマージョが高く跳ねてジョロキアを踏みつけようとするけど、それは悪手だ。近距離に来られたなら、アクロバットで振り払えばいい。それにジョロキアは持ち物を持ってないから威力は倍!……元々耐久の高くないアマージョだから、一発で倒すことができた。
「あーあ、せっかく育てたのに使えない……まあいいわ、それじゃあお次はミロカロス、行って」
ミロカロスが姿を現す。ミロカロスもまた変に興奮している感じがする。もう全員こうなってるって思った方がいいな。
「ミロカロス、ふぶき!」
「ジョロキア、かえんほうしゃで防いで!」
「でしょうね、しめつける!」
「なっ……!」
ミロカロスがものすごい勢いで近づいてきて、ジョロキアの体を締め上げる。あんなに素早かったか?いや、多分暴走というかパワーアップしてるな。ルセちゃん……ウツロイドの力かな。
「潰せ、れいとうビーム!!」
「ジョロキア、ふいうち!」
……ダメか。ミロカロスが特防とか防御の高いポケモンだとは知ってたけど、素早さまで上がってるとは。うん、ありがとう、ジョロキア。
「行って、サビナ!」
「うわ、気持ち悪……ミロカロス、ねっとう!」
「ハバネロエキスをぶちまけて!」
ヴィルべロスはとにかく素早いアタッカーなんだ。それに3つの頭で違う辛さのハバネロエキスをかけるから……(辛さの)ダメージは抜群だ!
「……最悪、やっぱりそういうポケモンなのね。そこもちゃんと矯正しないと……もうお前はいいや、ポリゴン2!」
……どうなんだろう、ポリゴン2ってハバネロエキス効くのか?まあ効かなければ純粋な火力で押し切ればいいか!
「ポリゴン2、トライアタック!」
「サビナ、タネばくだんいっぱいお願い!」
大量のタネが降り注ぐ。そして出来上がった足場をサビナが駆け抜けて……
「かみくだく!!」
「………」
……まじか、これで倒れないんだ。もしかして、しんかのきせき?だとしたらものすごく嫌だぞ……
「じこさいせいしなさい、ポリゴン2!」
「させない、ドラゴンテール!」
ヴィルべロスに進化して手に入れたドラゴンテール。強制的に相手を交換させる技。これで少しは妨害できたかな。
「ああもう、ほんとうに苛つく……ワルビアル!!」
「サビナ、いける?」
「ヴァウ!!」
ルセちゃんのワルビアルはよく知ってる。弱いものいじめが大好きな卑怯者。ルセちゃんにピッタリだと思う。
「かみくだく!」
「サビナ、ハバネロブレス!」
「でしょうね、すなかけ!」
「!!」
まずい、ヴィルべロスは頭が3つあるからその分砂かけで受けるダメージ……というか能力ダウン効果が大きくなる!!
「そのまま噛み砕きなさい!」
「ヴァッッ……」
「……ありがとう、サビナ」
相変わらず人の嫌がることを的確にやってくるな……まあいい、次はフィーちゃん!
「ふぃー!!」
「? 初めて見る……みずタイプかしら、それじゃあジバコイル、行きなさい!」
「フィーちゃん、ほたるび!」
ジバコイル、火力も耐久も強いポケモンだけどこっちだって負けてない。ほたるびは1回で3段階特攻が上がる技。この火力だって凄いんだから。
「ジバコイル、でんじは!」
「フィーちゃん、まもって!」
「小賢しい……ジバコイル、ほうでん!」
「フィーちゃんやっちゃえ、なみのり!!」
「は……」
ルセちゃんが驚くのも無理はない、フィーちゃんのなみのりはそこらのなみのりとは訳が違う。全てを飲み込むような、大波なんだから!
「……ジバコイル、でんじふゆうで避けなさい!」
「させない、フィーちゃんみずのはど……」
「だいばくはつ!!」
「はっ!?」
耳が割れるような音と光で、思わず目を閉じる。目を開けるとジバコイルも、フィーちゃんも倒れていた。
「邪魔だったしジバコイルもこれ以上役に立たなさそうだったからね、自爆させたわ」
「…相変わらずだね」
「そういうアマネは……変わっちゃったわね、ずいぶん腕を上げたみたい。ポケモンが傷つくのが嫌じゃなかったの?」
「…ポケモンが傷つくのが嫌なのは今も変わらない。ただ僕は、僕と一緒に頑張ってくれるポケモンたちに報いたいだけ!!」
「………そう、そうなの……」
「……気に食わない!!」
「!?」
「アマネを変えていいのはわたしだけ、わたしだけなのに!!誰が教えたの、誰に変えられたの!!戻さなきゃ、前のアマネに戻して、またわたしが0から教えなきゃ………」
________!!
悲鳴のような、怒号のような音が響く。耳が割れそうだ……!!
……ようやく、収まった?って、え___
いつの間にか、僕の周りに無数のウツロイドが漂っていた。さっきまでぷかぷか浮いていたのとは比にならないくらい、囲まれている……!!
「最初から、こうすればよかった……ポケモンバトルなんてまどろっこしいことせずに、いつも通りに、支配して踏み潰して……ぐちゃぐちゃにして!!」
その瞬間。ウツロイドたちが眩しい光を放つ。なんだ!?って、!!
……………。
目を開けると、僕の体は浮いていた。いや、抱えられていたと言った方が正しいかもしれない。ルセちゃんの大きな触手で抱えられている。目の前には、恍惚の笑顔を浮かべた彼女がいた。
「………」
「目を覚ましたのね、よかったぁ。ちょっと気絶させたつもりだったんだけど、なかなか起きないから心配したのよ。うふふ、でももうこれでおしまい。ほら、アマネのポケモンはあっち。」
指差した方を見やると、フランを始めとする僕のポケモンたちが倒れていた。おまけにルセちゃんの手持ちたちも雑に放って置かれている。
「これでずっと一緒よ、アマネ……」
「………」
彼女が近づいてくる。それに応えるように、手を伸ばす。
「あぁ、やっと……」
お互いの指先が触れるその時。僕は身を乗り出して、
彼女に、口づけた。