僕はげきからマホイップと世界を巡る   作:三笠みくら

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色違いオヤブンはかなりレア

 

「………」

 

 

夜中に、ショウは目を覚ました。すぐ側では、アマネがすぴすぴ寝息を出して眠っている。ショウはずっと不眠気味であった。思い当たることはありすぎるが……だが最近は少しだけ眠りが深くなったような…気がする。

 

 

(…よく寝れるな)

 

「……むぁ〜」

 

(ふふ、変な寝言)

 

 

眠るアマネの頬をそっと撫でる。このまま、ずっと静かに暮らしていたい。でもそれはきっと許されない。一度、調査に行くと言ってムラから逃げようとしたことがある。

 

けれどそれは阻止された。他でもないアルセウスに。恐る恐るムラを出た瞬間にアルセウスフォンが光り、気づくと宿舎に戻されていた。そして画面には

 

 

『すべてのポケモンと出会え』

 

 

の言葉が表示されていた。この使命(呪い)を完遂しなければ、自分には自由すらないのだ。それを知ってますます絶望したが、死ぬこともできない。ならばもう使命を遂行するしかないのだ。

 

窓辺にある瓶から、飴玉をひとつ取る。口の中でころりと転がすと、レモンの酸っぱい風味が広がる。

 

 

今日も一生懸命生きよう。そう自分に言い聞かせ、また眠りについた。

 

 

 


 

 

「おはようございます」

 

「んぁ……ショウさん、おぁようございます」

 

「お腹空きました、ごはんにしましょう」

 

「こんぬ」

 

「はぁい、ちょっと待ってくださいねぇ」

 

 

寝起きの頭でも、ごはんを作るのはできる。僕の体に染みついたルーティンみたいなもの。朝ごはんはいきいきイナホときのみを潰して混ぜたおもち。これが意外と美味しいんだ、きのみによって味も変わるし、お醤油をかければあまじょっぱくてさらに美味しくなる。

 

 

ショウさんもゾロアも、もちもちとおもちを食べている。ちなみに僕のは別で作った激辛風味。作ってる途中に近づいたゾロアが咳き込んだのは内緒。

 

 

「今日の予定はあるんですか?」

 

「いえ……特には」

 

「そうですか、じゃあひとつお願いしてもいいですか?」

 

「? はい、なんでしょう」

 

「ほら、僕ショウさんの手助けをするわけじゃないですか。だからヒスイ地方の地理に詳しくなっておきたいなって」

 

「なるほど、だったら黒曜の原野を案内しますよ。まだ来たばかりですしね」

 

「やった、お願いします!」

 

 

こうして今日はショウさんと一緒に黒曜の原野に向かうことに。ただでさえ僕運動神経ないのにこれ以上足手纏いになるわけにはいかないからね。

 

 

「案内と言っても、特にないんですけどね。地図ならアルセウスフォンに表示されますし」

 

「それもそうですね……」

 

「あ、じゃあ私の隠れスポットに連れて行ってあげます。何も考えたくない時にピッタリですよ」

 

「おお、チル的なそれですか」

 

「まあそんな感じです」

 

 

アヤシシに乗せてもらって、すごいスピードで移動する。情けないことだけど、ショウさんの体にがっちりしがみついてないと飛んでいっちゃいそう。やがて橋を抜けて、森を抜けて、黒曜の滝にたどり着いた。

 

 

「ここです。遠いし高所だしで、誰も来ないんですよ」

 

「うわぁ……たっかい、すごい場所ですね」

 

「でしょう?ぼーっとしたい時とかよくここに来るんです。それに眺めもいいですし」

 

 

滝から下を見ると、蹄鉄ヶ原やシシの高台が丸見えだった。確かに眺めはいい。ただ気を抜けばすぐに死ぬなこれ。

 

 

「そういえば……この子、ついてきちゃいましたね」

 

「え?あっ、いつの間に!」

 

 

ショウさんの傍には白いゾロア。どうやらショウさんに懐いちゃったみたいだ。

 

 

「こんぬ!」

 

「すっかり元気だね、よかった」

 

「そうですね……」

 

 

そう言って、ショウさんは遠くを眺め始めた。やっぱり色々背負ってるんだなあ。とはいえ気軽に大丈夫ですか?なんて言えないし、どうしたものか……

 

 

「…ショウさん」

 

「はい」

 

「釣り、しませんか?」

 

「……釣り?」

 

「はい、ちょっとした遊びですね!釣りざおなら持ってますし、大きいコイキングとか釣れるかもしれませんよ!」

 

「いいですね、やりましょう」

 

 

釣りざおの先にころころマメを潰したものをつけて、いざ釣り。これで釣れなかったらテンション下がるから頼むぞぅ。

 

 

「あっ……かかりました!しかも、大きい!」

 

「て、手伝います!」

 

 

うわ、重い!!これは全力を出さないと釣れないぞ〜〜、がんばれ僕!!フラン、力を貸して!!

 

 

「ほみ〜!」

 

「うおりゃああ!!」

 

ざっぱーん。

 

「あー、疲れた……でも釣れましたよ!」

 

「ショウさんすごい!で、何が釣れたんだろ……」

 

 

釣れたものを見て、僕たちは固まった。それは、きらきら輝いていた。そしてとても大きかった。そう……

 

 

……色違いオヤブンコイキングである。

 

 

「うわ、うわ!ちょっとアマネさん、オヤブンの、色違いのコイキング!!ね、ねえ!!」

 

「ですよねですよね!!これやばくないですか!?」

 

 

僕たちは手を繋いではしゃぐ。だってオヤブンで色違いだよ、すごくない?こんなレアなポケモン、滅多にお目にかかれない。

 

 

「とりあえず……ヘビーボール!!」

 

 

ごちんという鈍い音が鳴って、コイキングがボールに入る。そして数回揺れて、カチッ。色違いオヤブンコイキング、ゲットだ!

 

 

「やったぁ、すごいの捕まえちゃった!」

 

「……よかったです」

 

「え?」

 

「いや、ショウさんがそんな無邪気に笑ってるの初めてみたなって」

 

「……ふふ、アマネさんのおかげです」

 

 

2人で笑い合う。ショウさんって、笑うと割と柔らかい顔なんだよな。




アマネ
料理上手。ムベさんに習ってどんどん料理のレパートリーが増えてる。

ショウ
呪われてる。不眠気味&偏頭痛持ち(なので薬を常用してる)。とんでもないの捕まえちゃったね。
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