「はあ、逆にもてなされちゃったじゃないか」
「ははは、まあ仲良くなれたんだからいいだろ?」
「それはそうだけど……」
カレーを食べ終えて、コンゴウ団の人たちと少し仲良くなれた気がするな。大人も子供もカレーは好きだからね。
「…それでだな、少し頼みがあるんだが。」
「頼み?」
「……やっぱりそれですか」
「はは、見抜かれてたか。だがこれはシンジュ団と関係のあることでな。俺たちが下手に深入りすると溝が深まりかねん」
「……それで、頼みってなんですか」
「ああ。実はクイーンのドレディアの様子がおかしくてな。俺たちが調査をしている間、お前たちにはガチグマの様子を見てきて欲しいんだ」
「ガチグマ?」
「シンジュ団が世話してるポケモンさ。キクイから話を聞いたところによるとガチグマも様子がおかしいらしくてね」
「なるほど、分かりましたよ」
「おう、礼なら用意しとくからよ、頼んだぜ!」
セキさんたちに手を振って、僕たちはガチグマの調査に乗り出した。ガチグマ……どんな強いくまポケモンなんだろう。
「おやおや、お二人ともユウガオさんに会いに行くのですか?」
「ウォロさん」
このシロナさんにそっくりな男の人はウォロさん。イチョウ商会の商人さんで、かなり明るい人だ。シロナさんが男になったらイケメンになるんだなあ。
「はい、ガチグマの様子を見に行ってくれと頼まれました」
「相変わらずですねえ、人手がそんなに足りないのでしょうか」
「……わざとらしい、私が1番頼みやすいから言ってくるのを分かってるくせに」
「まあそれはそうですがね、だからと言ってあなたしか人がいないわけではないでしょう」
「それで?ウォロさんは何の用ですか?」
「ああ、そうでした。ユウガオさんならズイの遺跡にいらっしゃいますよ。ジブンも遺跡を見てみたいので一緒に行きませんか?」
「どうします?ショウさん」
「まあ、構いませんよ。邪魔しないでくださいね」
「それはまあ、守りますよ」
ウォロさんを加えて、僕たちはズイの遺跡に歩いていく。道中ではウォロさんといっぱいお喋りしたよ、なんでも最近イチョウ商会は香辛料を扱い始めたとかなんとか。
「着きました、ズイの遺跡です!」
「うわあ、おっきい……」
中に入ると、大きな石板があって文字が刻まれていた。こういう遺跡見たらシロナさん喜ぶだろうなぁ。
「……何の用ですか」
「こんにちは、ユウガオさん。今日はガチグマについて話を……」
「そのことなら帰っておくれ、これはガチグマのキャプテンであるわしの仕事です。コンゴウ団はもちろん、ギンガ団のような余所者に邪魔されたくありません」
「………」
「…おや?この石板、欠けていませんか?」
「え?あ、ほんとだ」
よく見ると、石板の中央が欠けている。しかもこの欠け方……無理やりひっぺがしたみたいな感じだ。
「……野盗ですよ、わしの居ない間に大切な遺跡の石板を盗むなんて罰当たりな」
「石板を、盗む……」
なんだか前にガラルで起きたビートさんの事件みたいだ。あの時は遺跡の下に英雄の像があったから大して問題にならなかったみたいだけど、今回はさすがにダメだろう。
「その野盗って、どんな見た目ですか?」
「…顔に変な隈取を入れていましたけど。けどそれが何に……」
「分かりました!行きましょうショウさん!!」
「えっ、どこに!?何しに!?」
「石板を取り返しにですよ!ユウガオさん、もし取り返したら話聞いてくれますか!?」
「え、あぁ、もし取り返すことができたら、いいですけど……」
「よし、レッツゴー!!」
ズイの遺跡を出て、早速調査だ。野盗と言っても人間だし、そこまで遠くには行けないはず……
「あの!アマネさん、なんで石板を取り返すなんて…」
「え?だってユウガオさん悲しそうだったじゃないですか」
「……それだけ?」
「はい、それだけですけど」
「………」
本当は下心もちょっとあるんだけど……まあこれは内緒にしておこう。それに僕よりも気持ちのこもってる人がいるからね。
「そういうことならジブンも協力いたしましょう!歴史的価値のある石板を盗むなんて、許しがたい!!」
「ウォロさん、なんか便利な道具とかないですか?こう…ダウジング的な」
「う〜む、そういった類のものはありませんが……代わりにこちらなら」
そう言ってウォロさんが取り出したのは、何かの布きれ。
「これは?」
「先ほど遺跡の入り口で見つけましてね、これはおそらく野盗のものでしょう。そしてこれを……トゲピー!」
「ぴぃ!」
「トゲピーの神通力で探れば……できました!」
エスパーパワーで、森への道標ができた。つまりこの先に野盗がいるってことだ。エスパーってすごいなあ。
「では早速行きましょう!ほら、ショウさんも!」
「は、はい」
ウォロさんに引っ張られて僕たちは森へ進む。すると何やら野宿の跡らしきものがあった。
「ふーむ、どうやら野盗は3人組のようですね…おや?」
「人の住処を漁ろうなんて、趣味が悪いね!」
背後から声が聞こえる。振り向くと、奇妙な隈取をした3人組の女の人たちが立っていた。
「あたくしたちは……」
「ヤーーーっ!!」
「ぎゃあ!?」
何やら名乗ろうとしていたので、先手必勝で激辛玉を投げつけた。人間相手にはポケモン相手の半分くらいのサイズを使ってるからOK。多分。
「ぎゃああ、辛い、痛い痛い!!」
「大人しく石板を返せば命だけは見逃してあげますよ?」
「なんで命以外は無事じゃない前提なんだ!!オウメ、返してやりな!あんなもん金にもならない!」
「ふん、ゲホゲホ……覚えてろ〜〜!!」
野盗3人は涙を流してむせながら逃げていった。逃げ足が早いな……そのまま捕まえるつもりだったんだけど。
「よし、石板ゲット!」
「やりましたねアマネさん!さあユウガオさんに渡しに行きましょう!」
「………」
急いでユウガオさんに石板を渡しに行く。僕たちが石板を持って帰ってきたことに、ユウガオさんは驚いているようだった。
「あらまあ……本当に、石板を取り返しに行ったの?」
「はい!」
「どうして?わしのような初対面の人間に、そこまで親切にする義理はないでしょう?」
「? だってユウガオさん、困ってましたもん」
「……それだけ?それだけで、あなたは石板を取り返すと?」
「あー、それもありますけど……」
「?」
「その前に!ユウガオさん、石板は取り返しましたし、話聞いてくれますか?」
「ああ、そうでしたね。ええ……分かりました、聞きましょう」
「ショウさん!」
「…はい、実はですね……」
ユウガオさんに話をすると、たいそう驚いているようだった。
「まあ……やはりガチグマの様子はおかしかったのね。ただキングたちのような暴走ではないと思うけど…」
「なるほど…詳しく話を聞かせてもらえませんか?」
ショウさんとユウガオさんが話をし始めて、僕はウォロさんに手招きされた。
「それで?アマネさん、ズバリあなたの本当の目的はなんですか?」
「あー……聞いちゃいますか、それ」
「それはもう!ジブン、気になったことはとことん調べるたちでしてね!」
「ちょっと下心なんですけど…」
「構いませんよ、話してください」
「その……僕たちが石板取り返したら、ユウガオさんがショウさんの話を聞いてくれるかなって。」
「……それが、下心?」
「はい、そうなりますね…」
「……ふふ、あっはは!アマネさん、それは下心とは言いません。取引と言うんですよ。恥じる必要はありません」
「なら、良かったですけど……」
「……ふふ、あの子は随分人が善いのね」
「はい、アマネさんはとても優しい人です」
「……でも、あなたもそうでしょう?」
「え?」
「だって、あなたがひたむきに頑張っているから。アマネさんは、あなたの力になりたいと思ったのでしょう。」
「……そう、ですかね」
「ええ、きっとそうでしょう。たとえそれが何のためであろうとも。あなたが努力したことに間違いはありません」
「……何だか急に柔らかくなりましたね」
「ふふ、そうですねえ。わしにもあんな頃があったのだと少し…懐かしくなりまして」
アマネさんは、石板と引き換えにユウガオさんに話を聞いてもらうことを下心だと言った。なんとまあ、優しい人なのだろう。そういう人だから、きっと私やユウガオさんの気持ちが優しくなるのだ。
そういう人だから、私は守りたいと思うのだ。
アマネ
困っている人がいたら自分にできる範囲のことをする。それがアマネなりの優しさ。
ショウ
アマネにこんがり脳を焼かれている。