ぼくたちは ひとりぼっちだった
モクローは 仲間はずれ コリンクは 人に親を殺された コイキングは 色のせいで疎まれた
ヌメラは 強すぎた リングマは 住処を人に追いやられた ゾロアは 人に殺されかけた
それでもショウは ぼくたちを愛してくれた 優しくしてくれた
だからぼくたちはショウについていく たとえ地獄だって
「何事だ!?」
轟音と地響きにデンボクが驚いて外に出ると、ポケモンたちがムラを破壊して回っていた。建物を壊して、大暴れしている。
「どういうことだ、いったい何が……」
ドゴッ
鈍い痛みを頭に受けて、デンボクが地に伏せる。見上げると、そこにはジュナイパーを従えたショウがいた。
「ショウ……!?これは、まさか貴様が……ぐっ!!」
「私ね、貴方が大嫌いなの」
ジュナイパーに腕を踏まれ、身動きが取れないデンボクにショウは語りかける。
「だってそうでしょ、ずっと余所者って、信用できないって。そのくせ必死に働いたのに追放するもんね」
「ショウ、それは……!!」
「分かってる、コトブキムラを守るためだって言いたいんでしょ。でもそれが私になんの関係があるの?悪いけど、私にこのムラへの愛着はない」
「お前に理解されずとも、私は……」
「追放された時、全部壊してやろうと思った。でもアマネさんがいたから、私は頑張れた」
「アマネ…?そうだ、アマネはどこだ!奴がいればお前はこんなこと……」
デンボクの頭を、ショウは強く踏む。
「気軽にアマネさんの名前を出さないでくれる?不快なの」
「………」
「アマネさんは元の時代に帰った、私のことも忘れて幸せに暮らしてるはず」
「なに……!?」
「それでね、思ったの。アマネさんがいないなら、もう英雄でいる必要なんてないって。もうムラでヘラヘラしている理由もないってね」
「お前を信じた人々を、裏切るのか……!?」
「別に。まあ多少罪悪感はあるけど、それ以上にね」
ショウが、デンボクの顔を覗き込む。その瞳に、光はなかった。
「大嫌いなお前の大切なものを、全部壊してやろうっていう思いの方が強いの」
「……!!」
「別に皆殺しにするわけじゃない、ただムラをめちゃくちゃにするだけ。いずれは皆ここを離れて新しい暮らしをするでしょうね」
「やめろ、やめてくれ……!!皆が必死で築き上げたムラなのだ、私のことは好きにしてくれていい、だがどうかムラだけは……」
「………」
ショウが、赤いギャラドスを繰り出す。ギャラドスを見て、デンボクの顔は青ざめる。
「い や だ」
「____」
「やって」
ギャラドスが口を開く。デンボクは静かに目を閉じた。
ぱきゃっ
「誰か、助けて……」
瓦礫の下で、ヒナツはか細く助けを求めた。突如ムラを襲ったポケモンたちによって、建物は皆ただの瓦礫になってしまった。髪結いの店も例外ではなく、店主を助けたのちに、ヒナツも崩落に巻き込まれた。
「ヒナツさん、大丈夫ですか?」
「ぁ、ありがとう……!!」
ヒナツは手を取る。しかし立ち上がって、固まった。そこにはムラの惨状に不釣り合いな笑顔を浮かべたショウがいたからだ。
「……あんた、ショウなの……?」
「いやだ、ヒナツさんったら。私は本物のショウですよ」
「……ショウ、どうしたの、どうしてムラがこんなことに……」
「私がやったんです」
「え?」
「もうこのムラを守る義理も理由もないから、壊したの」
「嘘、だよね、ショウが、そんなことするはずない、だってショウは、ヒスイの英雄で……」
「ごめんなさい、ヒナツさん」
ショウがヒナツの前で小躍りをする。まるで本当に、この状況を楽しんでいるような……
「ヒスイの英雄はね、死んだの」
「………!!」
その一言だけで、ヒナツはショウに何かがあったのだと悟った。あれだけ耐えてきた、ひたむきに頑張ってきたショウの心が壊れるような、何かが。
「セキさんとカイさんを呼んできてくれます?最後に話がしたいの」
「……分かっ、た。呼んでくる」
抑えきれない後悔の念を背負いながら、ヒナツは走り出した。
ショウが、コトブキムラを襲っている。そうヒナツから告げられた時、セキとカイは悪い冗談だろうと思った。けれど。
「ショウが、壊れちゃった……お願いだよリーダー、ショウを止めて……」
涙ながらに訴えてくるヒナツに、嘘ではないと理解した。そして。
「嘘、だろ……」
「これを、ショウさんが……?」
ムラの惨状を見て、2人は絶望した。あれだけ賑わっていたムラが、今や建物は崩れ、人々の悲鳴で溢れている。
「あ、2人とも。来てくれたんですね」
「ショウさ……」
振り向いた2人は、硬直した。ショウが、大量の血を流すムベを引きずっていたから。
「ムベさんにもいっぱい邪魔されたし、嫌なこと言われたし。まあデンボクほどじゃないから楽に殺したけど」
そう吐き捨てて、ムベだったものを放り投げた。ムベの体はぐにゃりと力なく折れ曲がった。
「ショウ……本当にお前がやったんだな」
「そうですよ、私がやった」
「どうして……どうして、ショウさん……」
「どうして?そんなの分かりきったことじゃない?私がこのムラを壊す理由なんて」
「だとしても……!!」
「やめて、セキ」
カイが、セキを止める。カイの大きな瞳からは、涙が溢れていた。
「……それが、ショウさんの決断なんだね」
「そうです、後悔も反省もしません」
「そう……生きている人はいる?」
「デンボクとムベと……ああ、あとそこの女と、シュウゾウさん以外は殺してませんよ。エスパータイプのポケモンたちを使って、できる限り人は助けてますから」
「分かった、じゃあわたしたちは他に巻き込まれている人を助けるから」
「おい、カイ……!!」
「ショウさんに当たってどうするの?戦ってショウさんに勝てると?」
「それは、そうだが……」
「それに……」
カイは、ショウを見つめる。目の前で口角だけをつり上げている、壊れてしまった少女のことを。
「きっと、なにを言っても無駄だもの」
「………」
「分かってくれるんですね、よかったぁ。それじゃあ私はこれで!」
ショウが足取り軽く去っていく。セキとカイは、ただそれを見送ることしかできなかった。
ショウが、ムラを襲っている。そう聞いた時テルが思ったのは
やっぱりな、であった。
ショウのような力を持った人間を不当に扱い、蔑み、どうなるかなんて分かっていただろうに。きっとこれは、自業自得なのだ。ショウを苦しめたから、ショウに押しつけたから。
だから、罰が当たった。
ムラにたどり着いた時、テルは変に落ち着いていた。混乱するラベン博士やシマボシを、ただ宥めていた。ムラの入り口にはムベと調査隊員の亡骸が。そしてぐちゃぐちゃになったギンガ団本部の前には。
「……団長」
頭部を噛み砕かれたデンボクの亡骸があった。かろうじてかけられていたファーコートが、この無惨な亡骸がデンボクであることを示していた。
「お前ら!」
「ペリーラさん」
「良かった、無事だったんだな!ともかく手伝ってくれ、瓦礫に巻き込まれた人たちが!」
テルは、残された調査隊員や警備隊の面々と共に救助を手伝った。建物も見る影がない。しかし結局、死者はデンボク、ムベ、シュウゾウ、それからショウのことを妬んで頻繁に悪口を話していた女の調査隊員だけであった。
要するに、ショウの目的はムラをただ壊すこと。そのついでに、デンボクたちを殺害した。
「報いだな」
誰にも聞こえないような声で呟いて、テルは救助を続けた。
数日後
ギンガ団の人々は今日も救助活動に勤しんでいた。ショウのことは、誰も口に出さなかった。この災害がたった1人の少女によって引き起こされたものであることを、口にしたくなかったのだ。
「………」
「あら、ウォロさん」
そんな光景を高台から眺めるショウに、ウォロは近づいた。
「私には会いたくないんじゃなかったの?」
「……ムラがこんな有様と聞けば見に来ますよ」
「ひどいでしょう、私がやったの」
「一応聞きます、なぜ?」
「分かってるくせに」
ショウの隣に、ウォロは座る。なにも語らない。語ることが思いつかない。
「ねえウォロさん、私ってアルセウスが作った
「……はい?」
「アルセウスがこの時代のポケモンと人を知るためだけに作った道具。だからアルセウスに見初められたとかじゃないの。私は最初からアルセウスのものだったの」
「………」
「ねえ、ウォロさん」
ショウがウォロの手を握る。その手つきは妙に艶かしかった。
「貴方は、アルセウスに会いたいんでしょう。私も同じ。絶対に見つけ出して、殺す。だから協力しません?」
「………」
「もっとも、私はあれ以降会えていないけど」
「………」
「どうします?」
「……分かりました、協力しましょう」
ウォロはショウの手を握り返す。神への執着心が、2人を結んだ。
ショウの手持ち
皆孤独だった。ショウにゲットされてようやく安心できる日々を手に入れた。
ジュナイパー レントラー ギャラドス ヌメルゴン ガチグマ ゾロアーク