目を覚ます。僕は、なにを……?そうだ、確かヒスイ展を見に来て……
「……あれ?」
目の前の絵画……こんなものだったっけ?
▽崩落した ギンガ団本部。特に3階は跡形もなく 粉々だ。
「もし、そこの方」
誰かが声をかけてくる。振り向くと、シロナさんにそっくりな男の人が立っていた。
「えっと……?」
「すみません、驚かせてしまいましたね。少々お話がありまして」
「話、ですか?」
「はい、よければ外のベンチで」
男の人は優しい微笑みで誘ってきた。飲み物もおごってくれるというのでご馳走になることにした。ちなみにいちごオレを頼んだ。
「それで、話ってなんですか?」
「……ある、少女の話です」
そう言って、男の人は語り始めた。
少女は、ひとりぼっちだった 頼りになる人もポケモンもおらず ただ孤独に生きていた
けれど運命に 出会った
お人好しで優しい少年 彼と過ごすうちに少女は人並みの幸せを 幸せな未来を 希うようになった
しかし世界は 残酷だった
少女は神の道具だった 未来に生きる少年とは 共に生きられないと 告げられた
そして少女は壊れた
世界を憎み 神を憎み ただ復讐に身を焦がした
神を殺す ただそれだけのために生きた
けれど望みは叶わないまま 彼女は眠りについた 報われぬまま 独りのまま
「……悲しい、お話ですね」
「ええ……とても」
「でも、どうしてその話を僕に?」
「……これを、アナタに」
男の人が、何かを手渡してくる。これは……櫛?花柄の、紅い櫛。
……どうしてだろう。僕はこれを初めて見た、そのはずなのに。
「う、うぁ……うぅ………」
こんなにも、悲しいのだろう。涙が、止まらないのだろう。こんなに、胸が締め付けられるんだろう。
「……それは、彼女が最後まで捨てることのできなかったひとかけら。どうか、アナタが持っていてください」
「……お兄さんは、いったい……」
「ワタクシですか?ただの……考古学者ですよ」
そう言って、お兄さんは去っていった。僕はただ、渡された櫛を抱きしめた。
「……ショウさん、もうやめませんか」
「何を言ってるの?」
「ワタクシと違って、アナタは老いるのが普通の人間と同じだ。時間は短い。短い命を神への復讐に使うよりも、もっと普通の幸せを……」
「ウォロさん」
「私、もうそういうのやめたの」
「……そう、ですか」
男は回顧する。少女のことをどう思っていたのか、自分でも分からない。哀れんでいたのか、それとも愛していたのか。それでも確かなのは。
少しだけでいい。どうか、報われて欲しかった。彼女に幸せになって欲しかった。
少女は、人生の全てを神への復讐に費やした。けれど神に会うことすら叶わず、失意のうちに死んだ。それでも、少女は最期まであの紅い櫛を手放すことはなかった。
彼女が、人並みの幸福を望んだ証。少女をまっすぐに見つめ、少女に愛を教えた少年からのおくりもの。
「ちゃんと、渡しましたよ」
また、男は旅に出る。目的は特にない。ただ、静かに生きる。それだけであった。
『これで、この物語も終わりでしょうか。タイムも縮みましたし、子孫も現代まで残っている。死人は出ましたが、些事ですね』
「ずいぶん他人事なのね」
『……何者です、この神の領域に足を踏み入れるとは』
「お前は、彼女の人生をなんだと思っていたの?」
『特に何も。使命を完遂したあとは特にどうということはありません。何やら復讐と言っていたようですが、私にはよく分かりません』
「そう、お前はそういう生き物なのね。なんて哀れな」
『……質問に答えなさい、あなたは何故ここに』
「わたし?そうねえ、強いて言うなら復讐かしら」
『あなたと私は初対面のはずですが』
「そうね、でもわたしは全部見てたわ。ショウとアマネの過ごした時間を。別にアマネ以外はどうでもいいんだけど……ほら、わたしとショウ、同じ人を好きになった女同士、仲良くなれそうじゃない?」
『……それだけですか?』
「それだけじゃないわよ、1番大事な理由。アマネを泣かせた。それだけで、わたしはお前を殺す」
『愚かな。人が神に挑むことの意味を分かっているのですか』
「そうね、普通なら、ね」
無数の触手がアルセウスを縛る。どういうわけか、抵抗ができない。まさか、自分以上の力が……
『まさか、馬鹿な!!私を縛るものが……あっていいわけが!!』
「やっと感情が出てきた。まあ神なんて所詮不完全なものしか作れない、人間と同じだものね」
『お前は……何者だ!!』
「わたし?どうでもいいじゃない。でも理由なら教えてあげる。」
「愛は、無敵ですもの___!!」
はい、というわけでextraヒスイ編終了であります。
アルセウスがアマネを送り込んだ理由ですが、言ってしまうと「RTA目的」です。前回……つまりアマネがいなかった時間では、ショウは普通にゲーム通りにストーリーをクリアしてポケモン図鑑も埋めました。
しかしアルセウスは考えました。「もう少し早く終えることもできるのでは?」と。そしてアマネというお人好しでバトルもできる助っ人を送り込んでタイム短縮を図りました。結果がこれです。邪神ですね。
ですがアルセウスも愛の前には敵わなかったようですね?