種付け奴隷剣闘士として売られた僕が貞操逆転世界で地位を得るには   作:恋狸

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逸材、その名は

Side ???

 

「うわクッサ……。オーナーぁ、掃除するの私たちなんだから勘弁してくださいよぉ……」

「ああ、すまないすまない。思いの外()()()()()()しまったようだ。……いやぁだがしかしね、それも仕方ないと思わないかい?」

「まあまあ……()()()()()見せられたらそうなるのも無理はないですけどぉ」

 

 バケツと雑巾を持って現れたメイドが、私の部屋に入るなり顔を顰めて鼻をつまんだ。

 ここ──ヌルシアムのオーナー室では《遠見魔術》によって闘技場の選手たちを自由自在に見ることができる。

 

 拡大、縮小も思いのまま。

 なんと録画機能だって備わっている。

 

 その魔術を使うことで、私はオーナーとして好き勝手自由にシコ……気持ちよくさせてもらっている。

 ふぅ……私財をはたいてこの男娼闘技場を作った時はどうなるかと思ったが、まさか()()()()()()私の当時の何十倍まで私財が膨れ上がるとは思ってもいなかったな。

 

 さてさて……そんなことより、だ。

 このヌルシアムを建ててから百年が経ったが──あんな()()は見たことがない。

 

「ふふふ……はははっ!! ようやくだ。ようやくだよ。ようやく私のもとにやってきた……!! 伝説の()()()()()()が……!!!」

「チンタレスト? なんですかそれ」

 

 私の言葉にメイドが疑問符を浮かべた。

 ふむ、知らないのも無理はない。

 

「君も見ただろう? 天高くそびえ立つユウタ・ハイバラの股間を。ここ数百年、自力で勃起できる男など現れることは無かった。人工受精魔法の影響を受け、年々元々少なかった男の性欲は更に希薄になった」

 

 数百年前に人工受精魔法を開発した大魔女は偉大な発明をしたと言える。人類を存続させるために必要不可欠な魔法だ。

 だがしかし、かの魔女はその魔法が与える影響までは思考が及んでいなかった。

 

 いや、人工受精魔法によって生まれた男の性欲が希薄だなんて想定すらしていなかった可能性はあるな。

 

 ……畢竟、世界は性欲に溢れた女性たちのみが生き残り、性欲の無い男はそんな女性を忌み嫌い、需要と供給が崩壊した世界になった。

 

「かつて貴族の間のみ、とある大予言を残した叡智なる……いや、えっちな魔女がいた」

「そこ言い直す意味ありました?」

「だって、予言を残した以外ずっと自分の部屋にこもって情事に耽ってるカスだったから……」

「えっちな魔女だ……」

 

 能力はあるのに世のために使おうと微塵も考えないカスだったからなぁ……あのコは。まあ、そんなところを私は気に入っていたのだがね。

 

「さて、予言の内容はこうだ──【(とき)が満ちる時、異界の帳より一人の"特異点"が降り立つ。その者は氷の時代に"原初の火"を灯す者なり。女を厭わず、また媚びず。 己が内に眠る荒ぶる獣(リビドー)を、激情のままに解き放つ、自在の鍵を持つ者なり。かの者、その名はチンタレスト】」

 

 晩年、この予言を残して旅立った彼女は、枯れ果てた貴族たちの間に希望と性欲をもたらした。

 引きこもって情事に耽るカスではあったが、あの人工受精魔法を開発した大魔女の子孫というだけあって、能力だけは評価されていた。

 

 だからこそ、予言は真実であると誰もが信じた。

 いつか、いつか現れるチンタレストを信じて。

 

「……ふふふ、私は予言を信じてこのヌルシアムを作ったんだ」

「……それはまたどうして」

「でなければ大貴族に独占されてしまうからだ。あんな逸材を一人のものにしてしまうのは惜しい。彼はきっとこの国を救う大英雄になる」

「じゃあ身請けとかもさせないんですか?」

「ああ。そのために出資者を募らずに己の私財のみでヌルシアムを作り上げたんだ。誰にも口出しをされる筋合いは無い」

 

 とは、いえ……あの逸材……ユウタの勝ちへの貪欲さを見る限り、身請けを嫌がってる雰囲気はあると思っている。

 だからこそ、彼の勝ちへのモチベーションを奪うわけにもいかないだろう。

 

「ユウタ・ハイバラには成長してもらわねばならん。負ければそれ相応の罰を与えることには変わりないよ。ふふ、たとえばこの年増を相手に童貞を卒業してもらう、だとかね」

「職権乱用はんたーい」

 

 ぶーぶー、とメイドがブーイングをしてくる。

 興味無いみたいなツラをしているが、このメイドも男に飢えていることは知っている。

 

 なにせ、いつもは秒単位で正確な時間に掃除をしにやってくるはずが、今日に限っては()()()遅刻している上にメイド服が少し乱れている。

 

 自制を叩き込まれた歴戦のメイドといえども、ユウタ・ハイバラのフル勃起シーンには性欲を抑えきれなかったに違いない。

 

 ──今や世界中の人間がユウタ・ハイバラの貞操を狙っている。

 

 世の女性にとって性行為とは、人生を賭けてまで手にしたい経験だ。なにせ、今の男は勃起などできぬのだから全員が処女。

 あの巨大なイチモツで貫かれたいと、ヌルシアムでユウタ・ハイバラの勃起シーンを見た観客たちは全員が全員そう思っただろう。

 

「ふむ……悩みどころだな……女剣闘士に挿入禁止を言い渡すか、それともガンガンヤってもらって経験を積ませるか……」

「もしかしたら、ユウタ・ハイバラが全勝する可能性もありますよ?」

 

 メイドの言葉に私は思わず笑いがこぼれた。

 それは絶対にあり得ないことだ。

 

「ふははっ! まさか。──ここ、ヌルシアムには大勢の女剣闘士(へんたい)がいる。女の数だけ性癖がある。ユウタは見たところ、自分から攻める小悪魔タイプだ。それが性癖じゃない女剣闘士だっている。きっと惑わされずに勝ってくれるに違いない」

 

 確かに男という存在は性癖すらも揺るがしてしまうものだが、だとしても性癖にそぐわないことは全て否定するタイプの変態もウチにはいる。

 

「幾ら伝説のチンタレストといえど、全ての性癖に対応することなんて──絶対に不可能なのだから」

 

 

☆☆☆

 

「はっくしゅん! うう、誰かが僕の噂でもしてるのかな」

 

 いやぁ……にしても何とか勝てたね。

 油断を突いただけではあるから、同じ手でずっと勝てるとは僕も思っていない。

 

「次の試合まで一週間……ヌルシアム内なら自由行動できるらしいし、対戦相手の情報を探りに行くのが良さそうかな」

 

 実は次の対戦カードは事前に知らされている。

 だからこそ、この一週間の待機時間を有効に活用することが試合に勝つための近道なのではないかと僕は思った。

 

「ビッチになる。そう決めたからには──全ての性癖に対応する必要がある」

 

 少し考えた。

 人の数だけ性癖がある。これは僕の元いた世界でも何ら普通のことだった。

 

 男という存在が貴重になったこの世界でも、流石に好き嫌いはあると思う。攻めるのが好きとか攻められるのが好きとか。

 むしろこんな異質な世界(貞操逆転世界)だからこそ、煮凝りのようにえげつない性癖を引っさげてる人がいたって不思議じゃない。

 

「まあ、簡単に言えばドMの人にドMっぽく振る舞っても無駄って話だよね。SにはM、MにはS。古来からある法則でしょ」

 

 そのためには対戦相手の情報を探るのは必須。

 ……貞操逆転世界で男一人がぶらついても大丈夫か? って?

 

 ヌルシアムでは試合外で女剣闘士が男娼に迫るのは堅く禁じられてるから平気らしいんだよね。

 まあ、男娼は試合以外だと自分の部屋に引きこもってるらしいけど。そりゃそうか。

 

「あ、その前に他の人の試合でも見てみるか。何かの参考になるかもしれないし」

 

 

☆☆☆

 

「んほぉぉぉぉおおおおおおおお!!!♡♡♡」

「いやぁぁぁぁあああああ!!!!!!」

 

 なんの参考にもならなかった。

 

 

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