種付け奴隷剣闘士として売られた僕が貞操逆転世界で地位を得るには   作:恋狸

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運営に怒られない限り頑張りたい


新人潰し──メスリス・ガキ・ゴールデンブレイカー

「まずは聞き込みが定番、ってね」

 

 僕は何の参考にもならなかった試合会場から離れ、まずは僕と同じような種付け奴隷剣闘士が暮らしている区画に行った。

 ちなみにこの区画は女剣闘士の立ち入りが禁止されている。

 

 逆に女剣闘士が暮らしている区画への立ち入り制限は無いんだけどね。誰も行かないから実質機能してないシステムらしい。

 まあ、これから僕が行くんだけど。

 

「ふーむ、やっぱりみんな部屋に引きこもってるっぽいなぁ。人の気配が全然しないや」

 

 意外と……いや、男性が貴重な貞操逆転世界なら妥当かもしれないけれど、種付け奴隷の僕たちには一人一部屋が与えられている。

 部屋の広さもそこそこなもので、トイレ、キッチン、風呂付きのワンルームだ。一人暮らしなら何ら苦労しない程度の規模感だから、僕としては生活環境にかなり満足だったりする。

 

 今度食材でも手配して料理作ろうかなー。

 昔、料理のできる男はモテるって聞いたことがあったから猛烈に練習したんだよね。

 結果は全然モテなかったから意味なかったけどさ。

 

「うーん、男同士の交流は禁止されてないから部屋凸するか」

 

 僕はとりあえず近くの扉をノックする。

 

「ひぃぃいい!!!」

 

 返答は悲鳴で返ってきた。なにゆえに。

 

「どうもー! 新人奴隷のユウタですぅ!! ちょっとお話聞きたいんですけど大丈夫ですかー!」

 

 そんな挨拶を扉越しにすると、数十秒後にカタカタ……と何かを動かす音がしたかと思えば、カチャリと扉が空いた。

 

 中から現れたのは金髪碧眼のイケメンショタだった。

 彼は僕を一瞥するなりホッと息を吐いて言った。

 

「なんだ男か……入りなよ」

 

「どーもどーも、失礼します」

 

 無事に招かれたことにホッとしながら僕は部屋に入る。

 彼の部屋はカーテンが閉められていて暗かった。部屋も物で乱雑だし、なんだか一人暮らし初心者の男部屋っぽくて僕はちょっと微笑ましい気持ちになった。

 

「……そんなとこで突っ立ってないで座りなよ。適当に物どけて座っていいから」

「ありがとうございます!」

 

 僕は指示通り適当に物をよけて座る。

 金髪ショタは自分のベッドにドカッと音を立てて座ると、胡乱げに僕を見ると言った。

 

「おれの名前はガンキ・ウマノリィ。……おまえのことは知ってるよ、ハイバラ。数十年ぶりに試合に勝ったんだってな」

「あっ、噂になってるんですね。まあ、運の良いことに何とか勝てました。あっち側が舐めてくれてるお陰ですけど」

「ふんっ、謙遜はいいよ。おまえはおれたちができないことを成し遂げたんだ。……でもすごいな。いくら試合に勝つためだからって身の毛がよだつ亜人の女にキスするなんて。おれだったら胃の中身全部吐き出すよ」

 

 ……どうやら金髪ショタことガンキくんは僕の試合内容を把握しているみたいだった。思ったよりも僕がしたことは偉業というか、噂として広まってるみたいだ。

 

 にしてもやっぱりここは貞操逆転世界なんだなぁ……。

 僕からしたらフィルナさんの身体的特徴は性癖の範疇なのに。

 

 背が高いのだって巨女ジャンルでおシコり済みだし、僕は性癖の幅が広いから亜人系もなんじゃらほいのぼぼぼの勃起っきだ。

 

 というかフィルナさんは現代日本だと亜人と言えるほど異形じゃない。

 モンスター娘愛好家から叱られるくらいには人間的特徴が残っている。

 

 あとは巨乳だし普通に可愛いし……。

 やれやれ……甘いね。"上"で待ってるよ。

 

「まあ、それは置いておいて。ガンキ先輩はヌルシアム歴長いんですか?」

「おれは二年目。ここじゃ長いほうだよ。新人は知らないかもしれないけど、おれたち奴隷は二回負けるとしばらく試合が無いんだ。もう男奴隷の処刑なんて十年に一回あるかどうかだし、三回目の試合までにオーナーが身請け先を探すのさ」

「なるほど……つまり三回目の試合がヌルシアムの実質引退試合みたいになっていると。それで、勝敗関係なく身請けされるって感じですかね」

「ああ、そうだ。……ふ、だからおまえがノックした時、ついに身請けが決まったのかと思ったんだよ。ビビらせやがって」

 

 ガンキ先輩は青い顔でぷるぷると震え始めた。

 どうやら誰もが身請けは嫌がるものらしい。

 

 というよりここまで女嫌いということは、きっとどんな美人が身請けしようが嫌がるに違いない。貞操逆転世界だなぁ。

 

「ガンキ先輩は女性が嫌いですか?」

 

 するとギンッ! と僕を睨みつけてガンキ先輩はまくし立てる。

 

「当たり前だろ!!! むしろ好きなやつがこの世界のどこにいるってんだ!?!? 奴隷になる前も虐げられて、奴隷になった後も虐げられる! おまけに人生の行き着く先は好事家の変態貴族に飼われる運命!! ……くそっ、ギャンブルでスらなきゃ奴隷になんてならなかったのに……」

 

 一気に同情できなくなったんだけど。

 ギャンブルで負けたから奴隷になったんかいあなた。

 

 前半は「あぁ、貞操逆転世界ならではの苦労なんだなぁ……僕にとってはご褒美だけど現地民からしたらそりゃキツイよねぇ」とか同情モード入ってたのに台無しだよ。

 

 僕はスンッとしてガンキ先輩に本題を聞くことにした。

 

「ところで聞きたいことがあるんですけど」

「ああ、そういえばそうだったな。おれの愚痴を聞いてくれたことだしおれに答えられることなら良いよ」

「実は次の対戦相手の情報を聞きたくてですね」

 

 するとガンキ先輩は僕のことを尊敬するように見た。

 その表情は一縷の希望を見たと言わんばかりだ。

 

「おまえ、本当に試合に勝つ気なんだな……。いいよ、知ってるやつなら答えられる。……まあ、貴重な勝利選手を潰すような真似はしないと思うから、きっと女剣闘士の中でも比較的優しいやつを────」

 

「メスリス・ガキ・ゴールデンブレイカー、って人なんですけど」

 

 

「は…………?」

 

 

 

 するとガンキ先輩は今にも吐きそうな顔で震え始めた。

 まるで思い出したくない名前を聞いたと言うように。

 そして、口元を押さえながら彼は言った。

 

 

「……どうやらオーナーはおまえを殺したいらしい。まさか……あの──"新人潰し"とマッチするだなんて……可哀想だ……」

 

 

☆☆☆

 

 

 メスリス・ガキ・ゴールデンブレイカー。

 

 異名は──新人潰し。

 

 

 彼女は一見、か弱い幼女のような見た目をしているらしい。

 いつも飴を舐めていて、ニヤニヤしているだけの力の無い幼女だと初見の男奴隷は勘違いして、ホッと……今日の試合は負けたとしても辱められずに済みそうだと安心するらしい。

 

 ──だがしかし、メスリスは相手をひたすら煽りながら弱点を攻め、言葉責めをするタイプの生意気な幼女だった。

 

 

 更に特徴的なのは試合に勝った後の彼女の行動だった。

 

 

 ──潰した玉の数は両手で数え切れないほど。

 金玉と一緒に、新人の心まで潰してしまう残虐性。

 

 治癒魔法で金玉自体は治るものの、潰されたメンタルまでは治らない。

 

 それゆえに、心を壊され再起不能になった種付け奴隷が後を絶たないそうだ。

 

 

☆☆☆

 

 

「新人潰し、って潰すの金玉のほうかい。金玉ブレイカーやないかい。名は体を表しすぎでしょ」

 

 僕はガンキ先輩から教えてもらった情報を整理した上でそんなツッコミを独り言としてしたためた。

 

「うん、まあ……典型的なメスガキだね。敗北を知らないタイプの。……もっと情報を集める必要がありそうかな」

 

 僕は男が誰も寄り付かない魔窟──女剣闘士の区画に向かうことにした。

 

 

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