【遊戯王】ドラゴンマスター・サワダ   作:おならむし

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本作は『遊戯王デュエルモンスターズ』をモチーフにした、完全オリジナルの小説です。
友情と成長、そして切り札がぶつかる“王道ストーリー”を描きます。

※本文・ストーリー作成にAIを活用しつつ、作者が校正・推敲しています。原作のキャラクター/カード/設定は登場しません。
※“あの頃の遊戯王”の空気感を意識し、カード効果は簡潔にしています。




第一章:ドラゴンマスター覚醒
1:ドラゴン・オブ・ルイン


 夜空を切り裂くように、激しい雨が降りしきっていた。雷の閃光が一瞬、暗雲を照らし、またすぐに闇へと溶けていく。家の窓に当たる雨音が、心臓の鼓動のように不規則に響いていた。

 

 少年だったサワダユウジは、リビングの隅で不安そうに膝を抱えている。そんなユウジの頭を、父・サワダケイスケは優しく撫でた。

 

「怖いか、ユウジ?」

 

「……少しだけ」

 

 窓の外の稲妻に目をやりながら、ユウジは小さく頷く。ケイスケは微笑を浮かべ、テーブルの上に置かれていたカードの束から、一枚を取りあげた。

 

【挿絵表示】

 

 そのカードは【ドラゴン・オブ・ルイン】。闇色の背景に、鋭い瞳のドラゴンが描かれている。まだ幼いユウジには、その迫力だけでも十分に畏怖を感じさせた。

 

「いいか、ユウジ。デュエルっていうのは、ただ勝ち負けを競うだけじゃない。自分の心を磨くものなんだ。強さだけを求めても、本当の勝利なんて得られない」

 

 ケイスケはそう言いながら、カードを丁寧にケースに戻す。傍らの母やユウジの様子を気にしつつ、まるで宝物でも扱うかのように慎重な手つきだった。

 

「ねえ、お父さん。どうして、そのカードをそんなに大事にしてるの?」

 

「このドラゴン・オブ・ルインには、不思議な力が宿っているかもしれないんだ。大げさかもしれないけど、いつか世界を救う力にもなり得る……そう信じてる」

 

 ケイスケの言葉は半分冗談のようにも聞こえたが、ユウジにはそれがどこか真実味を帯びているように感じられた。ゴロゴロと唸る雷鳴の音が、会話を途切れさせる。すると母が穏やかな声で、「さあ、そろそろ寝なさい。明日も学校でしょ?」とユウジを促す。

 

 ユウジは「うん」と答え、父から視線を外して部屋に向かおうとする。そのとき──

 

──────

 

 場面がかき消されるように、一瞬にして暗転した。今度は病室。白く清潔な壁に囲まれた病室のベッドに、ケイスケが横たわっている。先ほどの活気ある表情は嘘のように、やつれた頬が痛々しい。ユウジはその傍らで涙をこぼしそうになりながら、父の手を握りしめていた。

 

「ユウジ……これを……お前に託すよ」

 

 ケイスケは息を切らしながら、ポケットからカードケースを取り出す。そこにはドラゴン・オブ・ルインが収められていた。

 

 ユウジの小さな手のひらに、重みのあるカードケースがそっと乗せられる。

 

「いつか、お前がこのカードを使う日が来るだろう。その時は……俺の代わりに、世界を……守ってくれ」

 

「お父さん……」

 

 言葉にならない嗚咽をこらえきれず、ユウジの瞳から涙が落ちる。ケイスケはかすかに微笑み、ユウジの手を握り返そうとする。だが力が入らないらしく、その指先は触れた瞬間にすべるように離れてしまった。

 

 遠のく父の意識。ユウジは必死に呼びかけるが、声はかき消されるように遠ざかり、白いノイズに飲み込まれる──。

 

 ……やがて、すべてが闇に包まれた。

 

──────

 

 朝の光が、カーテンの隙間から差し込む。

 ユウジはベッドで荒い息を整えながら、汗ばんだ額に手をあてていた。

 

「また……あの夢か……」

 

 胸の鼓動がまだ早鐘を打っている。熱っぽい視線を周囲に巡らせ、ゆっくりと息を吐いた。右手で ベッドサイドのテーブルを探るようにし、自室の机に視線をやる。

 

 机の上には、カードケースが置かれていた。かつて父から手渡された、あの【ドラゴン・オブ・ルイン】が収まったケースだ。

 

 ユウジはそっと布団を抜け出し、カードケースの前まで歩み寄る。ケース越しに見えるドラゴンの姿は、どこか優しげにも見えるが、同時に鋭い威厳を秘めているように思えた。

 

「父さん……」

 

 ユウジはカードケースを手に取り、掌で包むように握りしめる。

 

 切なさとも決意ともつかない感情が、胸の奥でじんわりと熱を帯びていた。いつか、このカードを使う日が本当に来るのだろうか──。

 

 そんな不安と期待を抱えつつ、ユウジはベッドのそばに一度戻り、大きく息を吐くと、「よし……行くか」と気力を振り絞って制服に袖を通した。

 

 外では、まだ朝の涼しい風が吹いている。どこか、胸騒ぎを感じながらも、ユウジは登校の準備にとりかかった。

 

 このドラゴン・オブ・ルインが、自分の運命をどう変えていくのか……その答えを知るには、まだ少し時間がかかりそうだった。

 

──────

 

 朝の光が校門に差し込む頃、サワダユウジはいつものように自転車を漕ぎながら登校していた。気温はほどよく、秋の風が心地よい。今日もクラスメイトと他愛ない会話を交わしながら校舎へ足を運ぶ。

 

「サワダー! おはよー!」

 

 後ろから声をかけてきたのはクラスメイトの男子・ナカムラだ。彼はいつも朝から元気でサワダに無遠慮に絡んでくる数少ない友人の一人だ。

 

 サワダは片手を軽く挙げて返事をする。

 

「おはよ。相変わらず朝っぱらから元気だな、お前」

 

 靴箱の前で一緒に上履きに履き替えながら、ナカムラが問いかける。

 

「そういや聞いたか? 最近また“デュエルモンスターズ”が流行ってるらしいぜ。1年の連中なんか、休み時間に校庭で試合したりしてるんだと」

 

「ふーん、あんまり興味ねえけどな」

 

 サワダは素っ気なく答える。口ではそう言いながらも、内ポケットに入れたカードケースに軽く意識が向いてしまう。中には、亡き父の形見【ドラゴン・オブ・ルイン】が収められている。

 

「だけどよ、サワダってケンカっ早いくせにデュエル強いって噂があるぞ?」

 

「誰がそんなこと言ってんだよ……」

 

 ナカムラがニヤリと笑う。

 

「俺が知る限り、ケンカもそこそこ強いくせに、大会に出ないところがまたミステリアスらしいぜ。『学校最強のデュエリスト』なんて囁かれてるし」

 

 サワダは鼻で笑った。胸の奥に少しだけくすぐったい感覚を覚えながら、わざと大げさに肩をすくめる。

 

「単に俺がやってるのは、遊び半分のフリーデュエルぐらいだ。大会には興味ねえんだよ。……まあ別に、デュエルそのものが嫌いってわけじゃねえけどさ」

 

 そう言って歩き出すが、気づけばまた内ポケットを指先で確かめていた。そこに収まるのは、父から託された【ドラゴン・オブ・ルイン】。

 

 ただの形見──そう言い切れれば楽なのに、父が口にした“不思議な力”という言葉が耳の奥で反芻し、カードの表面から確かに微かな気配が立つのを感じてしまう。むやみに触れてはいけないのでは、という躊躇が同時に生まれて、踏み込みきれない。

 

 使いこなす具体的な像はまだ持てないのに、気づけばいつもポケットに入れている──支えのようで、火種のようでもある。

 

「おい、サワダ、もうHR始まるぞ。教室入るか?」

 

「ああ、行く行く」

 

 ナカムラに肩を叩かれ、サワダは微笑を浮かべる。

 

 廊下には他のクラスメイトも続々と登校してきていて、「サワダってあの人か?」「そうそう、つい最近校庭でフリー対戦したとき、圧勝だったらしいよ」とひそひそ話が耳に入る。

 

 サワダは聞こえないフリを決め込み、いつも通りの平凡な朝が始まった。

 

──────

 

 その日の放課後、サワダは普段より少し早めに部活を切り上げて帰宅した。家のドアを開け、「ただいま」と声をかけるが、母はまだ仕事から戻っていないらしく、家の中は静まり返っている。

 

 ナカムラが口にした“デュエルモンスターズがまた流行ってる”という噂が、なぜか胸の奥でじわりと残っていた。さっきまで他愛なく聞き流していたはずなのに、父の姿と【ドラゴン・オブ・ルイン】の感触が妙に鮮やかに蘇る。

 

「よし……今日は父さんの部屋を少し片付けるか」

 

 言葉にしてみて、自分でも驚く。サワダユウジの父──サワダケイスケの書斎は、彼が幼い頃のまま時が止まっている。

 

 これまで手をつけなかったのは、散らかった資料が“そのままの父”のようで、触れれば何かが壊れてしまう気がしていたからだ。悲しみの底にある微かな怖さ──引き出しを開けて、知らない父に出会うのが恐かったのかもしれない。だからずっと、見て見ぬふりをしてきた。

 

 けれど今日は違った。学校で飛び交った流行の話題が、封じていた記憶の埃をそっと払った気がした。母が不在で静かな今なら、誰にも邪魔されずに向き合える。サワダは気合を入れるように袖をまくり、書斎へ足を踏み入れた。

 

 書斎のドアを開けると、かつての面影がそのまま残っている。人が入らなくなって久しいせいで、どこか埃っぽい。サワダは窓を開け放って換気をしながら、父の残した物に視線を巡らせる。

 

「懐かしいな……」

 

 古びたデュエルディスクが棚の上に置かれていた。父が生前、何かを研究していた形跡はあるのだが、小さい頃は詳しく聞かされたことはなかった。さきほど耳にした“流行”という一言が、止まったままの時間に小さな揺らぎを与える。サワダはデュエルディスクを見つめながら、父が熱心にカードを見ていた姿を思い出した。

 

 机の上には複数のメモ書きが広げられている。そこに走り書きのような文字が目に留まる。

 

「“次元の力”……? なんだこれ」

 

 不思議に思いながらノートを手に取ると、さらに目を引く単語が並んでいた。

 

「“ドラゴン・オブ・ルイン”……これは、俺が持ってるカードのことか」

「“均衡”」「“次元帝”……?」

 

 あちこちに散らばるメモを眺めても、文脈がバラバラで意味がすぐにはつかめない。

 

 サワダはノートをめくり、父親の字で書かれた箇条書きを追いかけていくが、どうも断片的な情報ばかりが記載されているようだ。

 

「いったい……父さんは、何を研究してたんだ?」

 

 顔をしかめつつ、サワダはデスクの引き出しを開ける。中には幾つかのカードが束になって入っていた。その中には見慣れないドラゴン族のカードも混じっているが、あまり強いカードという印象はなく、どれも中途半端な効果ばかりのように見える。

 

 ただ、一枚だけ【ドラゴン・オブ・ルイン】に関連する記述がメモとともにクリップでまとめられており、“起源不明の力が眠っている”“次元の歪みを修正する可能性”など、専門的な文言がちらほら見られる。

 

 半信半疑のまま、サワダは自分のポケットからカードケースを取り出す。そこに収められたドラゴン・オブ・ルインを、改めて光の下で見つめた。

 

「……このカードは、なんなんだ?」

 

 強い疑問を口にしながら、そっとカードのイラスト面を指先で撫でる。見慣れているはずの黒いドラゴンの輪郭が、まるで薄暗い炎を宿しているかのように感じられた。

 

 父が残した数々のメモには「次元の均衡」「支配」など、不穏な単語が書き殴られている。だが、いくら見回しても、その詳細を説明するページは見つからない。

 

「父さんがこんなこと、考えてたなんてな……全然知らなかったぞ」

 

 サワダは苦笑いを浮かべながら、机の引き出しを閉める。部屋の隅にある箱をあらため、あちこちに散らばっていた書類をそこへまとめて入れる。作業を一通り終え、埃まみれの手を払うと、改めてカードケースを握りしめた。

 

「ドラゴン・オブ・ルイン……。本当に、ただのカードじゃない気がする」

 

 静まり返った書斎の空気が、一瞬だけユウジの気配に反応したかのように揺れた。気のせいかもしれない。だが、サワダは確かな胸騒ぎを覚える。

 

 最後に机の上に残ったメモをざっと見回し、軽くため息をつく。

 

「父さんが研究してた“次元の力”って……何なんだろうな。変な単語ばっかりでちっともわからない」

 

 それでも、父が遺した手がかりを自分の手で見つけたという感覚が、サワダの心を少しだけ軽くした。カードを携え、部屋を出ようとドアノブに手をかける。

 

 その時、ふと気のせいか、“ドラゴンの瞳”が自分を見つめているような感覚がした。──何か言いたげに、静かに呼びかけるような視線。

 

「まあ、いっか。わかるまで、もう少し時間がかかりそうだ」

 

 サワダは一人つぶやき、カードケースをポケットにしまう。淡い夕暮れの光が、書斎の窓を透かして床を染め始めていた。

 

 やがて、書斎のドアが閉まる音が家中に小さく響く。外では、早くも風が冷たさを帯び始めている。

 サワダの胸の中には、ほんの少しだけ熱いものが残ったままだった。

 

 ──それは“父の研究に対する好奇心”か、それとも“ドラゴン・オブ・ルイン”との不思議な縁か。まだ彼自身にも判別がつかない。

 

 こうして、平凡だったはずの高校生活に、“亡き父の部屋の整理”という小さな変化が訪れ、サワダはますますドラゴン・オブ・ルインの存在を意識しはじめるのだった。

 

──────────

 

◆次回予告

父の書斎で形見の謎に触れたサワダ。

その日常を切り裂くように、強気な転校生が教室をざわめかせる!

——「お前がサワダか?俺とデュエルしろ」

 

次回「デュエリストのたまご登場!」

デュエル、スタンバイ!

 

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