◇あらすじ
キタムラの繰り出した狂竜【バーサーカー・ドラニック・レイジ】によりコガのLPは消し飛ぶ。
コガとキタムラ、次元帝の部下同士のデュエルはキタムラに軍配があがった。
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狂気じみた猛攻でコガを撃破したキタムラは、高揚に満ちた表情で川原の空気を切り裂くような笑い声を上げた。夕闇に染まった河原には、コガが膝をついて倒れ込む音だけが虚しく響き、サワダとアラキは息をのむ。
デュエルに敗北したコガは肩で大きく息をしながら、下唇を噛み締めていた。
「コガ……!」
サワダは駆け寄ろうとするが、目の前でキタムラが立ちはだかる。凶悪な笑みを浮かべるキタムラは「やれやれ、つまらねぇな。もうちょっと粘ってくれるかと思ったんだが?」とコガを見下し、嘲るように言い放つ。
「てめぇが裏切り者呼ばわりされるのも当然だ。イシイ様から渡されたこの罠カード……使わねぇ手はねえだろ。地獄に落ちるがいい、カエル野郎……」
そう言うと、キタムラは怪しげな罠カードをディスクへ差し込み、発動を宣言する。そのカードからは黒いオーラが噴き出すように立ち上り、川原の地面を歪めるかのように霧が渦巻いていく。
アラキは思わず後ずさりして「な、なんだよこれ……!」と怯えの声を上げる。サワダも歯を食いしばるようにして「何をする気だ……やめろ!」と叫ぶが、キタムラは聞く耳を持たない。
「さあ、次元の牢獄へご招待だ……お前のような腰抜けにお似合いの監獄だぜ」
キタムラの宣言とともに、コガの周囲に黒い靄がまとわりつき始める。その闇はまるで生き物のように絡みつき、コガの体を掴んでいく。
耐えようとしても、コガには力が残っていない。もがき苦しむ彼を見て、サワダは必死に駆け寄ろうとするが、霧が結界のように広がり、近づけない。
「サワダくん……すまない……僕は……イシイの……でも……」
苦しげに口を動かすコガは、最後の一瞬にサワダへと視線を向け、消え入る声で言葉を残す。
「……次元帝の……野望を止めてくれ……お願い……だ……」
その瞬間、闇がコガの姿を完全にのみ込む。サワダは「コガ! おい、コガああ!」と絶叫しながら結界を破ろうとするが、霧は強固に彼を拒む。アラキも力を込めて駆け寄ろうとするが、どうすることもできない。
やがて、黒い霧がシュウっと音を立てるように消えていくと、そこにはもはやコガの姿はなかった。代わりに、闇の残滓のようなものだけが渦を巻くように散っていく。次元の牢獄に封印されたコガは、この場から完全に消滅したのだ。
「くそっ……コガァァァ!」
サワダは地面を叩いて悔しさを露わにする。コガの瞳に宿っていた苦悩が、ほんの数秒前の記憶として脳裏に焼き付き、どうにもやりきれない。
川のせせらぎだけが虚しく聞こえる中、サワダの絶叫が響き渡った。
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「ケッ、下らねぇ。最後までただの腰抜けだったか」
キタムラは勝利の余韻に浸るかのように肩を揺らし、嘲るような瞳をサワダとアラキへ向ける。次元の牢獄でコガが封印される様を見届けても、その狼のような目はまだ飢えているように見えた。
「ドラゴンマスター・サワダ、だっけか? あんなカエル使いにすら勝てねぇお前とやっても、今は面白くねぇな……」
獣じみた笑みを再び浮かべると、キタムラはサワダの横を素通りするように足を進める。サワダが「待て、コガを返せ……!」と怒鳴っても、キタムラは意に介さず語る。
──追え。追わなきゃいけない。頭では分かっている。
だが、キタムラの背から漏れる悍ましい殺気が、サワダの本能を縫い付けた。肺が冷え、心臓が一拍遅れる。
──相手はコガを狂気的な一撃でねじ伏せた。自分が勝てなかった相手を、迷いなく圧倒的な破壊で沈めたという現実が、目の前に焼き付いて離れない。
このまま踏み込めば、次に封じられるのは自分だ──デュエリストとしての実力差を、理屈より先に身体が理解してしまう。
(くそ……! 助けたいのに……!)
足が動かない。怒りはあるのに、追う勇気に変わらない。
コガのために戦いたいのに、今は戦えない。追うことすらできない。
「次の機会に楽しませてもらうぜ。その時まで生き延びてろよ、ドラゴンマスターさんよ」
ぞっとするような殺気を漂わせながら、キタムラはその場をあとにする。もはや戦うまでもないと思っているのか、振り返ることもなく、川原の闇の中へと姿を消していった。
サワダとアラキは地面に崩れ落ちるようにして、「くそっ、コガ……!」と苦渋の表情を浮かべるしかない。暗い夜風に草が揺れ、いつの間にか静まり返った河原には、二人の慟哭だけが悲しく響いていた。
コガを封印し、舌打ちとともに去っていったデュエルバーサーカー・キタムラ。彼が吐き捨てた言葉が、サワダの胸を鋭く刺す。
──「コガはただの腰抜けだった」
それはコガの秘めた事情を嘲るようでいて、サワダ自身にも不快な現実を叩きつける言葉だった。
こうして、川原での惨劇は幕を閉じる。ドラゴン・オブ・ルインをめぐる新たな争いの片鱗が、さらに深い闇へとサワダを誘うようにうごめいている。
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暗い夕闇が川原に落ち、一帯はひっそりと静まり返っていた。キタムラが去り、コガの姿も次元の牢獄へ封じられてしまった今、そこにはサワダとアラキの二人だけが残っている。
先ほどまでの凄絶なデュエルの余波が冷めやらぬまま、サワダは唇を強く噛み締める。
「くそっ……コガが家族を人質に取られていただなんて……」
右手を拳にし、サワダは地面を叩くように悔しさを表す。その瞳には不甲斐なさと、コガを救えなかった後悔が混ざっていた。アラキはそんなサワダの横顔を見つめ、切なげにため息をつく。
「でも、最後までコガはドラゴン・オブ・ルインを奪いきらなかった。お前の心に触れて踏みとどまった──あれが、コガの本音じゃないのか。きっと……本当は悪い奴じゃなかったんだと思う」
そう励ますように言葉をかけられても、サワダの胸に湧き上がる苦しさは消えない。人質として家族を取られ、イシイの手先として動かざるを得なかったコガ。自分には想像しきれない苦しさだったろうと思うと、なおのことやるせない。
「……でも、このままじゃコガは……」
サワダはうなだれるように視線を落とす。先ほどの最後の瞬間、コガがかすれた声で「次元帝の野望を止めてくれ……」と託した思い。家族を守るために闇へ足を踏み込んだ彼の願い。放っておけるはずがない。
同時に、イシイとは何者なのか、どれだけの手駒を持っていて、どんな計画を抱いているのか──謎は深まるばかりだ。サワダは拳を握りしめたまま、小さく呟く。
「イシイってやつは、いったいどれだけの手下を使って、何を企んでる……? あのキタムラもイシイの部下らしいし、強すぎる……。でも、コガを助けるには、あいつらに立ち向かうしかない……」
サワダの声には悲壮感だけではなく、どこか燃え上がるような決意が混ざり始めている。横で耳をそばだてていたアラキが、そっと手を置くようにして声を投げかける。
「だな。お前一人じゃ抱えきれないほど厄介な相手だ」
はっとしたように、サワダはアラキを振り返る。アラキはまっすぐな瞳でサワダを見据え、「お前にだけそんな重荷を背負わせるわけにはいかない」と断言する。
「これからもっと強くなるぞ。俺もデッキを鍛えるし、お前ももっと上を目指そうぜ。大切な仲間を守るためにな」
真摯なアラキの言葉に、サワダは息をつく。川の流れに混じって聞こえる虫の声だけが、ほのかな静寂を満たしている。サワダはデッキケースからドラゴン・オブ・ルインを引き出し、夕闇の光にかざした。
コガが感じ取った“心”──それを、今度こそ自分の手で活かさなければならない。
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ゆっくりと立ち上がったサワダは、ドラゴン・オブ・ルインを胸にしまい込み、決意に満ちた声で言い放つ。
「俺がコガを助ける。あいつは、俺が救わなきゃならない気がするんだ……コガの苦しみを見て見ぬふりはできねえ。絶対に、次元帝の野望をぶっ壊してやる」
その瞳には、イシイやキタムラへの恐れが確かにあるが、それを上回る意志の力が湛えられていた。アラキは静かに頷き、「よし、決まりだな」と笑みを返す。
「お前を追いかけ続けるライバルとして、俺だって負けられねえしな。もし道が見えなければ、一緒に考えよう。力を合わせりゃ、どうにかなる……よな?」
サワダは苦笑しつつ、アラキの拳に自分の拳をそっと合わせる。
「正直、先行きはまったく見えねえけど、もう腹は決めた。コガを見捨てるわけにはいかねえし、父さんの形見を守り抜くために……俺はもっと強くなる」
そう言うと、川原の夜風が二人の間をすり抜ける。わずかに残っていた夕暮れの茜色が闇に溶け込み、星のような光がかすかに揺らめき始める。
コガの苦悩を思い返すたび、サワダの決意はより強固なものへと変わっていく。イシイの正体も、その計画も、まだ何ひとつはっきりしないが、それを明らかにするのは自分たちの手でしかない。
「突き止めてやる、イシイが何を狙っているのか。そんで、あいつの手下どもからコガを奪い返す」
最後にサワダは燃え上がるような強い声でそう締めくくり、アラキとともに歩き出す。夜の闇が二人の姿を飲み込みながらも、その足取りはまるで一条の光が差し込んだかのように力強かった。
──こうして、コガの想いを胸に、サワダとアラキはさらに強い力を求める道へと踏み込む。次元をめぐる陰謀、イシイの語る“世界の破滅”──その全貌はまだ見えないが、すでに運命の歯車は回り始めていた。
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サワダがコガの救出を決意したその夜──
高架下。薄暗い街灯が僅かな明かりを落とし、無機質なコンクリ壁が冷たく光をはね返している。その場所に、二人の男の姿があった。
一人は、“デュエルバーサーカー”の異名を持つ危険なデュエリスト、キタムラ。もう一人は貴族的な冷酷さを漂わせる“次元帝”イシイだ。
「キタムラ。問うが、お前はなぜ“ドラゴンマスター”と戦わずして引き下がった」
コガがサワダに敗れた際の『保険』として、イシイはキタムラを放っていた。目的は【ドラゴン・オブ・ルイン】の確実な確保──それが筋書きだった。
だが結果は違った。キタムラはサワダと勝負せず、コガを次元の牢獄に封印して引き上げただけ。
計画外の結末に、彼は表情を崩さないまま、確かな不快感だけを抱いている。
高架の柱にもたれたまま、イシイは静かな声で問いかける。その瞳は深淵めいて冷たく光り、無感情を思わせた。
反対に、鉄パイプに背を預けて立つキタムラは、まるで凶獣のような鋭い眼差しを向けたまま、荒っぽく嘲るように息を吐く。
「裏切り者を始末してやっただけで充分だろ? ヘッ……あのカエル野郎、オレが一撃で潰してやったんだからよ。オレはオレの好きなようにやらせてもらうぜ……イシイサマよぉ?」
キタムラの瞳には狂犬じみた光が宿り、その笑みは何もかも壊したがる破壊衝動を透かせている。イシイは淡々とした口調で、なおも切り込むように言葉を重ねた。
「お前の役目は、ドラゴン・オブ・ルインを持つサワダユウジを潰すことだったはず。コガなど二の次だ。勝手な行動を取るな」
「フン……気に入らねぇ命令なら、オレは従わない。それに“ドラゴンマスター”とか呼ばれたガキも大した価値はねぇだろ。あのザコガエルに負けるぐらいだからな。ま、お楽しみは後に残しとくさ」
それだけ言い放つと、キタムラは舌打ちするように鼻を鳴らし、高架下の闇を歩き出す。バチリと足音が響き、途中で振り返りもしないまま、その影が徐々に消えていった。
「……バーサーカーめ。ますます制御が利かなくなってきたか」
取り残されたイシイは、小さく息をつくように呟く。薄暗い街灯が、コンクリ壁に彼の細長い影を落とした。
瞳を細めながら、イシイはどこか愉悦さえ感じさせる面持ちで言葉を継ぐ。
「まあいい。キタムラ以外にも使える駒はある。計画は支障なく進み続ける……」
闇夜に低く響く声とともに、イシイの姿もいつのまにか掻き消えていく。高架下には、仄かな風が吹くだけ。コガを封じたキタムラと、謎めいたイシイの会話は、さらに深まる陰謀を示唆し、不穏な期待を孕ませるのだった。
そして同じ夜、遠く離れた場所でサワダが抱いた「救う」という決意もまた、静かに熱を帯びていく。こうして物語の第二章は幕を下ろし、次の幕へと歩み出す──
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◆次回予告
コガを助けるため強くなると決意したサワダだったが、具体的な方法が思いつかず苛立ちを募らせていた。
そんなサワダを見てアラキは凄腕デュエリスト”超魔道剣士”の元を訪ねようと提案する。
次回「超魔道剣士の試練」 デュエル、スタンバイ!