【遊戯王】ドラゴンマスター・サワダ   作:おならむし

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第三章:超魔導剣士の試練
15:超魔道剣士の試練


 

◇あらすじ

デュエルバーサーカー・キタムラに敗北したカエル使いのコガは”次元の牢獄”と呼ばれる場所に封印されてしまう。

サワダは封印されてしまったコガを救うため、次元帝を倒し、その野望を阻止することを誓う。

 

──────────

 

 コガがキタムラに敗北し、“次元の牢獄”へと封印されてから数日が経つ。あの衝撃的な光景が、サワダの脳裏から離れないまま、日常生活だけが淡々と進んでいく。

 

 『強くなる』『コガを救う』『イシイを止める』と決意は固めたものの、具体的な打開策が見えず、サワダはもどかしさに苛立ちを募らせていた。自室で父の研究ノートを何度読み返しても、暗号めいた言葉や書きなぐりが散らばるばかりで、すぐに使えるような情報は乏しい。

 

 それでも何か手掛かりがあるはずだと、サワダはかつてコガと出会い、戦ったショッピングモールにも足を運んだ。スタッフにそれとなく話を聞き、周辺を歩き回り、デュエルスペースの常連にも当たってみた──だが、得られたのは曖昧な噂話だけ。肝心の“次元の牢獄”やイシイに繋がる情報は、何ひとつ掴めなかった。

 

「くそっ……どうすりゃコガを助けられるんだよ……」

 

 サワダはノートを机に投げ出すと、ため息混じりに自分の手を握りしめる。キタムラの凄まじい力、そしてイシイの底知れぬ陰謀──今の自分では何もできないと痛感する日々が続く。

 

 ベッドに腰を下ろして顔を伏せながら、“次元の破滅”や“次元帝の計画”という言葉だけが頭の片隅でぐるぐると回っている。あまりに大きく漠然とした脅威に、自分一人で立ち向かうのは無謀なのではないかとさえ思えてくる。

 

(でも、コガが消えていったあの瞬間……俺は何もできずに立ち尽くしてた。それだけは、二度と繰り返さねえ)

 

 唇をかみ、サワダはノートを閉じた。外では日が暮れかけ、窓の外の空に橙色の光がわずかに残っている。だがサワダの胸中は暗雲のように晴れないままだ。

 

──────

 

 放課後の教室。アラキはぼんやりと机に肘を置いているサワダを見つけ、声をかける。

 

「おいサワダ、最近ずっとそんな調子じゃないか。あのコガのことが頭から離れないんだろ?」

 

 サワダは不機嫌そうに顔を背けるが、アラキの視線を感じ取り、渋々と返事をする。

 

「わりぃな。せっかく助けるって決めたのに、具体的な方法が思いつかなくて……。そもそもイシイだのキタムラだの、一筋縄じゃいかねえ連中すぎる」

 

 アラキは相槌を打ちながら「俺だって悔しいさ。コガの話だって、確かめるすべもないしな。でも、ずっとこうしてウジウジしてるお前はやっぱりらしくない」と言ったあと、少しだけ声のトーンを落とした。

 

「そこで提案なんだが……“超魔導剣士”って呼ばれてる凄腕デュエリストがいるんだ。俺が前にちょっとだけ稽古つけてもらったことがある。戦略や知識を学ぶなら、あの人のところへ行くのが手っ取り早いと思う」

 

 サワダは「超魔導剣士……?」と首をかしげる。アラキいわく、その男はデュエルにおける魔法使い族を極めた実力者で、その腕前のみならず、幅広い情報を持っているという。

 

「もしかすると“次元帝”とかイシイって名前にも、何か手がかりをくれるかもしれない。

どうだ? 少し遠いけど、会いに行ってみる価値はあると思う」

 

 一瞬戸惑うサワダだったが、父のノートをひっくり返しても“次元帝”に直結する方法を見つけられなかった今、頼れる当てがあるなら行くしかない。

 

「……わかった。自分だけで進めなくても、学べることがあるなら学ぶ。コガを助けるために、まずは力を蓄えねえとな」

 

 机を勢いよく叩き、サワダは立ち上がる。“強くなる”という漠然とした決意を行動に移す絶好の機会。それをアラキの言葉に示され、心に少し光が差すように感じた。

 

「ありがとうな、アラキ。いろいろ気を使わせちまった。さっそく行ってみよう、その『超魔導剣士』のもとへ」

 

 アラキは「おう」と頷いて笑顔を見せ、「よし、それじゃ今日か明日あたりに準備して出発しよう」と話を進める。

 

 サワダは力強くデッキケースを掴み、決意を新たにする。コガを救うためにも、イシイとキタムラの陰謀を打破するためにも、この一歩が大切だ──そう信じて。

 

 こうして、サワダとアラキは“超魔導剣士”カワベという男のもとへ向かうことを決めたのだった。

 

──────

 

 アラキの導きで、サワダは父のノートを抱え、街外れにある古びた建物の前に立っていた。夕暮れが差し込むなか、その建物はどこか道場めいた構えで、年季の入った門扉や窓の格子に歴史を感じさせる。

 

「ここだよ。……おそらく、『超魔道剣士』カワベさんは中にいるはずだ」

 

 アラキが小声でつぶやくように言い、サワダはごくりと唾をのみ込む。建物の外壁には小さく「デュエル道場」の看板が掛かっており、苔と埃にまみれてほとんど読めないほどだ。こんな場所に、果たして“超魔導剣士”と呼ばれる凄腕のデュエリストがいるのだろうか。

 

 二人がかろうじて開いた引き戸から中へ足を踏み入れると、木製の床が軋み、古びた香りが鼻をくすぐった。高い天井とわずかな明かりに照らされた道場の中心には、ローブ姿の男が静かに立っている。

 

 彼はサワダとアラキが入ってきたのに気づくと、厳かな声で問いかける。

 

「何の用だ。私は稽古の相手など取っていないが」

 

 その口調からは、冷ややかな威厳が漂っていた。肩には落ち着いた色合いのローブを纏い、痩せぎすでもなく、かといって筋骨隆々でもないが、気迫のようなものが全身に宿っている。

 

 思わず気圧されそうになりながらも、サワダは前に進み出る。アラキが困惑の表情で背を押してくれるのを感じて、サワダは意を決して口を開いた。

 

「自分はサワダユウジといいます。もっと強くなりたくて、ここの“超魔導剣士”と呼ばれるデュエリストに弟子入りがしたいんです」

 

 ローブの男──カワベはその言葉に反応こそするが、表情には微かな険が宿ったままだ。彼の鋭い眼差しがサワダからアラキへと移る。

 

「アラキか。久しいな。随分と無茶を頼むものだとわかっているか?」

 

 アラキは背筋を伸ばし、一礼するように頭を下げる。

 

「お久しぶりです、カワベさん。無茶は承知ですが、コイツには理由があるんです。どうか一度、彼の力を試していただけませんか」

 

 カワベはローブの裾を軽く翻しながら、サワダを頭から足先まで一瞥した。厳格な師匠然としたオーラがビリビリと伝わってくる。

 

「……力を求めるだけなら、帰れ。そんな安易な目的では、真のデュエルを学ぶ意味はない」

 

 その言葉にサワダは動揺するが、父のノートをぎゅっと握り、「俺はもっと強くなりたいんだ」と視線を逸らさずに答える。

 

「理由はあるんだ。助けなきゃいけない仲間がいる。そのために力が必要だ。でも俺には、どうすればいいか分からねえ……。だけど、もう逃げたりはしない。だから……頼む、力を試してくれ!」

 

 どこか荒削りな訴えを、サワダはまっすぐカワベにぶつける。アラキも横で「お願いします」と口を揃えた。その様子を見て、カワベはしばし黙り込む。厳しいまなざしでサワダを射すくめながらも、ついに溜息をつくようにローブの袖を揺らした。

 

「……いいだろう。貴様がどれほどの覚悟を持っているのか、確かめさせてもらう。戦ってみて、それで判断するのみだ」

 

 そう言い残すと、カワベはくるりと踵を返し、道場の奥深くへ足を進める。サワダはアラキと視線を交わし、互いにこくりと頷いてその背を追いかけた。

 

 数分後、広々としたフロアの中央に二人は向き合う。カワベが袖の中から取り出したデュエルディスクは、古風な装飾が施されていて、一見アンティークのようにも見える。

 

しかし、その瞬間に感じる圧倒的な威圧感は、普通のデュエリストとは一線を画していた。

 

「──力を求める者よ。貴様の名はサワダユウジだったな? 私の名はカワベ。超魔導剣士と呼ばれているが、はたして貴様の出方によっては厳しい結果を覚悟せよ」

 

「上等だ。何度だって厳しい目に遭ってきた。ここで立ち止まってたら、コガを──俺の仲間を救えねえ……」

 

 サワダが強く握り拳を作り、デュエルディスクを装着する。横でアラキが固唾をのんで見守る中、カワベが静かに息を吐き、それを合図とするかのように互いのライフゲージが点灯した。

 

「……来い。自分がどれほど無力か、まずは実感するといい」

 

「何を言われても引き下がらねえぞ今の俺は……いくぜ、カワベ!」

 

「「デュエル!!」」

 

 厳粛な空気に包まれた道場。サワダと”超魔道剣士”カワベのデュエルが始まる──。

 

──────────

 

◆次回予告

 

弟子入りを賭けて始まったカワベとのデュエル。

自分の力を証明するべく、サワダは全力でドラゴンのパワーを開放していく。

一方、カワベは守備力の高いモンスターを次々と展開。

サワダのパワーとカワベの守備が激突する……!

 

次回「VSカワベ①──鉄壁の魔戦術(タクティクス)」デュエル、スタンバイ!

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