【遊戯王】ドラゴンマスター・サワダ   作:おならむし

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26:”終焉の王”復活計画

 

◇あらすじ

デュエルアカデミー首席卒業生に伝わる必殺の奥義【時渡の魔導時計-クロノ・アルカナ-】により、タカナシの無限蘇生コンボをリセットしたカワベ。その隙をつき、サワダはドラゴン・オブ・ルインの超火力コンボを叩き込み、強敵タカナシへ勝利した。

 

──────────

 

 ドラゴン・オブ・ルインの猛攻により、タカナシのLPは一瞬でゼロへ到達した。黒いオーラを纏っていたアンデット軍団は霧散し、廃墟となった校舎跡は、不気味なほどの静寂に包まれる。

 

 だが、タカナシは簡単に声を上げたり倒れたりはしない。膝をつき、苦しげに肩で息をしながら、鋭い瞳をカワベへ向けていた。

 

「カワベ……やはり、お前には敵わんということか。こんな場所まで追い立てられて、最後まで俺は……」

 

 その声には、悔恨と未練が入り混じっている。サワダは怒りと達成感の入り交じる複雑な気持ちでタカナシを見下ろすが、タカナシは彼らの勝利を認めようとはしないようだった。重々しい沈黙の中、タカナシは口の端をつり上げるように呟く。

 

「いずれ、シマダが復活すれば……お前も、この世界も、すべて終焉へ導かれる。そんな一時の勝利で喜んでいる暇があるか……?」

 

 シマダ。その名に、カワベの表情が変化する。険しい眼差しをタカナシに向け、その名を反芻するように漏らした。

 

「シマダ……まさか、終焉の王・シマダを解放するつもりなのか?」

 

 タカナシは顔をゆがめて嘲笑まじりに吐き捨てる。

 

「イシイ……“次元帝”イシイが、すでに動き出している。奴の目的は“世界の再編”だとか言っていたが、実際には“破壊の化身”とも呼ばれるシマダの封印を解くことが最優先らしい。俺の復讐なんざ、もはや小さなことかもしれんな……」

 

 サワダは「イシイが、なんだって……?終焉?」とイシイが危険そうな事を企んでいる事に動揺を隠せない。終焉の王・シマダという単語にピンとは来ていないが、コガとの一件、アラキの負傷、そしてタカナシとのデュエルで学んだこと──すべてがイシイの陰謀へと繋がっているという現実が、一気に迫ってくるようだ。

 

 タカナシはうっすらと哂いながら、闇にまぎれるように立ち上がろうとする。サワダとカワベは満身創痍で追いかける余力もなく、その場に踏みとどまるしかない。

 

「……カワベ。今度こそ、お前を倒そうと思ったが、結局また敗北か。だが、いずれシマダが復活すれば……“世界そのもの”が終焉を迎える。お前も、弟子も、さぞ無様に──」

 

 そこで言葉を切り、タカナシはそのまま苦しげな呼吸を整え、踵を返して足を引きずりながら校舎の闇に溶け込むように去っていく。サワダは「待てよ!」と叫ぶが、体力の限界で駆け寄れず、遠ざかる足音を聞くばかりだった。

 

──────

 

 タカナシが消え去り、廃墟の沈黙が戻る。サワダは膝に手をつき荒い呼吸を繰り返していたが、次の瞬間、ふと顔を上げ、そばにいるカワベに向かって小さく笑みをこぼした。

 

「カワベさん……俺、あんたのおかげで勝てたよ」

 

 カワベはデュエル中に見せた冷静な表情を崩し、少しだけ柔らかな空気を漂わせる。高鳴る胸を宥めるように呼吸を整え、「お前こそ、よくやった。攻撃を通すためには、力押しだけじゃダメだということが分かっただろう?」と穏やかに語りかけた。

 

「……ああ。あんたの“戦局を見極める”って言葉の意味、ようやく理解したんだ。いままで強攻策しか頭になかった俺を、どうにか踏みとどまらせたのは、あんたのアドバイスがあったからだ……素直に受け入れられなくて、ほんと悪かった」

 

 サワダは恥じ入るように頭を下げるが、カワベは「気にするな。それが若さというものだ」と微笑んで応える。道場での修行の日々が、こうして新たな力の覚醒に導いたのだ──と、カワベの目には安堵が浮かんでいるようにも見えた。

 

 しかし同時に、カワベの顔色が急激に青ざめ始め、ふらつくように地面へ膝をついてしまう。サワダは驚きの声を上げ、「どうしたんだ、カワベさん!」とすぐに駆け寄るが、カワベは苦笑いを浮かべ、浅く息を呑む。

 

「……“時渡りの魔導時計-クロノ・アルカナ”は、使い手の精神力を削るカードだ。今回、かなり無理をした。すまんが、少しばかり体に堪えただけだ」

 

 力なく語るカワベの唇にうっすら汗が浮かび、そのローブの袖口から見える腕は小刻みに震えている。サワダが「そんな危険なカード……!」と青ざめると、カワベは首を振って優しく諭すように口を開く。

 

「危険というよりも、“代償”の大きいカードだ。時を操るなんて行為が容易いわけがない。……帰ったら詳しく教えてやる。今は……道場へ戻ろう。私も体を休めなければ、次の戦いを続けられん」

 

「……わかった! 肩を貸すから、しっかり掴まってくれ!」

 

 そう言いながら、サワダは弱ったカワベの腕を自分の肩へ乗せ、慎重に歩みを進める。廃墟を出る際、壊れかけた校舎を名残惜しそうに振り返るが、そこにはもうタカナシの姿はない。

 

 イシイが”終焉の王”とやらを解放しようとしている──その事実は、次なる試練を確信させるのに十分だった。サワダとカワベは、痛んだ体を引きずりながら、闇のうちに道場へと戻っていく。

 

 ”終焉の王・シマダ”という未知なる脅威、そしてイシイとの対決がどんな結末を招くのかは、まだわからない。だが、サワダは今日の勝利を経てはっきりと感じる。自分はもう力押しのみのデュエルスタイルから卒業し、“誰も失わないための”道を歩み始めたのだ、と。

 

 夜空には月がわずかに顔を出し、廃墟となったデュエルアカデミーを見下ろすように輝いている。サワダとカワベの背中を照らすその光は、次に訪れる激しい嵐の前触れを告げるかのように、淡く揺れていた。

 

──────

 

 タカナシとの壮絶なデュエルを終え、廃墟と化したデュエルアカデミー跡地を後にしたサワダとカワベは、道中で激しく息を切らしていた。カワベは《時渡りの魔導時計》の副作用でまともに歩くことも辛いほど消耗し、サワダが肩を貸してなんとか戻る形となる。

 

 やがて夜も深まった頃、カワベ道場の門が見えてきた。厳かな木造の扉をくぐると、そこには包帯を巻いて椅子に腰かけているアラキの姿があった。アラキはちょうどその日に退院してきたらしく、サワダとカワベの帰還を待っていたようだ。

 

「大丈夫かよ、すげぇ疲れてるじゃん……」

 

 アラキは慌てて立ち上がりかけるが、腕に痛みが走るのか軽く顔をしかめる。サワダは安堵と驚きが入り混じった表情でアラキの姿を確認し、声をかけた。

 

「アラキ、退院できたんだな。よかった……けど、その腕は?」

 

 アラキは苦笑しながら包帯をなぞる。怪我の程度は深刻ではないものの、しばらくは痛みと通院が必要だという。

 

「検査結果では骨には異常ないけど、筋や神経が少しダメージ受けてるってさ。だからデュエルディスクを振り回すのは、しばらく無理だってよ。悪いな、サワダ。俺、役に立てそうにねぇ……」

 

「いいって、まずは治すのが先決だろ。お前が生きて帰ってきただけで十分だ」

 

 サワダはそう言いながら、複雑な面持ちでカワベを支える。アラキも改めてカワベの様子を見て目を丸くした。

 

「カワベさん、めちゃくちゃ顔色悪いじゃないすか。どうしたんですか? タカナシとの戦いで無理をしたとか?」

 

 サワダは即座に反応する。「ああ、《時渡りの魔導時計》ってカードを使って、時間を巻き戻すなんてすごい事をやったせいで、めちゃくちゃ消耗したんだ。カワベさん、さっきも言ってたけど、何なんだよそのカード……」

 

 アラキの問いに応じる形でカワベは重々しく説明を始める。いつもの落ち着いた声だが、疲労がにじみ、どこか虚ろな響きも含まれていた。

 

「《時渡りの魔導時計-クロノ・アルカナ》は、かつてデュエルアカデミーの首席卒業生だけに与えられた特別なカードだ。いわば、デュエリストの『威厳』と認められた証拠でもあった。私も首席の資格を得て、このカードを受け取った。……そして同時に、このデュエルディスクも渡される」とカワベは愛用している古風なデュエルディスクを指さす。

 

 アラキは「カワベさん、首席卒業生だったんですね」と素直に驚きを見せる。カワベは苦い表情で頷き、続ける。

 

「当時は誰もが“タカナシが首席になる”と思っていた。あいつの技術は群を抜いていたからな。けれども、“禁じられたシンクロ”に手を出して問題になり、追放された。結果、私が首席を得て、この時計を預かることに……」

 

 そう語るとき、カワベの眼差しには深い悲しみが宿っている。タカナシが追放されたのはシンクロ召喚に関する騒動が発端であり、カワベ自身が彼を救えなかったという後悔があるのかもしれない。

 

 ともかく《時渡りの魔導時計》は、時間に干渉するほどの強烈な効果を持ち、使い手の精神力を著しく消耗させる。カワベはひどく疲弊し、しばらくは満足に動けない状態だと告げられ、サワダとアラキが心配そうに顔を見合わせた。

 

「結果的にあれでタカナシを追い詰められた。後悔はない。少し体力を回復するまで休まむ必要があるだけだ」

 

 カワベが息をつきながらそう言うと、サワダとアラキは安堵する。荒れた激戦の跡を感じさせる道場に、とりあえず落ち着いた空気が流れはじめた。

 

──────

 

 道場の一室にはサワダとアラキが向かい合い、カワベが座布団に深く腰を下ろしている。カワベは疲れが色濃く残っていて、時折額の汗を拭っているが、なんとか会話を続けられる程度ではあるようだ。

 

 サワダはふと思い出したように、タカナシが最後に呟いた名前を口にする。

 

「なあ、タカナシが言ってた“シマダ”ってなんだ? あいつ、『シマダが復活すれば、この世界ごと終焉だ』って……」

 

 アラキも目を丸くし、「終焉の王って不吉すぎる名前だよな。いったいどういう存在なんだ?」と続けた。するとカワベは眉をひそめ、重苦しい空気を伴って語り出す。

 

「“終焉の王・シマダ”……太古に封印された凶悪なデュエリストと伝えられている。噂によれば、わずかな期間で世界全体を破壊寸前にまで追いやるほどの“破壊力”を振るった。その圧倒的な脅威を恐れた多くの人々が、ある儀式によって封印したというのが定説だ」

 

 サワダが息をのんで耳を傾ける。カワベはさらに言葉を続ける。

 

「そもそも、かつてのデュエルアカデミーでは“首席卒業生”に、ある任務が課せられていた。それが《時渡りの魔導時計》の継承と……“終焉の王シマダ”の封印維持だ。つまり、私を含めた歴代の首席たちは常に封印の状態を監視し、もし解かれる兆候があれば対処する責務を負っている」

 

 アラキは「デュエルアカデミーって、そこまで世界に関わる機関だったのか……」と息を飲む。サワダは唇を噛みしめ、「もしイシイが本当にシマダを解放したら、どうなるって言うんだ……」と不安を隠せない。

 

「世界が破滅しかねない、というのは誇張でもなんでもない。そのくらい“終焉の王・シマダ”という存在は危険だ。次元帝がシマダを引きずり出してどうするのかは分からんが、いずれにせよ放置できる問題ではない。サワダ、お前のドラゴン・オブ・ルインは依然狙われている筈。彼らと戦う準備を整えるしか道はないだろう」

 

 そう言いながら、カワベはアラキの腕に視線を移し、苦々しげにつぶやく。

 

「アラキ、そして私も、しばらく闘える状態ではない……お前には辛い思いをさせるが、我々はここで少し休養をとらねばならない」

 

 アラキは「悪い、サワダ」とうなだれるが、サワダはそれを責める様子はない。むしろ悔しさの方向がイシイへと向けられている。

 

「コガが封印されたままだし、アラキまでこんな怪我して……あいつら、好き放題しやがって……。シマダの復活なんてさせるわけにいくかよ!」

 

 サワダは拳を握りしめ、「絶対に止めてやる。イシイも、シマダも、このまま野放しにしてたら何もかも奪われちまう」と決意を固める。カワベは静かに頷いて、「お前の決意は理解した。だが、今は疲労が大きいはずだ。今日は休息をとって、明日に備えるがいい」と勧めた。

 

「じゃあ、今日はゆっくり休むか。実は俺、買い出し帰りで冷蔵庫にけっこう食い物買ってきてるんだよな。夜はパーッと食事して、明日に備えようぜ!」

 

 痛む腕を押さえつつ、アラキが無理やり明るく振る舞うと、カワベも苦笑のような微笑みを見せる。「調子のいいやつめ……まぁいい。腹が減っては戦もできないからな」と柔らかく応じた。

 

 こうして、一同はシマダの脅威へ立ち向かうための覚悟を固めつつも、まずは今日一日を無事に終えられたことに感謝するかのように、久々に食事を囲むのだった。次に訪れる嵐に備え、ほんのわずかの休息を取るために。

 

──────────

 

◆次回予告

アラキ・カワベの負傷によりサワダは一人で終焉の王復活の阻止の旅に出る事を誓う。

サワダはタカナシ戦で見えた欠点を修正すべく、夜通しデッキの調整に励んでいた。

 

次回「旅立ち~アトラシア群峰へ~」デュエル、スタンバイ!

 

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