デンレゼが足掻く度に不幸になるケッコンの悪魔さん   作:Nera上等兵

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37話 Chainsaw on Shark VS Bomb with Typhoon

東京都民の生活用水である狭山湖の水が台風の悪魔によって巻き上げられた!

暴風と巻き上げられた水飛沫は、鉄壁のガードを示している様である!

 

 

「最後に会えて本当によかったよ」

 

 

両足を爆発させながら宙に浮かぶレゼは、指を鳴らして何度も火花を飛ばす!

 

 

「ああもう!?ゴキブリみたいだね」

 

 

本来であれば図体がでかい存在など爆発の餌食にしかならない。

だが、四足歩行で走り回るサメの悪魔は、超デカいムカデに飛び乗って爆発を回避した。

全長75kmのムカデは、爆弾や台風の全力をもってしても絶対に倒せない化け物である。

ムカデに接近しにくいレゼとしては、本気でやりにくい闘いであった。

 

 

「しゃああ!!これなら行けるぞ!!」

「はい!!」

 

 

生物以外が赤く染まり、空だけが白い不思議な空間の中でデンジは確信した!

これなら結婚の悪魔が暴れるより先に台風の悪魔をぶち殺してレゼを撃破できると!

チェンソーマンの発言を肯定したビームもそう思っていた!

 

 

「チェンソオオオオオオ!!」

 

 

脳を高速で回転させる台風の悪魔は、脳の一部を触手のように繰り出した!

よっぽどチェンソーマンに恨みがあるらしくムカデに殴打する事すら躊躇わなかった!

 

 

「ヒャッホイ!!」

 

 

その攻撃をサメの悪魔は回避したばかりか、触手に飛び乗ってカサカサと台風の悪魔に近く!

 

 

「ぐっ!?」

「しゃああ!?」

 

 

だが、さすがに台風の悪魔、快進撃が暴風に阻まれてデンジたちは弾き飛ばされてしまう。

 

 

「クッソ!!ムカデを使って近づくぞ!」

「アイアイサー!!」

 

 

台風の悪魔ですら身動きを取れなくさせてい馬鹿でかムカデで近づくとデンジは提言する!

その意見を肯定したビームは、すぐさまムカデに飛び乗って移動を開始した!

 

 

「うおっ!?」

 

 

しかし、そんな簡単には上手くいかない!

レゼがぶっ放した爆発により、デンジたちは再び宙を舞う!

 

 

「な、なんか来たァ!?」

 

 

この時、空中で落下しているデンジの眼前に何かが見える!

レゼの両手の指先が射出されてサメの悪魔に向かって飛んできたのだ!

合計10個の小型ミサイルがデンジたちを爆散させようと試みていた!

 

 

「うおおおおおおおおお!!」

「うおおおおおおおおお!?」

 

 

洗濯機の中でぐるぐる回っている感覚がするデンジはその感覚に身を任せた!

すなわちサメの悪魔の口角に回したチェーンを引っ張ってサメそのものを武器にした!

武器人間になると驚異的な怪力になる上に元より暴風のおかげでぶん投げる方向も定まった!

 

 

「…あれ!?」

 

 

あらぬ方向に飛んでいったデンジ君たちにミサイルを撃ち込んだレゼは首を傾げた。

 

 

「おりゃあああああああああ!!」

「あばばばばばばっばあああ!?」

 

 

爆風で回転していたサメの悪魔が更に加速し、迫って来たミサイルを次々と撃破したのだから。

例えるなら砲丸投げのノリで高速で回転するコマに弾かれてしまったというべきか。

 

 

「シネ!!」

 

 

10発のミサイルは全て撃墜されたものの台風の悪魔の触手には勝てなかった。

思いっきり触手に殴打されたサメの悪魔は、またしてもムカデの方に飛んでいく。

 

 

「「ホゲ!ボゲ!ホゲ!ホゲ!ホゲ!?」」

 

 

そのままムカデの表皮をトランポリンでポヨンポヨンと跳ねるように2人は転がる。

まるでシンクロ競技のように同じ転がり方をしたデンジであったが、爆音がした方に顔を向ける。

 

 

「うお!?ぐはああああああッ!?」

 

 

爆発で急加速したレゼを発見したと同時に彼女からの蹴りをデンジは喰らう羽目になった。

不意打ちを喰らったデンジは別方向に弾き飛ばされてビームはそのままムカデの外へと飛び出す。

 

 

「うおおおお!?」

 

 

サメの悪魔は空中で足掻こうとするが、残念ながらこの世界は、カートゥーン系アニメではない。

犬掻きをしたところで滞空しないし、重力には逆らえない。

 

 

「チェンソー様ァ~!?」

 

 

ムカデの外へと飛び出したサメの悪魔は情けない声を出して主の名を呼びながら落下していった。

そんな相棒を構っている暇などデンジには無い。

頭のチェンソーでムカデの表皮を抉り取る摩擦でなんとか減速し、姿勢を立て直す!

そして両手のチェンソーでムカデの表皮を削りつつレゼに向かって突っ込んだ!

 

 

「ぐうっ!?」

 

 

だが、急加速してきたレゼの爆風に勢いを殺されたどころか背後に回られてしまう。

高速で突っ込んだ彼女は、全身を回転させるように舞って空気抵抗を受け流しつつ方向転換する。

まるでバレリーナのように舞った爆弾女は、直感で振り向いたチェンソー男と対峙した!

 

 

(つ、つえぇ…)

 

 

ビームと連携が解除された瞬間、機動力を失ったデンジはレゼの体術に一方的にやられてしまう。

まるで自分以外に好きな女を隠していた浮気男に体罰を加えているようであった。

 

 

「……くっ!?」

 

 

またしてもスカイアッパーを喰らったデンジは高速で上空に向かって突っ込んだ!

全長75km級のムカデの表皮に激突してもなお、勢いが止まらず体内に侵入してしまう。

そのまま追撃をしようとしたレゼであったが、とある光景を見て攻撃を中断する羽目になる。

 

 

(やっぱり連携してる…!!)

 

 

さきほどまでレゼと台風の悪魔は、全力で戦ったのにムカデに傷1つ付ける事はできなかった。

だが、遥かに弱いはずのデンジの攻撃や激突には普通に負傷している。

しかも、開いた傷があっさりと塞がっているという有様だ。

これが意味するのは、ムカデかムカデを操作する存在が彼を有利にさせているという事だ。

 

 

(いでぇえ…)

 

 

現にムカデの体内を突き進んだデンジは衝撃の大半を殺されて即死を免れた。

しかも失った血肉を喰いたい放題できる環境に居る!

 

 

(永久機関の完成じゃーん!!)

 

 

糞まずいムカデの血肉を貪って元気になったデンジは、スターターロープを改めて引っ張る!

さきほどまでの弱弱しいエンジン音と打って変わって轟音をムカデの体内で響かせた!

モグラ叩きのノリでレゼと戦おうとするデンジに迷いはない!

 

 

(レゼ!!)

 

 

自分が作り上げたトンネルの中で加速したデンジは、塞がった表皮を裂いて外界に飛び出した。

そこに待っていましたと言わんばかりに待機していたレゼの殴打を受ける羽目になった。

穴が1個しかないモグラ叩きなんて絶好のカモである事を彼は失念していたのだ。

 

 

「……ぐっ!?」

 

 

横幅800mのムカデの上で転がった彼は、偶然にも表皮に刺さっていた枝を掴む事に成功した。

全身がムカデから飛び出しており、急いで這い上がる必要があった。

 

 

「終わりだよデンジ君」

 

 

ただ、上がろうとする先には武器人間となっているレゼが居る。

ところどころ火花を散らし、いつでも爆発できる意思を示すかの様にゆっくりと接近してきた。

 

 

「……どうかな?」

「え?」

 

 

いくら武器人間とはいえ多少身体が頑丈になった程度である。

この高さから落下したら助からないはずなのにデンジは枝から指を放して落下した。

 

 

「チェンソー様!!」

 

 

ビームの姿を見たデンジは彼を信じてあえて落下し、主の期待に応えた眷族は再びタッグを組む!

そんな彼らを嘲笑うかのように台風の悪魔の触手攻撃が飛んできた!

 

 

「ビーム!!先に脳みそコネコネ野郎をぶっ潰すぞ!!」

「はーい!!」

 

 

再び機動力を得たデンジは、「先に台風の悪魔をぶっ殺す」とビームに断言した!

主の言う事を聞く忠臣は、その発言を受けて強風に身を任せた!

 

 

「ホント、クソみてェな世界だなァ!!」

 

 

今まで足場だったムカデから飛び立つとそこには様々な物が空中に舞っている。

道路標識、信号機、電柱といった日常で見かける身近な物が全て真っ赤に染まってる。

湖岸に生えていたと思わしき樹木には本来の色が残っているが、他の色に染められそうである。

 

 

「オギャア!オギャア!!オギャァ!」

 

 

巻き上がった物を利用して強風の渦に近づくと赤子の鳴き声が聞こえた。

台風の悪魔は生まれたての赤ちゃんであるので本体が近い事を示していた。

 

 

「見えた!」

 

 

強風と水の壁を越えた先には穏やかな空間が広がっており、その中心に台風の悪魔の本体が居る!

鉄壁の守りを突破したサメの悪魔は、そのまま大嵐の元凶に突っ込んだ!

 

 

「こりゃぁ~いいなァ!!馬鹿みてえにチェンソー回せりゃいいだけだからなあ~!」

 

 

台風の悪魔の懐に辿り着いたデンジは右腕のチェンソーで悪魔の表皮を抉り削っていく!

攻撃を喰らった悪魔は急いで強風で吹き飛ばそうとしたが、これが自身の破滅に繋がった!

チェンソーが刺さったまま強風で彼らの背中を押す形となったので更に傷口を広げる事となった。

 

 

「ぎゃああああああああああ!!」

 

 

所詮、赤子であるので痛みに弱いし、巨体ほど肉体が頑丈ではない。

むしろ、膨大な質量が自重で傷口に殺到した結果、更に傷が広がって血肉が噴き出した!

 

 

「来るなぁああああああ!!」

 

 

あれほど強大な力を持った存在でも、死ぬ時はあっさり死ぬものである。

未だにあった勝機を投げ捨てて目の前の光景を拒絶した台風の悪魔に未来は無い。

 

 

「おぎゃああああああああああああ!?」

 

 

自重で心臓が潰された挙句、脳の大半を損傷した悪魔はそのまま骸となって落下する。

台風の悪魔の返り血を浴びたデンジたちは、魔王を討伐した勇者の雄姿に見えた。

その瞬間、全長75km級のムカデの頭部が台風の悪魔の死骸を捕食した。

 

 

「まずは脳みそヤローをぶっ殺してやったぜェ!イエーイ!」

「イエーイ!」

 

 

今まで吹き荒れていた荒らしは徐々に弱まって改めて白色の空間を彼らに提供した。

勝ち誇るデンジはサメの悪魔になったビームと共に足場であるムカデに向かって落下していた。

 

 

「レゼはどこだ?」

 

 

台風の悪魔を見事にぶっ殺したデンジは必死にレゼの姿を探した。

一方、目がたくさん生えているサメの悪魔は、その存在を見つけた。

 

 

「チェンソー様!上です!」

「上!?」

 

 

ビームに言われて上を見ようとしたデンジだが、手遅れだった。

レゼに踵落としを喰らったサメの悪魔は下に居たムカデの表皮に激突する事となった!

 

 

「またかよ…」

「イダァイ…」

 

 

幸いにもムカデが気を遣って表皮をクッションにしたおかげで予想よりは衝撃は少なかった。

それでも刺客から追撃を受ける彼らは、その痛み故にすぐに回避行動を取る事ができなかった。

 

 

「はい、そこまで」

 

 

そんな彼らの窮地を救ったのは結婚の悪魔であった。

全身を投下する爆弾に変身させて落下する彼女をトンファーバトンで殴り倒した!

予期せぬ攻撃を受けて彼女はムカデの表皮に激突し、爆発した。

 

 

「お、おっさん!?金髪のおっさん!?なんでこんな所にいるんだぁ!?」

 

 

どんな苦境でも諦めないデンジではあるが、戦いに介入してきた存在には素直に驚いた。

一方、左腕を失ったレゼはすぐさま行動に移す!

 

 

「あ……」

 

 

デンジは見てしまった。

いつもいろいろと自分に世話や声をかけてくれるおっさんの背後にレゼが回った事!

右腕のナイフを振りかざした彼女は、あっさりと返り討ちに遭ってぶっ飛んだ光景を…。

 

 

「デンジ、ビーム。よく頑張った。台風の悪魔を倒すなんて大金星どころじゃないぞ」

「だいきんぼし?」

「本来では勝ち目がない相手に勝ったって事さ、これなら銃の悪魔と戦えるかもな」

 

 

いつも通りにデンジの知らない単語を教える結婚の悪魔だが、デンジはそれどころじゃない。

両腕を失って倒れ込むレゼから大量の血がムカデの表皮を染めているのだから。

 

 

「おっさん!レゼが!レゼが死んじまう!!」

「別に死んでもいいだろ?お前と同じ武器人間なんだから死んでも生き返るさ」

「そうだけど、違うん!!」

「ん?」

 

 

虫の息になった刺客に止めを刺そうとした結婚の悪魔はデンジに向かって振り向いた。

 

 

「これは俺の戦いだ!!」

「だから?」

「コレ、俺んのリベンジマッチ!!」

 

 

どうやらデンジは雪辱を果たそうとしているようで胸部に親指を差してなんかアピールしている。

そんな事、結婚の悪魔からすればどうでもよかった。

 

 

「お前は気付かなかったかもしれんが、こいつはもう限界だ。どの道こうなってたさ」

「え?」

 

 

デンジたちは気付いていなかったが、レゼは既に限界だった。

現にデンジに配慮した結婚の悪魔はそれほどトンファーで強く殴打していない。

なのに両腕が粉砕された挙句、表皮に叩きつけられて動けなくなっていた。

 

 

(台風の悪魔の血を浴びていたら結果は変わったかもしれんが、それをさせなかったからな)

 

 

台風の悪魔との死闘でレゼが介入できなかったのは結婚の悪魔が仕込んだせいである。

台風の悪魔の血肉や死体もきっちりとムカデに回収させたので血を飲む事はできなかっただろう。

 

 

(もって3分ってとこか)

 

 

その証拠に血塗れになっているムカデの表皮を舐める素振りすらしなかった。

おそらく想像を絶する痛みと苦しみを彼女は味わっている事だろう。

そうなると分かっていて介入したのは、これ以上の戦いは不要だと判断したからである。

 

 

「もうこいつは限界さ、最後の爆発が不発に終わったのが痛かったな?…だが終わりだ」

 

 

文字通りに虫の息になったレゼに結婚の悪魔は止めを刺そうとトンファーバトンを振り上げた!

今度は跡形も無く爆散させて二度と復活できないようにする。

それが彼女にとっても救いになると悪魔は本気で思っていた。

 

 

「血んならあるぜァ!このムカデがァ全部そうだ!!」

「このムカデは自分が生み出した存在だ、お前の味方じゃない」

「え?マジで!?」

 

 

ムカデを指差すデンジに対して結婚の悪魔は更なる現実を突きつける。

左手を突き出して1m級のムカデをその場で生み出して自分の発言を裏付けた。

 

 

「彼女は苦しんでる。だったらこれ以上苦しませないのが…救いと思わないか?」

 

 

瀕死になっているレゼは、自爆する余力すらない。

ただ、ひたすらに激痛を感じながら過呼吸になり、醜態を晒していた。

ここで死ぬ事でデンジの心にトラウマを残す事になるだろう。

 

 

「そのムカデの血を、レゼに飲ませてくれ」

「…正気か?」

「俺はいつだって正気だ」

「女だからだろ?野郎だったらこんな真似をしないよな?」

「そーだぜ」

 

 

それでもデンジは自分の命を狙って来た刺客に血を飲ませて欲しいと懇願する。

本来なら無視して殺すつもりだったが、逆にデンジがどうやって決着をつけるのか気になった。

 

 

「ビーム、お前はどう思う?」

「チェンソー様の言葉!絶対従う!」

「……そうか」

 

 

さきほどまで酷い目に遭ったビームもデンジの発言に従った。

そんな彼らの発言に心が打たれるフリをした結婚の悪魔は、瀕死になった女に改めて向き合った。

 

 

「なら、お前が決着をつけろ。10分以内に勝てなかったら自分が仕留めるからな」

 

 

男女の悲恋を嫌ほど経験した悪魔は、デンジとレゼが辿り着く悲惨な未来を思い浮かべた。

絶対に報われない男女関係になると確信したからこそ彼らの再戦を許す。

実証の為に生み出した1m級のムカデを爆散させてその血肉をレゼに飲ませた。

 

 

「おい、デンジ。お前に言っておきたい事がある」

「なんすか?」

「全裸になっているが、そのまま戦う気か?」

「え?マジで!?…マジじゃん!!」

 

 

金髪のおっさんの一言でデンジは自分が全裸である事に気付いた。

レゼに首を掴まれて連続で爆破された時に衣服は全て失ってしまったのだ。

ちなみにレゼも全裸であり、辛うじて前掛けのダイナマイトの束が秘部を守っている。

 

 

「これを着ておけ、さすがに全裸だと警察に逮捕されるからな」

「了解っす」

 

 

いつの間にか出現していた2m級のムカデからYシャツとズボンをデンジは受け取った。

何故か血塗れになっているムカデのせいで血で染まっているが、この際は贅沢を言わなかった。

そのまま支援してくれると思った彼は、すぐにその期待を裏切られる事となる。

 

 

「お、おっさん!?」

「頑張れよデンジ、これはお前が始めた物語だ」

 

 

デンジが着替え終わったのを確認した結婚の悪魔は、レゼから生えているピンを抜いた。

爆発に巻き込まれた悪魔は、思わぬ犠牲に驚くデンジを煽りながら爆炎の中に消えていった。

ついでに2m級のムカデも自分の意志で落下し、呆然と佇むデンジの視界から消えた。

 

 

「デンジく~ん?キミって本当に変わってるよ」

「良く言われるな!それ!」

「褒めてないよ」

 

 

代わりに黒煙と爆炎の中から出現したレゼは相変わらず爆弾人間のままであった。

なのに人間っぽい発言を発するのでデンジもいつもの調子になった。

 

 

「殺せるときに殺しておくべきだよ。だからキミは今、こんな目に遭ってるんだよ?」

「それはどうかな?」

「…え?」

 

 

レゼとしては、デンジのお人好しっぷりに呆れていた。

心臓を奪おうとした存在を叱責する彼女であったが、彼としても言いたい事があるらしい。

 

 

「お前だって初めて出会った時、さっさと俺んを殺せば良かったじゃねェか!」

 

 

まさかの正論にレゼも少しだけ沈黙を貫いた。

最初に出会った公衆電話ボックスで目の前に居る存在がターゲットだと分かっていた。

雨で濡れて能力が発揮できなくても祖国で培った体術で殺す事も可能だった。

それなのにレゼは、デンジを殺さずにバイト先であるカフェに誘った。

 

 

(なんで…初めて出会った時に殺さなかったんだろ…)

 

 

後から考えた建前としては、ガラス張りの場所だったので人目が付くと判断した。

だったら、2人っきりの学校デートで殺せばよかったのにそれもしなかった。

むしろ、デートを楽しんでいたのは裸体を晒してまでプールに誘ったレゼの方かもしれない。

 

 

「これでレーズンだあああああ!!」

「イーブンな?」

 

 

要するに「これで貸し借りが無くなった」とデンジは言いたかった。

しかし、決め台詞を思いっきり間違えたので、すかさず結婚の悪魔がツッコミを入れた。

 

 

「イーブンって言ったああああ!!」

「言ってねぇよ」

 

 

せっかく爆発の中で退場したというのに締まらない話である。

 

 

「正々堂々と勝負するぞ!!ビーム行くぞ!!」

「はい!!」

「……そこは一騎打ちじゃないのか?」

「だって殴り合いでレゼに勝てないだもーん!!」

「もーん!!」

 

 

一騎打ちの流れになるかと思いきや、チェンソー生やしたデンジはサメの悪魔に騎乗した。

そろそろサメの悪魔で居られる時間ではないはずだが、ビームも良く頑張っている。

だからこそ結婚の悪魔は、一騎打ちをしろと告げたのだが、デンジは気付いていない。

 

 

「「ぎゃああああああああああああああああああ!?」」

 

 

それどころか余所見をしてビームと話しているから飛んでくる火花に気付かないのだ。

仕方なく結婚の悪魔は体を張って火花を受け止めて爆散した!

その衝撃波でおバカ2名がぶっ飛ばされるが、レゼの追撃は終わらない。

 

 

「マジかよおおおおおおお!?」

 

 

さすがに疲労が祟って爆風の衝撃で気を失ったビームは元のサメの魔人に戻った。

結婚の悪魔は指定した10分が経過するまで戦い自体には介入する気はない。

文字通りに一騎打ちになったデンジは必死にレゼから逃げ惑う羽目になった。

 

 

「デンジく~ん!遊びましょ~!」

「もっと健全な遊びをしようぜえええええ!?」

 

 

爆発の度にぶっ飛んで傷だらけになるデンジは必死に何かを喚いていた。

だが、この結末を招いたのは彼自身である。

上空からダイナマイトをぶちまけられて爆撃を喰らう彼は爆発の度にぶっ飛んでいた。

それでダイナマイトが枯渇すればいいのだが、普通に生えて来るので爆撃が止まらない。

 

 

「クッソ!!」

 

 

空が飛べないし、遠距離攻撃もできないし、そもそも瞬間移動すらできない。

自由に空が飛べて遠距離攻撃が出来て爆発で急加速するレゼ相手にはデンジは苦戦させられた。

それをビームの機動力で何とか彼女と交戦できるようになっていたのだ。

 

 

(なんかねぇか……!?)

 

 

ムカデは動かないし、ビームは戦闘不能である。

金髪のおっさんは介入してこないし、他の誰かが戦いに介入するのも難しい。

デンジなりに考えて行動しているが、全然良い案が思い浮かばなかった。

 

 

「あ」

 

 

この時、名案を思い浮かべたデンジのIQは、1Q134の伏さんに匹敵するほどであった。

改めて海パン一丁のビームの方を見ると、傍には槍が落ちている。

チェンソーマンの話題で盛り上がったビームが持ち込んでしまい、今まで腹の中にあったものだ。

サメの胃袋の中にデンジを入れて爆破から保護しなかったのは、これがあったせいである。

 

 

「ほお」

「へえ、デンジ君、槍術も使えるんだ」

 

 

両腕からチェンソーが生えており、槍など使えないはずのデンジが槍を持ち出した。

これには結婚の悪魔どころかレゼも彼の行動を評価する。

 

 

「……ん?」

 

 

レゼに向かって突っ込むデンジを見ようとした結婚の悪魔は気付いた。

戦闘不能になったはずのビームがムカデの表皮を舐めて血を取り込もうとする姿を発見したのだ。

 

 

(…敵に血を与えておきながら部下に血を与えないのは不公平か)

 

 

結婚の悪魔としてはこれ以上血を与える気はなかったが、さすがにそれだとビームが不憫である。

後方で返り討ちに遭って悲鳴をあげるデンジを無視した悪魔は、2m級のムカデを召集する!

そしてそのムカデを粉砕し、ビームに血を分け与えた、

 

 

「よっしゃあああ!俺の作戦通りだ!!」

「……なるほど、嵌められたか」

 

 

ここで結婚の悪魔は、なんでデンジが槍を構えたのか察した。

元より槍よりも戦線復帰しようとするビームに血を与えさせるのが目的だった。

だが、血を分け与えるのは上司しか居ないので見つけてもらう為にあえてやったのだろう。

 

 

「来い!!ビーム!!」

「はい!!」

 

 

結婚の悪魔の血を得たビームは再びサメの悪魔に変身し、主に向かって走り出す。

それを見届けた結婚の悪魔は、トンファ―バトンを構え直してレゼに向き合おうとした。

 

 

「……なにやってんだこいつら」

 

 

ところが、サメの悪魔に騎乗したデンジは、上司である結婚の悪魔の背後に回った。

どうやら爆発を防ぐ為の盾として使用するようだ。

仕方が無いのでさっさと上空に避難しようと対魔特異4課の係長は足に力を込める。

 

 

「え?」

 

 

背後からサメの悪魔の前ヒレに掴まれた結婚の悪魔は本気で困惑した。

 

 

「移動のビーム!防御のおっさん!そして攻撃の俺だ!!無敵の戦術が完成しちまったなァ!!」

 

 

さきほどから戦って分かった事だが、レゼは自由に飛び回れるのに自分たちがそれはできない。

そのせいで高高度から一方的に攻撃を受けて爆発を回避する事しかできず、戦いにならなかった。

そこでデンジは考えた!

爆発に巻き込まれてもその度に復活するおっさんの協力があればレゼに勝てると!

 

 

「あ」

「ぐえ!」

 

 

考えて欲しい。

全長5m級のサメの悪魔に生えている4本のヒレの内、2本が使えなくなった場合、どうなるか。

姿勢を保てずにバランスを崩したサメの悪魔が結婚の悪魔を下敷きにしたのが答えとなった。

 

 

「ふざけんな!!」

 

 

さすがに部下を殺す気はなかったが、サメの悪魔を両手で持ち上げた結婚の悪魔は叫ぶ!

 

 

「チッ!」

 

 

このままでは爆発に巻き込まれると感じた悪魔は、サメの悪魔を上空に向かって投擲した。

彼らが大空の旅に出かけた瞬間、大爆発と共に結婚の悪魔の肉体は爆散した。

 

 

「うわああああああああああ!?」

「うひゃあああああああああ!?」

「はあ…」

 

 

2秒足らずに全身を再生させた結婚の悪魔は、上から降って来たサメの悪魔を両手で受け止めた。

 

 

「……どうだ!レゼ!これが俺んたちの絆の力だ!!」

「ちげぇよ!」

 

 

自分の考えた作戦が成功したと確信したデンジはレゼに向かって勝ち誇る。

だが、結婚の悪魔からすれば論外なので思わず否定した。

 

 

「走れビーム!!」

「チェンソー様!」

「どうした!?」

 

 

このままビームが縦横無尽に駆け回る事でレゼを倒せるとデンジは信じていた。

しかし、ビームが何か言いたそうだったので話を聞く事にした。

 

 

「あしが」

「あしが?」

「足が地面に届いてなくて走れません!」

 

 

現在、デンジが騎乗したサメの悪魔を金髪のおっさんが両手で支えている構図になっている。

そのせいでビームは足が地面に届いておらず、泳ぐ事とも走る事もできない。

ここから移動するとなれば合体した彼らの土台である結婚の悪魔が動かなくてはならない。

 

 

「おっさん、走ってくれ!!」

「ふざけんなテメェ!!」

 

 

なので上司に走る様にデンジは命じるが、当然ながら提案を拒絶した結婚の悪魔は激怒する。

ただ、目の前でデンジたちが喰らったらまずい爆発を感知し、そのまま回避行動を取った。

 

 

「デンジ君、仕事仲間と仲が良さそうでいいねー」

 

 

レゼ視点で見ると、格上の存在すら雑に扱うデンジ君には参った。

でも、なんか楽しそうなのでそこは羨ましかった。

同じ存在で同じ境遇なのにここまで差を見せつけられたのだから。

 

 

「そんなワケねぇだろ!!」

 

 

結婚の悪魔は抗議するが、そもそも彼らを投げ捨ててれば良い話である。

律儀に両手でサメの悪魔を支えている時点でこの悪魔もお人好しなのかもしれない。

 

 

「今度こそお前に勝つ!!」

 

 

こうしてデンジは、自分のバディと上司を利用してレゼとの最終決戦に挑む事になった。

 

 

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