デンレゼが足掻く度に不幸になるケッコンの悪魔さん   作:Nera上等兵

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52話 大乱闘スマッシュシスターズ(空港ver.)

ある日、老人は語った。

聴き手である結婚の悪魔としては無視したかったが、国民を悪魔から守る公務員である。

興味がないとはいえ適当な振る舞いをして発生したクレームで始末書を書きたくなかった。

よって適当に相槌を打って彼のご機嫌取りをする羽目になった。

 

 

『昔話をしよう。太古から悪魔を討伐するのは軍隊の仕事だった』

 

 

悪魔の討伐というのは、古来から軍事組織の仕事であった。

日本最古の公文書である日本書紀にも悪魔と討伐隊の記述がある。

 

 

『だから軍隊は、悪魔を殺したり、抑止力になる存在だったんだ』

 

 

故に太古から悪魔が存在し、悪魔が襲来する度に軍事組織が討伐を行なっていた。

しかし、一枚岩とはいえず、各地域に存在する勢力との戦争にも用いられた。

 

 

『恐ろしい事にな、人間って奴は【力】を得ると他者に向けたくなるんだ』

 

 

転機が訪れたのは、国民を総動員し、国家総力戦となった世界大戦である。

局地的な地域で軍隊同士で戦っていた戦争は変わった。

総力戦に参加する国家群は、自国民をチェスのコマのように扱い始めた。

 

 

『愚かな人類は、その力を他者に向けて自分の欲望を満たそうとしたんだ』

 

 

蛮族や悪魔から人類を守るはずだった軍事組織は、素人を鍛えて戦場に送り出す機関と化した。

更に人間の欲望と発展による技術は、悪魔どころか人間を効率良く殺す兵器群を生み出した。

 

 

『その結果、何が起こったと思う?』

 

 

これにより、出兵した人物の多くが死に絶えて労働力の一掃、国家の機能不全に陥らせた。

多くの成人男性が犠牲になり、電話1本で最低でも4桁の犠牲者が発生するという狂気の時代だ。

 

 

『人類は悪魔より目の前に居る人間を殺す事を優先したんだ。戦争に負けたくないからな…』

 

 

後世の人間から馬鹿らしい過去の出来事であるが、当事者たちは本気で戦争に勝とうとした。

負けたらこれまで犠牲になった同胞が無駄になるし、戦勝国に搾取されると分かっているからだ。

 

 

『悪魔が暴れたせいでたくさんの犠牲者が出たのにそれを放置して人間同士で殺し合ったんだ』

 

 

だが、人類同士が争っている中でも悪魔の襲来は減るどころか増加し、更なる犠牲者を増やした。

しかし、悪魔よりも人類が運用する国家が脅威だったので列強国は悪魔被害の対処を疎かにする。

 

 

『だからご先祖様は願ったんだ。悪魔だけを討伐する職業、デビルハンターの誕生と活躍をな!』

 

 

Devil(デビル) Hunter(ハンター)という職業は以前からあったが、正式に認められたのはこの頃である。

戦争と悪魔のせいで傷ついた民衆は求めた。

人間を殺すのではなく悪魔だけを討伐する専門職業の設置と運用をして欲しいと!

 

 

『今まで“祓魔師”や“悪魔祓い”、日本では“魔滅隊”や“鬼滅隊”といった失われた組織』

 

 

過去に悪魔の討伐を専門とする職業が存在したものの、近代化において時代遅れとみなされた。

正規軍の方が遥かに悪魔討伐の効率が良くて維持するコストも教育も少なく済んだのだから。

しかし、軍隊は従来の役目を忘れて敵対した人間を殺すだけの蛮族になり果ててしまった。

 

 

『それを復活させようと女性たちは、悪魔討伐職を営む事となった』

 

 

戦争で若者を失った地方の村落は、残された若い女性を悪魔と戦う存在になるように仕向けた。

夫に先立たれて子供を悪魔で失った女性は、復讐心で利用しやすかったのもあるかもしれない。

とにかく、こういった動きは、今に続くデビルハンターという職業の始まりである。

 

 

『だから世界最古のデビルハンターは、中国大陸出身の女性と認定されていたり、軍隊に代わって悪魔を討伐する公安のデビルハンターに女性が多いのも…そういった歴史的経緯が大きいんだ』

 

 

だからといって何で昔話をされないといけないのか結婚の悪魔は理解できない。

クルマの悪魔を討伐した悪魔は、90代の爺さんの話を強制的に聞かされてしまっていた。

 

 

『なにより、軍隊は更なる強力な悪魔を生み出す結果をもたらした!』

 

 

長話にうんざりする公安職員に化ける結婚の悪魔を無視した爺さんは、更に語る。

 

 

『彼らが使っていた戦闘機を誰もが恐れた結果!“戦闘機の悪魔”を生み出したんじゃ!』

 

 

この世界における悪魔は、人類が生み出した概念が敵意を持って人間を襲う存在である。

よって戦闘機という新たな概念を生み出した人類は、“戦闘機の悪魔”を生み出す事となった。

 

 

『バチカン市国やエルサレム、人類が聖地にしていた場所や列強国の首都を焼き尽くした結果!』

 

 

かの悪魔は、国家総力戦に参加していた列強国の首都や聖地を片っ端から焼き尽くした。

世界の中心だった欧州が没落し、遠く離れたアメリカ合衆国が台頭してきた頃、人類は気付いた。

 

 

『人類の敵は、人間ではない。悪魔だと!人間の悪意が生み出した悪魔だと思い知ったのだ!』

 

 

人間が想像した神は、この世に存在しないのに…悪魔は人類が生み出したと思い知らされたのだ。

人間が生み出した宗教の全ては、悪魔に対して無力であったし、最悪の事に気付いてしまった。

人類に試練を与えるのは、妄想上の神でもなければ人間の悪意でもない。

 

 

『人類の敵は悪魔だけ!愚かな歴史は繰り返してはならない!』

 

 

殺しても殺しても何度でも現世に復活する悪魔だと!

今では、キリスト教もイスラム教もユダヤ教も仏教もただの文化の風習に成り下がった。

輪廻転生を繰り返して人類を襲撃する悪魔こそが人類が求めていた神そのものだったから。

 

 

『だから日本は軍隊を永久に放棄し、永遠に戦争をしない国家になるべきなのだ!!』

 

 

要するに老人の本音は、大日本帝国軍の歴史と組織を継いだ国防自衛隊が気に喰わないらしい。

武力による抑止力がなければ、異国や蛮族の勢力に蹂躙されると歴史が証明してるのに…。

1()9()4()0()()()()()()()()()()()()()()による反動で日本は軍事力で他国に後れを取った。

 

 

(そう、このせいで国防航空自衛隊は、ソ連の介入を受ける隙を作ってしまった…)

 

 

軍隊アレルギーと()()()()()()()()()()、そして裏で糸を引く共産主義勢力が暗躍している。

没落した航空産業から転身した技術者のおかげで新幹線が誕生したので悪い話だけではないが…。

 

 

(はぁ…嫌な記憶を思い出した…)

 

 

結婚の悪魔は、デンジと出会ってからあまり思い出したくない記憶を振り返るようになった。

最後に残っていたMiG-21bis-Jが戦闘機の悪魔に撃墜されたのを目撃し、今後の日本が分かる。

【共産主義勢力の防波堤】と称された日本列島で大惨事が起こるのは明白だった。

 

 

(クソ!!邪魔だ!!)

 

 

楽しい江の島旅行のはずが、いつの間にか成田空港の防衛ミッションになったのか。

なんでこうなったのか未だに理解が追い付かない。

ただ、遊覧飛行計画を捻じ込んだマキマのおかげで問題が発生するのは予想していた。

だからある程度の問題も妨害も想定内…のはずだった!

 

 

「ご覧ください!!悪魔が成田空港を襲撃しています!今朝まで平和だった日本の空が――」

 

 

何がクソってテレビ局のレポーターやカメラマンが挙って事件現場を全国中継しているのだ。

よっぽど目の前で発生している特ダネに夢中らしい。

押し寄せた報道関係者の一部がドミノ倒しで転倒する事故が複数個所も発生するほどだった。

 

 

(スクープを求めるマスコミの鏡め…)

 

 

国籍不明機であるカタミチ航空49便の緊急着陸事件を嗅ぎつけたハイエナ共が本当に邪魔だった!

避難誘導をする空港職員を振り払って滑走路に押し寄せる姿は失望を通り越して感心するほどだ。

 

 

(自分から死地に向かうゴミカス共が…!)

 

 

台風の最前線で中継するといい、雪山の避難小屋に緊急着陸して遭難状況を中継するといい!

アホみたいな使命感で活発に動き回るマスコミほどクソみたいな存在は居なかった!!

 

 

(コイツらも助けないといけないのが本気で腹が立つ!!)

 

 

その癖、大量に死者が発生したら責任を取りたくない日本政府は現場に責任を押し付けて来る!

さっきのドミノ倒しでは奇跡的に死人は出なかったが、時間の問題だった。

そのせいでマスゴミ共を安全な場所に誘導する為に更に分裂体を生み出す羽目になった!

 

 

「国防自衛隊が出撃して対処しておりますが、全く歯が立っておりません!これは…」

 

 

自称、中立を掲げる報道陣の眼前で地震と共に誘導路が大きく盛り上がる。

何事かと記者やカメラマンが山のように盛り上がったコンクリートを目視した!

 

 

(ヴぁあああ!!)

「「「「うわあああああ!!」」」」

 

 

200人以上の報道関係者の眼前で彼らを追っ払う為に生み出された血塗れの大ミミズが出現した!

さきほどまで正常性バイアスに囚われていた報道陣は慌てて空港内に逃げ出した!

 

 

「皆さん、こちらに避難を!!」

「悪魔を発見!!新東京国際空港 第一ターミナル西部警備隊!!交戦開始!!」

 

 

彼らを守ろうとした警備員や配属されていたデビルハンターが交戦を開始する!

空港に雇われたデビルハンターたちが必死に交戦するが、大ミミズは他人事であった。

 

 

(シーボルト!!報道関係者を近づけるな!!いいか、殺さずに追い返せ!!)

(…なるほど、では警備員や公安デビルハンターとの交戦許可をお願いします)

 

 

全身が小指の指先で覆われた全長80m級の大ミミズは、分裂元に交戦許可を願い出た。

攻撃を受けるだけの存在だと逆に怪しまれると思ったのだ。

 

 

(殺さない程度に応戦しろ。ただ、できるだけ滑走路や建物を破壊するな!)

(了解です!)

 

 

分裂体に命令した結婚の悪魔には懸念事項がある。

生み出した分裂体は、公安のデビルハンターが使役する悪魔の力程度では殺せない事実だ。

要するに先日に大暴れしたムカデの悪魔との関係性を結びつけられて黒幕の詮索を恐れていた。

 

 

(……クソが)

 

 

更に結婚の悪魔を悩ます問題がある。

戦闘機の悪魔がばら撒く機銃やミサイルを撃墜する為にコンクリート片を利用している。

もちろん、旅客機や近隣の住宅に配慮して投擲を行なっていた。

 

 

(民間航空機も邪魔だああああ!!)

 

 

ところが、成田空港の管制官の指示で多くの旅客機が小刻みに航路と高度を変更して来るのだ。

そのせいで投擲したコンクリート片をコンクリート片で撃墜するという余計な手間が増えた。

 

 

(無理無理無理!60機以上の旅客機と空港と住宅街を同時に投石で守れるかボケェ!!)

 

 

大量の報道関係者が居る=マキマが表向きに動けない

こんな方程式があるせいで、結婚の悪魔だけで防衛戦をする羽目になっていた。

 

 

(カナデ!!空港に降り注ぐ破片の対処をしろ!!)

 

 

せめて空港の防衛は、旅客機の計器を読み上げさせる為に生み出した分裂体に任せる事にした。

奇遇にも、何故かこっちに向かって爆走してくるカナデに分裂元は呼びかける!

 

 

(待て待て~!私の血肉の一部となーれ!)

 

 

ところが、夜鷹の姿をした悪魔を追いかけるのに夢中だったカナデは呼びかけに気付かなかった!

 

 

(おまぁ!?ほげえええ!?)

 

 

それどころか、追跡するのに邪魔だった分裂元は、無意識に触手で殴打されてぶっ飛ばされた!

滑走路の状態や野鳥を確認する為にパトロールする専用の乗用車に激突し、仲良く爆散する!

分裂元を超音速でぶん殴った事に気付かないカナデはついに夜鷹の血肉を奪おうと試みた!

 

 

(うわあああああ!!)

 

 

戦争の悪魔は惨めに殺されて地獄に堕ちると同時に核兵器に関する記憶も失うはずだった。

そんな彼女の窮地を救ったのは意外な存在だった。

 

 

「オりゃあああアアアア!!」

「…え!?」

 

 

大音量で唸るエンジン音と駆動音が鳴り響き、カナデの移動手段であった触手が切断された。

何事かとカナデは状況を確認すると厄介な存在がそこに居た!

 

 

「今日は良く!!悪魔と出会うなァ!!」

 

 

デンジは不満だった。

クジラの悪魔も航空事故の悪魔も交戦したが、きちんと決着を着けずに終わった。

そんな中、大量の触手を振り回しながら滑走路を爆走する悪魔を発見した。

彼からすれば、絶好の獲物であり、攻撃を行なうのは当然の事だった。

 

 

「つーか!!エッチじゃん!!触手の悪魔!めちゃエッチ!!」

「は、はあ?」

 

 

改めて背中から大量の触手を生やした女悪魔を凝視したデンジは気付く!

膝丈のスカートの下から覗く黒色のストッキングに包まれた美脚がめっちゃエッチだった!

スチュワーデスだった契約者の姿を模して生み出されたカナデは彼の発言に困惑する。

 

 

「女の子に触手ってエッチだァ!エッチ過ぎる!!」

「何の話!?」

 

 

ゴミ箱に捨ててあった触手本を読んで成長していたデンジは叫ぶが、カナデは寝耳に水である。

なんで触手がエッチという単語に繋がるのか理解できなかった。

 

 

「その女の子を解放しろ!!触手の悪魔!!」

「ああ、私の事を言ってるのね…」

 

 

デンジの発言により、ようやく彼女は自分の肉体の状況の事を言っていると理解した。

結婚の悪魔は、()()()()()()()()()()()()()()であるので肉体そのものに拘りはない。

だから女の子+触手=エッチなシチュエーションというイメージが湧かなかったのだ。

 

 

「……チェンソーマン、下がりなさい。あんたと戦う気はないわ」

 

 

デンジと会話しながら発射された4本の空対地ミサイルを触手で掴んだカナデは彼に忠告する。

別にデンジが死んでも構わなかったが、その後のマキマの動きに警戒していたのだ。

 

 

「はあ?チェンソーマンって誰だ!?」

「…えっ?」

 

 

だが、ここで衝撃的な事実が判明する。

なんと、デンジはチェンソーマンという自覚が無かったのだ。

両腕のチェンソーを振り回す男なのに英単語を知らないせいで理解できなかったのだ。

 

 

「あんたの事よ!!」

「え!?マジ!?俺、チェンソーマンになっちゃったよ~!?」

「私を馬鹿にしてんの!?このクソボケ!!」

 

 

その事実に驚きながらも変身したデンジに指を差して自覚させてやった。

するとアホみたいな事を言い出したのでカナデは切れた!

 

 

「邪魔するなら…こうよ!!」

 

 

アメリカ軍が開発したAGM-65を握り締めた触手で粉砕するのを見せつけて怒りを示した!

ついでに4発のミサイルを同時に破壊した事で戦闘機の悪魔に牽制する意図もあった!

だが、怒っていたのは別に彼女だけではない。

 

 

「カナデ!!テメェ!!」

 

 

分裂体にぶっ飛ばされて怒った結婚の悪魔は、A滑走路に居るカナデの元に向かう!

 

 

「ふぁ!?」

 

 

その道中、あり得ない光景を目撃した!

なんと封鎖されているはずのA滑走路にボーイング747が着陸してきたのだ。

第三エンジンの火災が主翼を炎上させており、一か八かの緊急着陸を行なったようだ。

その先にカタミチ航空49便であるボーイング737が駐機していると知らずに!

 

 

(あのバカ来やがった!!)

 

 

34Lから進入した旅客機の着陸ギヤが接地して数秒後にエンジンが爆発し、主翼が折れた!

その衝撃で機体がひっくり返って機体上部が滑走路に触れる寸前に悪魔が合間に挟まる!

 

 

(ぎゃあああああああああ!!)

 

 

旅客機が本来受けるはずだった衝撃エネルギーを結婚の悪魔が全て負担する事となった。

それだけに留まらず、肉体と滑走路による摩擦でブレーキーの役割も果たす事となる。

いくらでも肉体を再生できるとはいえ無茶をし過ぎた。

 

 

(いぎいいいいいいいい!!)

 

 

330トンにもなる機体を抱えつつ大根おろしごっこを嫌でも楽しむ結婚の悪魔。

よりによって日本航空の国内線仕様だったので乗客500人以上の命を預かる事となった。

 

 

(血を…)

 

 

永遠の悪魔といった空間を弄れる悪魔は、自身の血肉を用いて結界を張る事が多い。

自身の恐怖を高める事で結果的に失った物より得る物が多くなるからだ。

しかし、航空事故で死ぬ瞬間に結婚の事を恐怖する人間など居ない。

 

 

(…痛い)

 

 

よって文字通りに出血大サービスで結界を張り、運動エネルギーを相殺し、火災を鎮火させた。

ただでさえ貧血状態の悪魔は自分の血肉を無駄に失って涙目だ。

これには草葉の陰で眠…らずに東京湾の底で永眠する航空事故の悪魔も地獄で浮かばれるだろう。

 

 

「カナデ!!血を寄こせ!」

 

 

ついに血が足りなくなった分裂元は分裂体に血を求めた!

ところがどっこい!

向かい側から格安航空会社が運用するバル・ベルデ航空の旅客機が進入してきた。

 

 

Captain(キャプテン), there(ゼア) is(イズ) a() passenger(パッセンジャー) plane(プレーン) right(ライト) in(イン) front(フロント) of(オブ) us(アス)!」

(機長、目の前に旅客機が居ます!)

 

Oh(オー) shit(シット)Go(ゴー) around(アラウンド)get(ゲット) up(アップ)get(ゲット) up(アップ)!! ...Aaaaaaah(アァァァァァ)!!」

(やべぇ!着陸復航!上がれ!上がれ!!…うわあああああ!!)

 

 

予備燃料をケチったせいで燃料切れに近い旅客機は成田空港の管制官の命令を無視した。

そのせいでボーイング737と乗員乗客合わせて532人のボーイング747と衝突の危機が発生した。

副操縦士が気付いて機長に警告し、慌てて着陸復航をするが間に合うはずもなく…。

 

 

「またバカ来やがった!!」

 

 

またしても結婚の悪魔がブレーキー役となり、身を削って滑走路に血を引いていく。

もみじおろしってこんな感じか…と自分の現状を分析する余裕などない。

 

 

(これが最後…)

 

 

それを元に作った結界で旅客機の運動エネルギーを0にして強制的にエンジンを停止させる。

ボーイング747ほどではないが、それでも巨大であるエアバスA340が止まったのを確認。

その瞬間、結界を解くとボーイング747から僅か110mの距離で向かい合う形で駐機した!

 

 

(ぐへぇ…)

 

 

さすがに血を失い過ぎた結婚の悪魔は無力化し、そのままA滑走路にへばりつくゴミと化した。

そんな惨状になっていると露知らず、分裂体のカナデはデンジに根気よく説得を試みていた。

 

 

「俺は女の子を救う!ヒーローになりてぇんだよォ!!」

「その女の子が悪魔で!味方だって言ってるでしょうが!!」

「うるせェ!!」

「いてぇ!!…この問題児があああ!!」

 

 

デンジを守る行動をしたのに理不尽にも彼に攻撃されたカナデはついに激怒する!

だが、すぐにそれどころじゃないと気付いて慌ててデンジを触手でぶっ飛ばした!

 

 

「ぎゃああ!?」

 

 

チェンソーマンだと自覚したデンジは触手に弾き飛ばされるが、カナデはそれどころじゃない。

機関砲による連射を液状化で受け流し、擦れ違いざまに戦闘機の悪魔の主翼を破壊した!

 

 

(ああ、鬱陶しい!!)

 

 

残念ながら撃墜できず、戦車の悪魔の血を取り込んだ戦闘機の悪魔は破損した主翼を復活させる。

仕返しと言わんばかりにナパーム弾を20個、彼女の頭上にばら撒いた!

こんな物、弾き飛ばすわけにも肉体で受ける気もなかったカナデは自身の触手を引き千切る!

 

 

(ケッ、取り逃がしちゃった…)

 

 

自身の触手を犠牲にして結界を張ってナパーム弾を全弾回収した。

雑魚悪魔を逃した事に苛立ちを感じる彼女は、張った結界内で気化爆発させて安全を確保する。

すぐさま失った触手を再生させて全身を持ち上げた彼女は、敵対悪魔の位置を確認しようとした。

 

 

「よくもやったナア!!お前をぶっ殺して!!美女を助ける!!」

「だからこっちは味方…くっ!?」

 

 

ところが、追っ払ったはずのデンジが足の裏にチェンソーを出現させて加速して突っ込んできた!

すぐさま彼を説得しようとした彼女は、視界がカビで覆われた事に気付く!

 

 

(チェンソーマン!!)

 

 

ここで戦争の悪魔は、不俱戴天の仇であるチェンソーマンを認識した!

姿も匂いも微妙に違うが、彼女からすれば関係ない。

必死に夜鷹の翼で羽ばたいて彼に向かって突っ込んで行く!

 

 

「コン!」

「ああああ…」

「ぎゃああああ!!」

(いやあああああ!?)

 

 

騒動を受けて駆けつけて来た千葉公安対魔2課の職員たちが彼らに攻撃を開始した。

カビの悪魔のせいで判断が鈍ったカナデは狐の悪魔の前脚攻撃を喰らう羽目になった。

ついでにチェンソーマンに変身したデンジも敵判定されたらしく攻撃を喰らって悲鳴をあげた!

もちろん、戦争の悪魔も涙目になって逃げ回る!

 

 

「千葉公安対魔1課が到着するまで時間を稼げ!」

「「「了解です!」」」

 

 

本来は、千葉公安対魔1課が対処するはずだったが、ムカデの悪魔騒動で全員が出払っていた。

そのせいで実戦に不慣れな予備戦力が手に負えない現場に対処する羽目になった。

 

 

「って馬鹿野郎!!俺は公安のデビルハンターだぞ!!味方に攻撃するなァ!!」

「私だって公安のデビルハンターに命じられて動く悪魔よ!!邪魔しないで!!」

 

 

チェンソー男と血塗れの触手女が「自分たちも味方」と公安デビルハンターたちに抗議する!

しかし、事情を知らない彼らから見れば敵にしか見えなかった。

 

 

「耳を貸すな!!かか…」

 

 

すぐさま追撃をしかけようとした職員4名に向かって4丁の30mm口径の機関砲が火を吹く!

Avenger(アヴェンジャー)”(正義の為の報復者)という異名があるGAU-8が人間に向けて使用された。

それも対戦車用に利用される機関砲を戦車の悪魔が使用するという皮肉たっぷりの行動であった。

 

 

「もおお!!」

 

 

さすがに戦車の悪魔の射線前で公安職員に立ちはだかれるとカナデでもどうしようもない。

無残にも砕け散る職員たちを無視して触手を高速で振り回して弾丸を粉々に破壊する!

 

 

「あれ?マジで味方って奴?」

「このアホが!!…もういい!!強制退場しなさい!!」

 

 

デンジの前に立ち塞がって必死に弾丸を触手で捌く彼女だったが、周りを見る余裕がなかった。

そのせいで戦車の悪魔が戦闘機の悪魔に切り離された状況を確認する事ができなかった。

 

 

「あああ!!」

「うぎゃああああああ!?」

 

 

機関銃による銃撃に対処しながらデンジの胴体を触手で掴む行動を取った隙が運の尽き。

油断した瞬間を見逃さなかった戦闘機の悪魔に蹴りを入れられて吹っ飛ばされた!

 

 

(どうしてこうなるのおおおお!?)

 

 

理不尽さを嘆くカナデは第一ターミナルに激突し、その衝撃で肉体が弾け飛んだ。

彼女が先にクッションになって衝撃を喰らわなかったデンジはそのままガラスを突き破る!

 

 

「あばらっしゃあああ!!?」

 

 

出国審査場に放り出された彼は荷物や書類を巻き上げて壁に激突して止まった。

 

 

「…おらああアアア!!」

 

 

瀕死だったデンジはスタータロープを引っ張ってエンジンを再起動する!

恐怖が存在しない彼はすぐさま敵に復讐するつもりだった!

 

 

「うぎゃああああああああ!!」

 

 

別に彼は弱くない。

戦闘機の悪魔から20mm口径の機関砲をぶっ放されたら誰だってビビる!

轟音がした瞬間、床に伏せると間一髪、弾丸による死傷を避ける事ができた。

 

 

「ひいいいいいい!!」

 

 

戦闘機の悪魔はその場で滞空できないので高速で駆け抜けていく。

その衝撃波で成田空港にあった窓が全て割れた!

 

 

(チッ!!)

 

 

触手を操るカナデと同じく分裂体の大ミミズは味方からの攻撃に足止めを喰らった。

MiG-23MFJの4機からの銃撃を巨体で受け止めているのだが、疑問が発生した。

 

 

(民間人と施設に被害が出るぞ!?何を考えてやがる!!)

 

 

本来なら表皮で弾丸を弾くが、民間人を巻き込むのでわざと表皮に減り込まさせている。

日本を守る軍事組織が民間人の犠牲が出る作戦をやるはずがないので余計に混乱した。

その答えはすぐに示される事となる。

 

 

「生きてますかー?」

「実質、死んでますねコレ」

「じゃあ帰るか」

「さすがにそれはダメじゃない?」

 

 

ここでようやくクジラの悪魔騒動の対処で誕生した2名の分裂体が分裂元に駆け付けた。

しかし、一歩遅かったようでピクリとも動かない結婚の悪魔に冗談を言うタロウ。

冗談を受け流し、現状を的確に報告するハナコが滑走路で立ち往生していた。

 

 

「さっさと戻れ!!」

「うわ!?」

「きゃ!?」

「…よし、復活完了!」

 

 

コントを見逃す余裕がない悪魔は自分の血肉を回収して見事に復活する。

これで成田空港のA滑走路を中心に半径10kmの結界を張る事が可能になった!

 

 

「あ?」

 

 

すぐにでも結界を展開しようとした結婚の悪魔はネズミの大群を目撃した。

彼らが持ってきた書類を受け取って一瞥(いちべつ)すると驚愕の事実が書かれていた。

 

 

(ふざけんなあああ!!)

 

 

成田空港上空で暴れ回る戦闘機の悪魔の動きが予想外だったマキマは一手を打った。

自身の能力で支配した国防自衛隊の高官たちを利用して戦闘機の悪魔を攻撃で遠ざけようとした。

ところが、彼女は致命的なミスを犯した。

 

 

『戦闘機の悪魔を総攻撃で追っ払ってください。これは最優先命令です』

 

 

マキマのニュアンスとしては、とにかく成田空港の空域から悪魔を排除したかった。

しかし、この命令は民間人の安全よりも戦闘機の悪魔を排除しろという指令となった。

 

 

『どんな犠牲を払っても戦闘機の悪魔を排除せよ』

 

 

国防自衛隊をボロクソに貶めていた老人の懸念は悪い意味で当たった。

悪魔から人間を守る軍事組織が、悪魔に唆されて人間ごと悪魔を抹殺する事となった。

本来であれば、上層部がマキマに支配されてても、作戦を実施する末端は賛同するはずがない。

 

 

「仇を討て」

「同期の仇を討つ!」

「どんな手を使っても!」

 

 

しかし、戦闘機の悪魔によって共に空を飛ぶ事を学んだ同期、先輩や後輩、憧れの上官。

合計27人のパイロットを殺害された国防航空自衛隊の隊員の正気を奪うのには充分だった。

よってマキマの意図に反して犠牲を出してでも戦闘機の悪魔を殺しにかかって来ていたのだ!

 

 

(やっぱ、お前のせいじゃねぇか!!)

 

 

つまり、マキマに支配された航空事故の悪魔にレゼが攻撃した事で歯車が全部狂った。

それがきっかけで悪魔は正気に戻って本気でマキマが乗った旅客機を墜落させようとした。

その影響で航空事故の悪魔に誘導されていた戦闘機の悪魔も混乱した。

 

 

(戦車の悪魔と戦闘機の悪魔が手を組んだのも偶然…?信じられるかそんなもん!!)

 

 

そこで国防航空自衛隊と交戦しつつ成田空港に向かう道中で戦車の悪魔と出会った。

同じ眷属同士、共に戦争の悪魔の異名と恐怖を広めようと意識して暴れ回ろうと試みた!

ところが、チェンソーマンを発見したので成田空港に強襲した!

これが事の顛末であった。

 

 

(……つまり、レゼが航空事故の悪魔に攻撃しなかったらこうならなかった…?)

 

 

なので戦闘機の悪魔も戦車の悪魔も航空事故の悪魔も普通に混乱していたという事実を知った。

この場に居る全員が混乱で乱闘が発生した被害者であると知らされた結婚の悪魔は思った。

 

 

(そんな事、知るかボケェ!!)

 

 

この場に居る全員が同士討ち上等で殺しにかかって来ると知らされてもやる事は変わらなかった。

マキマが操作するネズミから受け取った書類を粉々にし、結界を展開しようと試みる!

 

 

「…あ?」

 

 

だが、マキマから緊急召集を受けたので仕方なく彼女が居る管制塔を目指した。

同時刻、戦闘機の悪魔に回収してもらおうと試みた戦車の悪魔は、夜鷹を攻撃していた。

 

 

(私はお前の母だぞ!!こんな事して良いと思ってるのかあああ!?)

 

 

記憶を失っても戦争の悪魔を慕っている悪魔は、雑魚悪魔を殺して更なる名声を得ようとした。

その悪魔が自分の母とは気付かずに…。

 

 

「居たぞ!!」

 

 

だが、声がしたので振り向くと前に出会った人間共と再会した!

 

 

「久しぶりだな!戦車の悪魔!今度こそお前を討つ!」

「早川先輩、今度こそやってみせますよ…!」

 

 

早川アキを筆頭とするバカンスを楽しむはずだった公安対魔特異4課が戦車の悪魔に立ち塞がる!

千葉県の対魔課から刀を借りたアキ、同じく小太刀を借りた荒井ヒロカズ。

 

 

「奇襲すればいいのに…」

「殺せれば問題ありません。できるだけ苦しめて殺しましょう」

 

 

仕方なく寿命武器を出そうとしている天使の悪魔に無表情で佇む蜘蛛の悪魔。

性格も行動も正反対だが、悪魔たちもやる事は決まっていた!

ヤクザの拠点で戦った時とは比べ物にならない戦車の悪魔を討伐しようと試みている!

 

 

「うわ……ワシの出る幕はないな」

 

 

そこから遠く離れた場所で現場を眺めるパワー。

自分が挑んで良い闘いのレベルじゃないと理解しているからこそ傍観しているのだ。

だが、戦いに消極的だった血の魔人が対魔特異4課に勝利をもたらす事になるとは…。

裏で暗躍するマキマや未来の悪魔すら予想できなかった。

 

 

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