はるかぜをおいて 〜Spring star〜 作:ういんなー
———勇者ヒンメル、戦士アイゼン、僧侶ハイター、魔法使いフリーレン
———よくぞ魔王を撃ち倒した
教会のような広々とした空間に、厳格な男の声が響く。
勇者一行。10年前にこの国を出発し、見事に魔王を倒した者達。銅貨10枚しか与えられなかったが、今では国中でパレードが開かれ、歓迎されるようになった。
———これで、世界に平和な時代が訪れよう
「よっとっと、随分賑やかだね」
「何せ勇者一行を讃えるためのお祭りだからね。皆も楽しそうだ」
「タダ酒も飲めますしね!」
生臭坊主め....と思っていると後ろから「やっほ!」と声をかけられる。聞き覚えのある声。後ろを見ても誰もいないが、下に目線を向ければピンク色の球がこちらを見つめていた。
「カービィ、来てたんだ」
「当たり前でしょ?フリーレン達のお祝いらしいし、美味しい食べ物も沢山あるし!」
「後者がメインのように聞こえたが」
アイゼンがカービィを見ながら言うが、すぐ隣に似たような奴がいるためこれ以上は言わない。しかし....
「随分と買ったようだね、カービィ。重箱が7段なんて見たことが無いよ」
「どれも美味そうだったからね〜、選ぶのが勿体無い!」
「だとしてもこの量は多すぎると思うけど....まぁ、カービィなら全部食べ切れるか」
皆も一緒に食べよう!と言いながらテーブルに食べ物を広げていくカービィ。彼曰く誰かと食べるご飯が1番美味しいらしいが、実感が湧かない。
先程の洒落た雰囲気とは一転して食べ放題のレストランに来たような雰囲気となる。相変わらずマイペースと言うか、そこも彼の魅力であるのだろう。
「.....そろそろか」
7段もの重箱を完食し(6段分はカービィが食べた)若干食べ過ぎによる疲労感を感じつつ昔話に耽っていると、流れ星が落ちてくる。
「エーラ流星、でしたっけ?」
「50年に1度の流星群。平和な時代の始まりに丁度いいね」
「カービィと初めて会ったのもこんな流れ星が落ちた時ですね」
「モグモグ....んう、ボクがどうしたって?」
「あ、それ私の....」
唐揚げのような物をもしゃもしゃと食べながらカービィがこちらを見る.....おいその食べ物はフリーレンが買っていた物ではないか、後でフリーレンに買いなおしてあげねば。と考えるヒンメル。
「お前と初めて会った時の話だ。いきなり近づいてきて中々に怖かったぞ」
「『あ、第一村人から第四村人まで発見!』なんて言いながら来ましたからね。フリーレンが速攻で魔法をぶっ放したせいで余計に混乱しましたし」
「あの時はボクもびっくりしたなぁ。挨拶しただけで攻撃するなんて非常識だよ!」
人の食べ物を勝手に食べたお前が言うか...と思ったが、確かにアレは警戒しすぎたのかも知れない。
いや、魔物や魔族がいるから警戒するに越したことは無い。少しの油断が命取りなのだ、魔法での牽制は間違いではない。はず。
「でもカービィ、普通に私の攻撃避けてたよね。当たってないならノーカンでしょ」
「んぅーそう言うことじゃ無いんだけどなぁ」
「まぁまぁ、もう過ぎたことですし。今ではすっかり仲良しじゃないですか」
「そうだね、だから私の唐揚げを返して「あ、そういえば用事があるんだった!またね!」あっちょ待って....逃げられた」
バサバサといつの間にか羽を纏っており空へ逃げてしまう。体に羽を纏っていたからウィングのコピー魔法だろう。いつ見ても不思議な魔法だ。
「逃げ足速いなアイツ」
「一体あの体の大きさからどうやって強い力を生み出しているのか」
「前にカービィを持ってみましたが、とても軽かったですよ。風船を持っているようでした」
「風魔法で飛ばせれるかな....」
それはやめておこうねフリーレン。と優しく論するヒンメル。今更追う気も無いし、今日は見逃しておこう。
今思えばカービィはこの世界において異質な存在であると実感出来る。初めて会った時の印象も個性溢れていたが、時を共にするにつれてより彼への認識が変わっていった。
姿形に目が惹かれるが、彼の本質はその魔法だ。
これは私が勝手に言っていることで、彼曰くコピー能力と言うらしいが、個人的にはこちらのほうが好きだ。技術、自然、物質、概念。それらをコピーし、完璧に使いこなす。見たことがない、なんとも不思議な魔法だ。
カービィに(ヒンメルが)頼み込んで模擬戦も行ったが、まだ魔王やクヴァールの方がなんとかなる程底が知れない。勝ち筋を見つけることが出来ない、彼に勝っている自分を想像することが出来ない。
「.....様、......ン様。フリーレン様!」
「....あ、ごめんフェルン。どうしたの」
「どうしたのはこっちの台詞です。急にぼーっとして、どうかなさったのですか」
「うーん、そうだね.....」
カービィ、一体君は何者なんだ。
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カービィと再会したのは、私がフェルンと会った時だ。ヒンメルが死んだ後のことだった。
ハイターから蘇生魔法の魔導書解読を頼まれているのと、解読の期間中はフェルンの面倒を見てほしいとのこと。フェルンの修行は向こうの山にある岩を一般攻撃魔法で撃ち抜くというもの。まだ年少のフェルンでは無理だろうと思ったが、魔法を撃つ才能は確かにあった。
ハイターが倒れた次の日、フェルンは修行に行ったはいいがいつも以上に帰りが遅かった。いくら必死になっているとはいえ、明らかに違和感がある。ハイターも何かを感じたのか、私にフェルンの捜索を頼まれた。
「お願いします、フリーレン」
「大丈夫だよ、私も今行く所だったから」
川のほとり、森の緩い傾斜、その他諸々を探したがフェルンの姿は見当たらない。最後に心当たりがある場所を見に行こうとした瞬間、遠くから魔物の雄叫びが聞こえてくる。
「岩がある方向....急がないと」
「ハイター様.....」
フェルンは丸太の上で休んでおり、物思いに耽っていた。昨日倒れたハイターのことが心配なのだろう、あるいは直感が働いたかもしれない。もうすぐハイターは死ぬと。
ならば早く一人前になってハイター様を不安にさせないようにしなければ...と思うも、未だに岩まで攻撃は届かず、残るのは焦った己のみ。
自分の無力さを痛感していると、ヤツは現れた。
キィエエエエエエエエエッ
「っ!?ま、魔物...!」
突然崖下から現れた魔物。応戦しようとするも、体に力が入らない。
しまった、修行で魔力が....と気付くも、その遅れは明らかな隙となる。
キィエエエエエエエエ!
大きく口を開け、鋭い牙を向けながらこちらに突進してくる。逃げようとするが、足は金縛りにあったかのように動かない。
「ぃ...ぃや....」
喰われる。死ぬ。
しかし、襲ってくるような痛みや息絶えるような浮遊感は感じなかった。代わりに聞こえたのは、何かを防いだような鈍い反射音。
恐る恐る目を開けると、口を開けたまま硬直している魔物と盾と剣のようなものを持ったピンク色の球体がいた。
「いやぁ危機一髪だったね。君、大丈夫?」
「...ぇ、あの、えぁっ....」
「あ、自己紹介がまだだったね!僕の名前は星のカービィ。よろしくね!」
「かー...びぃ......?」
明らかに人ではない姿で言葉を喋っている。魔族の類か、だとすれば私を魔物から守る理由が分からない。混乱し、怖がっている私を見て、カービィは困ったように呟いた。
「うーん、こういう時ヒンメルやハイターならどうするんだろう.....裸踊りでもすればいいのかな......?」
「ハ、ハイター様を知っているのですか!?」
「うん?ハイターなら一時期一緒にいたけど、今はどこにいるのやら...フリーレンもいつの間にかどっか行くし.....」
ハイター様と一緒にいた....それに勇者ヒンメルやフリーレン様のことも知っているような物言い....。いや、そういえばハイター様が話をしてくれたことがあった。
「カービィという食いしん坊がいましてね?とっても強かったんですよ」
「かーびぃ...?ハイター様より強かったの....?」
「えぇ、それどころかヒンメルも勝てませんでしたね。あんな可愛らしい姿をしているというのに...」
ちなみにフリーレンとは相性が悪かったようです。と続けるハイター。ハイター様より強いことも非常に気になったが、可愛らしい姿について聞いてみたことがあった。確か......
「....えーと?どうしたの?」
ピンク色のちっちゃいボールのような見た目。装備を頻繁に変え、自由自在に戦うお人好し。そして目の前にいるのは.....
「あの、もしかして....」
キィエエエエエエエエエッ
私の言葉は魔物によってかき消された。そういえば魔物がいたな...と思い出したが、未だに防御魔法を突破出来ていないようだ。
いや待て。魔物の攻撃を受け続けながら今の今までずっと防御魔法を展開していたのか...?
「あー、後で聞くからまずはこいつを仕留めるね。後ろに下がってて」
「は、はい...」
私より小さいはずなのに、背中がよりずっと大きく見える。私が下がったのを確認するや否や、カービィは盾を構えながらシールドを貫くように剣で魔物を突き刺す。
「ドリルソード!」
魔物にダメージは与えれたが、すぐさま後方へ逃げ、崖上で浮遊しこちらを睨む。どうやらヤツの中でカービィは捕食対象から討伐対象になったようだ。
魔物は先程のような突進はせず、羽を飛ばす遠距離攻撃で牽制する。カービィはまた盾を構えてシールドを展開するが、このままでは埒があかない。
「スカイエナジーソードでも削れるけど、ちょっと面倒だしな〜。他に変えよっと」
そういうや否や、カービィは空中でクルンと一回転すると剣と盾が消え、代わりに光る星が出てくる。が、それも一回地面に当たるとすぐに割れて消えてしまった。
そしてしばらくするとカービィの頭に電気魔法がかかったかのような装飾が付けられる。
「スパーク!」
フェルンにとっては全てが新しい光景。初めは怖かったが、今は好奇心でいっぱいだ。
魔物は姿が変わったカービィに動揺していたが、すぐに羽を飛ばしてくる。先程のヒーローソードによる範囲防御とは別に、電撃を纏い羽を焼き切るシールドを展開する。
「スパークアタック!」
半径2mはある電撃が襲う。フェルンは目の前の電撃が可愛い見た目のカービィから発せられていることに驚愕し、魔物も先程とは毛色の違う攻撃に冷や汗をかく。だが魔物本体には攻撃出来ていない。
するとカービィは細かく動き始め、体に電気が纏ってく。
(パワーため.....パワーため......)
魔物はまた羽を飛ばすが、カービィが纏うスパークバリアによりカービィ本体へ届かない。そして電撃の纏う量が明らかに増加した瞬間、カービィは敵へ狙いを定める。
「スパークはどうだん!!」
勢いよく飛び出る電撃の塊。魔物は急な飛び道具に対応出来ず、クリーンヒットしてしまう。フェルンはスパークはどうだんの眩い光に一瞬目を閉じるが、次に目を開けた時には足しか残ってない魔物だけだった。
「フェルン、大丈夫だった.....あれは...」
「ぁ、フリーレン様!私は大丈夫でしたが、あの方が助けて下さって....」
いつの間にか隣にいたフリーレン。カービィが助けてくれたことを教えようとするが、それより先にカービィがこちらに近づく。
「やっほーフェル...ってフリーレン!今までどこにいたのー?」
「それはこっちのセリフだよカービィ。あれから一切姿を見せないんだから」
「......まぁ、今回はありがとう」
「なーに、どうってことないよ」
※カービィの裸踊り(ステージクリア時のダンス)
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