ポケモンの大冒険   作:アノレセウス

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02:獣王との戦い

 この世界を一匹で生き抜くのは不可能だ。

 先ほどのリカントを思い出すだけで、ツノの奥が疼く。

 最弱のスライム相手に死闘を繰り広げた私が、他のモンスターに勝てるはずがない。

 寄らば大樹の陰。今の私にとっての大樹とは、目の前の二人だった。

 だから私は、彼らに付いていくことにした。

 

「……あれ、どうする?」

 

 そう言ってポップは、困惑と警戒が入り混じった顔で私を指さす。

 無理もない。正体不明のモンスターが、急に後を付いてきたのだ。

 私が彼の立場だったら、同じことを言うだろう。

 だがダイは違った。

 

「まあ、害は無さそうだしさ」

 

「……ついて来るなら来るでいいけどよ。ほんとに危なくなったら、さっさと逃げろよ。守り切れる保証はねぇからな」

 

 追い払おうとはしない。

 だからといって、無責任に守るとも言わない。

 彼らは本当に優しい。

 

「ねえ、君の名前はなんていうの?」

 

 しばらく歩いた後、ダイがふと思い出したように言った。

 名前か。自己紹介という概念を、完全に忘れていた。

 そもそも、この姿で人間と会話できるのかどうかも怪しい。

 私は小さく息を吸い、口を開く。

 

「ラルトス!」

 

 思ったよりも、はっきりした声が出た。

 人語ではないが、種族名そのままだ。

 今の私が名乗れる、唯一の名前である。

 

「よろしくな、ラルトス!」

 

「ラルラル!」

 

 その瞬間、ツノが彼の気持ちを感知した。

 明るくて、澄んでいて、疑いのない、まっすぐな感情。

 太陽のようだと、直感的に思う。

 近くにいるだけでツノが活発に動き、全身がじんわりと暖かくなる。

 

 けれど、その明るさの奥底。

 ツノを通して伝わってきたのは、ほんの少しの寂しさだった。

 表に出ることのない、静かで、深い感情。

 

 きっと先生であるアバンを失った傷が癒えたないのだろう。

 口には出さず、笑顔の裏にしまい込んだまま、それでも前に進もうとしている。

 

 ああ、なるほど。

 この子は、最初から強いのではない。

 強くあろうとしているのだ。

 

 恐怖も、喪失も、迷いも。

 すべて抱え込んだまま、それでも足を止めない。

 逃げないことを選び続けている。

 

 だからこそ、彼の感情は真っ直ぐだ。

 飾り気も、誤魔化しもない。

 折れそうな心を必死に支えながら、それでも前を向こうとする意思そのもの。

 

 ツノを通して伝わるその在り方に、胸の奥が熱くなる。

 それは力ではない。確固たる覚悟だ。

 

 強さとは、生まれ持つものではなく、選び続けた結果なのだと。

 この少年は、無言のまま教えてくる。

 

 ああ、駄目だ。彼の側にいるのは危険だ。

 こんなにも居心地が良いと、離れられなくなってしまう。

 

「おれたちは魔王軍と戦う旅をしているんだ。いつ襲われるか分からないから、近くにいない方がいいよ?」

 

 その声は優しく、だからこそ真剣だった。

 確かに、魔王軍と戦う旅は今の私にとって分不相応にも程がある。

 それに下手に原作に介入したら、世界が無茶苦茶になる可能性もあるし。

 まあ、キルリアに進化して最低限の力を得たら別れるとしよう。

 

 それからしばらく三人、いや二人と一匹で森を進んだ。

 木々はどれも似たような形をしていて、目印になりそうなものがほとんどない。

 気づけば空は朱から群青へと色を変え、森の奥にゆっくりと夜の帳が落ちていった。

 

「ち……ちくしょう! また同じところへでちまった!」

 

 ポップが苛立ちを隠そうともせず、舌打ち混じりに叫ぶ。

 足元の落ち葉を蹴り飛ばし、周囲を睨みつけるその様子から、余裕が削れているのがはっきりと分かった。

 

「だからマァムに道案内を頼んどきゃ良かったんだ」

 

 ダイが苦笑しながら言う。

 責めるでもなく、ただ事実を口にしただけの声音だった。

 

 どうやら彼らは森の中で迷子になっているらしい。

 私でも分かる。景色が、さっきからずっと同じだ。

 ツノに伝わる感情も少しずつ焦りと疲労を帯び始めている。

 

 その時だった。

 

 ──ォォォォォンッ!!

 

 腹の底を揺さぶるような巨大な雄叫びが森全体に響き渡った。

 空気が震え思わず身体が強張る。

 

 近くの木々から羽音が一斉に立ち上った。

 ドラキーの群れが甲高い鳴き声を上げて夜空へ散り、少し離れた場所ではキメラが重たい翼を羽ばたかせて飛び去っていく。

 

 ただ事ではない。

 そう直感したとき、地面が揺れた。

 

 ドン、ドン、ドンと重く、規則的な足音。

 木々がへし折られる鈍い音が近づいてくる。

 

 やがて、闇の向こうから姿を現したのは、二足歩行の巨大なワニ男だった。

 分厚い鱗に覆われた肉体。盛り上がった筋肉。

 手にした大斧が、月明かりを鈍く反射している。

 

「見つけたぞ、小僧」

 

 低く、だがはっきりとした声。

 その一言だけで森の空気が張り詰めた。

 

 ワニ男は胸を張り吠えるように名乗りを上げる。

 

「我が名は獣王クロコダイン! 魔軍司令ハドラー様が指揮する六つの軍団の一つ、百獣魔団の軍団長だ!」

 

 その名乗りと同時にツノが大きく反応する。

 押し寄せてくるのは、圧倒的な闘志と誇り。

 戦うことそのものを誇りとする、獣王の気迫だ。

 

「ダイ! ハドラー様の勅命により、お前を討つ! 死にたくなければ魔軍司令殿を傷つけたという実力を発揮するのだな!」

 

 そう言ってクロコダインは口角を吊り上げた

 

「うるせぇワニ野郎! 要するにハドラーの下っ端じゃねぇか! ハドラーでさえコテンパンに負けたのに、お前なんかで相手になるかってんだ!」

 

 その言葉に反応したのはダイではなくポップだった。

 だがクロコダインは意にも介さず、喉の奥で低く笑う。

 

「クックックッ! どこの馬の骨かは知らんが……まあ試してみるんだな」

 

「そうかい! メラ!」

 

 激昂したポップが火炎呪文を放つ。

 しかし、

 

「グハァッ!」

 

 クロコダインは息を吐いただけで炎を呆気なく鎮火させた。

 

「なっ……!?」

 

「今度は、こちらの番だ!」

 

 次の瞬間、振り下ろされた斧が大地を叩き轟音と共に衝撃が走る。

 これにより私たちの背後にあった崖が大きく抉り取られてしまった。

 

「クククッ! 我ら六大団長をみくびるなよ。各々が得意とする分野においては、ハドラー殿を上回る力を持つからこそ、軍団長を任されておるのだ!」

 

「正面からぶつかったんじゃ勝ち目がない! おれが隙をつくから、呪文で援護してくれ!」

 

 ダイは即座に状況を見極めて臨戦態勢になる。

 しかし彼が振り返った時にはポップの姿が無かった。

 つまり敵前逃亡をしたわけだ。

 

「そりゃあないよ!」

 

「賢明な判断だな!」

 

 ……正直、私も迷った。

 この場から逃げるのが、正しい選択だ。

 生き延びるだけなら、間違いなく。

 

 それでも、ダイの背中を見て足が動かなかった。

 こんなにも真っ直ぐで誰かのために立ち続ける人を、

 見捨てて逃げることだけは、どうしてもできなかった。

 

「ラルゥ!」

 

 私は一歩、前に出た。

 出会って数時間の人間の為に命をかけるなんて馬鹿げている。

 本当にチョロいポケモンだ。

 

「ラルトス、危険だ!」

 

「命知らずなチビだ」

 

 ダイは真剣な表情で警告し、クロコダインは敵意を向ける。

 ツノの奥が、悲鳴を上げる。恐怖で、全身が震える。

 それでも、私はここに立つと決めた。

 たとえ力が足りなくても。たとえ勝ち目がなくても。

 この人の隣に立つことだけは、今の私にとって、何よりも大切な選択だった。

 

「いくぞっ!」

 

 クロコダインは迷いなくダイに向けて斧を振るった。

 先ほど崖を抉った一撃とは違う。無駄を削ぎ落とした、小さく鋭い振り。

 確実に当てるための一撃だ。

 それでも威力は十分すぎる。

 空気が裂け、斧の軌道だけで圧が生まれた。

 

「ラルッ!」

 

 私は咄嗟にツノへ意識を集中させ、『ねんりき』で足元の小石を跳ね上げた。

 弾丸のように放ったはずだったが、クロコダインは、まるで気にも留めない。

 というか視線すら向けない。

 

 ……ああ、そうか。

 雑魚すぎて無視して構わない相手だと認識されているんだ。

 しかし、その慢心が命取りよ。

 

 ダメージが通らないなら妨害すればいい。

 というわけで『ねんりき』で地面の泥を掬い上げた。

 そしてクロコダインの顔面へ、一気に叩きつけた。

 

 これは『ねんりき』ではなく『どろかけ』だな。

 まあ最近の作品じゃラルトスは覚えないけど。

 

「むっ……!」

 

 視界を封じられたクロコダインは動きが鈍くなった。

 つまり攻撃するなら今しかない。

 

「大地斬っ」

 

 ダイが踏み込み渾身の斬撃を放った。

 しかし、鈍い音が響いただけだった。

 相手の硬い皮膚に阻まれ、刃は弾かれる。

 

「ナイフ程度では、オレの身体は傷つけられんぞ! 真の戦士が持つ武具の威力というものを……見せてやる……!」

 

 そう言ってクロコダインは斧を天高く掲げた。

 

「唸れ! 真空の斧よ!」

 

 次の瞬間、空気が吠えた。

 強烈な突風が発生し、森全体を支配する。

 

「くっ……!」

 

 ダイの身体が宙に浮く。

 私も為す術なく吹き飛ばされ、視界が回転した。

 地面を転がり、衝撃で息が詰まる。

 

「さてと……そこのチビに礼をしてやらなければな」

 

「や、やめろ!」

 

「こんな雑魚を殺せば獣王の名に傷がつく。なーに、命までは奪わんさ」

 

 クロコダインは大きく胸を膨らませて、肺いっぱいに空気を取り込む。

 そして口からオレンジ色の吐息が放たれて私を包み込む。

 

「ラッ……!」

 

 熱と同時に、身体が強張った。

 四肢に力が入らない。

 痺れが神経を縛り付ける。

 これは焼け付き息(ヒートブレス)か。

 

「グオッ!?」

 

 しかし次に声を上げたのはクロコダインだった。

 巨大な身体がびくりと跳ね、斧を握る手が震えている。

 

 ……なんで?

 彼も同じように動きが鈍っている。

 混乱の中で一つの可能性が頭をよぎった。

 

 特性『シンクロ』。

 それは相手の技で状態異常になった時、同じ状態異常を相手にも与える効果だ。

 どうやら私の特性はソレらしい。

 

「貴様……何者だ!?」

 

 クロコダインは怒声を上げ、こちらへ斧を振り下ろそうとする。

 

「させない!」

 

 ダイの声が響いた。次の瞬間、視界が跳ねる。

 私は抱き上げられ、地面から引き離されていた。

 

 彼は信じられない速度で駆け出す。

 まるで波を裂くような鋭い加速だ。

 痺れの残る巨体は、その動きについていけない。

 

「ダイーッ!」

 

 すると聞き覚えのある声が森の奥から響く。

 振り返ると、ポップが駆け戻ってくる。

 そして、その後ろにはピンク色の髪を揺らす少女。

 おそらく彼女はマァムだろう。

 つまり助けに来てくれたのだ。

 

「メラミ!」

 

「はあっ!」

 

 ポップの呪文とマァムの魔弾銃が火を噴いた。

 火炎呪文が連続してクロコダインに迫る。

 

「ぬうっ!」

 

 クロコダインは斧を振るい真空の斧で空気の流れを操る。

 圧縮された気流が壁となり直撃を防いだ。

 

 しかし完全ではない。

 分厚い皮膚の一部が焼け焦げている

 それを見て、私は理解した。

 

 相手の防御は異常に高い。

 だが魔法への耐性、つまり特防はそこまでではない。

 そしてラルトスの本能がコレを使えと叫んでいる。

 

「……ラル♡」

 

 小さく、柔らかな鳴き声、『チャームボイス』がクロコダインを撃ち抜いた。

 

「グヌッ!?」

 

 確かな手応え。今までとは違う、はっきりとしたダメージ。

 思わぬ一撃に、クロコダインの動きが止まる。

 その隙を、ダイは見逃さなかった。

 

「うおおおっ!」

 

 一気に距離を詰め跳躍すると、パプニカのナイフが左目を斬り裂いた。

 

「グオオオッ!」

 

 傷口から青い血が噴き出す。

 そしてクロコダインは左目を押さえ、肩で荒い息をついた。

 

「よ、よくもオレの顔に……いや、オレの誇りに傷をつけてくれたな……!」

 

 滲む青い血の奥から、剥き出しの殺気が噴き上がる。

 

「覚えてろよ! ダイ、ラルトス! お前たちはオレの手で必ず殺す! 必ずだ!」

 

 ……え、私も!?

 怒りの矛先が当然のように向けられていることに思わず固まってしまう。

 もしかしてクロコダインを倒すまでダイたちと同行しないとマズいのでは?

 

 だが、その巨体はそれ以上追撃してこなかった。

 片手を地面へ突き出し、闘気を凝縮させる。

 

「カアアアッ!」

 

 放たれた闘気弾が大地を穿ち、轟音と共に巨大な穴が開いた。

 土砂と岩が舞い上がる中、クロコダインはそのまま穴へと飛び込む。

 しばしの沈黙の後、崩れ落ちる土の音だけが夜明けの森に残った。

 

「……撤退した、のか?」

 

 ポップの声に、ようやく現実感が戻ってくる。

 私はその場にへたり込み、深く息を吐いた。

 ツノに伝わってくるのは仲間たちの安堵である。

 

 なんとか生き残ることに成功したようだ。

 

 それだけではない。

 記憶をなぞってみるが、流れは大きく逸れていない。

 誰も欠けていないし、あの獣王も退いた。

 つまり致命的な改変は、起きていない。

 

 胸の奥で、静かに安堵する。

 私は物語の外側に踏み込みすぎてはいないらしい。

 まだ“原作の歯車”は息をしている。

 

 今はそれでいい。生き延びて、流れを壊さなかった。

 それだけで今の私には十分すぎる成果だ。

 


 

 ここは魔の森深部、洞窟の内部に築かれた百獣魔団の前線基地。

 

「ぐおお~ッ!! 不覚!」

 

 洞窟にクロコダインの咆哮が轟いた。

 彼は苛立ちを隠そうともせず拳を壁に叩きつける。

 

 昨日、アバンの使徒たちと交戦し深手を負って撤退を余儀なくされた。

 左目に刻まれた深い傷は未だ癒えず疼き続けている。

 

「いかに強敵とはいえ……あのような小僧に、片眼を奪われるとは……!」

 

「荒れとるな、クロコダイン……」

 

 低く、ねっとりとした声が洞窟内に響いた。

 

「ムッ!? 何者だ!」

 

 クロコダインが振り向くと、そこには小柄な魔族の老人が立っていた。

 

「キヒヒヒヒッ……まあ無理もないわな。たかが数人のガキに、そのような傷を負わされてはのう……」

 

「……貴様は、ザボエラ!」

 

 彼の名前は妖魔司教ザボエラ。

 魔王軍六軍団の一角、妖魔士団を率いる老獪な魔族だ。

 

「久しぶりじゃな、獣王殿」

 

「貴様……俺の負傷をどうやって知った!?」

 

「戦場を監視しておる悪魔の目玉は、もともと我が妖魔士団の配下。このワシに知らぬことなどないわ」

 

「……それで、俺の失態を嘲笑いに来たか」

 

「逆じゃよぉ。オヌシの“危機”を知り、助力に来たのじゃ。古き友としてなぁ……」

 

 クロコダインとザボエラは、魔王軍結成以前から知り合いだ。

 十五年前、凍れる時の秘法で封印されたハドラーを救出した際にも、二人は手を組んでいる。

 

「貴様が……俺を助ける、だと?」

 

「そうじゃ。ここに勇者ダイの育ての親、鬼面道士ブラスを封じた魔法の筒がある」

 

 ザボエラは不気味に笑い、筒を掲げる。

 

「すでにハドラー様の邪気で凶暴化しておる。これをダイに差し向けるのじゃ。子は親に手を出せまい? キィ~ヒッヒッヒッ!」

 

 その献策は、あまりにも卑劣で、あまりにも悪辣だった。

 

「な、なんだとぉッ! 貴様、この俺にそんな手を使えというのか! ふざけるな! 俺は正々堂々、ダイと戦い、勝ってみせる!」

 

 誇り高き武人であるクロコダインにとって、自ら手を汚さず、卑怯な策で敵を屠るザボエラのやり方は到底容認できない。

 しかし……

 

「どうかな……あのダイという小僧。中々に侮れんぞ」

 

 ザボエラは囁くように言葉を続ける。

 

「次も仕留め損なえば……魔王軍に居場所がなくなるやもしれんぞ?」

 

「……ぬっ」

 

 図星だった。

 

「ハドラー様はともかく、他の団長たちはどう思うかのぉ。獣王クロコダインは、小僧一人の首すら取れぬ無能であった、と……」

 

「な、なにを……!」

 

 実際には他の団長たちはクロコダインを高く評価している。

 無能呼ばわりする者など、ザボエラ以外にいない。

 だが、その事実を知らぬクロコダインの心は確実に揺れていた。

 

「悪いことは言わん……これを使え。オヌシとて、今の地位を失いたくはあるまい?」

 

「……分かった」

 

 重い沈黙の末、クロコダインは唸るように答えた。

 

「それで、貴様は何を望む?」

 

 ザボエラが無償で動く男でないことはクロコダイン自身よく分かっている。

 

「あの戦いに……白いモンスターがおったじゃろう?」

 

 ザボエラの目が、妖しく光る。

 

「そやつの身柄を引き渡せ。それでよい」

 

 ラルトスはポケモン、つまり異世界の生物だ。

 ザボエラにとっては、新種どころではない未知の存在。

 道連れで麻痺にした特性、念動力、そして不可解な音波攻撃。

 研究者の彼が興味を抱かぬはずがなかった。

 

「……いいだろう」

 

 こうして獣王は、自らの地位を守るため、

 忌み嫌っていた卑劣漢の手を取ることを選んだ。

 武人としての誇りに、重い蓋をしながら。

 

(じゃが、あやつは力任せで殺してしまいかねん……万全を期して、サタンパピーを数体、ロモスに派遣しておくかのぅ)

 

 サタンパピー。それは妖魔士団に所属する最上級のモンスターだ。

 彼らがクロコダイン、そしてブラスと合流すれば勇者ダイ一行に、勝ち目はない。

 つまり“原作の歯車”は大きく歪み始めていた。




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