"賭け"をしない人間なんて居ない、と私は思う。
自らの利益の為に何かに投資し、上手く行けばその利益を得て、失敗すれば投資した物を失う。賭けという言葉をまとめてしまえばそれだけだ。
何かしらの資格を得るために時間を投資して勉強をし、試験に挑む。受かれば資格を得て、落ちれば受検費と時間を失う。
最近話題の映画館にお金を支払って見る。面白ければそれで良し。つまらなければお金と時間を無駄にした気分になる。
ふと思い付いた調理法を試してみる。美味しければ満足し、不味ければ食材を無駄にしたような物だ。
そんな風に、賭けとは誰もがやっているものだ。もし、賭けという言葉に嫌なニュアンスを感じるのならば、勝負という言葉に言い換えてもいいかもしれない。少なくとも、私の伝えたいことはそれで伝わる。
前置きはここまでにして、本題に入るとしよう。
そんな私は人生最大の賭けに出て──
賭けの内容は私の名誉の為に言えない。どの肉のユッケを食べたのかも名言しない。
ただ確かなのは、私は体調不良を起こして
高校受検に失敗した程度で人生が終わる、とまでは思わない。結局の所高等学校というのは義務教育の範囲外であるし、卒業資格が欲しいのならば通信制という選択肢もある。
とは言え、高校なんて通わなくて良い、とまでも言いきれない。義務教育範囲外とは言え、社会では基本的な知識として必要な物事も学べるのだろうし、やはり同年代の子達との共同生活というのは今を逃せば他にはなかなか無いだろう。
そんな訳で、追加募集を探した。探しに探した。
できれば実家から無理なく通える。それが駄目なら寮制度があり、だとしても地元から高速バスやJRで二時間ぐらいかかる程度の距離の学校──そんな高校が、一つだけ存在した。
そんな田舎の学校の存在は知らなかったし、知っていたとして本来なら選択肢に入れる筈もない。だが、今の私には選択肢なんて無いような物だ。鈴白高校について詳しく調べている暇すらない。
私はこれを逃せば高校に通えないことが確定する一寸先は闇勢。
この学校の追加募集はそこに差し込んだ一筋の光だ。私に残された、たった一つの道筋。それを「知らない田舎の高校」だからと切り捨てるのは流石に愚かな判断だと言える。偏差値も校風も寮の内情も何一つ知らなくても、私はこの鈴白高校を受験するしか無いのだ。
"賭け"は最近嫌いになった。けれど、私はもう一度賭けなければならないらしい。
私は合格通知を握りしめて、私は人生で二番目に大きい賭けに出ることを決意した。
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良いニュースと悪いニュースがある。
そんなよくある前置きをして、私が合格した鈴白高校について語らせて貰おう。
良いニュースは、鈴白高校は思っていたよりも良い学校かもしれないということだ。
田舎なので土地が余っているのか、中高一貫なのかと疑ってしまうほど広く、校舎も五階建てが基本で新築とまでは言わないけれど、古びている様子はない。同級生も多く、友だち作りには困らないだろう。
寮の部屋はかなり広いし、風呂とシャワーもある。キッチンはコンロが一つと小さいが……まあ、昼食に関しては食堂がある。詳しくは知らないが条件によって食費支援もあるようだし。助かる。
少なくとも、私の一人暮らしの不安は軽くなったと言えるだろう。
では、悪いニュースだ。この鈴白高校は──
「それでは、ルールを説明します」
そう言ったのは、制服をしっかりと着こなした真面目という言葉が似合う男子生徒だった。上履きを見れば彼が二つ上の男子生徒であることが分かる。生徒会役員二十七番(数字の意味は知らない。入った順?)、
そして、もう一人。机を挟んで私の真正面に居る男子生徒はチャラいという言葉が似合う男子生徒だ。制服は気苦しいのかない所々ボタンを開けているし、髪は黒色だけれど恐らくワックスで固めている。両耳にはピアスもつけていて……いや、片方はイヤリングだ。痛かったのかな。
とにかく、そんな彼の名前は
入学式が終わって校舎内を探検していた私に、この学校特有のチュートリアルがあるだがなんだかと話しかけてきた人だ。どうせナンパだろうと言う気持ちがあった(ほら、私は美少女なので)が、私の入学経緯が入学経緯だ。鈴白高校について全く調べていない以上、この学校特有のルールがある可能性について否定はできない。
だから、私は少し悩んで比台先輩に着いていくことにしたのだが──それが間違いだった。
「お二方にはそれぞれマジックペン一つと八枚のカードをお配りしました。四枚は表面は……まあ、真っ白と言って良く、裏面は黒い柄といった対称的なカード。更に四枚は同じく片側は真っ白ですが、裏側は同じ柄ですが赤いですね。お二方には、黒色のカードの表面には"グー"、"チョキ"、"パー"のいずれかを。赤色のカード表面には"上"、"右"、"下"、"左"のいずれかをそれぞれ書いて頂きます」
「じゃんけんの手と方向ねぇ……俺としては既に思い浮かぶ物があるけど、歌八ハちゃんはどうだい?」
「そうですね、流石にここまで言われれば思い浮かぶものは一つだと思いますよ」
「二人共、察しの良いようですね。では、ゲーム名も先に言ってしまいましょう」
凍先輩はわざとらしい咳を一つして、間髪入れずにそれを宣言した。
「全ての動きをカードで代用して全く動かずに行うゲーム──"あっち向かずホイ"。私はこれをそう呼んでいます」
これから行われるゲームの名前──いや、
ふむふむ。取り敢えず、一言だけ言っておこうか。
学校のルールで賭け事が許可されてたら、駄目でしょうが!!