目隠れ美少女女子高生ギャンブラー爆誕   作:王者スライム

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第六話 閑話休題 

 さて、私が初めての娯楽賭博(ファッションギャンブル)を乗り越えた次の日。

 

 前日が入学式というのもあって、今日の予定というものは大した事のないものばかりだ。教科書の受け取り、身体能力テスト、健康診断、あとまあ色々。そんな行事を今日一日にまとめてやるなよと言うのが私の意見だけど、見方を変えればこれはそう悪いことでもない。

 なんせ、健康診断も身体能力テストもクラス単位で動いて行われるのだ。この三年間でクラスがどう動くのかという説明はまだ受けていないけれど、少なくとも一年間はこのクラスで共に過ごしていく事は確定している。つまり、クラス単位の共同作業と言うのは、クラスメイト同士仲良くなるチャンスでもあると言うことだ。

 配られた教科書を眺めて話し合うも良し。テストの結果を競い合うも良し。健康診断の結果に一喜一憂し合うのも良いだろう。共通の話題なんてものはいくらでもある。つまり、友達なんていくらでも作れる──

 

「あの人が柊さん?」

「上級生からあっち向かずホイで約八十ポイントむしり取ったらしいよ」

「俺の逆で草」

「草じゃないが……」

「あのイカサマ必勝ゲームで逆にむしり取れるの凄くない?何のスキル?話術?」

「話術が凄すぎて話しかけただけで、十ポイント取られるらしいよ」

「怖いね。近寄らない方が良さそうかな」

「触らぬ神に祟りなしってワケ」

「ちなみに誰か学食奢ってくれない?」

「お前はまず借金を返せ」

 

──筈だったのだが。今の私はクラスメイトどころか同級生全体に避けられているというのが現状だった。

 

 その原因はハッキリしている。娯楽賭博(ファッションギャンブル)校内ランキング──通称『ごらラン』。鈴白高校の生徒が娯楽賭博(ファッションギャンブル)で稼いだポイント数で作られたランキング。学年別だったり、範囲を一月にしたり、年中に広げたりといろいろカスタマイズできるようだが、要はそのランキングこそが問題だった。

 ここで一つ思い出してみよう。昨日の娯楽賭博(ファッションギャンブル)で私が稼いだポイントは七十九ポイント。そして、ごらランを範囲を一ヶ月、そして一年生だけに絞って見てみよう。すると、あら不思議。一位の人は七十九ポイント稼いでいるではないか。うん、私だね。柊歌八ハ、堂々の第一位だ。

 これで、娯楽賭博(ファッションギャンブル)初心者に最初に行われるゲームが単なる頭脳戦だったら良かった。「柊さん凄い!」「賢い!今度コツ教えて!」とクラスメイトがガヤガヤと私の周りに集まっていた筈だろう。

 だが、あっち向かずホイはただの頭脳戦ではなかった。自ら指摘しなければ、いくらでもイカサマが許されるルール。先にルールを知っていていくらでも事前準備ができた先輩有利の終わってるゲームだ。実際、ごらランの下の方を見れば十ポイント以上の借金をしてる生徒なんていくらでも居る。八十ポイント以上の借金を背負っている生徒も居る。お前はもっと頑張れ。

 なんにせよ、その前提の上で()()()()()()()()()

 そんな異常な事態を引き起こした人物に尊敬を通り越して恐怖を抱く、という流れはあり得なくもない。と言うか、あり得ちゃったので私は泣きそうになっているという感じなのだが。美少女を泣かせちゃうなんて悪すぎる学校だろ、鈴白高校。

 

「……暇だな」

 

 全ての行事が終わった放課後、一人ぼっちの教室で私はそんなことを呟いた。

 他のクラスメイトは帰ったか、親睦会とやらに行っているらしい。私もそれに参加したかったのだが、どのような流れだったのかは分からないが、私が介入する余地もなく不参加と言う事になっていた。場所は話を盗み聞きしたので分かっている。だが、結局誘われていない身だ。行った所で歓迎はされず、凄いビビられる気がする。いや、本当に。

 そんな訳で特にやることがなく、かと言って高知なんて観光してもたかが知れてるだろう。だったら、学校に残って何か起こらないかなと教室に残っていた訳だが、何も起こらない。教室に残るんじゃなくて、校内を探索すべきだったかも。

 そんな事を思った時だった。

 

「おっ、居た居たー!いやいや、灯台もと暗しとはまさにこの事だねぇ。まさかまだ教室に残ってるなんてさ。この僕でも見抜けなかったよ」

 

 知らない女子生徒だった。美少女である私とは違って、可愛いと言う言葉が似合う少女だ。派手な赤い髪は全体的に短め。だけど、後ろに伸びるポニーテールは長くクルクルとゆったり渦を巻いている。身長は私より少し高い。上履きの色か同級生だ。

 その女子生徒は私の近くまでやってきて、隣に来た所で立ち止まった。そして、ジーッと私を見てから、口を開く。

 

「初めまして、僕は右吾ナロ。気軽にナロちゃんって呼んでよ。君が柊歌八ハちゃんだよね?」

「……そうですが、ナロさんはなんで私の名前を?」

「ははっ!やだなぁ、謙遜しないでよぉ。ごらランの事を知ってるでしょ?初日から一年生の中で圧倒的一位に輝いた一年生!話題にならないって方が無理じゃないかなぁ?」

「確かにそうですね。でも、貴女と私のポイント差は二十ポイント程度でしょう?圧倒的と言うのは違うのでは?」

「……へぇ、覚えてたんだ。二位の僕のこと」

「それはまあ。ポイントがプラスになった生徒の事は覚えてますよ。私達新入生に最初に行われるゲームはルールがルールでしたからね。それで一応名前だけはと」

「うんうん、いやぁ!一位の人に覚えてもらえてるなんて光栄の限りだよ!嬉しいねぇ。あっ、前の席座っても良いかな?」

「どうぞ」

「そっれっじゃっ、しっつれーい!」

 

 ナロさんは私の前の席へと座って、こちらへと振り向く。この人は何の用があって私の元に来たのだろうか。私が今、うっすら察している理由でなければ良いんだけど。

 

「ねぇねぇ、歌八ハちゃんはなんで清白高校に来たの?」

「……何故そんな事を?」

「単なる雑談だってー!良いじゃん良いじゃん。聞かれても困ることでもないだろうしさぁ!」

「……賭けに負けたんです。人生最大の賭けに」

「ん?あー……成る程成る程。そういうことね!うわっ、悪いこと聞いちゃったなぁ。ごめんごめん。でも、歌八ハちゃんって面白い表現するんだねぇ。素敵だなぁ。僕もそういうスキルと言うかセンスが欲しいところだねぇ」

 

 ナロさんは明らかに私の人生の最大の賭けの内容を受験だと捉えているようだったが、別に訂正する程でもない。受験に失敗しているのは事実だし、そこに余計な物を食べて腹を下したのでなんて理由をつける方が馬鹿らしい。勘違いしたままでいて貰えるようように、私はわざと素早く話題を逸らそうと質問する。

 

「それで、ナロさんは何故この学校に入学したんですか?」

「おっ、良いじゃん良いじゃん。歌八ハちゃんも乗ってきたねぇ。じゃあ、この学校の文化祭って知ってる?」

「いえ、知りませんね。入学するまであまり情報は入れてこなかったので」

「えぇ!?それはだいぶん自分を追い込んでるねぇ……まあいいや。それでさ、私はこの学校の文化祭に一回だけ参加したんだけどさ。この学校の文化祭の出店はね、全部現金じゃなくてチケットで行われるんだよ」

「チケット?」

「そうそうチケット。一枚何円だったかは覚えてないと言うか、お母さんが買ってくれたから知らないんだけどさ。そのチケットで出店の商品を買ったり、ゲームで遊んだりできるんだよね。中ではさ、勝てばチケットが倍になって帰ってくるのもあってさ。それでチケットを稼ぐのが好きだったんだよねぇ~」

「……それ賭けでは?」

「今更じゃない?娯楽賭博(ファッションギャンブル)なんてやってる学校だし。それに現金に換金できる訳じゃないから大丈夫でしょ」

 

 それは本当にそうなので何も言い返せず(本当は何か言い返して論破したいが)、大人しくナロさんの話の続きを促した。いやでも、絶対娯楽賭博(ファッションギャンブル)という制度は教育機関として明らかにおかしいからな……口にはしないけど。その制度で凄い稼いじゃった身だし。

 

「ポーカー、型抜き、坊主めくりに大富豪!いろんなゲームをやって、めちゃくちゃに稼いで。それが楽しくて!楽しくて!今度は出店側としても参加してみたいな、って言うのが理由なんだけどぉ……そしたら娯楽賭博(ファッションギャンブル)なんて制度があるじゃないか!文化祭だけじゃなくて、あれを普段から楽しめるなんてなんて良い学校のなんだ!僕はそう思ったのさ」

「まあ、良い学校かどうかは諸説あると思いますけど……」

「ふふふ、そうだねぇそうだねぇ。中には八十七ポイントの借金を負ってる生徒も居るし。人によってはそこの意見も変わっちゃうかもねぇ。それにしても八十七ポイントって!八千七百円分ぐらいの借金?こうして、言葉にすると少なく聞こえちゃうねぇ。ふふふ……」

 

 少しの間、静寂が流れて。私はその間にナロさんを観察する。

 相変わらず可愛らしい人だ。仕草も。笑顔も。話し方も。声色も。仮にごらランで一位を取っていたのが私ではなくナロさんだったとしても、ナロさんはハブられずにクラスメイトから友達を作れていただろう。そんな光景が用意に浮かぶ。ただ一つだけ。恐らく、私だけが気づいている、と言うより、今私の前に居るナロさんの贔屓目に見ても全くもって可愛くない特徴が一つ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……僕はね。歌八ハちゃんとはものすっごく仲良くなれると思うんだ」

「そうですね、私もそう思いますよ」

「ホント!?じゃあさ、じゃあさ──」

 

 ナロさんはそこで一呼吸置いて。そして、これまで聞いてきた可愛らしい声が嘘だったかのように、どす黒い声で言った。

 

「──僕と娯楽賭博(ファッションギャンブル)しろよ。僕に勝ってもねぇのに僕の上に居座ってんじゃねぇぞ

 

 ナロさんのそんな言葉に私は溜め息だけをついた。

 なんで新入生がそんなに好戦的なんだよ!この学校に適応し過ぎでしょうが!

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