目隠れ美少女女子高生ギャンブラー爆誕   作:王者スライム

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第七話 ハーフポーカー

「それで、賭けるポイントは九ポイントでよろしいですか?」

 

 ナロさんが鈴白高校に適応し過ぎている問題はさておいて、正直予測通りの流れであった以上驚きはさほどなかった。

 灯台もと暗しという発言からナロさんは放課後と言う時間に私を探し続けていた。そして、一年生の範囲内でナロさんの順位が私の一つ下の二位という事実。更に、私と会話しているナロさんの目があからさまに濁っていた点。

 それらの要素から、ナロさんの目的は私との娯楽賭博(ファッションギャンブル)による直接対決であろうことは簡単に予測がつく。私がその予測から目を逸らし続けていただけだ。なんだよ、私に勝ったことないのに

私の上に居座るなって。バトルジャンキー?

 ちなみに娯楽賭博(ファッションギャンブル)は先に賭けるポイントを決めるのが基本らしい。あっち向かずホイは最初にやるゲームなので例外だとか。なので、仮にナロさんが勝てば順位が入れ替わる最低のポイントを提示したのだが、それが気に入らなかったらしい。相変わらずどす黒い声でナロさんが口を開く。

 

あ"ぁ"?舐めたこと言ってんじゃねぇよ?それだと順位が入れ替わるだけだろうがよ

「成る程、要は格差を付けるのを望んでいるんですね。では、十五ポイントでどうでしょう?それならば今と同じ差が──」

三十。言っとくけど、譲る気はないよ

「──、分かりました。それで受けますよ、勝負」

「わぁわぁ。ありがとう歌八ハちゃん、いやぁ、歌八ハちゃんとの勝負楽しみだなぁ……想像するだけでワクワクしちゃうよ」

「楽しみにしていただけるのはありがたいですが、生徒会役員の方はどうするのですか?確か娯楽賭博(ファッションギャンブル)は生徒会役員の方が取り締まっているのですよね?もう、放課時間になってからしばらく経ちましたがまだ学校に居るものなのでしょうか」

「ふふ、安心してよ歌八ハちゃん。娯楽賭博(ファッションギャンブル)を取り締まるのが生徒会役員の仕事だからこそ結構学校に残ってるものだしさ。それに──もう、呼んじゃってるし。おーい!もう来てもいいよー!」

 

 そう言ってナロさんが教室の扉を向いて手を振りだすと、待ってましたと言わんばかりにナロさんが呼んだ生徒会役員の方が入ってきた。現れたのは制服をしっかりと着こなした真面目という言葉が似合う──と言うか、凍先輩だ。

 こんな偶然あるのか?と困惑している中、ナロさんが明るく元気に口を開く。

 

「じゃじゃーん。凍先輩でーす。いやぁ、凍先輩とは歌八ハちゃんを探してる途中で偶然出会ったんだけどさ、なんでも歌八ハちゃんの初試合を担当したって言うじゃない?だからさ、歌八ハちゃんの活躍は一から十まで聞いててさ?娯楽賭博(ファッションギャンブル)で戦うのが更に楽しみになったんだよねぇ」

「……偶然、ですか」

「うんうん、偶然だよ。ねぇ、せーんぱい?」

「ええ、偶然ですよ。とは言え、あっち向かずホイで五十ポイント近くも稼いだ右吾さんのことは一度ゲームを担当したいと思っていましたが」

「もーう、凍先輩は口が上手い。照れちゃうなぁ、僕」

 

 そんな二人のやり取りを眺めつつ、私はただ「絶対偶然じゃないな、これ」と確信していた。

 凍先輩がナロさんのゲームを体験したいと思っていたというのがもう怪しい。どこかしらでナロさんの性格と私に対する熱意を知り、そこに参戦するためにナロさんに接近した──みたいな所ではなかろうか。ナロさん、ゲーム中に本性出してそうだし。それで五十ポイント程度稼いだとなれば生徒会役員同士の会話の話題になるだろう。その点を考えればありそうな話だ。

 しかし、凍先輩。わざわざ私とナロさんのゲームを担当しようと動くとは……真面目そうに見えて、案外面白目当てで行動するタイプなのか?

 

「それではお二方。三十ポイントを賭け、娯楽賭博(ファッションギャンブル)を行う──それで間違いありませんか?」

「うんうん、勿論勿論。楽しもうね、歌八ハちゃん」

「……そうですね、出来るだけ楽しみますよ」

 

 正直に言ってしまうと三十ポイント、つまり一ヶ月分の昼食代を賭けている訳だから楽しめる筈もないだろうと言うのが私の内心なのだが、それを言うには流石に遅すぎるだろう。仮に断れたとしても、これから先ずっとめちゃくちゃ嫌な絡み方してきそうだしな、ナロさん。それを考えると勝負は受けるしかない。

 一応七十九ポイントを稼いでいる訳だしな。三十ポイントを失ったとしてもトータルでは勝ちと言えば勝ちである……まあ、この考え方は損し続ける人間の考え方なのであまり採用したくはないのだけれど。

 

「承知しました。それではお二方が雌雄を決するのに相応しい様なゲームを用意させて頂きます」

 

 そう告げた凍先輩のポケットから取り出されたのは、一組のトランプだった。あっち向かずホイのカードにも使われていた百均のトランプ。ただし、()()のという注釈は付くが。

 

「あれぇ?今回のは新品なんだ?」

「三十ポイントが賭けられた大勝負ですからね。イカサマ等を封じる為の当然の用意です」

「だってさ。歌八ハちゃん、疑われてるよぉ?」

「それを言うなら、あっち向かずホイでポイントを稼げた貴女も疑われている側ですよ、ナロさん」

「ふふふ、そりゃあそうだねぇ。すっかり僕のことを忘れてたよ。イカサマ前提のゲームとは言え、確かに僕たちはイカサマを通してきた側の生徒って事だ。疑われても仕方がないのかもねぇ」

「……そもそも、あっち向かずホイも大量のポイントを稼げるゲームでしたけどカードは新品ではなかったですよね?それは良いんですか?」

「あれは構わないんですよ。場合によっては十ポイントも稼げないゲームなので」

 

 屁理屈だ……!

 そんなことは思いつつも口には出さない。入学してまだ二日目だが、鈴白高校が既にまあまあ悪い学校であることを把握している私は、いくら突っかかっても何も解決しないグレーな部分を把握しつつあった。本当に悪い学校である。

 とは言え、鈴白高校も鈴白高校で賭博に敗北し、借金を背負った新入生を見過ごさない様にしてはいるらしい。大量の新入生が入学して色々とゴタゴタし、様々な仕事が発生する四月。そこ辺りの仕事を借金を背負っている生徒向けに割りの良い給料で雇っているとかなんとか。

 マッチポンプなんて言葉が過るが気のせいだろう。新入生は借金を早く返済でき、鈴白高校にとっては人手が集まる。本当に(鈴白高校にとって)良く出来た制度だと私は思う。

 

「しかし、新品のトランプでゲームをやるとなると……案外、私たちの知っているゲームで戦うのかもしれませんね」

「えー?それはやだなぁ。歌八ハちゃんとならなんでも楽しく遊べるとは思うけど、三十ポイントを賭けた勝負を豚のしっぽとかで決めたくはないかも」

「それに関しては完全に同意見ですね」

「安心して下さい。確かに今から行うゲームのベースとなる物はお二方共知っているでしょうが、ゲームそのものはやったことがないと断定できますよ」

「えぇ?じゃあ、頑張ってベースになったゲームを当てちゃおうかなぁ?当てたら追加でポイント貰えるとかで」

「ナロさん、変な部分で稼ごうとするのやめてください」

「こちらとしてもゲーム以外でのポイントの移動は行えませんので、お断りしておきましょう」

「えぇ?ケチだなぁ……」

 

 ぶーぶーと文句を垂れるナロさんを放って置いて、凍先輩は開封したトランプから二枚のジョーカーを抜いて、少しカードを調整しつつデッキを二つに分けた。途中の動作を見ればその分け方がスートの色によって選別されたのは分かるけれど、何をやるかは開幕検討もつかない。

 わざわざ二つに分けた以上はそれぞれを私たちに配るのだろうけど、トランプでそんな分け方をするゲームってあっただろうか?賭博であることも考えると、スピードとかでもないだろうし。

 

「そこまで悩まなくても、お二方からすればとっても単純なゲームですよ。二組の一から十三のトランプカード。それら二十六枚から五枚一組のデッキを五つ作り、五回に渡って勝負していただく。その様なゲームです」

「んん?それってさ、ポーカーって事?でも、そのやり方だと出来ない役もあるし、そもそも一枚余るよねぇ?」

「それもそうですし……スートが違うだけで同じ組み合わせのカードがそれぞれに配られる訳ですよね?だったら、互いに作るデッキも一致しませんか?」

 

 一から十三のカードが二組。そこから自由にカードを選んでポーカーをするなら、ロイヤルストレートフラッシュを二組。九から五のストレートフラッシュを二組。あとはあまりでツーペアを作るのが最も強くなる筈だ。そして、二人共同じデッキを作るなら、あとはどの役をどのタイミングで出すかを読み合うだけのゲームになる筈だ。そんなゲームを単純化したゲームを人はじゃんけんと呼んでいる。

 流石にじゃんけんは言い過ぎだとしても、そんなゲームに三十ポイントを賭けて戦いたくはないというのが本音だった。

 

「ふむ、確かにお二方の疑念は分かります。しかし、あくまでもポーカー要素はベースとなっただけの物。このゲームの本質とは違います」

「へー、ポーカーをやるのにポーカーの勝負は本質じゃないんだ?でもさぁ、そうなると今からやるゲームの本質はどこにあるのかな?」

「それは先程右吾さんが仰った()()()()()()()。そこにこのゲームの本質があります」

「一枚余ったカードこそが本質……?」

 

 その言葉に私は頭を働かせる。

 デッキを作りポーカー勝負をするのは間違いない筈だ。とは言え、それでは二人のデッキが一致し殆どじゃんけんみたいになってしまうと言う問題がある。そこに余ったカードを本質として何かルールを加えるならば、二人の作るデッキに差が現れる様なルールを──と、そこで私は気づいた。恐らく、ナロさんも同タイミングで。

 最後に余る一枚のカードが異なれば、自然と二人の作るデッキも異なるだろうと言うことに。そして、最後に余る一枚のカードこそが本質と言う言葉の意味に。

 

「お二方とも気づいた様ですね。これは()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 凍先輩は実に楽しそうに、更に言葉を繋げた。

 

「ゲーム名は"ハーフポーカー"。ごらラントップツーを飾るお二人の面白い勝負が見られることを期待しています」

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