side ???
私は漂う。この世界から、あの子達から、全てから逃げるために。これ以上の悲劇を起こさないために。だから願う。
どうか、私を探さないで。
side 鈴谷
「…………ん?ここは」
目が覚めると、どこかの部屋に運ばれていた。薬品の匂いからして医務室なのだろう。よく見ると服装はいつものと違って、病人服のような一枚布の服を着せられていた。あたりを見回して身体を起こすとまだ気だるさが残っていた。と、扉が開いて誰かが入ってきた。
「鈴谷、起きましたの?」
「熊野?」
入ってきたのは姉妹艦の熊野だった。そこまで見てようやく気を失う前のことを思い出した。
「熊野、あの後どうなったの?」
「それを説明しに来ましたのよ」
そう言ってベッドの近くに椅子を持ってきて腰掛けた。
「まず、あなたが撃たれたあとあの大将は私も撃とうとしてきましたの。そこに見知らぬ深海棲艦が襲撃。敵からの砲撃で目くらましになっている間にあなたを担いで鎮守府内に避難したわけですわ」
「そうだったんだ……その深海棲艦は?」
「報告によると、その場で大将とその他憲兵を殺した後逃げたそうですわ」
「…………分かった。他に何かある?」
「上の方々が今回の事で九尾棲姫……襲って来た深海棲艦の呼称ですわ。それの撃破に乗り出すようで、もうすぐ作戦決行ですわ」
熊野が丁寧に説明してくれたが、ある単語を聞いたあとから話は耳に入ってこなくなった。
「……今、九尾って言った?」
「そうですわ、何でも腰のあたりから赤黒い尻尾のようなものが生えていたと、生き残った憲兵の方がおっしゃってたらしいですわ」
「…………………」
「何か心当たりが?」
「………心当たりっていうか、それ多分提督だよ」
「提督?確かに提督は今行方不明ですけど普通の人間ですわよね」
「私付き合ったんだよ、妖精さんが深海棲艦が見たいから提督に深海棲艦になってって頼んだところに」
「それじゃあ………」
「うん、目の前で深海棲艦になったよ。でもちゃんと私達のこと分ってたし、何より本物が出てきても自分が残って深海棲艦から私を逃してくれた」
「……にわかには信じがたい話ですが鈴谷と妖精さんが見ていたのなら本当なのですね」
「多分、私と一緒にいた事がバレたと思ったから提督はわざとやられたんだと思う。死んだふりをしてしばらくしたら帰ってくる予定で………私が撃たれるところを見た」
「ならあの時大将を殺したのは……」
「提督で間違いないと思う」
「……私たち、とんでもない勘違いをしていたのですね。提督と知らずに追い詰めて提督を沈めてしまった」
「…………まだ間に合う」
「えっ?」
「まだ間に合うはずだよ、提督は大和さん達にあれだけ砲撃されても生きてたんだよ?今でもどこかにいるはず。なら話をして誤解を解けば」
「またこの鎮守府の提督に復帰できる!」
「大和さんや長門達に教えよう!みんなで考えればきっと提督を助けられるよ!」
「そうですわね、なら早く行きましょうか!」
今行くから待ってなよ提督、私は逃さないからね!