テイルズオブ・サモナーズ   作:柿田

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第二十三話「乱入者」

「はああああああっ!」

 

 刀を振り回すが、目の前の緑の外套の少年にはまるで当たらない。まるで虚空を切るばかりだ。

 

「だったら……地竜牙!」

 

 技の名前を叫ぶと、指輪が光る。わたしが力を使ったことを示していた。

 その名の通り、牙のような鋭い岩が地面から隆起する。

 

「うざいんだよ!」

 

 少年は大きく跳躍して岩の牙から逃れる。空中ならば攻撃の範囲外だ。確かに、これでは届かない。

 だが、こちらもそのくらいは予測している。氷の聖獣の力を使い、手の中で氷の武器を作り出す。

 

「氷刹刃!」

 

 少年の飛んだ先へと氷で作ったの苦無を三本飛ばす。ちょうど少年の喉元へと苦無が向かう。

 

「ちぃっ!」

 

 少年は舌打ちしながら、手刀で苦無を叩き落とす。だが、そのうちの一本は少年の頬を掠めた。

 

「っ……あ!?」

 

 少年は着地すると、頬を拭う。顔に一筋の傷と、そこから血が出ていることに気がついた。

 

「外れた……!」

 

 わたしは、奥歯を強く噛んだ。まさか掠めただけとは思わなかったからだ。

 しかし、少年には掠っただけでも屈辱的だったらしい。顔が怒りに歪んでいった。

 

「ふざけんな!女!」

 

 地面を蹴上げ、高速で移動する。向かう先はわたしだ。

 

「くっ……!」

 

 間違いなく攻撃してくる。それは分かるが、避けるにしても術で攻撃を防ぐにしても、わたしには速さも技量も足りない。

 

「潰してやる!」

 

 少年は走りながら拳を構える。両腕を交差させて防御の構えを取る。

 だが、少年の拳は光を纏っている。あれは……魔力だ!受け止めたところで無事で済むか怪しい。

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 距離があっという間に縮まる。拳が当たるまで数歩といったところだ。

 避けるのは無理か……と、内心諦めていた瞬間だった。

 

「フレイムバースト!」

 

「何っ!?」

 

 後ろから声が聞こえた。少年にも声が聞こえたのか、足を止めて飛び退いた。その直後、目の前で爆発が起きた。

 わたしは、爆風に飛ばされないように踏ん張りながら声の聞こえた方を見る。

 

「アリアさん……」

 

 そこに立っていたのは、細剣(レイピア)を構えたアリアさんだった。

 

「ワタシも戦う。迷いもあるが、聞かなかったことにするわけにいかないだろう?」

 

「はい!お願いします!」

 

 正直、ありがたかった。わたしと弓月さんだけでは難しいだろう。しかし、召喚士がもう一人いれば勝機はあると思う。

 それに、図らずも帝国の召喚士と肩を並べて戦えるのも嬉しい。正直に言えば、帝国の召喚士がどんな人か少し不安だった。

 今、戦う決意をしてくれただけでも、信頼出来る。いや、信頼したい!

 

「少し増えたから何だ!まとめて消えろ!」

 

 少年は地面を蹴り上げ、再び距離を詰める。やはり速い!

 しかし、対処できないわけではない!

 

「牙狼閃!」

 

 後方から狼の咆哮を思わせる程の闘気を纏った矢が飛んでくる。これは、弓月さんの技だ!

 少年は舌打ちしながら、矢を裏拳で弾く。攻撃は当たりこそしなかったが、足は止まった。

 わたし達の狙いはこれだ。すかさず、アリアさんが細剣を振るう。

 

「スターストローク!」

 

 魔神剣を思わせる衝撃波が、少年を襲う!並みの戦士ならひとたまりもないだろう。

 だが、少年が臆することはなかった。

 

「邪魔すんな!」

 

 叫びと共に衝撃波を殴って打ち消した。周囲は土煙が舞う。

 今なら、いける!

 

「今だ!飛天翔駆!」

 

 わたしは剣を構えて高く跳躍し、土煙の中に飛び込んだ。

 狙いは、当然ながら少年だ。

 

「はあっ!」

 

 少年を斬り、土煙の外に着地する。視界は悪かったが、間違いなく手応えはあった。

 

「どうだ!降伏しろ!」

 

 わたしは土煙の中にいる少年に降伏勧告を出す。返答はすぐには来なかった。

 その答えがないまま、少年の周りの土煙が晴れた。

 

「効いてない……?」

 

 間違いなく手応えはあった。しかし、斬ったと確信した相手は、腕の僅かな切り傷以外に何事もなかったように立っている。

 

「やるね……でも、君達には従わない!」

 

 少年は腰を落とし、右手を引いた。弓矢を思わせる動作だ。

 右手には、魔力が集まるのを感じる。その力は、先程までとは比べ物にならない。

 

「大技が来ます!構えて!」

 

 弓月さんが叫ぶ。止められないと思ったのか、防御を指示する。

 

「はあっ!」

 

 少年は魔力を溜め込んだ拳を振り抜いた!拳が当たるわけではない。

 だが、魔力の衝撃波が打ち放たれる。

 

「奥義・光龍拳!」

 

 その衝撃波は、龍を思わせる強さを感じさせた。全てを喰らい、何者も寄せ付けない気高い力だ。

 龍の衝撃波の飛ぶ速度は速い。避けるのは難しいだろう。だったら対処法は一つ。

 

「止めてみせる!」

 

 左手を地面につける。意識を指輪に集中させる。

 聖獣の力は、属性の範疇であれば召喚士の想像・解釈によって幅が広がる。

 それを更に広げる。今、わたしが契約している聖獣は氷と土の二体だ。その力を活かす全く新しい術を思い浮かべる。

 

「何をしようが無駄だぁ!」

 

 少年が叫ぶ。だが、今のわたしの胸中には響かない。

 わたしは、静かに詠唱を始める。

 

「双璧をなせ……大地と氷の力よ……!」

 

 準備は整った。わたしは、術の名を高らかに叫んだ!

 

「氷土双璧!」

 

 地面から何かが飛び出す。

 これは、壁だ!氷と土で出来た壁が現れる。

 

「何っ!?」

 

 龍の衝撃波は、壁によって阻まれる。真っ直ぐに飛んできていたが、遮られている。

 龍も壁を喰らい尽くす勢いだ。気を抜いたら壁と共に、こちからが吹き飛ばされるだろう。

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 歯を食いしばり、地面にへばりつく。龍に対抗する壁の維持で精一杯だ。

 しかし、壁には無情にもひびが入る。

 

「消え去れっ!」

 

「うわっ!」

 

 少年が叫ぶ通りに壁は弾け飛んだ。その衝撃で、わたしの身体は吹き飛ばされる。

 だが、少年の放った龍も消え去っていた。

 

「ふざけんなよ……お前っ!」

 

「っ!」

 

 少年はすぐに立ち上がり、こちらに向かって走ってくる。その顔は怒りで歪んでいた。

 

「そっちこそふざけるな!」

 

 わたしも対抗して刀を振るう。その斬撃は一回も当たらないか、足を止めるには十分だった。

 

「ちぃっ!死にぞこないの生贄が!」

 

「生贄?勝手なこと言うな!」

 

 さっきからなん何だこいつは……!いきなり変なこと言ったと思ったら、召喚士並に強いし意味不明なことを言い出すし滅茶苦茶だ。

 変な奴だけど強い。それは間違いなかった。

 

「爆砕斬!」

 

 爆砕斬は、激しく刀を地面に叩きつける技だ。当たれば間違いなく怯む。

 しかし、少年は予想よりも早く後ろに地面を蹴った。

 

「チィっ!当たるか!」

 

「避けた……!?」

 

 当たる直前ではあったが、斬撃が躱された。攻撃が当たらなかったということは、当然ながら無防備になる。

 僅かな時間ではあるが、反撃するには十分だった。

 

「くっ……!」

 

 急いで体勢を立て直そうとするが、少年が隙を見過ごすわけがない。地面を蹴って急接近してくる。

────何とか距離を取らなければ……!それは、分かってはいるが間に合わない!

 

「双撞掌底破!」

 

 少年が叫ぶ。それは、素早い掌底打ちだった。

 攻撃範囲こそ短いが、近距離ならば敵を仕留めるには十分な威力だ。

 力強い掌底が、腹に当たる。

 

「ぐああああああああっ!」

 

 後方に吹き飛ばされ、身体が地面に叩きつけられた。

 

「うっ……!ぐうっ……!」

 

 激しい痛みが腹部だけでなく、内臓にも響き渡る。堪えきれず、腹を押さえる。

 すぐに構えなければ、追撃が来る……!だが、刀を構える事が出来なかった。

 

「なに……?何だか……うぅっ!」

 

 お腹がじんわりと痛む。殴られた時の激しい痛みとも少し違う。体調不良の時の腹痛を思い出す。

 

「う……ぐぅっ……はあはあ……!」

 

 痛みが治まることはなかった。呼吸が荒くなり、全体的に身体が汗ばむ。

 動こうにも思うように足が進まない。動くことを拒んでいると言っても良い。

 

「衝撃で三半規管をぶっ叩いてやった。暫くはまともに動けないだろうね」

 

「な……に……」

 

 口角を上げて、嘲笑うように少年が説明する。

 三半規管を刺激することで倦怠感や不快感を引き出したということらしい。

 

「そういわけだからさ……いい加減消えろ!」

 

 少年は拳を振り下ろす。今度こそ避けられない……!

 

「絶影!」

 

 声と共に目の前に何かが舞い降りる。すぐに、それが弓月さんだと気がついた。

 

「一光さん!下がって!」

 

 絶影は、相手の真上から斬りかかる襲撃用の技だ。つまり、少年との間に弓月さんが割って入ったのだ。

 わたしは彼女に促され、よろよろ歩きながら距離を取る。

 

「邪魔なんだよ!召喚士の小間使いがあっ!」

 

 とどめを刺せずに苛立ったのか、少年は何度も激しく拳を振り抜く。弓月さんは、激しい強打の雨を剣で受け流し続ける。

 致命的な一撃こそ受けてないが、弓月さんの顔には冷や汗が浮かぶのが見えた。

 

「弓月さん……!」

 

 何とかして助太刀したいが、今のわたしでは足手まといになるだろう。

 そうなれば後は頼りになるのは一人しかいない。

 

「アリアさん、何か強い術とかありませんか?」

 

「簡単に言ってくれるね。まあ、試したいやつが一つあるが」

 

 こめかみを抑えながら、困ったような顔をするアリアさん。だが、その顔には自信に溢れていた。

 

「じゃあ、それをお願いします。時間は稼ぎますから……」

 

 わたしが刀を構えると、アリアさんに肩を掴まれた。

 

「待ちたまえ。そのまま行っても勝負にならない」

 

 その手を振り切りたかったが、彼女の言う通りだ。大人しく彼女と向き合う。

 アリアさんは、わたしの腹部に手を翳す。

 

「水の力よ……快方せよ!ディスペルキュア!」

 

 アリアさんの指輪が一瞬だけ光る。光が消えると、痛みが和らいだのを感じる。これなら戦える!

 

「あっ、ちょっと楽になったかも……ありがとうございます!」

 

「頼んだよ。そんなに時間はかけないと思うけどね」

 

「はい!」

 

 アリアさんに礼を言って、わたしは改めて少年向かって走り出す。弓月さんと少年の攻防はいまだに続いていた。

 いつまでも弓月さんに任せっきりにするわけにもいかない!

 

「わたしも相手だぁっ!」

 

 弓月さんに気を取られている少年の頭を狙って、斬り上げる。しかし、不意をついた攻撃であっても少年は舌打ちしつつも避ける。

 

「ちっ!もう回復したのかよ!」

 

「いつまでも蹲ってるわけにもいかないからね!」

 

 攻撃の手を緩めず斬り続ける。とにかく、術の時間稼ぎが大事だ。

 弓月さんも、苦笑いしつつも共に剣を振るい始める。

 

「まったく……無理はしないでくださいね!」

 

「はい!」

 

 わたしが攻撃に加わり、少年は更に顔を歪める。苛立ちが感じられた。

 

「ちぃっ……!」

 

 少年は、躱しつつも大きく舌打ちする。

 わたしと弓月さんの斬撃が、交互に少年へと襲いかかる。少年は、避けるので精一杯のようだ。

 単純な手数の多さだけではない。わたしが上段を狙えば、弓月さんは下段を狙う。わたしが右肩を狙えば、弓月さんは左肩を狙う。

 その連携攻撃の繰り返しで、少年は反撃が出来ない状態だ。

 

「虎牙破斬!」

 

 上下に刀を振るう。例によって避けられるが、弓月さんが走り出す。

 限りなく少年に近い位置まで接近。そして、弓月さんは剣を振り抜いた!

 

「真空破斬!」

 

 居合斬りによって真一文字に放たれた斬撃が、少年を襲う!

 

「ぐあっ……!」

 

 少年は、鋭い斬撃を食らって膝をつく。わたしと弓月さんは合図するでもなく、共に少年に斬りかかった!

 動きが完全に止まった今が好機だった。ここで仕留められると思った。

 しかし、少年もこれで終わるわけがなかった。

 

「馬鹿にするなあっ……衝波魔神拳!」

 

「えっ……!?」

 

 斬ろうと接近した瞬間だった。少年の周囲に衝撃が走る。わたしと弓月さんは、その衝撃で押し戻された。

 

「くっ……まだこんな力が……!」

 

 すぐに何があったのか理解した。

 あの技は、少年が拳を地面に叩きつける事で衝撃を発生させる技だったのだ。

 だが、これで止まるわけにもいかない。

 

「一光さん!行きますよ!」

 

「はい!」

 

 弓月さんが叫ぶ。彼女も同じ考えのようだ。

 これは連携攻撃の合図だ。わたしと弓月さんには、強力な併せ技がある!

 弓月さんと共に、少年に向かって同時に刀を突きつける!

 

「はあああああああああっ!衝破!」

 

「十文字!」

 

────衝破十文字。わたしと弓月さんの合体技だ。

 二人同時に突き技である瞬迅剣を放つことで、より強力な技へと変化する。それが、この衝破十文字だ。

 

「ちぃっ!守護光陣!」

 

「えっ……!」

 

 当たると確信した、わたし達の攻撃は阻まれた。突如、少年の目の前に壁のようなものが現れたからだ。それが何かはすぐに分かった。

 これは、少年の技だ。おそらくは、防御用のものだろう。わたしと弓月さんに対して一枚ずつの防御用の光の障壁。それが、この壁の正体……!

 

「一光さん!この好機を逃すわけにはいきません!押し切りますよ!」

 

「はい!」

 

 弓月さんの攻撃続行の指示だ。わたしも同じ考えだった。刀を押し込む手に、さらに力を加える。

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 わたし達も少年も互いに一歩も譲らない拮抗した状態が続く。どちらが押し負けてもおかしくない。

 

「ぐぅぅぅっ!生贄如きがあっ!」

 

「っ……!一光さん!気を付けて!」

 

 少年の慟哭と共に壁が光り始める。そして、壁に少しずつ亀裂が入り始めたのが見えた。

 あまり良い予感はしないが、退くわけにもいかなかった。

 その予感は、すぐに的中した。

 

「えっ……!」

 

 瞬間────壁が、弾け飛んだ。

 まるで、空気を入れすぎた風船が破裂するかのように、砕け散った。

 

「うわっ!」

 

 壁が砕けた衝撃で、わたし達も地面に叩きつけられた。

 しかし、それは少年も同じようだ。

 

「ふざけやがって……!」

 

 少年は真っ直ぐにわたしを睨みつける。その相貌は、苛立ちに満ち溢れていた。今にも飛びかからんとする雰囲気だ。

 わたしと弓月さんは立ち上がって構えるが、正直傷だらけだ。攻撃してきたとして、食い止められるか……?

 

「二人共!下がって!」

 

 後ろから声が聞こえた。

 アリアさんの声だ。術の準備が終わった合図だ。

 

「弓月さん!」

 

 弓月さんもそれが分かったのか、頷きながら少年から距離を取る。

 

「聖なる水よ。悪しきを滅し、我らの正義を運び給え……」

 

 アリアさんの声が周囲に響く。大気中の魔力と、アリアさんの魔力が共鳴しているのか、はっきりと聞こえてきた。

 

「クソ……!次から次に!」

 

 聞こえたのは少年も同じようだ。彼の顔に焦りが見える。顔を歪ませて後退る。しかし、アリアさんの術はそれを許さなかった。

 

「アクア・フォルテシモ!」

 

 アリアさんの周囲に、いくつもの魔法陣が現れる。アリアさんが手を振るうと、魔法陣からは激しい水しぶきが出てくる。その姿は、まるで間欠泉を思わせた。

 魔法の標的は、当然ながら逃げようとする少年だ。

 

「ぐううううううううううっ!」

 

 激しい水の流れが、次々に少年を襲う。地面に叩きつけたと思ったら、次の瞬間には打ち上げ、さらに地面へと突き落とす。

 何度も繰り返される水による攻撃は、常人には耐えられるものには見えなかった。現にあれだけ余裕の表情を見せていた少年の顔も、苦悶に満ちている。

 

「終わりだっ!」

 

 アリアさんは奇術師のように指を鳴らす。

 さらに四つほどの、激しい水しぶきが現れる。

 

「うわあああああああああっ!」

 

 激しい水しぶきは、一斉に少年へと降り注ぐ。先程までの攻撃も十分に効いているように見えたが、アリアさんは躊躇わずに全力で水の魔法をぶつける。

 

「どうだ……?」

 

 水しぶきが収まる。水で見えにくかった視界が徐々に開けてくる。

 

「クソ、予想以上だな……!」

 

 少年は、膝をついていた。舌打ちしながらも立ち上がろうとしてた。

 しかし、動きが止まる。

 

「大人しくしてもらいますよ。召喚士への暴行と儀式の妨害は重罪ですから」

 

「弓月さん……」

 

 立ち上がると予想していたのか、弓月さんが既に少年の首に剣を突きつけていた。

 

「くっ…………」

 

 少年は覚悟したのか、両手を上げる。降伏の意思を示す動作だ。

 

「流石に終わりかな、彼も」

 

 アリアさんは、細剣をの鞘に収めながら呟く。わたしも、これ以上は抵抗しないと思った。後は、捕まって尋問だろう。

 だが、その予想は外れることになる。

 

「なっ……!これは……!」

 

 突如、少年の身体が光の粒に包まれた。光が強くなる程、少年の身体は消え入るかのように薄くなっていった。

 

「……時間か。まあ、目的は果たしたから良いだろう」

 

「目的?何の話ですか!」

 

「いつか分かるさ。じゃあね……召喚士の呪いに負けないように気をつけなよ……」

 

「待ちなさい!」

 

 弓月さんが少年の肩を掴もうと手を伸ばす。確信はなかったが、このままでは消えるだろうと思った。

 しかし、少年を包んでいた光は眩いほどの輝きを放つ。それほど長い時間ではなかった。少しの間輝き、すぐにそれは消えた。

 

「消えた……!」

 

 弓月さん、少年ではなく空を掴んだ。先程まで目の前で戦った少年の姿は、跡形も無く消えていた。

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