都市だと思ったら冬木だった(現在凍結中)   作:森の翁

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 前話に引き続き濃い内容が続きますが、今回は更にそれを分割することになりました。

 ただでさえ濃い型月にプロムンなんていう更なる濃いものぶちこんでおいて今さら何を言っているんだって読者の皆様に怒られちゃいそう。


織機はくるくる糸を紡ぐ

 部門記録番号07ーBーR.Aを解放、閲覧権限の取り消しが進んでいます。

 

 閲覧を進めるのであれば、どうかお早めに。

 

『記録07ーBー001R.A』

 

 みんなしんじゃった。

 

 みんなみんなしんじゃった。

 

 もうだれもいなくなっちゃった。

 

 わるいひとはぜんぶおいはらったのに、ひとりのこらずおそとへかえしたのに、どうしてみんないなくなっちゃうの?。

 

 がぶりえるも、だにえるも、えのくとりさも、みんなわるいひとたちにころされちゃった。

 

 かーりーさんもしんじゃった。

 

 どうして?どうしてどうしてどうして?

 

 おとうさんとべんじゃみんさんはわかりません、いつのまにかいなくなってしまいました。

 

 わたしは、ひとりぼっちになってしまいました。

 

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 くるくる回る歯車は、いったい誰のために動いているのかしら?

 

『ご来場の皆様、本日はラ・マンチャ大劇場へお越しいただき大変ありがとうございます、もうまもなく最初の演奏が始まりますので、それまでどうかごゆっくり席でお待ちください』

 

「うわ~凄い立派な劇場だね!」

 

「確かに凄いな、ここまでの規模の建物を建てるなんていったいどれだけの技術と時間がかけられているんだ?」

 

「建造自体はそんなに長くなかったみたい、劇場主のラ・マンチャさんはもう亡くなってるらしいけど、今はご息女が管理してるみたいだよ」

 

 受付で渡された今日のプログラムを見ると、確かに劇場主としてサンチョ・ラ・マンチャという名が記されている。

 

「でもおかしいなぁ、開演の挨拶はいつも劇場主が行うって聞いてたんだけど、今の声男の人だったよね?」

 

「ああっ、あれは確かに女性ではなさそうな声だった」

 

「...僕の悪い癖かな、なんだかちょっとした違和感が気になってしょうがなくなっちゃう」

 

 何かを思い出すように呟くCEOは、何処か寂しげな雰囲気を纏っていた。

 

 こういう時、俺は本当にこの人のことをよく知らないんだなと実感させられる。

 

「そろそろ静かにしないとね、もう演奏が始まるみたい」

 

 おそらく無理に作ったものであろう笑顔をこちらに向けながら話しかけてくるCEOを見て、後で何か美味しいものでも食べさせて、そんで目一杯楽しんで元気になって貰おうと...そう思った。

 

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『プログラム』

 

・序曲(その日によって変わります)

 

・P氏によるピアノソロ。

 

・楽団による演奏会。

 

・休憩時間。

 

・劇場主による独唱。

 

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 プログラムは順調に進んだ。

 

 序曲はとても美しいクラシック曲だったし、ピアノのソロ演奏も心が震えるようなそんな激しさを感じた。

 

 楽団は...曲は良かったんだが衣装が奇抜だったな、なんで皆動物やら鮫の被り物してたんだろうな?

 

 だが休憩時間にそのアクシデントは起きた。

 

『ご来場の皆様、誠に申し訳ありませんが諸事情につき休憩時間を少々延長させていただきます』

 

「どうしたんだろうね?」

 

「機材の搬入が遅れでもしたか?」

 

「もし、そこのお二方」

 

「ん~?お兄さんだぁれ?」

 

 妙な黒い格好をしたへんな男がそこには立っていた。

 

「これは失礼、わたくしメイリーと申します」

 

「あぁ...もしかして中華系魔術師の系譜の人かな?」

 

 メイリーと名乗った胡散臭い黒服の男は言葉を続ける。

 

「えぇ、わたくし中華魔術師大家のワン家よりやって参りました、以後お見知りおきを」

 

「そんな君は、いったい何のために僕の素敵なお出かけを妨げているのかなぁ?ここはコンサート会場だから何にも出来ないなんて考えているなら、それは私には一切通用しないよ子鼠ちゃん」

 

「いえ、実は今回のコンサートに我々のほうから一名参加する予定でしたというのに、その歌い手の者が少々体調を崩してしまいまして」

 

「成る程、劇場側が代役を探しているというわけか」

 

 だから休憩時間が急に延長されたのか。

 

「でもなんでそんな話をCEOに?」

 

「おや?もしやご存知ないので、アンジェルCEOはLLLコーポレーションに関連する全ての企業が使う宣伝用の曲をたった1人で歌い上げたという素晴らしい経歴を持っておられるのです」

 

 えっ?あんたそんなことしてたの?

 

「あれは罰鳥ちゃんが歌をせがんてくるから、定期的にご褒美として聞かせてあげてた歌を社員がそのままCMに起用しちゃったんだよ」

 

「てことはもしや、あんたらはCEOに自分らの代わりとして次の独唱パートに出て欲しいって言ってるのか?」

 

「えぇ、もちろんその分のギャラはわたくしどもで負担しますし、如何でしょう?引き受けていただけますかな?」

 

 これは、CEOの様子はどうだ?機嫌が悪くなるとさっきの軟派野郎のときみたいにぶちギレるかもしれん。

 

 そうなったらコンサートどころじゃなくなって、CEOの機嫌は益々悪くなってしまうぞ。

 

 が、CEOの反応は意外なものだった。

 

「構わないよ、でも...あんまり期待しないでね?私人前で歌ったことなんて一度たりともないんだから」

 

「えぇ、それで構いませんよ、わたくしどもはお願いしている立場ですので、何かあれば責任は全てこちらで持ちましょう。

 それでは、わたくしどもは劇場主にこの旨を伝えて参りますので...」

 

 黒い服の男は去っていった。

 

 本当に何だったのだろうか?今まで見たことのないような衣装だったが、周りがざわつくようなこともなかった。

 

 もしや他の人には普通の服装に見えているのか?

 

「彼、いや〝彼ら〝か、ワン家の者と名乗っていたけど、あれ多分大嘘かな」

 

「えっどういうことだ?」

 

「ワン、漢字に直すと〝丸〝だったかな、丸の一族はずっと前から僕の会社とバチバチにやりあってるんだよ。

 なんでも彼らが何代もかけて造り上げてきたとある秘伝の薬とうちの会社で作った薬が偶然同質のものであるということが発覚したらしくてね。

 

 それも彼らの造ったそれは粗悪品も良いところで、服用した者から人間性を喪失させるっていう欠陥品だったんだよ、まぁそれは一旦置いておいて、彼らは僕のことが大嫌いのはずだから僕に自分たちのやるはずだったポジションを与えるなんていうことをするわけがないんだよ」

 

「成る程、本物であればそれこそさっきのタイミングで殺しに来ているってわけか」

 

「そっ、だからあれは多分偽物なんだけど...弱ったことに来ていた黒装束はまさしく丸の一族特有の衣装で、彼の着ていたそれは鼠を表すものだ」

 

「また面倒事か、ついてないな...俺も、あんたも」

 

「せっかくの素敵なお出かけだったのに、嫌なことが立て続けに起こっちゃったね、やだなぁ...嫌なことって3回続くんだよね・・・よし!取り敢えず僕は準備をしてくるね、僕が人前で歌うなんてまずないことなんだから!だからちゃんと見てて欲しいなぁって...」

 

 だからさぁ!なんでいちいち仕草が可愛いんたよ!!!

 

 なんだその指先を擦り合わせてもじもじしながらの上目遣いは!?俺に何を求めているんだ?

 

「それじゃ、行ってくるね?」

 

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 しばらくして、休憩時間の終わりを告げるアナウンスがされた。

 

『ご来場の皆様、大変お待たせしました!本日独唱パートを担当するはずだった歌い手の方が、残念なことに急な体調不良で来られなくなってしまわれたのです。

 

 ですが!今回はなんとご来場の皆様の中に偶然とても有名なあのお方が来ておられましたので、急遽そのお方にご依頼し独唱パートを担当していただけることになりました!それではご入場です!』

 

「ご来場の皆様こんにちは、アンジェル狭間です!」

 

「「「わぁぁぁぁぁ!!!!」」」

 

 劇場が一瞬にして熱気に包まれる。

 

 まさか、あの人そんなに有名だったのか?

 

「それではお歌のほう、始めさせていただきますね」

 

 どうやら歌が始まるらしい。

 

「ーーー♪」

 

 歌が始まったその瞬間、劇場内の空気が一変する。

 

 何処か郷愁を感じる暖かい感覚が体を包み込み、この世のものとは思えないほど美しい歌声が劇場を満たした。

 

 そしてその時、俺は青い花が咲き誇る花園の中、微睡みのままに少女に抱かれて眠る己を想起した。

 

 この記憶はいったい、あれは...誰なんだ?




 はい、今回のお話しで黒獣関連が存在するのは確定致しました。

どれが好き?

  • 黒蟲
  • 虫籠
  • 昆虫学者
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