都市だと思ったら冬木だった(現在凍結中)   作:森の翁

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Q:型月おプロムンの様式美といえばな~んだ。


間桐雁夜24歳の絶望

 電話を終えた直後、アンジェルCEOの言っていた通り迎えは来た。

 

 急に自分の目の前に縄梯子が降りてきた時は驚いたが、その後のヘリの壊滅的な乗り心地であっさりと頭からすっぽ抜けた。

 

 迎えのヘリから降りLLLコーポレーション冬木本社の屋上へ降り立った僕を出迎えたのはなんとアンジェルCEO本人だった。

 

「やぁやぁ!直接会うのはこれが初めてだね」

 

「広告や駅前のディスプレイで見たことはあったけど、本人に会うことになるとは夢にも思わなかったよ」

 

「これからは嫌というほど会うことになるよ、何せ君には僕の専属秘書になって貰う予定だから」

 

「はっ?」

 

 何をいっているんだこのCEOは。

 

「専属秘書って、もしかしてあんた今まで1人も秘書をつけたことがないのか!?」

 

「だって別に必要なかったからね、大概のことは僕だけで処理出来るし僕が扱う技術は機密性の高いものばかりだ、そんなものを扱っている以上あまり人を入れたくないのは普通のことだろう?」

 

「それにしたって人員はいるんだから結局は人を入れることになるんじゃ」

 

「まぁ社員は居るね、でもそれは支社と別名義の会社だけで本社の運営は基本僕一人でやっているよ」

 

 なんてことだ、この巨大な施設の運営をたった一人でやっているっていうのか!?

 

「むしろ僕一人じゃないと危ないからね、この本社に居る子たちはどの子も癖が強いから」

 

「居る子たち?」

 

「うん、うちで管理してるちょっと特殊な子たちだよ、僕の作った施設に住まわせる対価として彼らから得たエネルギーを色んな所に供給することで僕の会社は収入を得ているからね、といってもまぁエネルギー産業はあくまで趣味のついでだから本命は別にあるんだけど」

 

「じゃあ、ちらほら見える社員たちはいったい」

 

「あぁ職員とオフィサーのことね、あれは人間じゃなくて限りなく本人に近い複製体だよ」

 

「はっ?」

 

 どういうことだ?最早頭が追い付いていかないぞ。

 

「国に許可を貰って死刑囚や凶悪犯罪者を寸分違わず複製し、それらを記憶処理して職員やオフィサーとして管理運用することで施設を運用する、あれらは人間としてカウントされないからこの施設の実質的な管理者は僕だけということさ」

 

「それ1人でやってることにはならないんじゃないか?」

 

「...ホムンクルスの製造工程を知らないから一緒にしていいかわからないけど、あれらは一応法的には人間として規定されない、広義のうえでは人間として扱われるかもしれないけど、国としての見解では人間ではないし人権が存在しない判定になっているよ。

 

 でも面白いことにうちの施設に住まわせてる子たちにとっては人間判定だから、実は結構扱いが難しいんだ」

 

 誤魔化したな!今絶対誤魔化したな!? 

 

「でも安心して、君はちゃんと人間判定でカウントされてるから施設内では最大限の保護を受けられるからね、所謂特別待遇ってやつさ」

 

 色々と不安になってきた。

 

「さっ!僕の部屋についたよ、ここで施設内の状況を全部リアルタイムで観察出来るようになってる」

 

「モニターまみれだな、ところで部屋の奥にある扉は?」

 

「あれは僕の私室だね、危ないから入っちゃダメだよ」

 

 私室なのに危ないのか、もしや魔術師でいう工房に近い部屋なのか?

 

「あっ!ちょっと目を離した隙にまた脱走してる、ほんとにあの子は手がかかるんだから」

 

「脱走?ここはもしかして刑務所も兼任してるのか?」

 

「そっちもあるけど今回は別!せっかく久しぶりの嫌なお仕事じゃないお客さんが来たのにこれじゃ台無しだよ~」

 

 モニターの一つが赤く点滅している、おそらくそれに映っているのが脱走者なのだろうが、いったいどんなやつが脱走を?というか刑務所もあるんだな。

 

「あっ!見ちゃダメ!」

 

「え?...あっ」

 

 CEOが血相を変えて叫んだ時、僕は一瞬反応が遅れて視線を外し損ねてしまった。

 

 そして、あれを見てしまったんだ。

 

 それは、絡まり合う一塊の山となった死体であり、それと相対し血溜まりと化していく職員たちであり、そしてそれは生々しい死の光景である。

 

「...何なんだこれは」

 

「それはね、■■■だよ」

 

 CEOが何か言っているようだが、何故かうまく聞き取れない。

 

「■り敢■ずそのモ■ターから■を離して...ほら今度はちゃんと聞こえるでしょ?」

 

 聞き取れなかった筈の声がいつの間にか普通に聞こえるようになっている。

 

 あれはいったい?

 

「君がモニターを見た瞬間に強めの認知フィルターをかけさせて貰った、でもそのせいでモニターの向こう側の事象と関係ある私の言葉にまで若干の干渉が起きてしまったようだね」

 

「アンジェルCEO、あれは何だ?」

 

「それを説明しようとすると幾つかの規約に引っ掛かるから、誓約書と機密保持の同意書にサインして貰う必要が出てくるけど良い?」

 

「構わない、ここであんたと働く以上遅かれ早かれ多分あれと関わることになるんだろう?それなら情報を知るのは早いほうが良い」

 

 俺が答えるなりCEOは懐から数枚の書類を手渡してきた。

 

 中には誓約書と同時に機密保持の同意書、そして僕とCEO間の契約書が入っている。

 

 契約事項を読む限り、これからCEOが僕に話す内容は余程この会社の根幹に関わるものなのだろう。

 

「まず、君が見たモニターに映っていたのはうちの最重要機密の一つ『幻想体』商標的にはアブノーマリティって言うのが一応のカテゴリーになってるけどそれはLLLコーポレーション名義の施設に住まわせているものだけに限定してる」

 

「幻想体」

 

「そっ、うちの可愛い可愛い居住者ちゃんたちだよ、でもあの子たち機嫌を損ねたり特定の条件を満たすと収容室から飛び出しちゃうんだよ、それがさっき言ってた〝脱走〝ね、そして君が見たのは飛び出した幻想体に収容室へお帰り願うための〝鎮圧〝作業。

 

 そして、そんな危険な作業に一般人を放り込むわけにはいかないから法律的に人間扱いしなくていい職員やオフィサーたちを投入してるのがこの会社の現状、でも最悪の場合は僕が出向けば大抵の子は大人しくなるからあの子たちが町に出る心配はないよ」

 

「俺は大変な会社と契約しまったみたいだな」

 

「怖くなった?」

 

「いや...旅先でも沢山嫌なものを見てきたし、何より実家では妖怪爺のせいで散々悍ましいものを見たからね、今回は久しぶり過ぎてその感覚を忘れていた」

 

「そっか、じゃあこれからよろしくね〝管理人〝」

 

 ん?管理人!?

 

「ほら、契約書の隅っこのほう見て」

 

 CEOによって笑顔で差し出された契約書をもう一度よく見ると、隅のほうに何やら小さく文言が書かれている。

 

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 私、間桐雁夜はアンジェルCEOとの契約に則り、CEOの専属秘書になると共にLLLコーポレーションが所有するアブノーマリティ収容施設の共同管理人となることをここに誓います。 

 

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「それじゃあ、これからよろしくね雁夜!」

 

 おいちょっと待て...

 

「嘘だろおい!!!」

 

 間桐雁夜(24)歳、この世の地獄に叩き込まれることが確定した瞬間である。




A:心優しい善き人は大体酷い目に合う。

どれが好き?

  • 黒蟲
  • 虫籠
  • 昆虫学者
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