都市だと思ったら冬木だった(現在凍結中)   作:森の翁

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 前回ギャグ回があんまり伸びなかったので、まていつもの調子に戻そうと思います。

 実は何話か前から情景描写を増やすため、試験的に色々と文章を増やしてみているのですが、慣れないことをやっているためか中々うまくいきません。

 高評価も一つ削れてしまいましたし、この試みはやめたほうが良いのかもしれないですね。


蝶の羽ばたき

 意識が浮上し、少しずつ視界が明瞭になっていく。

 

 何故だろう、物凄く嫌な予感がする。

 

「もしもーし、雁夜~聞こえてる?」

 

 目を開けると、眼前にCEOの顔があった。

 

 いわゆるガチ恋距離というやつだ。

 

「うわぁっ!?」

 

「あっ起きた起きた、雁夜ってば通路に入った瞬間立ったまま気絶しちゃったんだよ?いったいどうしちゃったのかな、もしかして何か悪いものでも食べた?」

 

「いや、おそらく緊張し過ぎたんだろう」

 

 立ったまま気絶って、そういう風に辻褄合わせされたのかよ。

 

「会議室に入るための手順ってすんごい面倒なんだよねぇ~、僕覚えるのに丸1日かかっちゃった」

 

 そうだ、あの男...テスカトリポカ神は会議室前が分岐地点だと言っていたな。

 

 あの空間、夢だと思いたいんだが...それだと会議が行われる前に戻っていることの説明がつかない。

 

 ならば、あの眼鏡の少年から貰ったアドバイスをもう一度思い出そう。

 

 確か、人知の及ばない絶対的上位者に位置する者は、一般人とは価値観も常識も異なるだったか...待てよ?CEOは確か、俺が連れ出すまで一度たりとも自分から外に出たことはなかったんだよな?

 

 じゃあ、今まではどうやって会議に参加していた?確かそれに触れた何かが送られてきた書簡には書いてあった筈だ。

 

 せっかく助けて貰ったんだ。こんなチャンスはそう簡単に巡って来るもんじゃないぞ雁夜!思い出せ、きっと何かが...遠鏡!確かあの書簡にはそんな物の事が書いてあった。

 

「なぁCEO、あんた今まで会議に参加するときはどうやってたんだ?」

 

「ん~?どうしてそんなこと聞くの?」

 

「あんた、俺が連れ出すまでは外に出たことがなかったんだよな?それならもしかして、会社の外の一般常識をあまり知らないんじゃないか?」

 

「...ソンナコトナイヨォ、チャントベンキョウシタモン」

 

 この反応は、ある程度は知っているが細かいところは自信がないといったところか?

 

「取り敢えず、世間一般の会議や交渉事のセオリーはわかってるか?特に一番やっちゃ駄目なことは何かとか」

 

「...えっと、今までは遠鏡っていう遠隔に自分の姿を投影してその場に最適な人格を被る技術を使ってきたから、その...」

 

 なるほど、大体自分の技術で何とか出来ちゃうから学ぶ機会がなかったのか

 

「だから本人が来いって書簡に書いてあったんだな」

 

「雁夜、今からでもやっちゃ駄目なこと覚えられるかな?」

 

 えっと、そんな涙目して上目遣いで見られるとこっちが悪いみたいで罪悪感がわいてくるんだが、まぁ良いか。

 

「取り敢えず最低限今回みたいな会議でやっちゃ駄目なことだけ教えてやるから、後は帰ってからな?」

 

「うん!」

 

 なんでそんなに嬉しそうなんだ?

 

------------------------

 

「それでは会議を始めましょう」

 

 会議は無事始まった、CEOには取り敢えず俺が知りうる限りの交渉事に関する知識を教えた。

 

 一つ目、必ず相手にとってもメリットがある話を提示すること。

 

 利益無しに動く人間なんてほとんどいない、必ず相手にも何かしろの得がなければ人は動かない。

 

 二つ目、脅しの類いは基本最後の手段。

 

 巻き戻される前の会議で他組織2名の代表はCEOが嫌がるような情報をわざと提示していた。

 

 あれはおそらくCEOが話の通じる存在なのか見定めるための試験のようなものだったんだ。

 

 そしてCEOは、まんまとその試験に引っ掛かってしまったというわけだ。

 何せその話題を出した瞬間力を使ってしまったからな、すぐ脅しを使う話の通じない相手と見なされたんだろう。

 

「それでは最後の議題ですが...」

 

 巻き戻しというズルがあったとはいえ、会議は順調に進んだ。

 

 だが、一回目とは変わった事もある。

 

「アンジェルCEO、中華魔術連が抱える黒獣についての詳細な情報をお教え貰えないでしょうか?我々聖堂教会としましては、それに応じて対応を変えなければなりません」

 

「我々魔術協会も同じく、頼めるか?アンジェル女史」

 

「黒獣についてか、あれは相当な厄ネタだよ?後悔するかもしれないけどそれでも聞きたい?」

 

「我々はその覚悟を持ってこの会議に臨んでおります故ご安心ください」

 

「わかった、じゃあ話すね」

 

 あっこの流れは...

 

「それじゃ!こちらのホワイトボードをご覧ください」

 

 やっぱりやるのねそれ。

 

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『黒獣とは?』

 

・前提として丸という薬が存在する、読み方はワンである。

 

・その中でも黒獣丸と呼ばれるものを服用した結果、飲んだ黒獣丸の種類に応じた〝十二の獣が一体〝の特徴を体に宿すのが黒獣である。

 

・ただし副作用として不必要な記憶の消失、宿した十二の獣の特徴に応じて様々な副作用が発生する。

 

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「ここまでで何か質問ある?」

 

「なら私から一つ、十二の獣とは何かね?」

 

「十二支ってあるでしょ?子から始まって亥で終わる12体の獣、それが黒獣丸によって体に宿す十二の獣の正体。

 そして魔術世界における十二支はある種の幻想種であるとも言われている。

 つまりは黒獣は、人の身でありながら幻想種の力を手に入れた正真正銘の化物たちだよ」

 

 十二支、神の神託によって神の家に辿り着いた者から順に年を与えられた十二の獣たち。

 

 その成立は五行思想よりも古く呪術的にも強い意味を持つ、それ故にその力を宿す黒獣たちはあまりにも強大だ。

 

「ただし、そんなものを体に宿すんだから当然副作用も強いんだ...あれは使った者から人間性を容易く奪っていく」

 

「人間性とは如何に?」

 

「言うなれば人間らしさかな、人が人であるがゆえに持っている特徴、それが少しずつ失われていくんだよ、例えば味覚とかね。

 そして、なによりも最悪なのが最終的に宿した特徴が全身を侵食してその使用者が新たな丸の元となる、つまり幻想種に変異するんだ。

 魔術師ならこれを幻想種を増やし放題だって喜ぶかもしれないけど、現実はそんなに生易しいものじゃないよ、だってあいつらそれを乱用してポコジャカ人員増やすんだもん」

 

「つまり?」

 

「下手したら大陸一つが幻想種で溢れかえるだろうね、そうなったらもうおしまいだよ。

 あの規模の大陸一つが丸ごと生きた幻想種という特大の神秘で埋め尽くされるんだから世界が神代に戻ったとガイアが誤認して、再び時代が幻想と人外の理が入り交じる神代に回帰する。

 その脅威を魔術師にもわかりやすくするなら、世界全てが霊墓アルビオンの中みたいになるって言えばわかるかな?」

 

「ふむ、だがそれは魔術師にとって不利益にはならないのではないかね?むしろ神秘が増えるのであれば我々魔術師は全盛の時を迎えると思うが」

 

「あっそれは無理、現代の魔術師程度じゃ神代回帰した世界の幻想種には逆立ちしても勝てないから」

 

 バッサリ切り捨てたなこいつ。

 

「むしろ君たちにとっては不利益しかないよ?おそらく君たちの欲しがる魔術に必要な素材とか土地なんかは神秘が強くなり過ぎて確保出来ない、或いはし辛くなるから今までは以上にコストが割高になる。

 そのうえ、暫くの間は急に現れた神秘に対応出来ない魔術師以外の人間が神秘を恐れて魔女狩り時代に逆戻りするだろうから魔術師にとっては凄く住みにくい世界になるよ?」

 

「うむ、そこまでデメリットを提示されては我々も何も言えぬな」

 

「そうなりますと、中華魔術連が要求してきた完成された黒獣丸とはいったい何なのでしょうか?」

 

「シンプルに安定性が保証されたより質の良い黒獣丸だね、でも僕からすれば危険性はあんまり変わらないし、H社も撤退させて研究資料は忌庫に放り込んだからもう黒歴史みたいなものなんだけどね」

 

 ん?待てよ?

 

「なぁCEO、H社のあった場所って何処だ?」

 

「中華だけど?」

 

「そこって中華魔術連のお膝元だよな?前に確かワンとかいう一族と薬の権利巡ってバチバチにやり合ったとか言ってよな?もしかして中華魔術連の親玉ってさ...」

 

「うむ、ワン一族だな」

 

 おい、これ色々繋がってこないか?

 

「つまりは利権争いのいざこざが世界崩壊クラスの案件になったと、なんとまぁらしいといえばらしいのですが...釈然としませんね」

 

 うんあの、色々と御愁傷様。

 

「僕も彼らが身内だけで黒獣丸を使うなら譲ってあげても良かったんだけどね、彼らったら見境なくばらまいて薬物汚染を広めるんだもん、そんな危ない事をする子たちにうちの研究物をあげられると思う?」

 

「そういえば、ヨーロッパ圏や北アメリカなどでも中華魔術連のばらまく薬が問題になっておったな、使った者が急に人が変わったように周囲の人間を襲って食らい始めたりなど被害は多岐に渡ると聞く」

 

 中華魔術連は比較的新しいほうの魔術組織だが、大陸一つを牛耳る組織だけあってその規模は他国にも影響力を伸ばして余りあるという。

 

 その結果、連中が扱う薬の粗悪品が麻薬のようにばらまかれ、テロや大規模犯罪に使われるようになってしまった。

 

 今では死徒に次ぐ聖堂教会の粛清対象が丸によって変異してしまった元人間であるくらいだ。

 

「そろそろ放ってもおけぬようになってきたか、しかし事を構えるにしても慎重になる必要があるぞアンジェル女史」

 

「黒獣たちだね...あいつらには僕も悩まされてるよ、何せうちの参加企業であるR社を襲撃した挙げ句、社員を拐って廃人にしたうえに子供まで孕ませていた...本当にどうしようもない害獣だよ連中は」

 

 最後の言葉に、その場にいた全員が眉を潜めた。

 

 最も敏感に反応したのは聖堂教会代表である。

 

 ああそうだ、人類の敵になり得る者が無秩序に増殖されかねない状況は聖堂教会にとって看過出来ない状況だろう。

 

 そしてなにより、女人を無理矢理拐い、傷つけ、慰み者にしたとあれば教義的にも人間としても間違いなく許されざる行為だ。

 

 故にその結論は容易に予想出来た。

 

「では決まりですね、たった今我々の上層部からも裁決が下りました...我々聖堂教会は中華魔術連を粛清対象と見なし、他二大組織へ連合討伐部隊の結成を要請します」

 

「承認しよう」

 

「僕も承認!」

 

 これにて裁決は下された。

 

 中華魔術連の汚辱に彩られた偽りの栄華を葬り去らんとするための三大機構による連合討伐部隊結成。

 

 魔術史における、一つの時代が動いた瞬間である。




 キリスト教的に姦淫はNGだからね、レ!は駄目なのだ!

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