都市だと思ったら冬木だった(現在凍結中)   作:森の翁

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 嗚呼、早くねじれさせたい、けどもっと引っ張りたい!

 おぉ!!!我慢だ私!引っ張るだけ引っ張って没にするのはダメだが、一番美味しい所で爆発させるのが一番楽しいのだ!!!            


知ってるか?小豆は最強なんだよ

 降り注いだ蒼白の死による影響は、それに触れた中華魔術連の者たちへ如実に現れた。

 

『溶けて、融けて、解け落ちる』

 

 その雨に触れた箇所からゆっくりと、しかし確実に青く色褪せ崩れ落ちてゆく。

 

 蒼白によってもたらされる色褪せた青き死。

 

 それはある少女の、いつか見た終わりの形。

 

 第四ラッパの青がもたらすのは、名も無き誰かがいつかに体験した病による緩やかな終幕。

 

 朽ちゆく病の嘶きである。

 

「相変わらず凄まじいですな」

 

 前線部隊に同行したグレゴリオ・メンディルが溢したその言葉は、確かな実感と重さを持っていた。

 

 当たり前だ。

 

 何せ、このグレゴリオ・メンディルという男は前線部隊の中で唯一、かつてこの光を見たことがある数少ない生き証人なのだから。

 

「かつてこの光が降り注いだ時、この辺り一帯は四方数キロ以内が死の土地と化しました。

 そんな朽ち果て、死にゆくしかない土地を数年かけて元に戻したのは、実のところアンジェル女史なのですよ。

 

 ...彼女は、己が怒りのままに死を振り撒いた事を酷く悔いていました。

 故に残念なのです、我々魔術師の世界は非常にして冷血なるものなれど、そこにはある程度の秩序が必要でしょうに、だがしかして彼ら中華魔術連はそれを放棄した。

 

 その結果、彼女に再びあの青き死の雨を使わせてしまった。

 きっと彼女はまたお嘆きになられるのでしょう、彼女はこの世界のあまねく命を愛するお方なのだから」

 

 確かにアンジェルはこの世界に存在するあまねく命を愛している。

 

 まあ、ただし死徒は除くという注釈こそつくが...しかしその愛の形が人間の尺度で測れるものかは、また別の話である。

 

「グレゴリオ殿、我々もそろそろ参りましょう」

 

「当方も準備は完了している、雁夜殿はどうかね?」

 

「アンジェルから借りた装備の点検は済んでいます、いつでも撃てますよ」

 

「良い目をしている...だが危ういな、当方は前にもそんな目をした者を見たことがある、逸る気持ちは理解出来るが決して功を焦ることの無きようにな、有望な若者が死してゆく姿は、いつ見ても辛いものであるが故に」

 

 雁夜に助言を残し、遠ざかっていくグレゴリオの背中を見ながらニムロッドは口を開く。

 

「うむ、グレゴリオ殿の言葉はいつも難しいが今回はわかりやすかったな!力を抜いて頑張れと申しておられる!」

 

 絶対お前話の前半部分聞き流してただろこの脳筋め(※会話を遠くから聞いていたアルカ局長のお言葉です)

 

 ニムロッド、何処までも脳筋でポンな男である。

 

「何か気が抜けて来たよ、俺は中距離戦闘専門だから頼むぞ隊長」

 

「おうとも!我ら聖堂教会異端審問局第一機甲猟兵団!神の忠実なる信徒にして異端を撃滅せしめんとする者なれば!

 

 故に!総員抜剣!!!」

 

『『『オォォォォォ!!!』』』

 

 ニムロッドの掛け声により一瞬にしてキルスイッチが入った異端審問局第一機甲猟兵団の隊員たちは、一斉に背中へ担がれた棺の様なものを引き抜き突撃を始めた。

 

 丁度その進行方向には、哀れな事に状況を飲み込めず虚をつかれた中華魔術連の戦闘部隊たちが呆然と立ち尽くしている。

 

「獲物が居たぞぉ!!!総員食らいつけ!!!」

 

『『『Yes.Sir!!!』』』

 

 衝突、その刹那に起こる殴打!爆砕!蹂躙に次ぐ蹂躙!その戦力差は圧倒的なのであった。

 

 さて、ニムロッド率いる第一機甲猟兵団にはとある特徴がある。

 

 それは、隊員全員がLLLコーポレーションから提供された最新鋭の武装で装備を固めていること。

 

 そして、それを前提にした人間の域を逸脱した戦闘法である。

 

「我らは忠実なる神の信徒!」

 

『『『然り!然り!』』』

 

「さぁ!我らが教義における禁忌に触れた愚か者どもを撃滅せよ!!!」

 

 想像して欲しい、己の眼前に2mはあろう鉄の塊が突進してきたらどうなると思う?

 

 答えは単純、ミンチである。

 

「愚鈍なる異端どもの血飛沫を我らが大いなる神に捧げん!我ら神の子なれば!」

 

『『『然り!然り!』』』

 

 殴打する、殴る殴る殴る殴る殴る、とにかく殴る。

 

 そこら中から悲鳴と血飛沫があがり、隊員たちの狂笑が鳴り響く、個々は最早中華魔術連にとっての地獄と化したのだ。

 

 およそ人の出来る挙動ではない異常な軌道に体や武器を動かしながら全ての攻撃を避け、己に敵対する全てを撃滅し、目に映る異端全てを殺し尽くすまで止まらぬ狂信者の進撃。

 

 これぞ聖堂教会異端審問局長第一機甲猟兵団である。

 

 なお、こやつらが使う武器の通称はその特徴的な色合いと形から『小豆バー』と呼ばれている。

 

 本人たち曰く、日本で出くわした自分たちが唯一噛み砕けなかった食べ物にあやかりそう呼んでいるらしい。

 

 やはり小豆バー、最強の兵器なのであった。

 

 開発者のアンジェルは切れた。

 

「...凄いな、これ俺のやることあるか?」

 

 間桐雁夜は独りごちる、その呟きは誰の耳にも届かずに消えゆくが故に、それ故に...その呟きは何処か自嘲気味にも聞こえるものであった。

 

 ここに至るまで、雁夜は多くの人々を見てきた。

 

 皆一様に己には無い〝何か〝を持っていた。

 

 俺に足りないのはいったい何だ?何をすればその後一歩を埋められる?

 

 そんな葛藤が常に頭の中によぎるのだ。

 

 己は、何も変われていないのではないかと。

 

 ただただ漠然と生きるだけで、多くのものを他者から与えられながら何一つ他者に与えることの出来ない愚かな自分。

 

 そんな自分を変えられるかもしれないと、CEOは思わせてくれた。

 

 ...くれたのだ。

 

「なぁ、教えてくれよもう一人の俺...俺にはいったい何が足りないんだ?」

 

 かつて相対したもう一人の自分は言った。 

 

 お前には可能性があるのだと、俺のようにはなるなとそう言ったのだ。

 

 あの時からずっとずっと焦りを感じていた。

 

 CEOと一緒に色んなやつに会う度に思った。

 

 その中の誰一人として、俺が届きうる者はいないのだと。

 

 じゃあ俺は何のために此処にいる、何のために力を手に入れた?

 

 なぁ、俺にはもうわからないんだ。

 

 誰か教えてくれよ、その後一歩足りない何かを埋める為の方法を。




 グレゴリオ・メンディルさん、何気に感性が一般寄りで曲位まで上り詰めてるから今作の他のオリキャラと比べた場合でも別ベクトルでヤバい人。

 アンジェルのことは死んだ孫を思い出して重ねてしまうため気づかっているらしい。

 ちなみに、アンジェルに対して絶対にやってはいけないNG行動があるのだが、それは自分に誰かを重ねられることで、自分を通して自分ではない誰かを見られるのが死ぬほど嫌いなのである。
 
 つまりまぁ...わかるよね?すれ違いってやつよ。

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