閉ざされた花園、誰も知らぬ星の深奥。
その最奥にてそれは静かに時を待つ。
いつかの光景、その刹那のひとときを微睡みの中で思い出しながら、それは待っているのだ。
己に繋がった四つの鎖、その全てが壊れるその時...それは待ち焦がれた開花の時を迎える。
そして迎えるのだ。
己の愛するとても素敵なあの人を。
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「さてさて?作戦は順調に進んでいるかな?」
「アンジェル様、誤魔化してるつもりかもしれませんが不安が隠しきれていませんよ、やはり彼は手元に置いておくべきだったのでは?」
「僕はそれで良くても本人が嫌がるでしょ?僕はそれを尊重しただけ~♪」
「おそらく良い人物なのはわかりますが、何故そこまで彼に...間桐雁夜に拘るのか私にはわかりません、アンジェル様...貴女は彼に何を見たのです?」
沈黙、答える気はないと言うことですか。
厄介ですね、アンジェル様がこれ程までに特定の個人へ執着したのはあの青年、間桐雁夜が初めてのこと。
故に、何をそこまで気に入っているのか聞き出せと聖堂教会上層部には言われましたが、下手に藪をつついて化け物を出すのはごめんですからね。
どうしたものでしょうか。
「...皆、今の君みたいに僕のことを化け物扱いしてきたからだよ」
「えっ!?あの、もしかして顔に出てました?」
「いいや、何となく経験でわかるだけ」
びっくりしたぁ、心を読まれたかと思いましたよ。
「...今まで僕の事をある程度理解した人は、例外なく僕のことを化け物って呼んだ。
それ自体に不満はないよ?だってそう思うのは当たり前だもの、僕という存在に相対した僕を理解した者は〝理解出来ないということを理解する〝。
でも、僕のことを少しずつ知り始めてなお僕の元から離れていかなかったのは雁夜だけ、初めて僕の元から逃げなかったお客様で友達だから...だからこそ手放すつもりは一切ないの。
でも、雁夜がどうしても僕から離れたいと望むなら、もしその時が来たならば...僕はその意志を尊重するよ」
「成る程...どうしてこう貴女のようなタイプの人は特定の1人に入れ込むと狂うんですかね?」
「さぁ?でもそれを君が言うかなぁ、君も同じクチでしょ?」
「作戦に集中しましょう!」
逃げられちゃった。
まぁ良いや、またの機会に色々お喋りしようねアルカ。
さて、雁夜たちはどんな調子かなぁ?
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「なぁ!何かおかしくないかニムロッド隊長!?明らかに弱すぎるだろこいつら、多分この中じゃ最弱の俺でも平然と倒せてる、絶対に何かあるぞ!」
「やはり、雁夜殿も同じ事を考えておりましたかぁ!!!」
そこらかしこで鋼の打ち合う音が弾けては止んで、響いては消えるを繰り返す。
だが、そのスパンが短すぎる。
相手側は殆どが此方とまともに打ち合えていないのである。
「となると、そろそろお出ましになりそうですな!」
「あぁ、〝伏兵〝が来る」
その予想は大当たりである。
「何だ!この凄まじく巨大な何かがぶつかり合うような音は!?」
「総員陣形変更!新手が来るぞ!!!」
その刹那、轟!と言わんばかりの凄まじい音を立てて瓦礫の山が崩れ弾け飛ぶ。
「来たか黒獣!」
『ぶるるるるるるっ...!』
『良くやったな丑筆頭に未筆頭よ、後で盛大に褒美をくれてやる』
『ありがたきお言葉』
中華魔術連が誇る最大戦力〝黒獣〝の参戦である。
『後は我らが役目、丑と未殿はお下がりを』
『ぶるるるるるるっ!』
『呵呵か!頼むぞ子の仔らよ』
黒獣は12の獣に対応する特徴を宿す、そのうち丑は正面戦闘、未は攻城戦を得意とするが、であるならば子は何を得意とするか。
それは集団戦だ。
「ぬぉっ!?皆気をつけろ!こいつら1人を相手しているうちに更にもう数人が乱戦の隙を縫って刺して来るぞ!」
これぞ黒獣『子』の真骨頂、乱戦における強力な連携能力。
他の白兵戦特化型の黒獣に混ざって戦闘を行う都合上、どうしても乱戦の中に割り込むことは避けられない。
であるならば、それを縫って攻撃する術を持てば良いと造られたのが『子』
集団戦においては、まさに最高の脅威と言っても過言ではない。
現に少しずつだが、第一機甲猟兵団の面々は少しずつ手傷を増やし、後退せざるを得ない状況に追い込まれ始めている。
無理もない、1人と打ち合う合間に更なる1人、また1人が隙を縫って挟撃してくるのだ。
おまけに全員が同一の黒い衣装を着込み、動きもほぼ同じ、どれがさっきまで相手していた者かもわからない。
だが、これで終わるようなら彼らは...ニムロッドたちは送り込まれていない。」
「はははっ!素晴らしきかな血沸き肉踊る戦場!戦いとはこうでなくてはなぁ、故に...総員聞けぇ!!!」
『『『Yes.Sir!!!』』』
ニムロッドの掛け声と共に、隊員たちが一斉に武器を地面へと叩きつけ始める。
『ほう、勝ち目のない戦いに絶望し狂ったか?』
「我ら異端審問局第一機甲猟兵団をその程度のものとは思わないでいただきたい!何せ我らの本領は此処からなのだから!
お前たち!我らの異端に対する対応は何だぁ!!!」
『『『キルゼムオール!!!』』』
「そうだ!故に我らの本領は...敵味方が入り交じる乱戦にこそある!!!」
『『『然り!然り!』』』
己が武器を大地へ叩きつけながら眼を血走らせて隊員たちが叫ぶ様は、さながら狂気が手足を得て動き回っているかのようである。
「我らは共に互いを気にする必要がない程に極められた精鋭部隊、故に...抜刃!!!」
ニムロッドたち異端審問局第一機甲猟兵団は極限の戦闘において真価を発揮する。
それは最早人と言って良いか怪しい程に。
『それは...なんだ!?』
「これぞ我らが真なる武器、セクエンツィアがセカンドフェイズである!!!」
ニムロッドたちが今まで使用していた棺に無理やり持つ手を着けたような武器は、あくまでもセーブオン状態、つまりは〝鞘に収まった状態〝である。
そのままでは只重いだけの鈍器だが、それならばニムロッドたちが〝機甲猟兵団〝等と呼ばれるわけがない。
彼らの武器、アンジェル特製武装『セクエンツィア』は二段階変形する。
そして今からはこう呼ぼう。
「我らが血に染まりし強靭なる刃、その身でとくと思い知れ、これぞ我らが緋色の凶刃などと呼ばれる所以よ!!!」
『『『おぉぉぉぉぉ!!!』』』
『こいつら、動きがより激しく!?』
聖堂教会異端審問局第一機甲猟兵団。
それは、お互いがお互いを気づかうことなく、そのお互いの攻撃が当たることすら気にせずに敵を撃滅せんとする虐殺特化の戦闘部隊。
つまりは、同士討ちしようがどうせ死にはしないので味方事相手をぶっ殺す部隊なのだ。
そんな部隊であるというのに、今まで一度として部隊から殉職者を出していないと言うのだから本当に恐ろしい連中である。
「うぉぉぉ!!!これが終わったらアンジェル殿にまた猛アタックするぞぉ!!!」
...しまらねぇなぁ。
なんかニムロッドのキャラがどんどん濃くなって来ている、こいつだけ都市から来たんじゃなかろうか。
どれが好き?
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黒蟲
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虫籠
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昆虫学者