『手本は見せてやる、後は己の心に刻め』
雁夜が人格として被ったもう1人の自分、可能性の中の一つであるマキリ家五代目当主マキリ・雁夜。
彼はEGOが持つ『使う側が使われる側になり得る』性質を逆手に取った。
己の自我の殻であるEGOとあり得た可能性を被る鏡技術を併用・融合させ、更にそれを本という側を被らせる事で安定させる。
そうして作られた本の中に己自身の精神を完全に溶かし、それを雁夜に使わせ続ける事によって少しずつ少しずつマキリ家当主たる己と間桐雁夜の境界を無くし、いずれ雁夜がどうしようもなく迷ってしまった時。
或いは、道を違えそうになった時に雁夜を元の道へ戻してやるためにと、ずっと本の中で待っていたのだ。
『汝...そうか、汝は先程までの汝に非ず、汝は連なる鏡の果てより来たりし者か。
良かろう、汝が我を阻む者であるならば、我もまた極めし術理の一端を見せるとしよう』
故に、いま此処に存在するは間桐雁夜に非ず、この身は己が写し身のものなれど、だがそれ故にこの奇跡は起きた。
『お前が黒獣とやらか、好き勝手やってくれたみたいだが、お前もまた何か訳有りのようだな?とはいえだ...この男が倒れればろくなことにはならんだろうからな、そう簡単にやられてやるわけにはいかないな』
マキリ家当主の指先が微かに揺れる。
その刹那、番外の黒獣は瞬時に体をずらし〝地中より這い出た巨大な百足〝の己に突き立てんとした一咬みをすんでの所で避けた。
『全く、蝕みの大顎は俺の持ち得る蟲の中では最大の瞬間速度を誇ると言うのに、上澄みの連中はどいつもこいつもこれを平然と避けてくるから厄介なものだ』
『大凡尋常ならざる蟲、それは蠱毒の類いか』
『如何にも、俺の蟲魔術は幾多の蟲を操り、組み合わせ、そしてより強大な蟲へと昇華させる...そうして生まれた蟲たちの一つがこれだ』
キチキチと顎を鳴らす蝕みの大顎は、それはもう化物然とした巨体の百足である。
アースロプレウラと呼ばれる巨大なヤスデを図鑑で見たことがないだろうか?サイズ感としてはあれが一番近いだろう。
とにかくでかすぎる、そうとしか形容し難いのが蝕みの大顎だ。
『そして、当然ながら避けられてそれて終わりなら俺はこいつを完成品の一つとしていない、それ故にこいつはこう使う』
マキリ家当主の合図を感じ取った蝕みの大顎は、とぐろを巻きながら彼のEGOである黒蟲へと絡みつき〝逆巻く螺旋状の刃を形成した〝。
『なんと面妖な』
『何とでも言え、これはかつて見た全てを呑み込む大災厄の再現、トゥアハ・デ・ナーン四秘宝が一つ、約束されし勝利という名の不条理をその眼にしかと刻め!』
それはマキリ家当主たるマキリ・雁夜がかつて見た英霊の宝具たる槍の再現。
『
全てを失ったマキリ・雁夜という男が生涯をかけ〝世界ごと大切なものを失ったという事実を消し去ろうとして生み出した至上の厄災〝。
約束されし勝利という祈りをそのまま呪いに転換した究極の殺戮兵器。
『
星を殺す光である。
『汝、恐ろしきかな、それは神を恐れぬ人の業、人の世の末日そのものか』
番外の黒獣たる饕餮は思い悩む、これに相対するに相応しい技となれば、相手を〝殺す〝為のものしかない。
だが、眼前にて死を構える者は指針の示す仇に非ず、なればどうするか。
答えは明確、殺す為の技を殺さぬ程度に抑えれば良い。
『奴のあの何か考えを固めたような顔、もしやもうバレたか?』
勝利齎す塵殺の槍、それは確かに星を殺し得るだけの可能性を持つが、あくまでも可能性でしかない。
何せ、これはまだ未完の力。
側を繕えても神の至宝たる中身までは完全に再現出来なかった。
故に、それはまた人が相殺出来得る可能性も秘めている。
『これなるは我が極めし術理が一つ、相殺の業を用いる至天の返報』
番外の黒獣、饕餮が持ち得る至上の技が一つが今解放される。
『
饕餮が見せた構え、それはあらゆる攻撃に対応する究極のカウンターを放つ為のものである。
『崩された...これは厄介だな、この男の上司が奴を警戒するのも頷ける。
それに、この辺り一帯の地下から伝わってくる強烈な神秘の反応、こいつの指針とやらが何を指すかは知らんが目的はもしやそれか?恐らくこいつを生み出した根源的な何かが地下に〝居る〝な』
星を殺し得る光。
それを相殺したのは人の成し得る限界に達した術理、即ち饕餮が背に背負っていた八角鉄棒による返報、次元を歪める程に超高速の殴打である。
『成る程な、技を極め過ぎて発動するより先に反撃したという結果だけが生まれる因果律逆転を意図的に起こしたと、最高に気持ち悪いことをしているなお前』
『此なるは人の道を外れた技であるが故に』
『いや、その技は確かに人の域にある技だ』
マキリ・雁夜は断定する、まるで似たようなものを見たことがあるかのように。
『違う世界とはいえ、やはりこういう所で似たような事が起きるということか?やはり俺の世界と此方では少々勝手が違うな。
俺の居た世界でそれと似たような技を持っていたのは女だった。
全く、因果なものだ...世界を渡ってなお同じような技でこの槍が防がれるとは』
『汝、それを只人の生きる世に向けて放ったのか』
『未遂だがな、放とうとした瞬間意味のわからん剣術を使う二刀流の女剣士が唐突に現れてな、そいつに槍を折られたんだよ、そいつがその時に使っていた技が丁度今お前が使った技と性質が似ていた...ただそれだけの話だ』
これには饕餮もドン引きである。
マキリ家五代目当主マキリ・雁夜、割と弾けた危険人物であった。
【今回の技紹介】
『勝利齎す塵殺の槍(ゲイ・ドルドナ)』
・別世界の雁夜であるマキリ・雁夜が自暴自棄になった時に造り出したやべぇ技、自分が参加した聖杯戦争で呼び出されてた英霊の宝具を何とか再現しようとして、この槍を使ってめっちゃ大量虐殺(悪人限定)して槍に死と終末の概念付与したり、ケルトの伝承残ってる場所巡って神秘回収したりしてたら何とか側だけは完全再現出来ちゃった人理君や抑止力的にまじでダメなやつ。
『転権-崩天(てんごん-ほうてん)』
・ゲーム的な性能で語ると、マッチした相手の速度と出目を無視して完全回避したうえでクソデカ出目でクリティカルぶちこむ技。
Q:それクソ技では?
A:クソ技です、しかもこいつは複数、最低でも後二つこれみたいなクソ技を持っています。
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