都市だと思ったら冬木だった(現在凍結中)   作:森の翁

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 最近閲覧数が振るわないが、これはきっと私の力量不足なのだろう。

 故に不安だ。

 私はちゃんと読者の皆様方を楽しませることが出来ているのでしょうか。


落ちた星の輝き

 ある男の話をしよう。

 

 その男は古くから存在する魔術師の家系に生まれたが、その家は既に落ち目であり扱う魔術はどうしようもなく度しがたく、そして悍ましいものである。

 

 そんな家に生まれた男は、一つ悪い癖を持っていた。

 

 どうも悲観的というか、諦めが早すぎるというか、とにかくまぁ行動することを恐れすぎている。

 

 己が好いた女がいたにも関わらず、その想いを相手に伝えることもしないままに男はその女のことを諦めた。

 

 諦めたつもりでいた。

 

 そうして諦めたふりをしている時に知らせが届く、かつて好いた女の娘が、よりにもよって悍ましき男の家に引き取られたと。

 

 好いた女が自分ではない男、それも魔術師に嫁ぐと聞きあの男なら大丈夫だと思い引き下がったのに、それなのにこの結果なのかと男はそう思ってしまった。

 

 やがて男は一つの結論に至る、やはりあの男では駄目だったのだ。

 

 であるならば、その位置は己でも良いのではないかと。

 

 それは相手の幸せを思ってのことであったのか?それはどうかわからないが、始まりはどうであったにせよ、その行為はあくまでも己の満たされない欲と心の穴を埋める為のものでしかない。

 

 男の悪い癖が出てしまった。

 

 男は諦めたつもりでいたとしても、心の何処かでは埋まらない穴を満たしてくれる何かを渇望している。

 

 そのチャンスが来たと思ってしまった。

 

 そうして男は忌み嫌っていただろう家に帰還し、最早変えることの出来ない破滅への道を歩み出した。

 

 男は、その代替行為を大切な人の大切なものを守るための行動であると嘯いた。

 

 であるならば、その行為には正しき心が伴っていなければならない。

 

 この男の厄介な所はそれだ。

 

 なまじ助けたいという心も本心であるが故に、その殻で覆われた真意が目茶苦茶に混ざってしまった。

 

 そして、男は己自身ですら己の願いと渇望の本質を知ることなく終わりを迎えた。

 

 好いた女も、助けたいと願った少女も救えずに、ただただ意味もなく散った。

 

 嗚呼、意味もなくと言うと語弊があるか。

 

 きっとそれにはちゃんと意味はあったのであろう、報われない物語ではあるが。

 

 とはいえだ、それを本人が知ることはないのだから結局男本人には意味がないのだよ、とてもとても悲しいことだがね。

 

 だが、世界も違えば辿る道も変わる。

 

 ならば、この世界における〝間桐雁夜〝という男はいったいどのような本質を持つのか。

 

 実に興味深い事柄だ。

 

 私は見たいのだよ。

 

 この物語の行く末、あの少女が齎す可能性によって変化したこの世界で人々がどういう道を辿るのか。

 

 その終わりの終わりまでね。

 

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『あれはいつか来る終わりの形、人類を滅ぼす未曾有の大災厄、その一つを1本の槍という形に押し込めた、謂わば実体を得た呪いそのもの、聖杯戦争で全てを失った俺がその生涯をかけて辿り着いた希望の形。

 だが、それはお前と同じような技を使う剣士によって未遂に終わった。

 

 とはいえだ、俺が世界をまるごと消し去ろうとした事実だけは消えることがない、それだけが俺が得た揺らぐことのなき真実、それ故に...俺は世界から排斥された存在となった』

 

『その果てが今の汝か』

 

『そうだ、俺は無数に存在する可能性の一つとしてこの体の持ち主であるこの世界の俺に、世界の根源たる可能性の渦から引き上げられた。

 元の世界から排斥された俺は、世界の何処にも存在しない樹と樹の狭間のような次元で眠っていたが、この男が俺を引っ張り出してしまったのでな、無事目覚めてしまったというわけだ。

 

 まぁ、それだけが俺の目覚めた理由ではないがな、敵であるお前に全てを語る義理もなかろうよ』

 

 マキリ・雁夜、それは自暴自棄の果てに世界へ未曾有の厄災を齎さんとした間桐雁夜という男が辿り得る可能性の一つ。

 

 そういえば、もう一つの月を冠する世界においてもあらゆる世界の自分を殺そうとした男が居たか。

 

 あの男とはやり方が違っただけで、このマキリ・雁夜という男もまた己のせいで不幸になった者が居たという事実に耐えきれなくなった者だ。

 

 まぁ、そんな全てを諦めた虚無のような男でも、己と同じ道を辿りかねない者を放って置けなかった。

 

 それがこのマキリ・雁夜という男が間桐雁夜に力を貸す理由でもある。

 

 とはいえだ...その手助けが齎す結果を、当の間桐雁夜がどう思っているのかはまた別の話だ。

 

 興味がないか?誰にも認めて貰えないと思っていた男が、ようやく手に入れた自分が認めて貰える居場所を、仕方がないとはいえ別の誰かに奪われた時いったいどのような状態に陥るのか。

 

 それはきっと、最悪のタイミング、最悪の形で現れるのだろう。

 

 例えば...己の持つ欲望の全てを肯定してくれる光に誑かされるとか。

 

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 なんだよこれ、結局の所は俺が居なくても何とかなっているじゃないか。

 

『...』

 

 ...嗚呼、さっきから耳鳴りが煩わしいな。

 

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『所で念のため聞いておくが、お前の目的は此処の地下に居る何かっては間違いないか、その有無によっては引き下がることも吝かではないぞ?』

 

『然り、我が目指す指針の果てはこの地に眠る星、我を導くその星を解放しに参った』

 

 その会話を遠方で聞いていたアンジェルは疑問を抱く。

 

「ねぇオルフェウス、君何か隠してない?今話すなら3本迄で済ませてあげるけど?」

 

「おぉ手厳しい、何を3本なのかは解りかねますがきっと恐ろしき事をするのでしょう、貴女はとてもとても冷徹なお方なれば」

 

「1本目」

 

 嫌悪感剥き出しの目でオルフェウスを睨みながら、アンジェルは彼の右手の小指を切断した。

 

「ハハハッ!なんというド直球!やはり貴女は容赦がない!」

 

「2本目」

 

 更に切断されたのは、親指。

 

「おっと!?これでは武器が握れないではありませんか!帰った後に直さないといけませんねぇ!」

 

「3本...」

 

「待った、その指は駄目だ」

 

 唐突にオルフェウスの声が重いものに変わる。

 

 3本目、アンジェルが切ろうとしていたのは人差し指であった。

 

「話す気になったかしら?私はとても気が短いの」

 

「えぇお話ししますよ、あの逆さ摩天楼の地下について」

 

 一つ結論を伝えておこう。

 

 話を聞いたアンジェルは、即座にその場を飛び出し前線へと向かった。

 

 そこにかつて手元から離れ、喪ってしまった愛しい我が子の忘れ形見が存在すると知って。




 一度違えた道は決して後戻りを許さない。

 それを望む望まないに関わらず、破滅は平等に訪れる。

 当人たちの最も望まない形でそれはやって来るのだ。

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