これも読者の皆様のお陰です。
ただ低評価も頂いてしまいましたので、それもまた意見の一つとして受け止めて今後も精進していこうと思います。
さて、それでは今回なのですが、流石にシリアス続け過ぎて作者自身もグロッキーになってきたのでちょっとだけ救いのある展開を混ぜます。
どっかのジルも鮮度が大事って言ってたし。
番外の黒獣たる饕餮を導く星の正体、それはかつて愛した女の末路たる丸の苗床。
彼が愛し、彼を愛したその女の愛は一つの奇跡を起こしていた。
「全く、黒獣は全て殺すつもりでいたんだけどね、君があの子たちのにとって恩人だと言うのなら絶対に殺せなくなっちゃったじゃないか。
...でもまぁ僕にも一つ誤算があった」
アンジェルの言う誤算、それは饕餮にとって見過ごせないものであった。
「多分あの子が守ったんだろうね、1人だけ丸の影響も受けず肉体の変質も起きていない、本当に奇跡のような子が居たんだよ。
...もう出てきて良いよ、君のお父さんに挨拶しなさい」
『父様?』
『何と...何と言う、我が星よ見ているか?汝の名残、汝の遺した忘れ形見はしかと生き延びていたぞ』
アンジェルの後ろから出てきたのは、何処か饕餮に似た雰囲気とウサギ部隊の面影がある小さな子供であった。
「生き残りは1人も居ないと思ってたんだけどね施設の置くの方に言ってみたら聞き覚えのある笛の音がしたんだ。
その音の聞こえる方に行ってみたらこの子が1人で座り込んでてびっくりしたよ」
キョトンとした顔で饕餮の顔を覗き込む白い髪をした子供は、やがて目の前の饕餮が己の父であると確信したのであろう、彼に飛び付き泣き始めた。
『父様、本当に父様なの?』
ようやく出会えた親子の再開というやつか、このまま無事で終われば良かったのだが、この世界というやつは余程残酷らしい。
『そろそろ人格の同期が切れるらしい、悪いが後の事は任せたぞ』
まず最初に間桐雁夜とマキリ・雁夜の人格同期が切れた。
そしてもう一つ、彼らに近づかんとする中華魔術連の別動隊に誰も気付かなかったことだ。
ただ1人、人格の同期が切れて辺りを見回していた雁夜を除いては...
「危ない!!!」
一発の銃声が響き鮮血が迸った。
突然の事で驚愕したアンジェルが気づいた時には、右腕の肘から先が無くなり大量の血を流す雁夜の姿がそこにはあった。
「雁夜?」
「ははは...今回何にも役にたてて無かったからさ、これくらいやんないとって思ってさ、まずったなぁ...」
雁夜は倒れ伏し血の海に沈む、その顔に安堵の笑顔を浮かべながら。
『番外と忌み子を撃つ為に作った折角の弾が、まさかたかだか野良犬風情に消費させられるとはな』
『メイロン、今回の目的はあくまでも丸の根源技術回収だ...遊びは程々にしておけ』
『ワン一族、やはり来たか』
『よぉ裏切り者、またお前のせいで人が死ぬぞ?』
ワン一族、中華魔術連を牛耳る張本人たちが遂にお出ましというわけだ。
なんとまぁしつこいことか、只でさえ連戦に次ぐ連戦、もし観衆がいれば飽きて空き缶でも投げつけて来そうだ。
とはいえ、来てしまったのなら仕方がない。
何せ奴らは人心を持たぬ外道畜生の類い、ならば殺し合うより道はないのだから。
『聖堂教会の御仁、起きておられるか?』
「今漸く覚め申した、最悪の目覚めではありますが...雁夜殿」
異端審問局第一機甲猟兵団隊長ニムロッド、饕餮との打ち合いにて競り負けた彼だが、死んだわけではなかった。
意識が飛んだうえに怪我が中途半端だったせいで再生アンプルを撃ち込んで貰えなかったのだ。
ちなみに他の隊員どもが静かなのはマキリ・雁夜が偽典宝具『勝利齎す塵殺の槍』を使った時の衝撃で全員ガチ気絶しているからである。
お前ら後で全員減給もんだバカども。
『御仁、頼みたき事が』
「何でしょうか?」
『どうかあの恩人たちを守って欲しい、我は恩人たちを害したあの者らを討つ』
ニムロッドは少し悩む、眼前の者は悪い人間ではないのだろうが元は敵だ。
本当に信用して良いものなのだろうか?
...何かあれば私が腹を切れば良い、今の状況では正直猫の手でも借りたい程だ。
ならば答えは一つであろう。
「任された」
『感謝する』
『番外、貴様己の立場がわかっているのか?貴様は中華魔術連に甚大な損失を与えた挙げ句、そこの女によって削られた貴重な黒獣たちを大勢殺した。
貴様は、それを理解したうえで行動しているのか?』
『ワンの一族よ、元より汝らと解り合えるとは思っておらぬ、故に...我は汝らを狩らねばならぬ』
大いなる観衆よ、私は此処に宣言しよう。
これより起きるは罪過の清算、或いは恩人たちに報いるための戦い。
そして、悍ましき光の目覚めだ。
『そうか、ならば死ぬが良い』
火蓋を切ったのはワン一族が1人、指示役の男。
『お前にその術理を教えたのは誰だと思っている?只の襤褸切れのようであったお前を鍛え、其れ程までの腕に至るまでに仕上げのはこの俺ぞ?』
『それがどうした?そも我を襤褸切れのようにしたのは汝であろうに、我が肉親を殺し、妹を殺し、左腕と片目を奪った貴様がそれを言うかワン・メイリーよ、なれば...そうであるならば!!!』
一つ開示しよう、確かに饕餮へ黒獣の術理を教えたのは目の前の男〝ワン・メイリー〝である。
そう、数話に渡り名前だけ使われてお前誰だよ状態であった人物である。
...なんでこんなシリアスな場面にギャグみたいな字面で説明する羽目になるんだよ。
まぁそれは置いといて、饕餮に技を教えたのは本当だが、この男...その後に饕餮自身が編み出した技については全く知らないのである。
故にこういう事が起こる。
『動きが見えぬ、気配も消えた?』
駆ける駆ける、疾く駆ける。
饕餮は己の動作一つ一つに独特な歩法を合わせることにより、気配の完全なる遮断を可能にした。
此処に合わさる術理は黒獣の技に非ず、饕餮の術理である。
『死線-罰天刀』
一閃、ただ一撃で戦いは決した。
『貴様、何だその技は...』
『知らぬのも無理はない、汝は己が配下に全く関心を持たず...幾ら我が同胞たちが死しても眉一つ動かさなんだ。
あの者らもさぞかし無念であったろうな...それ故に我は此処に示そう、汝らによって奪われた我が星、そして同胞たち、あの者らの無念が我に与えた我の術理、即ち死線の刃たるをな』
死線の刃、それは切った場所から〝死んでゆく〝末日を与える一閃。
それを胴のど真ん中に喰らわせたのである。
『メイリー!?番外貴様!!!』
『ワン・メイロン、あの忌々しい謀略を企てたは汝であったな、汝によって先ある命を奪われた者たちの無念を受けるが良い』
『クソが!黒丸兵俺を守れ!!!』
瞬間、ワン・メイロンと饕餮の間にワン一族の手勢であろう者たち立ち塞がる。
その眼に意思は感じられなかった。
『汝ら、そうか...メイロンめは汝らまでも傀儡としたのだな。
哀れな、忠義の果てがこれでは誰一人として報われぬではないか。
故に、我が汝らを介錯致す』
一閃、それだけで辺りは静寂に沈む。
『おいおい、此処に集っているのは全員うちの分家やら末端やらをかき集め、黒獣の筆頭に近いとまで言われた精鋭どもだぞ?それを一太刀で全滅させるとかどうなってやがる!?』
『次は汝だ』
『くそが!メイリーまだ傷は治らないのか!!!メイリー?』
その問いに答える声は無い、沈黙だけがメイロンに重くのし掛かった。
『おい嘘だろ?メイリーまで殺られたってのかよ!!!』
饕餮によって刻まれた傷、其処より肉体は朽ち果てた。
ワン一族の首魁、ワン・メイリーは此処に死したのである。
『くそが!冗談じゃあねぇぞ?俺まで死んでたまるかよ!!!』
『汝、何処まで恥を晒すのだ』
『うるせぇ!!!俺はこんな所で死ぬ男じゃあない!こんな所で終わってたまるか!!!』
お手本のような小物、それがワン・メイロンへ向けられた周囲からの評価である。
戦いは手勢に任せ、己は影に隠れ潜むことに徹する、こいつはそういう男だ。
とはいえだ...そろそろか?
嗚呼、喜ぶと良いメイロン、お前には大役が与えられた。
新たなる門出を華々しく飾る道化としての役目がな。
そら、お前の終わりがやって来たぞ。
『Good night?
Good night?
Good night?
Good night?
Good night?
『何だよお前...なんなんだよ!!!』
それは唐突に現れた、まるで物語の中から這い出たようなそれは、メイロンをじっと観察するように見つめていた。
『嘘だろ?俺はただ楽しみたかっただけなんだよ...来るなぁぁぁぁぁ!!!』
『See you...』
『あっ...』
何かが咀嚼されるような音がした。
お ま た せ !
やっとこの章でやりたかった所まで辿りついた。
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昆虫学者